テストレポート
AMD,動作倍率制限を解除した“FX仕様”の「Athlon 64 X2 5000+」を発表。そのポテンシャルを検証する
なお,それ以外の基本的なスペックは従来製品と変わらない。少なくとも65nmプロセスで製造されるTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)65WのCPUで,L2キャッシュ容量が1コア当たり512KBという点は,従来のAthlon 64 X2 5000+とまったく同じである。ただしOPN(Ordering Part Number)は「ADO5000IAA5DS」で,末尾が従来の「DD」から「DS」に変更されており,実際,ステッピングが上がっているのを確認できた。
動作倍率15倍
3.0GHzでの動作を確認
4Gamerでは今回,日本AMDからAthlon 64 X2 5000+ BEのサンプルを借用できたので,実際にどれくらい“回る”のかを試してみる。Athlon 64 X2は,電圧設定などを変更してもオーバークロックの効果が劇的に変わるわけではないことと,テスト期間が発表前の数日というスケジュール的な厳しさもあって,今回はマザーボード側のCPUコア電圧設定を「Auto」にしたまま,動作倍率だけを変更することにした。
利用したマザーボードはASUSTeK Computer製のnForce 590 SLI搭載製品「M2N32-SLI Deluxe」だが,今回利用したBIOS 1201では,マザーボードから動作倍率設定を変更しても反映されなかった。マザーボード(=BIOS)側がAthlon 64 X2 5000+と誤認識した場合,13倍より上の設定は“勝手に”無効化されてしまうようだ。Athlon 64 X2 5000+ BEの倍率変更をマザーボードから行うには,BIOSの対応が必須となっている可能性を指摘できよう。
)を利用し,動作倍率の変更を試みている。そして結論からいうと,今回の個体では,Athlon 64 X2シリーズのリファレンスクーラーを装着した状態で15倍,つまり3.0GHz動作が可能だった。16倍(3.2GHz)でもOSは起動するのだが,「3DMark06 Build 1.1.0」(以下3DMark06)実行中にシステムが強制終了するのを確認している。
では,この“3GHz動作するAthlon 64 X2 5000+”のパフォーマンスはいかほどだろうか。表に示すテスト環境で検証してみることにした。
また,以下スペースの都合で,グラフ中に限り,Athlon 64 X2 5000+ BEは「5000+」,その3.0GHz動作時は「5000+@3.0GHz」,比較対象となるAthlon 64 X2 6000+は「6000+(89W)」と表記する。
あとこれは“お約束”だが,オーバークロック動作は(いくら倍率固定が解除されていても)自己責任である。オーバークロック設定によって万が一CPUやマザーボードが損傷を受けても,AMDや販売店の保証外となり,筆者や4Gamer編集部も責任を負わないので,この点は十分にご注意を。さらにいえば,すべての個体が3.0GHz以上で動作すると保証するものでもないことは,あらかじめ念頭に置いておいてほしい。
オーバークロックの効果は明らかだが
L2キャッシュ容量が若干のネックに
ちょうどAthlon 64 X2 5000+ BEとAthlon 64 X2 6000+の動作クロックが揃っていることもあり,スコアにはかなり興味深い傾向が出ている。
まず,グラフ1,2は3DMark06の総合スコア,CPUスコアだが,Athlon 64 X2 5000+ BEの3.0GHz動作は,Athlon 64 X2 6000+に迫るパフォーマンスを見せている。いずれにおいても若干低めに出ているのは,1コア当たり前者が512KB,後者が1MBという,L2キャッシュ容量の違いによるものだろう。とくにCPUパフォーマンスを見るグラフ2では,その差がより顕著だ。
グラフ3はロスト プラネットの「PERFORMANCE TEST」における,CPU性能が影響しやすい「Cave」の平均フレームレートをまとめたもの。ここでは,同じ3.0GHz動作,1024×768ドットで比較したときに,Athlon 64 X2 5000+ BEとAthlon 64 X2 6000+で4fpsの差が出ていることに注目したい。平均4fpsが体感でも違いを生むかはさておきL2キャッシュの違いは,ゲームのパフォーマンスに少なからず影響していると見てよさそうだ。
なお,1600×1200ドットでスコアが揃っているのは,グラフィックスカードがボトルネックとなっているためである。
65nmプロセス&TDP 65Wは
倍率変更時にも大きなメリットを生む
最後に,Athlon 64 X2 5000+ BEを3.0GHzで利用したときを中心に,消費電力を調べてみたい。OSの起動後,30分間放置した状態を「アイドル時」,MP3エンコードソフトをベースにしたベンチマークソフトで,CPU負荷をかけるのに向く「午後べんち」を30分連続実行して,最も負荷の高かった時点を「高負荷時」として,それぞれにおけるシステム全体の消費電力をワットチェッカーにて測定した。アイドル時の計測に当たっては,省電力機能である「Cool’n’Quiet」(以下,CnQ)有効/無効のそれぞれの状態でスコアを取得している。
その結果をまとめたのがグラフ4だが,高負荷時で比較すると,3.0GHz動作させたAthlon 64 X2 5000+ BEは,2.6GHz動作時と比べて消費電力がそれほど上がっていない。ステッピング変更で省電力化が進んだのかもしれないが,いずれにせよ,オーバークロック状態でも十分に扱いやすいCPUといってよさそうだ。なおアイドル時に関していうと,CnQの有効無効に関係なく,今回テストした3条件で差はまったくない。
さらに,グラフ4の時点におけるCPU温度を,CPUが内蔵するサーミスタの値を表示可能なモニタリングツール「CoreTemp」(v0.95.4)で測定した結果がグラフ5である。テスト環境は,PCケースに組み込まないバラックの状態で計測しているが,CPU温度もグラフ4をほぼ踏襲する結果となった。
オーバークロック前提なら
かなり高いコストパフォーマンスは魅力的
オーバークロックを前提に語らねばならないので,万人向けでないのは確かだが,コストパフォーマンスはかなりいい。L2キャッシュ容量の制限がある一方,消費電力やCPUの発熱的には扱いやすいこともあり,費用対効果を第一にCPUを選ぶ人にとっては面白い存在となりそうだ。
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Athlon 64
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