インタビュー
さくらインターネットCEO 笹田亮氏インタビュー:「DDO」の実情と今後,および次なるサービスタイトルの可能性について
カンファレンスの終了後,さくらインターネット CEOの笹田亮氏に話を聞く機会が得られたので,現テスターの反響や,追加テスター募集の詳細,DDOの今後の展開や,さくらインターネットの次なるサービスタイトルの話などなど,さまざまな質問をぶつけてみた。約30分という短い時間ながら,興味深い話が多く聞けたインタビューとなったので,オンラインゲームに興味のある人は,ぜひご一読を。
■「DDO」CBT好評につき,近日中に追加テスター1万人以上を募集!
現在実施中のクローズドβテストでは,3000人の募集に4万人以上の応募が殺到したということですが,凄い注目度の高さですね。
笹田亮氏:
おかげさまで,多くのオンランゲームファンの方々から注目してもらっています。今回のクローズドβテストでは,最終的に4万3000人くらいの申し込みがありまして,私達も驚いてしまいました。
4Gamer:
そろそろプレイヤー達の声が,ゲームの内外でちらほらと聞こえ始めてきていると思うのですが。
笹田亮氏:
オープンβテストまでに解決しなければならない課題を残したまま,今回のクローズドβテストを開始したのですが……。
4Gamer:
課題,といいますと?
笹田亮氏:
主にメッセージのローカライズ関係ですね。例えば,男性と女性のキャラクターが共通のメッセージでしゃべってしまったり。で,そういった既知の問題が解決していないにもかかわらず,プレイヤー達からは温かい言葉をいただいています。
4Gamer:
おおむね好評,というわけですね。
笹田亮氏:
ええ。DDOに対して好意的な意見が多く寄せられています。
4Gamer:
現在行われているクローズドβテストは3000人規模ですが,同時接続者数はどのような感じですか?
笹田亮氏:
最大同時接続者数は,1000人前後という数値を確認しています。
4Gamer:
おお,3000人の中の1000人が同時に接続しているなら,比率としては悪くないですよね。
笹田亮氏:
私としては,もう少し行くかなぁと予想していたんですけどね。万全を期してクローズドβテストを開始したはいいけれど,サーバーや回線のスペックが優れているので,もっと人を集めないと負荷テストにならないかもしれません。
4Gamer:
それは贅沢な悩みですね(笑)。そういえば今回のカンファレンスで,正式サービスまでのスケジュールが発表されていましたが,クローズドβテスターの二次募集も行う予定があるそうで。
笹田亮氏:
はい。早ければ来週,遅くとも再来週には,二次募集のアナウンスをしようと考えています。
4Gamer:
当然サーバーの負荷テストを考慮した二次募集ということになるのでしょうが,そういうことだと,結構な人数を募集する必要がありそうですね。
笹田亮氏:
そうですね。クローズドβテストなので,ゲームを4万人に開放するわけにはいきませんが,それでも1万人とか,1万5000人くらいは募集したいです。
4Gamer:
なんと,追加募集で1万人オーバーですか。悔しい思いをしていたテスター落選者にとっては,実に嬉しいニュースですね。
笹田亮氏:
応募者多数の場合は抽選となりますが,DDOのクローズドβテストはメールアドレスのみで応募できる仕組みなので,ぜひ気軽に申し込んでほしいですね。
■「DDO」関連サービス/商品,続々と登場!
先ほどのカンファレンスの中で,コミュニティの発展をサポートする「DDO Blog」というサービスが発表されましたが,これはDDOのIDを所有するすべてのプレイヤーが,無料で利用できるものなんですか?
笹田亮氏:
はい。正式サービス後の無料期間中であっても,DDO Blogは利用できます。ただし,これはあくまでDDOプレイヤー専用のサービスなので,無料期間終了後には,課金者しか利用できません。
4Gamer:
DDO推奨ゲームパッドや,ホビージャパンが7月28日に発売予定の「プレイヤーズハンドブック」など,さまざまな商品にクライアント料無料チケット(2週間の無料期間も付属)が同梱されるから,案外気軽にBlogが始められそうですね。
笹田亮氏:
7月28日に,SaitekからDDO推奨ゲームパッド「P990 DUAL ANALOG」が,ホビージャパンから「プレイヤーズハンドブック」がリリースされる予定です。ゲームパッドのほうには,足が速くなる「ブーツ・オブ・マイナー・ストライディング」,プレイヤーズハンドブックには,NPCとの取り引きが有利になる「リング・オブ・ハグリング」が特典アイテムとして付属します。
ゲームパッドに関しては,いろいろと試行錯誤して,DDOの操作系統にスマートに対応できるFPS用ゲームパッドをチョイスしました。これでしたら,アクション性の高いDDOでも満足のいく操作感が得られますよ。
4Gamer:
DDOはかなりアクション性の高いゲームだから,ゲームパッドとの相性は良さそうですね。プレイヤーズハンドブックのほうも,ルールや世界観を深く理解するためのサブテキストとして楽しめそうですし,TRPGファンでなくてもチェックする人はいるでしょうねぇ。
ところで,こういったタイアップ企画は,今後も積極的に展開していく予定ですか?
笹田亮氏:
はい。例えば今後は,雑誌にクライアントをバンドルすることが確定しています。そういったタイアップを通じて,ゲームの流通,PCサプライの流通,書籍の流通を押さえました。すでにネットでの流通は確保しているので,ありとあらゆる流通を通じて,DDOのクライアントを市場に流すことができるわけです。
4Gamer:
気軽にパッケージを購入できない地域に住んでいる人や,回線速度の遅いプレイヤーに対して,クライアントを入手しやすい環境をセッティングしたわけですね。単に露出度を高めるだけでなく,プレイヤーからしてみれば利便性も向上していると。
笹田亮氏:
まさにその通りです。さらに今後は,インターネットカフェやマンガ喫茶といったスポットでもDDOを展開していき,会社帰りにちょっととか,友人との待ち合わせ中にちょっととか,より気軽なプレイ環境を提供していけたらなと考えています。
4Gamer:
TRPGベースのオンラインゲームということで,コアなプレイヤー層が中心なのかな,と思われがちかもしれないですが,展開自体は,どちらかというとカジュアルな方向性も模索していると。確かにDDOには,数十分程度でクリアできるクエストも多いですし,アーケード感覚のプレイにも適していますね。
笹田亮:
D&Dのコアなファンから,ゲームの中で友達と冒険できるだけで楽しい,というようなライトな層まで,幅広い人に楽しんでもらえるタイトルなんですよね。私自身,中学生〜高校生くらいの頃にTRPG版「D&D」の赤箱,青箱,緑箱などと呼ばれているルールブックを購入し,プレイしていたコアなファンなのですが,「人と遊ぶから楽しい」という点は,TRPG版もDDOも同じです。マニアも初心者も,一緒になって盛り上がっていけたら素敵だと思います。
■実際にプレイしているからこそ理解できる,「DDO」の実情
ちなみに,今回のクローズドβテストで,人気の種族/職業などはありますか?
笹田亮氏:
まだクローズドβテストを始めたばかりということで,そういったデータは完全に取りきれていないのですが,意外なことに,クレリックやローグといったクラスに人気が集まっていますね。
4Gamer:
それは確かに意外ですね。渋いというか,DDOというゲームをよく理解しているプレイヤーが多いということですね(笑)。
笹田亮氏:
そうですね。ファイターやバーバリアン,ソーサラーといった戦闘職に人気が集中しがちで,クレリックやローグなどの支援職が足りないという状況に陥りやすいと思っていたのですが。TRPG的というか,謎解きや冒険の要素をぜひ試してみたいというプレイヤーが多かったのは,嬉しい誤算でした。
4Gamer:
キャラクターの平均レベルはどんな感じですか?
笹田亮氏:
ほとんどの人は,レベル2かレベル3くらいですね。
4Gamer:
ということは,いわゆる“廃プレイヤー”はそれほど多くなく,どちらかというと社会人ユーザーが多い傾向にあるのでしょうか?
笹田亮氏:
今回のクローズドβテストでは,いわゆる「個人情報」的なデータは取らず,メールアドレスのみでテスター募集をかけているので,具体的にどのような層が多いのかは分からないのですが,昼間のログイン率の低さを見ると,はやり社会人プレイヤーが多いのでしょうね。
4Gamer:
なるほど。笹田さんとしては,DDOをプレイするにあたり,どのようなプレイスタイルが望ましいと考えていますか?
笹田亮氏:
DDOは,「レベルをカンストする」ために「効率最優先で狩り」をするゲームではないと考えています。奥の深いキャラクターメイキングやマルチクラスシステムなど,キャラクターの育て方はたくさんあります。仲間との冒険を通じて,自分に適した種族/職業はなんなんだろうと,腰を据えてプレイしてもらいたいですね。
4Gamer:
ボイスチャットにもデフォルトで対応しているし,今後DDO Blogサービスも開始される予定だし,やはり,コミュニティ重視のプレイスタイルが理想的ですよね。
笹田亮氏:
はい。ゲーム内でも,パーティを組んで冒険することの楽しさを求めている人が多い印象を受けるので,そういう人達にとって居心地のいいゲーム世界を提供していきたいです。
4Gamer:
ところで,ボイスチャットの利用率というのは,実際どれくらいのものなのでしょうか。
笹田亮氏:
正確なデータは取っていないのですが,大体3割のプレイヤーがボイスチャットを活用しているようです。
4Gamer:
3割というのはかなり多いですねぇ!
笹田亮氏:
積極的に声を発しているかどうかは別にして,ボイスチャットを利用可能な状態にしている人は,結構多いんですよ。実は私も,ボイスチャットをONにしてクローズドβに参加しているので,ボイスチャットの利用率の高さには,よく驚かされています。
4Gamer:
文字どおり,プレイヤーの声を直接聞いているわけですね(笑)。
笹田亮氏:
さすがに,自分の正体は明かしていませんが,テスターの皆さんにはよく遊んでもらっています(笑)。
4Gamer:
ゲームをプレイしていて,DDOの問題点や,プレイヤー間のトラブルが目につくことはありますか?
笹田亮氏:
一般的なMMORPGに比べ,プレイヤー間のトラブルは圧倒的に少ないですね。DDOのフィールドやダンジョンは,いわゆるMOタイプになっているので,アイテムやキャンプ場所の奪い合いなどは,発生しないようになっているんです。逆にゲームを提供する側としては,パーティをもっと組みやすくする仕組みを導入しないとダメかな,なんて考えています。
4Gamer:
コミュニティを重視するなら,パーティを組みやすくする仕組みは欠かせませんね。海外のゲーマーと比べると,日本のゲーマーは照れ屋さんが多いので,仲間を作るきっかけとなる何かが必要なのかもなぁ。
笹田亮氏:
まずは,先ほども紹介したDDO Blogで,プレイヤー同士の交流を活性化しようと考えています。例えば,ギルド用のコミュニティを作れたりとか,そういった仕組みを提案していけたらなと。
■ゲーム内イベントではなく,アップデートの速度で勝負
ゲームの性質上,DDOでは「ゲーム内イベント」を実施するのが難しいような気がするのですが,正式サービス以降は,どのようなゲーム内イベントを行う予定ですか?
笹田亮氏:
ゲーム内イベントの実施頻度は,プレイヤーからしてみれば,運営側の熱心さを計るポイントとして認識されていることが多いですね。おっしゃるように,DDOはゲーム内イベントの実施が難しいタイプのゲームなので,イベントではなく,モジュールの追加スピードで勝負していきたいと考えています。
4Gamer:
ゲーム内コンテンツを早いペースで追加していこうということですね。
笹田亮氏:
はい。新しいクエスト,新しいクラス,新しい種族。そういったものを,数か月単位のペースでどんどん移植していくつもりです。イメージとしては,アメリカでリリースされた新モジュールを1,2か月でローカライズし,ゲーム内のコンテンツが消費され尽くされる前に,新たな魅力を導入していくと。DDOに関しては,イベントとしてドロップ率アップや取得経験値量アップといったことができないので,アップデート速度でプレイヤーにアピールしていきたいです。
4Gamer:
アメリカで7月中にリリース予定の第二弾モジュール「Twilight Forge」では,新種族ドロウや,PvPシステムなど,注目度の高い要素が導入されますからね。ちなみにTwilight Forgeのローカライズ状況は,どんな具合でしょうか?
笹田亮氏:
翻訳テキストなどはすでに受け取っており,作業は順調に進んでいますよ。日本語版DDOの正式サービスが8月10日開始予定なので,その1,2か月後には,Twilight Forgeのローカライズを完了させるつもりです。もちろんアメリカと同様,無料でのサービス提供を予定していますよ。
4Gamer:
正式サービスから2か月以内に追加モジュールが導入されるというのは,オンラインRPGとしては異例ともいえるスピードですね。実に楽しみです。
笹田亮氏:
私も新種族の追加が待ち遠しいんですよ。ドロウというのは,いわゆるダークエルフなのですが,日本人って意外とダークエルフが好きだという人が多いんですよね。
4Gamer:
そういわれると,そんな気もしますね(笑)。
笹田亮氏:
開発版としては,すでに「日本語をしゃべっているダークエルフ」が存在しているので,ドロウファンは楽しみにしていてください。
■「ゲーム開発会社への提案」に対する反応は?
以前インタビューをさせてもらったときに,「ゲーム開発会社への提案」という形で,レベニューシェアモデル(詳しくは,「こちら」のカンファレンスレポートを参照のこと)を推奨していきたいと発言していましたが,それ以降,Turbine以外からビジネスの話はきましたか?
笹田亮氏:
そうですね。とくにアメリカのゲーム開発会社からは,頻繁に連絡がきています。
4Gamer:
おお,そうなんですか。
笹田亮氏:
データセンターが協力してくれるんだったら,ぜひ日本でやりたいという会社が多いですね。かなりのメジャータイトルを含めて,いろいろなお話をいただいております。当社としても,チャンスがあるなら積極的に取り組んでいきたいと考えています。
4Gamer:
E3 2006でも,さまざまなデベロッパに注目されていたそうですね。
笹田亮氏:
はい,たくさんのアポイントが舞い込んできまして,嬉しい悲鳴を上げていました。
4Gamer:
E3 2006での収穫はありますか?
笹田亮氏:
はい,おかげさまで,現在何本かのタイトルの話をいただいておりまして。……さすがにまだお話しできる段階ではないのですが。
4Gamer:
まだ話せないですよね,さすがに。……ちなみに,E3 2006に参加してみて,個人的に興味をもったオンラインゲームはなんですか?
笹田亮氏:
そうですねぇ……,というか,それを言ってしまうとタイトルがバレてしまうじゃないですか(笑)。でもまぁ,関心のあったゲーム開発会社からは,ほとんどアポが入っていたので……。
4Gamer:
では,時がきたらぜひ教えてください。ところで話はTurbineに戻りますが,指輪物語のオンラインゲームに関しては,日本展開をすると考えていていいのでしょうか?
笹田亮氏:
まだ契約したわけではありません。現在交渉中です。日本展開をするならさくらインターネットで,というありがたい言葉ももらっていますが,その件に関しては,お互いが条件を交渉しているところです。
4Gamer:
TRPGの元祖であるD&Dベースのゲームだけでなく,ファンタジーの元祖ともいえる指輪物語ベースのゲームをパブリッシュできたら,これはもう,凄いことですよね。両タイトルとも世界的に注目度の高い作品なので,4Gamerとしても積極的に情報を追っていきたいと考えています。本日はありがとうございました。
笹田亮氏:
こちらこそ,ありがとうございました。
用意されていた時間が短かったこともあり,「DDO」クローズドβテスターの追加募集に関する詳細が聞ければいいかな,くらいの気持ちで臨んだインタビューだったのだが,フタを開けてみれば,興味深い話題が次から次へと……。この笹田亮という人物は,本当に国内唯一の独立系データセンター事業社の社長なのだろうか(ゲーム業界の重鎮と説明されれば,納得の貫禄である)。
DDOの今後の展開もさることながら,さくらインターネットの次なるサービスタイトルも,非常に気になるところである。ともあれまずは,早ければ来週,遅くても再来週にアナウンスされるという「追加テスター募集」に注目したいところ。最初の募集で悔しい思いをしたであろう,約4万人のテスター希望者は,DDO公式サイトをこまめにチェックしておこう。そして,もし追加テスターに当選できたなら,「βテスト用に用意したサーバーがオーバースペックすぎて,ほとんど負荷がかからない」というDDOの「負荷テスト」に協力してほしい。(Text by 大路政志,Photo by kiki)
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