インタビュー
MMORPGにおけるペットの概念を大きく塗り替える「メイフ」とは? 「メイフマスターズ」プロデューサー/運営スタッフインタビュー
当初の狙いどおり,好評を博している「メイフ」
プレイヤーの思いどおりにならないのが魅力?
本日はよろしくお願いします。さて,メイフマスターズの正式サービス開始から約1か月が経ちましたが,手応えはいかがですか?
大槻 林太郎氏(以下,大槻氏):
プレイヤーの皆さんから,良い部分と悪い部分についてさまざまな意見をいただいています。良い部分については,何といってもメイフが可愛い,愛着が持てるという意見が多いです。
山崎 洋氏(以下,山崎氏):
メイフやモンスターが能動的にしゃべる点も好評です。とんちの利いた面白い台詞が多く,ほかのMMORPGではあまり見られない,ユニークな要素となっています。
大槻氏:
「俺には嫁も子どももいるのに」みたいな(笑)。
好評を博していることを受けて,メイフやモンスターのセリフを募集するキャンペーンも行っています。
4Gamer:
ユニークなものが集まりそうですね。
ドライないい方をしてしまうと,そういった要素は“ノイズ”ですよね。ゲームの進行そのものには,まったく関係ない。ところが,そういう要素を盛り込むことで,メイフやモンスターに個性が与えられるんです。これはほかのタイトルと差別化できるところなので,ぜひとも推し進めていきたいですね。
大槻氏:
最初のうちは,メイフがプレイヤーのいうことを聞いてくれなかったりするので,よくあるペット育成モノとは違うゲームととらえている人が多いようです。メイフに関する評価が高いことは,私達にとって喜ばしい限りです。
山崎氏:
それと,私達はもともと女性向けを謳っていたわけではないのですが,女性プレイヤーの比率が比較的高いことも特徴ですね。
4Gamer:
プレイヤーの男女比はどのくらいですか?
大槻氏:
およそ7:3です。
山崎氏:
加えて,若年層が比較的多いのも特徴です。オンラインゲームのプレイヤーは20代から30代半ばの男性が中心ですから,そこに含まれない,女性や若年層のプレイヤーを獲得できているのは重要だと思います。
4Gamer:
なるほど。このことについては,良い評価を得ているというメイフの育成要素が鍵を握っていそうですね。
山崎氏:
ええ。私達としては今後,メイフという「幹」からさまざまな「枝葉」を展開させていく予定です。例えば,当初から想定されてはおりますが,魚類系のメイフなどを登場させるといったことですとか。
プレオープンβテストからオープンβテスト開始まで
時間がかかった理由とは?
逆に,どんな点が不評ですか。プレイヤーから寄せられている要望などを教えてください。
山崎氏:
まずは,プレオープンβテストからオープンβテストまでの期間が長かったことですね。楽しみにしていただいていた皆さんを,約3か月間もお待たせしてしまいました。このことについては本当に申し訳ありませんでした。
4Gamer:
ああ,確かに長かったですね。
山崎氏:
メイフマスターズは,開発元であるEniumが,約8年以上の歳月を費やして構想を練ってきたゲームなんです。それだけ,構想は大規模なものになっていますから,ゲームシステムやアイテムなどの仕様を日本向けに変えていくにはかなりの時間がかかってしまいます。運営側の意向と開発側の意向を,よい方向に向けてすり合わせるために,時間をいただいたというわけです。
4Gamer:
具体的に,日本のゲーマーに向けてどんな要素を追加したんですか?
一番分かりやすい部分では,羽々キロさんが描いた「ミュウ」関連ですね。これは日本独自要素で,ゲーム内のヒロイン的存在となるよう,これからさまざまな展開が予定されています。
そのほかの部分では,プレオープンβテスターの皆さんから,操作性に関して意見が寄せられましたので,できる限り対応しました。例えば,ショートカットキーの使い勝手や,チャットの方法などについてです。また,メイフの成長率にバラつきを持たせ,個性を出しました。
4Gamer:
なるほど。
大槻氏:
開発元はこのゲームにかなりの思い入れがあり,とても魅力的なビジョンを持っています。私達は,日本のプレイヤーからの要望をできる限り反映させるため,寄せられた意見を彼らに伝え,さまざまな部分に手を入れてもらいました。
山崎氏:
また,メイフマスターズはマップが広いので,移動速度が遅いとプレイしていてストレスを感じてしまいます。そこで,同一ゾーン内を移動できるアイテムなどを実装してもらいました。
大槻氏:
皆さんにさまざまなメイフを育成して楽しんでいただくという部分で,運営側と開発側の意見は一致しています。Eniumは,日本側からの要望にも柔軟に対応してくれていますので,ご安心ください。
山崎氏:
例えば,ミュウが抱いている「クーちゃん」も,今後メイフとして登場させられないかとか,いろいろ考えていますよ。
4Gamer:
お,それは楽しみですね。
大槻氏:
そのほか,もっと羽々キロさんのイラストに近いキャラクターがほしいという意見もありまして,これについても検討中です。
本日のアップデートで
新ダンジョンや饅頭型のメイフを実装
4Gamer:
初の大型アップデートが2月25日に実装されますよね。どういった内容になるのでしょうか?
山崎氏:
ダンジョン「地下の沼地」が実装されます。
大槻氏:
ダンジョンですから,フィールドよりもモンスターが強めで,その見返りとしてより多くの経験値を獲得できます。これまでのマップにはない,独特の雰囲気ですね。一番奥は古代の遺跡のようになっており,そこには「沼の支配者」というダンジョン最強のモンスターが待ち構えています。
山崎氏:
プレイヤーの目標になるという意味では,今までこういう存在は登場していませんので,楽しんでいただけると思いますよ。
4Gamer:
期待できそうですね。推奨されるキャラレベルはどのくらいですか?
大槻氏:
レベル25〜35程度を想定しています。そのくらいのキャラでパーティを組んで挑戦すれば,ダンジョン攻略や「沼の支配者」との戦いを楽しめるように調整しています。
山崎氏:
先ほど,大槻が「独特の雰囲気」といいましたが,細かいところまで作り込まれており,まさにダンジョン! という感じです。ぜひとも実際に見ていただきたいですね。
4Gamer:
ダンジョンのほかには,どんな要素が追加されますか?
山崎氏:
もちろん,新たな装備アイテムも多数登場する予定です。そういえば,今回のアップデートとは直接関係ありませんが,先日「フェネック衣装」が実装されました(関連記事)。
大槻氏:
フェネックは,その名のとおりキツネの姿をしたモンスターなんですが,日本で非常に人気が高いんです。そこで,プレイヤーから要望があったフェネックを模した衣装を提案したところ,さっそく実現しました。
4Gamer:
おお,日本側から提案された企画だったんですか。
山崎氏:
肉球なんかも細かく作られていて,可愛らしい仕上がりですよ。
大槻氏:
そのほか,日本独自というわけではありませんが,新たなメイフも登場する予定です。饅頭をモチーフとするメイフなんですけれども(笑)。
山崎氏:
このメイフは,見た目も動きも独特ですよ。ポヨンポヨン跳ねるように移動し,騎乗も可能です。
4Gamer:
おお,饅頭に乗れる!
山崎氏:
そう来たか! と,ちょっと驚きました(笑)。ペットを育成したり,戦わせたりするシステムは以前からあり,ある意味,スタンダードとなるものができあがっている感があります。今回の饅頭モチーフのメイフなどを見ると,本作は一般的なMMORPGとうまく差別化できていると感じるんです。今後も,ほかのMMORPGには見られないメイフを登場させたいですね。
メイフ同士を戦わせるコンテンツ「MvM」が近々登場!
なるほど。それでは,もう少し先の展開なども教えてもらえますか?
大槻氏:
春頃に「MvM」,つまり“メイフ対メイフ”のシステムを実装します。プレイヤーが育てたメイフ同士を戦わせるもので,これは本作のメインコンテンツの一つとなる予定です。
山崎氏:
いってしまうと,これまではただメイフを育てられるだけという感じでした。育成の結果をこれまでとは違った形で実感できるMvMは,プレイヤーの皆さんにとって大きな楽しみになるととらえています。
大槻氏:
プレイヤーの皆さんから,せっかくメイフを何体も育てられるのに,単にモンスターと戦うための道具になってしまっているという意見が寄せられていました。MvMの実装後,プレイヤーが対戦や育成の方法を研究して情報交換するようになれば,コミュニケーションはより活発なものになっていくでしょう。
4Gamer:
MvMは,もともと開発元の構想に含まれていたんですか?
山崎氏:
ええ,そうです。やはりゲーム開始当初は,誰しも手探りでやっていますから,複数のメイフを育てるのは難しいと思います。そこで,プレイヤーの皆さんがさまざまなタイプのメイフを育てるノウハウを得たタイミングで,満を持してMvMを投入しよう,と。
私達としては,対人戦でなく,ペット同士が戦うシステムだからこそ,メイフマスターズでやる意味があると思っています。自信を持って提供できるよう,バランス調整を進めていますが,開発元とのすり合わせにはある程度時間がかかりそうです。
4Gamer:
そのため,実装時期を「春頃」としているわけですね。
大槻氏:
それと前後して,4月から5月のあいだに新マップ「生命の泉」を実装する予定です。そのあとは,夏になる前に「風の平原」マップを公開できるといいなあ,というところですね。
これら二つのマップを合わせて「ティブルの森」と呼び,現在,開発やローカライズの作業を進めています。いずれも,詳細は追って発表しますので,楽しみにしてください。
今後は,ゲームとしての楽しさとメイフへの愛着に重点を
4Gamer:
そのほか,今教えてもらえることがあればお願いします。
公式サイトの「ミュウのお部屋」でメイフのイラストを募集し,応募作品にミュウがコメントするという内容のイベントをやったりしています。今後は,ミュウをフィーチャーした季節イベントなども行う計画です。それと現在,全体的なスキルバランスの調整も進めています。
山崎氏:
また,具体的な話ではないのですが,今後の方向性や方針をお話しします。ほかのタイトルで人気のコンテンツだから,うちでもやりますといった漠然とした考えで運営するつもりはありません。メイフマスターズに盛り込む意味を,きっちりと持たせます。
4Gamer:
MvMのところでも,少しおっしゃっていましたよね。
やはり前提としてあるのは,メイフに愛着を持っていただくことが,私達にとって最も重要だということです。例えば,メイフがより能動的に行動するようなシステムに発展させていきたいと考えています。
主のいうことに従うだけでなく,ときにはプレイヤーに逆らったりして世話を焼かせる。現実世界のペットでも,愛着というのはそういう過程を経て強くなっていくものではないでしょうか。メイフについても,そういう方向を目指したいです。
大槻氏:
あくまでも夢の話としてとらえてほしいのですが,例えば,自分のメイフが勝手にどこかに出かけていき,ほかのプレイヤーのメイフと仲良くなったり,その延長で子供が生まれたり。そんなメイフの行動を通じ,プレイヤー同士の交流が自然と生まれるようなゲームにしたいですね。
山崎氏:
そうなると,プレイヤーさん同士がメイフマスターズの新しい遊び方をどんどん発見していくでしょう。皆さんのお手伝いをするために,ゲームの完成度をさらに高めていくことが,私達の主な使命となるはずです。
大槻氏:
あと夢の話でいうと,合体ですかねえ。饅頭が集まって「キング饅頭」とか(笑)。
山崎氏:
やり過ぎてしまうと,わけが分からなくなってしまいますが(笑)。まあ,メイフを中心に展開していくという点は,運営側と開発側の一致した考えですね。
4Gamer:
それでは最後に,メイフマスターズのプレイヤーと4Gamer読者にメッセージをお願いします。
山崎氏:
私達はEniumと協力し,このメイフマスターズというゲームを,日本のゲーマーがより楽しめるタイトルに変えていきます。打てば響く,という状況でこそありませんが,運営側と開発側が一丸となって着実に前進し続けていますので,その点はご安心ください。
大槻氏:
メイフを通じて,プレイヤーのコミュニティを盛り上げていきますので,ご期待ください。
4Gamer:
ありがとうございました。
日本でのメイフマスターズは,原題である「MayPan」として2007年4月にクローズドβテストが実施された。その後,紆余曲折を経て,2009年1月にようやく正式サービス開始に漕ぎ着けた経緯がある。
今回のインタビューからは,その裏に,8年かけて構想を練ってきたという開発元Eniumの思い入れの大きさと,日本のゲーマーに受け入れられる作品を提供したいという,ゴンゾロッソの確固たるスタンスがあったことがうかがえる。山崎氏や大槻氏は,プレイヤーに愛着を持ってもらうには,開発側と運営側にそのゲームへの愛がなければダメと語っていたが,これまでの経緯をよく知るスタッフならではの言葉だと感じた。
今後,メイフを中心にどのような展開が待っているか,今から楽しみである。
- 関連タイトル:
メイフマスターズ
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