ニュース
[韓国ゲーム事情#418]韓国ARUON GAMES,日本ファルコムの名作「英雄伝説VI」のオンライン配信を準備中
韓国ARUON GAMES,日本ファルコムの名作「英雄伝説VI」のオンライン配信を準備中(2005/10/4)
Text by Kim Dong Wook特派員
この噂の真偽を確かめるべく,関係筋をあたっていたところ浮上したのが,韓国のARUON GAMES。4Gamerでは,同社に直撃インタビューを行った。
ARUON GAMESは,2005年6月に設立されたゲーム開発会社。日本ファルコムとは,設立と同じく6月に英雄伝説VIの"オンラインパブリッシング"に関する契約を結び,現在はリリースに向けての開発作業を行っている。
ここで注意すべきは,"オンラインゲーム化"ではないこと。オフラインのシングルRPGである英雄伝説VIを,韓国語化し,インターネットを通じて配信するといったイメージのほうが近いだろう。
ちなみに,ARUON GAMESのKim,Do Sung取締役は,韓国のゲーム業界では相当な古株。1990年代中頃から後半にかけては,MANTRAの社長として,日本ファルコムのRPGや,ガイナックスの「プリンセスメーカー」といった人気ゲームを韓国市場向けにローカライズして販売していた。
その後彼は,ゲーム業界を数年間離れ,今回のプロジェクトでカムバックを果たすことになったそうだ。
なお,今回のインタビューには,Kim氏だけでなくARUON GAMESのShin,Youm社長も同席。このプロジェクトの概要と,今後の展望について語ってくれた。
こんにちは。Kimさんとはずいぶんお久しぶりですね。7〜8年ぶりでしょうか?
Kim,Do Sung氏(以下,Kim氏):
私を覚えている人は,今じゃゲーム業界にもそう多くはないんですが……。覚えていてくれて,ありがとうございます。
4Gamer:
忘れるはずはないですよ(笑)。
それでは早速ですが,今回のサービス(パッケージゲームのオンラインパブリッシング)を手がけるにいたった理由を教えてください。
Kim氏:
韓国のPCパッケージ市場が崩壊してしまったのは,不正コピーが原因です。私が一時,この業界から去ったのも,不正コピーが横行する環境で,ビジネスを続けることが困難になったからでした。
しかしここ数年で,韓国はネットワークインフラがきちんと整備されてきています。このインフラを活用し,不正コピーを回避する方法を模索していく中で,このビジネスに行き着いたんです。
4Gamer:
なるほど,そういうことだったんですね。
では具体的に,「英雄伝説VI」のオンラインパブリッシングというものが,いったいどんな概念なのか,説明してください。
Shin,Youmi氏(以下,Shin氏):
簡単に説明してしまうと,英雄伝説VIの戦闘部分のみをオンライン化し,サーバーと連動させるといったところでしょうか。ゲーム内の経験値や通貨(ミラ)は,サーバーに保存されます。
また,バトルモードとして"オンライングランアリーナ"(闘技場)を用意しています。これは,MMORPGでいうところのPvPが可能な戦場で,プレイヤー達がトーナメントを行えるんです。
そこでの勝敗によって,アイテムや通貨を得られ,これはアバターに適用できます。
4Gamer:
え? アバターがあるんですか?
Kim氏:
はい。公式サイト(サイト名は今後公開予定)には自分のアバターを置いておけます。バトルで勝利すると得られるアイテムなどで,アバターを飾ったり,成長させたりできるんです。
4Gamer:
一般的なゲームポータルのアバターは,多くのゲームと関連づけされているイメージがありますが,本作の公式サイトでは,英雄伝説VI以外のサービスも予定しているんですか?
Kim氏:
現段階では詳しいことを言えないのですが,今後,多くのゲームを追加していく予定です。
4Gamer:
おお,予定はあるんですね。楽しみにしておきます。
ところで先ほど,バトルモードをオンライン化すると聞きましたが,それ以外の部分はパッケージ版と同じですか?
Shin氏:
はい,そうです。もちろんすべて,韓国語化していますけどね。
ほかのゲームならたいてい,3人で1か月ぐらいかければローカライズは終わるものなんですが,本作に関しては10人で4か月ほどかけています。90もの大小クエストと,本編のセリフすべてを含めると,小説5冊分ぐらいになるでしょうか……。でも,韓国語のうまい日本人スタッフも参加しており,翻訳は高水準になっていますよ。
4Gamer:
英雄伝説VIはボリュームのあるタイトルですから,ローカライズも大変でしょうね。
ちょっと話は戻るんですが,ゲームをプレイするためには,英雄伝説VIのプログラムすべてをダウンロードすることになるのですか?
Kim氏:
いえ,そういうわけではありません。英雄伝説VIの公式サイトで会員登録後,ログインして英雄伝説VIのリンクをクリックすると,ゲームが起動するんです。
4Gamer:
Valve Softwareの「Steam」サービスのように,プログラムを一度全部ダウンロードするような形ですか?
Kim氏:
いえ,具体的なことは言えませんが,例えば「ギルドウォーズ」のように,10KB程度といった非常に小さな容量のファイルをクリックすることで,プログラムがリアルタイムに実行されるんです。
プレイヤーは,長時間かけてまとめてダウンロードする手間なく,ワンクリックで遊び始められるという長所があります。
4Gamer:
その方式は,独自開発した技術ですか?
Kim氏:
ええ。実はゲーム業界を離れていた時期に,セキュリティ会社でハッキング保安ツールなどの開発に参加していました。そのころのノウハウを生かして,このソリューションを開発したんです。
4Gamer:
なるほど。
では,現在予定している韓国でのサービススケジュールについて教えてください。
Shin氏:
実際のサービスは,全ストーリーをチャプターごとに切り分けて,序盤をオープンβのような感じで無料で遊んでもらい,その後は有料で……という流れを考えています。
現在,複数のゲームポータルと協議を進めながら,特定のポータルにおける独占的なサービスにするか,複数のポータルを通じてのマルチチャネリングにするかを検討中です。できることなら,日本を含めた世界展開のできるパブリッシャと提携したいと考えています。12月頃には,ある程度具体的なサービススケジュールを発表できるように準備していますよ。
4Gamer:
日本での展開も視野に入れているんですね。
Shin氏:
韓国内でどのパブリッシャと契約するかによって変わりますが,日本の複数の会社から,サービスについての基本的な合意を得ています。英雄伝説VIに関して,というよりも,このソリューションを体験版サービスなどに活用する可能性はあるでしょうね。
流通パートナーとの関係もあるでしょうから,新作タイトルはパッケージ流通を行った後に,このソリューションを利用するような形になりそうです。
4Gamer:
このソリューションは,パッケージ流通が終わってしまった過去の名作PCゲームを,オンラインで手軽に楽しめるのが,最大の長所と言えそうですね。
でも,オンラインゲームが主流になっている最近の韓国市場で,
バトルモードを除いてはシングルRPGの英雄伝説VIが,ゲーマー達に受け入れられるでしょうか。
Kim氏:
韓国のPCパッケージゲーム市場は,確かに崩壊してしまいました。でも,韓国内のゲーマー達からは,英雄伝説シリーズに代表される名作タイトルの発売を求める声が,絶えずあがっています。
"一人でプレイする楽しみ"を味わえるプレイヤーも,韓国にだってたくさんいますからね。
それに,ゲームのストーリーそのものを楽しむ機会の少ない,多くのMMORPGプレイヤー達にも,これを機会にPCパッケージゲームの奥深いシナリオやストーリーを楽しんでもらいたいです。
4Gamer:
なるほど,それは期待したいですね。
本日はありがとうございました。
Shin氏 / Kim氏:
こちらこそ,ありがとうございました。
- 関連タイトル:
英雄伝説 空の軌跡SC
- この記事のURL:
(C) Nihon Falcom Corporation. All Rights Reserved.