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[AOGC2007#14]ゲームポット植田社長が「パンヤ」などを引き合いに,コミュニティを形成するためのノウハウを披露
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印刷2007/02/23 21:30

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[AOGC2007#14]ゲームポット植田社長が「パンヤ」などを引き合いに,コミュニティを形成するためのノウハウを披露

 2月22日,23日の2日間,ベルサール神田にて「Asia Online Game Conference 2007 Tokyo」(AOGC 2007)が行われた。初日のテーマは「コミュニティ・マネジメント Day」で,オンラインゲームに携わる著名人が,コミュニティに関連したノウハウを公開した。本稿では,AOGC 2007の初日 B03コマにて行われた,ゲームポット代表取締役社長 植田修平氏による講演「ゲームポットの事業戦略におけるコミュニティの活用法」の模様をお伝えしよう。

■コミュニティを形成するための三つのポイント

ゲームポット 代表取締役社長 植田修平氏
 壇上に立った植田氏は,まず,ゲームポットとしては運営タイトルに関係なくコミュニティを重視した戦略を常にとり続けている,という経営ポリシーをあらためて明らかにした。そのうえで,実際にコミュニティを形成する際,とくに重視すべき要素を三つに大別し,各要素に対して自社タイトルで実践した事例を踏まえながら解説していくというのが今回の講演における主旨である。植田氏はそれぞれのタイトル事例に入る前に,これらの要素をいったいなぜ重視すべきなのかを簡潔に説明した。

・集客としてのコミュニティ利用
 近年はリリースされるオンラインゲームの数が多くなり,単純に広告を掲載したり,大々的にβテスターを募集したりするだけでは,十分なプレイヤー数を確保するのが難しい。

・ユーザーの囲い込み
 オンラインゲームと,パッケージ販売による売り切り型のコンソールゲームとの間で,まったく異なるのがここ。とくにMMOタイトルでは,プレイヤーを継続的にログインさせる仕組みを必要とし,プレイヤーを囲い込むことによって商品寿命が延びる。

・自発的なコミュニティの形成促進
 運営側が何も行わずに,コミュニティが形成されればそれが一番。しかし実際にはそれは難しく,何らかの形で運営側が手助けを行い,コミュニティの形成を促進させる必要がある。

■“CABAL ONLINE”に見る,コミュニティによる集客効果

 「コミュニティによる集客効果」の事例として植田氏が挙げたタイトルは,「CABAL ONLINE」である。2006年11月から正式サービスが始まったこのタイトルは,オープンβテストの開始直後に登録者数が爆発的に増えたことが,当時話題になった。ゲームポットはこのCABALを展開させるときに,コミュニティによる集客力を強めるべく以下の4点を重視したという。

1.ムービーを主体にしたプロモーション
 “スタイリッシュアクション”を掲げるCABALは,画面内に大きく映るキャラクターなどから,見た目によるインパクトが強い。そこで,派手な戦闘シーンを中心に構成したムービーを公式サイトで公開した。これを見た人に,一般的なクリックタイプのMMORPGとは違うという印象を抱かせるのが狙いである。

2.情報統制による枯渇感の演出
 ムービーを積極的に露出する一方で,それ以外の情報は極力シャットアウトした。それによって,期待しているプレイヤーの枯渇感を煽り,オープンβテストのタイミングに向けて盛り上げていく。これは一般的なティザーに比較的近い手法といえる。

3.GMブログによる情報発信
 CABALの運営は,韓国ESTsoftが開発したタイトルをライセンス購入して行っている。こういった,他国からライセンス購入して運営を行うケースでは,熱心なプレイヤーが早い段階で海外のファンサイトなどから情報を収集し,日本でいち早く公開してしまうという問題があった。
 ゲームポットはこの問題に対し,メーカー公式サイトとは別に,“GMブログ”を設置して情報を発信することで,ある程度自分達のペースで情報をコントロールできたようだ(先述した“枯渇感を煽る”という意味合いはやや薄れるが)。ちなみにこのブログを担当したGM数名は,現在のCABAL内における人気キャラクターとして定着しているという。

4.コミュニティを利用した会員獲得
 従来のタイトルでは,ゲームの中でコミュニティが形成されるのが一般的であった。しかしCABALでは,ゲームの外であらかじめコミュニティを形成してから,それをゲーム内へと持ち込んだのである。CABALにおけるコミュニティ形成へのアプローチの中では,ここが要だったと植田氏は述べていた。

 コミュニティを利用した会員獲得について詳しく説明すると,これには,クローズドβのテスターを集める際の手法と,期間の二つに仕掛けがある。まず,最初は500名のみを募集し,極めて短期間(3日弱)のテストしか行わなかったのだ。そしてテスト期間が終わると,500名の各参加者は,それぞれ5名の別プレイヤーに対し,次回のテストへの招待を行えるようになる。また,次のテスト(これも3日弱)が終わると,さらにそれぞれ5名ずつを招待できる。紹介者自身も次回のテストに参加できるので,最終的には最大で500×6×6=18000人となる計算だ。
 それともう一つ,上記とは別にSNSの“mixi”内に公認コミュニティを設け,そこからも専用枠としてクローズドβテスターを選出している。

 ここでのポイントは,招待する人とされる人との間で,あらかじめ友達同士などのコミュニティが形成されている,という部分である。多くの人にとって,一人で遊ぶよりは仲間と一緒の方が楽しいわけで,キャラクター作成時の段階からコミュニティが形成されることのメリットはとても大きい。
 実際,これらのコミュニティを用いた集客方法は功を奏しており,CABALのオープンβテストの開始後4日目には,会員登録数が10万人を突破。また,先述のmixi公認コミュニティは,本稿の執筆時点で3500人以上が登録しており,活発なやりとりが続いている。



■政治経済MMORPG“君主”では,
■コミュニティによる“囲い込み戦略”を実施


 続いて植田氏は,プレイヤーをゲームに囲い込むためのアプローチとして,MMORPGの「君主」を題材として取り上げた。君主は,プレイヤーが国民として国家に所属するなど,政治・経済面に焦点を当てたユニークなタイトルである。

 植田氏によると,君主を展開させる際は「ユーザーによる自治」を促し,それによって運営側が手を加えずとも,自発的に発展を続けるコミュニティの形成を目指したという。

 具体的には,ゲーム内に“国家”というコミュニティを発足させ,そこに所属するプレイヤー間で選挙を行う。そして,たった一人の“国守”を選出し,そのプレイヤーは国の経済バランスや景気対策などに,自ら任命した大臣を通じて間接的に携われるようになるのだ。したがって,各国家にそれぞれ個性が生じることになる。
 一般プレイヤーは好みの国家を選んで所属することで,友人同士やギルドといった枠組みを大きく超えた単位で活動する楽しみがある。国家というコミュニティに属すると,たとえるならばRvRにおける一勢力に加担するような,独特な忠誠心が生じるのが面白い。これが,植田氏の語る“囲い込み”に結びつく,というわけだ。

 もう一つ君主で工夫を凝らしたのが,ゲームポットがブログ事業として展開している,「プチコミ」とのデータベース連携である。君主でのプレイ中にほかのキャラクターを右クリックすると,その相手がプチコミのブログを開設している場合,ゲーム内でそれを直接参照できる。これはゲームポット用のIDが,運営するタイトルすべてで共通であるからこそ可能なシステムといえよう(ストーキングなどのネガティブな行動に発展する可能性もあるかもしれないが)。
 例えば,サーバーメンテナンスでゲームを遊べない間は,プチコミのブログでは君主という共通の話題をネタに,プレイヤー同士が活発に交流しているとのこと。ちなみに現在は,君主のプレイヤーの約10%の人がプチコミのブログを開設しているそうだ。

 これらの要素によってプレイヤーの囲い込みに成功し,それが高いアクティブ率に反映されている,と植田氏は語る。確かに,プチコミのブログとの連携面については,君主以外の運営タイトルとの連携にも応用が可能だろう。
 ただ,君主におけるコミュニティ形成はユニークではあるが,現状ではいま一つその魅力がプレイヤー側に伝わりきれていない印象も受ける。この点をクリアすれば,君主というタイトルはさらにステップアップできるのではないだろうか。



■“スカッとゴルフ パンヤ”におけるコミュニティの形成

 最後に植田氏がピックアップしたのは,国内有数の人気タイトルへと成長した「スカッとゴルフ パンヤ」である。現在のパンヤは登録会員数が150万人を超えており,現状の成果には植田氏はかなり満足している様子だ。
 しかし,パンヤの運営ライセンスを韓国Ntreev Softから購入し,日本で展開し始めたばかりの段階では,“ゴルフができる”以上のシステムはほとんど実装されていなかったという。プレイヤー数に関しても,最初の1か月は静かな滑り出しで,そこで「コミュニティの形成」が急務だと判断したという。
 だが,MMORPGタイトルならまだしも,パンヤというタイトル上でコミュニティを形成するには,いくつものハードルを乗り越える必要があったとのこと。主な要因として,植田氏は以下の点を挙げていた。

MMORPGと違って,スポーツゲームではプレイヤー間のコミュニケーションが難しい
カジュアルゲームなので,プレイタイムが30〜60分と短く,コミュニケーションが形成しづらい
チャットシステムが簡素で,アバター要素も薄く,深いコミュニケーションをとりづらい
対戦型のゲームなので,MMORPGにおけるギルドのような協力プレイが行いにくく,コミュニティが形成しづらい



 確かにこれらの問題は,“スポーツゲーム”全般にとって宿命に近いものである。今でこそパンヤというタイトルは,コミュニティ面に関してほぼ万全という印象を受けるものの,それだけに,運営当初のゲーム内容があまりにもシンプルだった,という話には驚かされる人も多いのではなかろうか。
 そこでゲームポットは,これらの問題に対し,運営側からとゲームシステム開発側からの,2方向からのアプローチで改善を図ったという。

1.運営面からのアプローチ
 公式掲示板を設置することで,ゲームプレイ時に生じる質問やトラブルに関して,掲示板上でプレイヤーが自己解決できる流れが生まれたとのこと。掲示板が荒れるなどのデメリット面もあるものの,運営スタッフが少ないという弱点をある程度補ってくれたという。
 また,パンヤでは同人誌的な活動が活発なのに着目して,イラストイベントなども行っている。あるときは,一度のイラストイベントで400名近くもの応募があったそうだ。

2.ゲームシステム開発面からのアプローチ
 まず,ゲーム内のシステムで“友達登録機能”“伝言板”“クラブ機能”を実装。これらの中ではクラブ機能の反響がとくに大きく,実装後はログイン数が目に見えてアップしたとのこと。

 そのほかに大きなところでは,2006年11月に実装した大型アップデート「Season3」において,さらにコミュニティ面を強化。ゴルフ場の中で,あたかもMMORPGのようにキャラクターを動かせる“チャットルーム”を実装している。ゴルフゲームとしては異例の機能だが,植田氏によると,コミュニティ面のボリュームアップとして,2年前から検討していた機能だという。
 Season3の実装には絶大な効果があったそうで,“平均接続数”“最高接続数”“ユニークログイン数”のいずれに関しても,10〜30%もアップしたと植田氏は語る。確かに,上記の機能が一切なかった頃のパンヤの姿を思い浮かべると,ゲームポットの運営努力がいかに大きいか実感できることだろう。

 また,メーカー側が「ネタ」を提供し,それを見たプレイヤー(コミュニティ)側が,自発的に盛り上がるという流れも,意図的に作り出しているという。具体的には,アイドルやお笑いタレントといった,有名人とのタイアップ系である。実際に試してみて意外だったのは,アイドルなどの正統派路線よりも,ミスマッチタレントのほうが反響が強かった,と植田氏は語っている。ブログなどで賛否両論が入り混じって,コミュニティが大きく盛り上がってるからではないかと推測していた。
 そして,このようなメーカー側の提供素材,ゲーム,コミュニティの三者間を結びつけ,ゲームの全体を盛り上げるという戦略を“オンラインゲームバイラル”と呼び,植田氏は今回の講演を締めくくった。



 今回ピックアップされた3タイトルにおける,各事象そのものの多くは,それぞれのタイトルを追い続けている人にとっては,すでにご存じのことだったかもしれない。しかし,コミュニティに対する働きかけとして今回の講演内容を振り返ると,ゲームポットの着眼点の鋭さと,運営努力の大切さをあらためて実感させられたのではないだろうか。
 ゲームポットはこれら3タイトルのほかにも,スクウェア・エニックスから運営移管した「ファンタジーアース ゼロ」や,国内の開発メーカーとタッグを組んだ「モンスターファームオンライン」「オンラインカート ステア」,さらには「トキメキファンタジー ラテール」「Level-R」と,多数の注目タイトルを展開している。同社のコミュニティ戦略を,引き続き見守っていきたい。(川崎政一郎)

  • 関連タイトル:

    CABAL ONLINE

  • 関連タイトル:

    君主online

  • 関連タイトル:

    スカッとゴルフ パンヤ

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