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[G★2005#032]基調講演でKim Hakkyu氏が強調した「ゲームとBlue Ocean戦略」とは?
クリエイターがこれを認識しておくことにより,プロジェクトの失敗を最小化できる秘法(?)なのだという。
同氏はまず,「例えば,あるMMORPGのクエストが100個以上だと発表すれば,ほかの会社は200個以上だと言うとか, またマップが数Kmに達するゲームだと言えば,ほかの会社はそれ以上のサイズを企てるといったことは,結局全員にとって非生産的な出血競争に過ぎないのです」と述べ,「くだんの書籍で,作者はそんな無意味な競争をRed Oceanと表現しました。そしてそれと相反する状況,すなわち誰も考えつかなかった新しい分野で,競争相手なしに高い成果を得ることがBlue Oceanです」と,とても易しく説明する。
また過去のヒットゲームの事例に触れ,「風の王国は最初に商用BBS(パソコン通信)の上でMUD(マルチユーザーダンジョン)ゲームとしてスタートし,MUGゲームへ進化しました。実際のところ,同作品はあまりゲーム性の高いタイトルとはいえないですが,誰も考えなかった新しいことに挑戦したBlue Oceanといえます。また,韓国で顕著な成功を収めたコミュニティサイトであるSayClubも,最初は誰も購入しないと思われた“アバターの販売”で新しいBlue Oceanを作ったのです」と述べた。
彼は,同書籍を読んだ後に今後のIMC Gamesの戦略を「商品の差別化によって競争を避ける方向」に修正したとも語った。
さて,この論理をゲーム開発会社に適用してみるとどうなるか。例えば,ゲームの開発予算は限られているにもかかわらず,グラフィックス,サウンド,エンジンなどに少しずつ資金を分けて投入する。企画面で言えば,インスタンスダンジョンが流行だと聞けば, インスタントダンジョンを作り, エンチャントシステムで成功したゲームを見たらエンチャントシステムを真似て作る。そういう姿勢では 必ず(?)失敗するというのだ。
そして,ほかならぬKim Hakykyu氏自身,現在「グラナド・エスパダ」(原題 Granado Espada)の開発に当たって,相当な“優等生ゆえのプレッシャー”を感じていると告白した。
ゲーム業界およびゲームファン達が「グラナド・エスパダはほかのゲームと違い,キャラクターを同時に3人も操れるし, クエストもWorld Of Warcraftよりもっと面白いだろう」と,期待していることを認識するにつけ,自分としてはあまりにもつらかったと,普段聞くことのできなかった彼の本心が披瀝され,聴衆達を驚かせたりした。
彼は同書籍の理論どおり,無意味な競争から脱却し,以前に企てた高いグラフィックスクォリティのフィールド, 村, ダンジョンの数を大胆に減らした。実際に(テスト)プレイヤー達はダンジョンのグラフィックスのリアルさよりは,次のダンジョンを早く冒険することに関心を持っていた。ダンジョンの外見,リアリティはあまり重要ではないのだ。
そして,この仕様の切り詰めを補ってくれるアイデアとして,Diablo2のようなNormal,Nightmare,Hellという3段階の難度を用意,同一のダンジョンを3段階に使うことでようやく悩みから脱け出し,楽しくなったという。
前述の論点に従って言うと,例えば攻城戦で最高の楽しさを提供するMMORPGの開発を目標している会社がいまあったとして,それは必ずや失敗すると同氏は言う。なぜかといえば,少なくとも数年を費やして攻城戦を研究してきたリネージュを越えることは決してできないからだ。
それならむしろ,攻城戦システムを研究する時間でほかのシステムを研究したほうがよいという。後発走者であるなら,常に既存の観念を破壊しなければならないと,毅然たる態度で強調する同氏ではあるが,「最近のオンラインゲームは,オープン時に数千万ウォンの高級車をプレゼントするなど競争が激しくなっているので,例えばグラナドエスパダの場合は逆に,オープニングイベントにまったくプレゼントを出さないことを考慮中だ」と,主題に絡むユーモアを披露し,聴衆の笑いを誘うお茶目な一面も見せた。
そして,同氏が最近有望な市場と想定しているのは,女性+年長,すなわち「おばさん」の世代だとも。 経済的に安定していて,時間的にも自由な彼女達には,ゲームが最も優れた娯楽になるというのだ。
もちろん,韓国には花札ゲームにハマっているおばさん世代もかなり存在するが,Kim Hakkyu氏としては自分のお母さんをモデルとして,お母さんがゲームに対する反応速度, マウスを握った手の動きなどをちゃんと見守りながら研究中であるらしく,グラナド・エスパダに続く作品の,そのまた次で“おばさん向けのオンラインゲーム”を構想していると述べた。
「なにを馬鹿なことを」と言う人がいるかも知れないが,彼の講演の意味するところをきちんと汲んだ人なら,まさにそれをBlue Oceanだと思ったであろうことは間違いない。(Kim Dong Wook)
- 関連タイトル:
グラナド・エスパダ
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