2003年9月16日，Blizzardを始めとした大手ゲームデベロッパを擁しているVivendi Universalが，日本，韓国，香港，台湾，中国，オーストラリアなどアジア各国のプレスを一堂に集めたプレスカンファレンス「Asia Games Summit」を，今まさに開催中だ。開催地は，これらの国からの交通の便が良く，観光地として日本人にも馴染みの深いシンガポールである。

　日本ではまだあまり名の知られていないVivendiだが，同社は海外ではElectronic Artsと同等の大手ゲームパブリッシャ/ディストリビュータとして認知されているゲーム会社。BlizzardやSierra，そして最近「Half-Life2」などで国内でも話題となっているValveなど，いくつもの有名ゲームデベロッパを傘下に抱えた，文字通り世界的な販売力を誇っている大会社である。

　今回はアジア地域の報道関係専用のプレスカンファレンスということだが，そのターゲットは韓国や中国，台湾といった，急成長するアジアゲーム市場に据えられているのは明らか。世界的オンラインゲーム大国として知られている韓国はいうまでもなく，「眠らない大陸 クロノス」が8000万アカウントという途方もない数字をたたき出している中国も，今後さらなる急成長が見込まれているマーケットだ。
　現在あらゆる産業界から熱い視線を注がれている中国市場ではあるが，それはゲーム産業にとっても同じ。つまり，アジアという潜在的巨大マーケットを見据えたVivendiの販売戦略の一環として，今回のイベントがあるわけだ。

　さて，プレスカンファレンスが行われる前日の9月15日には，アジア中から集まったプレスに対して，ちょっとした（しかしかなり手間のかかっていそうな）パーティが開かれた。
　このパーティに関しては，正直，読者にとって読んで面白い話かどうか怪しいので簡単に紹介するにとどめるが，かなり豪華であったのは，間違いない。
　事前にパーティがあることだけは知らされていたのだが，指定の時間に会場に行った我々プレスを待っていたのは，なんと映画「ロード・オブ・ザ・リング」に登場するホビット族そっくりのコスチューム（正確には，ゲーム「The Hobbit」で主人公が着ている衣装）。この仮装が参加の条件だというので，アジア中のプレスの誰もが仕方なく（または大喜びで）着替えたのである。ちなみに集まったプレスは総勢50〜60人ということで，ご覧の写真のように，ちょっと異様な光景となったわけだ。
　このホビットの一団が集まり，ホテルの一室でイベントが行われた……だけで終わるかと思いきや，実は本番はこれから。少しお酒が入ったところで，ガンダルフ（ロード・オブ・ザ・リングに登場する魔法使い）とおぼしき人物が現れ，ホビット達（我々プレスだ）を導いてバスに乗り込ませ，着いた先はまさに異世界。映画に登場するキャラクターそっくりのホビット達（なんと裸足！）や女性エルフが大勢いる屋外の宴会場（？）。ここで，パーティの本番が始められたのである。

　会場で驚いたのは，ホビットやエルフ達の演技だ。おそらくプロの俳優を使っていると思われるが，エルフに扮した女性は何があってもポーカーフェイス。会場のあちこちを映画同様に，ゆっくりゆっくりと歩いているし，ホビット達のいたずらといったら天然とさえ思えるほど。プレス席の机にあるパンを盗んでいったり，デジカメを不思議そうにいじりまわしたり，さらにはビールジョッキにパンくずを投げ込んだり，ほかのテーブルとジョッキを入れ替えたり……。
　これらの行動が，また実にサマになっているのである。まだ幼いホビットに年齢を聞いてみたら，「106歳だよ」と普通に返事されたのだが，どう見ても，10歳前の子供（本当は6歳？）。しかしどんな質問をしても，ちゃんとホビットとしての答えになっていた。
　バギンズによる名司会で賑やかに進められたこのパーティには，ファンタジーRTS「Battle Realms」のLiquid Entertainment社長のエド・デル・キャスティロ氏など大物も大勢参加していたのだが，もちろん，ホビットの衣装。ゲームの話は翌日（16日）にまとめて話すとのことで，この日はVivendiスタッフもプレスも，ただひたすらにこの異世界のパーティを楽しんでいた。

　終わってみれば，実に5時間にも及ぶ豪華なパーティだったわけだが，その間まったくダレることなく続き，Vivendiのこのパーティへの力の入れようが伺えるものであった。
　しかし本当に重要なのは，16日のプレスカンファレンスである。盛大な前夜祭に見合うだけの発表がされるのか？　大いに期待したい。（Iwahama/TAITAI）