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[GDC06#5]リチャード・ギャリオット講演 〜 Tabula Rasaが遅れた理由
「Ultima IX: Ascension」「Ultima Worlds Online: ORIGIN」(Ultima Online 2)などの不幸なプロジェクトが続いていただけに,Tabula Rasa開発の先行きが明るくなったことから,ギャリオット氏が話すように“第2の人生最大のチャンス”(The Second Lifetime Opportunity)を,モノにしようと奮闘しているのかもしれない。
しかし,Tabula Rasaが今の形になるまでは,やはり紆余曲折があったようだ。講演のタイトル「Designing Tabula Rasa: Lessons from the world of MMOs」(Tabula Rasaのデザイン:MMOゲームの世界から学ぶレッスン)が示すように,業界でも最古参のギャリオット氏でさえ,まだまだ学ぶことが多いらしい。今回は,まだ発売前にしてすでにポストモーテム(事後批評)のような形式となり,新作の発売がなぜ5年もかかっているのかをギャリオット氏が述懐した。
とはいえ,LineageのデザイナーだったJake Song(ジェイク・ソン)氏,ギャリオット氏の右腕として知られたStarr Long(スター・ロン)氏と,リーダー格を3等分するという奇妙な体制に加え,ほとんどのメンバーが歴戦のベテラン開発者で占められていたために,うまくかみ合わなかったという。
ギャリオット氏が最初に違和感を持ったのは,初めてソウル本社のミーティングに出席したときだったという。幹部達に囲まれる中で,韓国人の若手開発者がプレゼンテーションを終えたあと,促されるままにプロジェクトについて批評したところ,周囲から反感を買うことになったのだという。
「本来,幹部の前では手を叩いて褒めておき,あとでプライベートに助言するのが韓国式だったようです。ネガティブな関係にだけはなりたくなかった」とギャリオット氏が話すように,現場での文化差を理解するのには苦労したようだ。
また早くソフトをリリースできるように,当時の“現世代”エンジンを採用したことも間違っていたとギャリオット氏は語る。Tabula Rasaは,当初「Dark Age of Camelot」でも使用されている「NetImmerseエンジン」(現GAMEBRYO)を採用したが,「Lineage II」や「EverQuest II」のように5年後,10年後でも耐えうるハイエンドツールを選ばなかったのは失敗だったというのだ。
実際,Lineage IIの開発中のデモを見たギャリオット氏は,そのグラフィックス描画能力の高さには大きなショックを受けたという。しかし,ギャリオット氏が「自分のエゴもあって,プロジェクトがうまく進んでいなくても認めるのに時間がかかった」と話すように,大きく進路を変えるのは,実に2004年の秋になってからのことだったのだ。
このときNCsoftのオースティン支部では,開発チームの20%の人員を削減していた。遅れを取り戻すために,アート制作はロサンゼルスから中国までアウトソーシングし,100人以上の体制で現在まで開発が進められている。アジアへの売り込みには期待せず,まず「北米市場ありき」の姿勢でアクション性に重点を置く,たくましいキャラクターを増やすなどの改良を加えながらも,世界観や精神性といったテーマや,RMT専用ファーマーを否定するゲームエコノミー,1日30分で十分に楽しめるゲームプレイなどの部分を追求することで,Tabula Rasaの良さを引き立てた。
このあと講演の最後までは,新生Tabula Rasaにおけるアートの変化などをスライドで見せながら,簡単なゲームの紹介を行った。ウィル・ライト氏やピーター・モリニュー氏ら,デザイナーの巨匠達に共通することだが,自分のゲームを語るギャリオット氏は,本当に楽しそうに饒舌に話す。Q&Aの時間を短くしてまで,Tabula Rasaでギャリオット氏自身が制作した絵文字の説明を行い,「昔から,こういうのを作るのが本当に好きなんです」と,若い頃と現在を重ね合わせている姿が印象的であった。
Tabula Rasaは,順調に行けば年内にはリリースに漕ぎ着けることになるだろう。(奥谷海人)
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Richard Garriott's Tabula Rasa
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