インタビュー
サイバーステップ 佐藤 類社長が語る,「ゲットアンプド」成功の秘訣と今後の展開
全世界で2000万人ものプレイヤーを抱える,唯一の国産オンラインゲームを生み出した佐藤社長は,今,何を考えているのだろうか。
■日本では地道に運営し,着実にプレイヤー数を増やす
4Gamer:
今日(2月10日)は,「ゲットアンプド世界大会2007」が行われ,大盛況のうちに無事幕を閉じたということで,まずは感想をお願いします。
佐藤 類代表取締役社長(以下,佐藤氏):
一言で言うと,凄く嬉しかったですね。
今回,アジアの六つの地域のプレイヤーが集まって,累計2000万人以上いる「ゲットアンプド」プレイヤーの,ナンバー1が決定しました。
トッププレイヤーが国境を越えて集まったということ。そして,こちらが予想していたより遥かに多くのお客さんが会場に来てくださったこと,どちらもWindySoftさんの力があってこそですが,会社を立ち上げたときから作っているタイトルが,会社と共に7年目に入ったこのタイミングで,これだけのイベントを開けたのは,本当に嬉しいです。
4Gamer:
初めての世界大会では,韓国代表が上位を独占という結果でした。
佐藤氏:
韓国には,累計1000万人ものプレイヤーがいるんですね。全プレイヤーの半数が,韓国で遊んでいるという計算になります。それだけプレイヤー層も厚く,また実力者ぞろいなんですよ。
ただ,その中で日本代表のyuu選手が,個人戦でベスト4に入ったというのは,開発元である日本の面目を保ってくれたと思います。ほかの選手達も,個々の対戦ではかなり健闘してくれましたから,正直,悔しい部分もありますけれど,やっぱり嬉しかったですよ。
4Gamer:
やっぱり,プレイヤー層が厚い中で競い合って,実力をもっともっと上げていかないことには,こういった世界大会では不利ですよね。日本のプレイヤー層を厚くするための,今後の計画などはありますか?
佐藤氏:
韓国では,それこそ小学校に入学する前からゲットアンプドで遊んでいるプレイヤーもいるんです。そういう環境を持つ国に勝つのは,生半可なことではありません。ただ,それでも最終的には個人個人のテクニック,スキルが決め手になるわけですから,サイバーステップとしては日本のプレイヤー達が,もっと腕を競い合える場を提供していきたいとは思いますね。同時にプレイヤー数を増やしていけば,まだまだ上を狙えると思っています。
4Gamer:
オンラインやオフラインの大会を積極的に,ということですよね。確かに腕を競い合う場が増えれば,プレイヤーの実力も向上するでしょうね。
では,カジュアルに遊べるゲームが,コンシューマゲームも含めてかなり多いこの日本で,あえてゲットアンプドを選んでもらい,プレイヤーになってもらうためには,何が必要だとお考えですか?
佐藤氏:
実はそのあたり,あまり難しくは考えていないんです。例えば韓国では,ゲットアンプドはオンラインで遊べる対戦格闘ゲームとして,他に類がない存在として受け入れられています。逆に,韓国からいろいろなオンラインゲームが日本に入ってきていますが,その中でゲットアンプドとジャンル的に競合するものはないと考えているんです。
ですから僕は,ほかのゲームを気にしすぎることなく,地道にサービスをしていくことで,プレイヤーに定着してもらい,少しずつでも着実にプレイヤー数が増えていけばいいなと思っているんですよ。
■一時の話題より,多くの人に遊んでもらうことを優先
なるほど。以前,どこかのインタビューで佐藤社長が,ゲットアンプドをいろいろなプラットフォームに展開したいとおっしゃっているのを拝見しました。PCだけだと,日本ではまだまだ厳しい部分があると思うんです。例えば,ニンテンドーDSに移植します,となれば,日本でのプレイヤー数も増えるのではないかと思うのですが,そういった計画はされているのでしょうか?
佐藤氏:
もちろん,コンシューマゲーム機での稼働については,研究開発レベルでは行っています。具体的には,Xbox版は社内では動作しているんです。こういった活動は,今後も続けていきます。ですが,プレイ料金無料でアイテム課金制のオンラインゲームを,パッケージ販売が主流のコンシューマゲームの世界に持って行った場合,収益を上げる方法であるとか,必要なコストが異なってくるんですよ。もちろん,それに対応できる体制を,会社としても用意しなければいけません。
4Gamer:
ビジネスモデルががらっと変わるわけですもんね。
佐藤氏:
ええ。コンシューマのパッケージゲームだって,かなりの数のタイトルが競い合っているわけです。そこに投入するとなれば,最初に相当な販促費も必要でしょう。そういう環境で,サイバーステップがサイバーステップらしさを出しつつ,多くの人に遊んでもらい,収益を上げる……というのは,なかなか難しいことだと思うんですよ。
プラットフォームを増やしたいという希望は持っていますが,それよりもまず,より多くの人に遊んでもらうために,サービス地域を増やしたいんですね。今は六つの地域だけですが,10,20あたりは具体的に目指すことができます。
4Gamer:
日本でのサービスを……というよりは,ワールドワイドでプレイヤー数を増やしたいということなんですね。日本のプレイヤーを増やすということについては,先ほどおっしゃったように,とにかく地道に……と。
佐藤氏:
日本で開発されたタイトルを使って,海外でこれだけ大きな世界大会を開けたのは,ゲットアンプドが初めてだと思うんですよ。こういうことは今後も続けていきたいですし,サービス地域が増えれば,さらに大規模なイベントもできるでしょう。そうやって,ほかのゲームでは絶対に実現できないようなことも,ゲットアンプドでは実現できるということを,日本のゲーマー達にも知ってもらいたいんです。
4Gamer:
その考え方は非常に理解できます。が,海外での高い評判も,日本のゲットアンプドプレイヤーにしか,届きにくいのでは? と思うんです。となると,海外での盛り上がりを知る人も少ないままではないでしょうか。
佐藤氏:
うーん……。ただ,これをやればこれだけのプレイヤー数が増えます,という方法はないと思うんですよね。だから地道にやるしかなくて。でも,例えばゲームの品質に関しては,多くの人に触れてもらうことで,さらに向上させることができます。なんせ,自社で開発していますから。今回のような大会を経て,いろいろな要望が各国から上がってくれば,それを反映して,どんどんゲームの品質を向上させられるんです。
そうすることで,まずはすでにゲットアンプドで遊んでくれている人達に,ベストなサービスをしていきたいんですよ。それと並行して,まだゲットアンプドを知らない人に,知ってもらうための活動はする必要があるでしょうね。そのために,何かしら派手な活動が必要であれば,それも検討しますし。
4Gamer:
例えば音楽の世界でも,日本よりも海外で高い評価を受けている日本人アーティストがいますよね。でも,海外で評価されているということを知っている日本人は,そのアーティストのファンだけだったり。ゲットアンプドは,そういう感じになっているのではないかな? と思うんです。例えば今回のイベントを,実際に生で見たときに,これがストレートに日本のゲーマーに伝わらないとしたら,もったいないと思ったんですよ。
佐藤氏:
それは本当にもったいないことなんですよね。サイバーステップとして,こういうことをメディアやプレイヤーに対して,伝えきれていない部分があると思うんです。ただ単純に話題を集めるためであれば,アメリカやヨーロッパでのサービスを始めたほうが効率はいいと思うんですが,できるだけ多くの人達に遊んでもらうことを優先してきましたから。
例えば,インドネシアで遊ばれている日本のオンラインゲームが,ほかにあります? ゲットアンプドしかないんですよ。インドネシアには日本のほぼ2倍の人口がいるので,マーケットとして非常に魅力的ですし,プレイヤー数も伸びてきています。……ただ,話題になりにくいんですよね。
4Gamer:
花より実をとる戦略であるということですね。でも,アジアだけでなく本当に世界中で遊ばれるようになれば,日本でももっと大きな話題を呼べるかもしれません。
■ゲットアンプドのサービス地域,年内に二桁達成か
そういえば,大会終了後の夕食会で,WindySoftのキム副会長が「ゲットアンプドはアジアを越えて,世界に行きます」とスピーチしていましたが,サイバーステップとしては具体的にどのあたりの地域を考えているのですか?
佐藤氏:
目標は200地域,10億人のプレイヤーを獲得することで,各国の運営会社にそういうお話をしてきています。日米欧だけだとか,北半球だけで“世界で遊ばれています!”なんて言うつもりはなく,南半球も込みで,それこそ陸地のあるところすべてで展開するぐらいの気持ちを持っています。そのために,まずは二桁まで地域を増やしたいです。
4Gamer:
それはどのあたりまで具体化しているのですか?
佐藤氏:
まだ発表はできませんが,かなり具体的になっていますよ。オンラインゲームが流行っている地域が,サービスインしやすい地域と考えると,15〜20ぐらい。その中のいくつかの地域で,非常に具体的な行動をしていますので,年内にはある程度まとめられるのではないかなと。
4Gamer:
では,発表を楽しみにしていますね。
そういえば,中国でも大きな動きがあったとか。
佐藤氏:
中国では,上海盛大(Shanda)でサービスしていて,すでに韓国の次にゲットアンプドのプレイヤーが多い地域になっています。さらに2月8日に,上海盛大が運営する最大手ゲームポータルサイト「Poptang」(ポップタン)のアカウントで,ゲットアンプドを遊べるようになったんです。ゲットアンプドの全世界でのプレイヤー数は,2000万人を超えたばかりですが,Poptangには1億人以上のユーザーがいますので,3000万人,4000万人,5000万人,1億人という数値が具体的に見えてきました。
4Gamer:
一つのゲームポータルサイトで,日本の人口並のユーザーがいるというのは,さすが中国ですよね。Poptangへの接続は,すんなりまとまったのですか?
佐藤氏:
営業と開発が半年は苦労してきましたね。それこそ,何度も出張した担当者の帰国の日時を遅らせることになりましたし。よくやってくれたと思ってます。
4Gamer:
ただ,そんな世界展開の準備を進めている間に,ゲーム自体も歴史が積み重なっていて,いわば古くなっていくというのも否めない事実だと思うんです。この点は,どうお考えですか?
佐藤氏:
実は,少なくとも1〜3年前のゲットアンプドと,現在のゲットアンプドは,かなり違うものになっているんです。新しいスタイル(職業)を追加してアクション性を強化したり,各地のプレイヤーからの要望に応える形でマップや機能を追加したりと,常に進化させています。これは,企画から開発まで,自社で担当しているからこそ,できることでしょうね。バランスをとるのが,一番難しい部分ではありますが。
4Gamer:
なるほど,ゲーム自体に,常に手が加えられているんですね。
佐藤氏:
ええ。ゲーム性の部分は一番大切ですよね。根幹の部分ですから。これも毎年毎年クォリティを向上させていくのが,受け入れられるために最重要な部分でしょう。
4Gamer:
例えば,どのような変化をしてきているのですか?
佐藤氏:
そうですね。以前,マップは静的なものばかりだったんですが,動的なものも加えました。飛行機の上で対戦するステージでは,片方の羽根が時間が経つごとに立ってくるようになったり,マップの一部分を破壊できたり,あるいはマップの一部を操作すると砲撃できたりなどですね。開発の創造力次第なんですが,こういう部分で手を加えています。
これ以外にも,横スクロール型で3人のプレイヤーが一緒に進んで行けるようなモードも追加しました。ほかにもいろいろとあるのですが,こうやって変えていかないと,古くなる一方ですから。
4Gamer:
リリース後にいろいろな要素を追加したり,改良できるというのは,オンラインゲームならではですね。
佐藤氏:
ただ,絶対にやってはいけないことは,プレイヤーが所有しているものに手を加えることですね。レベルを下げたり,なくしたり,改変したりという……。以前,当社でもやってしまったことがあるのですが,一気にプレイヤーからの信頼を失ってしまうんです。ですから,新しいアイテムなどは,追加したバージョンのまま,ずっと遊んでもらえるようなレベルに仕上げてから,リリースする必要があります。これも簡単なことではないのですが。
■サービス地域ごとの,徹底的なローカライズが成功の鍵
ところで先日,WindySoftのキム副会長にインタビューする機会があったのですが,韓国でゲットアンプドが成功した理由として「サイバーステップさんが,こちらの要望に応えてくれたから」と語っていたんです。でも,サービス地域が増えると,同じように応えていくのはたいへんではないかと思うのですが……。
佐藤氏:
基本的にソースコードはワンソースなんですが,地域ごとに適したバリエーションを用意できるようなっています。例えば韓国には,アイテムをプレゼントする機能や,コミュニケーションをとりやすくするための機能の追加,ギルド機能の強化など,最新のバージョン,あるいは個性的なバージョンを提供しています。
一方,中国では,オンラインゲーム内に結婚機能を求める声が多いので,それを用意しています。
4Gamer:
ゲットアンプドで結婚機能ですか?
佐藤氏:
ええ。AというキャラクターとBというキャラクターで結婚すると,お互いにスコアや情報を共有できるという。
ほかにも,タイには「水かけ祭り」というお祭りがあるので,これを模したステージのルールとマップを用意しました。ただし,こういうものはほかの地域の人が遊んでも面白いと思うので,タイ以外にも提供しています。
4Gamer:
そうやって,各地のニーズに細かく対応しているんですね。
佐藤氏:
やっぱりゲームを各地で成功させるためには,徹底したローカライズが必要なんですよ。一般的なローカライズは,言語を現地語に置き換えるだけだったりするんですが,どんな文化を持っていて,どんなゲーム性が好きなのか,その地域にはどんなイベントやお祭りがあるのか,どういうデザインが好きなのか,そういうことも踏まえた上で,ローカライズをするというのが一つの理想ですね。
ただ,そのためには相当の人員が必要で,必ずしもすべての地域の人達に満足してもらえるようなことができているかというと……。でも,それを目指しています。
4Gamer:
提供する地域が増えると,ローカライズ作業も単純に増えるわけですよね。となると,それに対応できるだけの人員を抱える必要もあり,組織も大きくする必要がある。すると,そのためのコストも増大するわけですが,どうバランスをとっていくおつもりですか?
佐藤氏:
先に収益があって,それに応じた体制にしていくのが,経営的には理想なんですよね。無駄が少ないですし。でも,これはあり得ないと思うんですよ。収益を上げるためには,先に体制を拡大する必要があるわけです。結果的に収益が上がらなかったとしたら,体制を拡大した分がそのままリスクになります。これはもう仕方のないことです。
ただ,開発者に作らせているもの自体が間違っていたり,収益性が著しく低いものを続けたり……というものは,できるだけやめようと。本当に必要とされているのか,プレイヤーや運営会社に喜ばれるのか,これを考えながらやっていくしかないですから。
4Gamer:
なるほど。日本で最初にサービスを始めてから,紆余曲折の6年間を送りながらも,水面下ではこのようなことが行われていたんですね。
佐藤氏:
日本でのサービスインは,今回が3度目ですからねぇ。しかも現在,有料化していないのは日本だけですし(笑)。でも,2月26日には正式サービスを始められるんですよ。
実は,ゲットアンプドの熱心なプレイヤーから,一番多く届く要望は,正式サービスの開始なんです。例えば,「韓国版に実装されている,あの課金アイテムを使いたいから,早く正式サービスを始めて!」という。それに無料のままだと,欲しいアイテムを手に入れるために,2〜30時間プレイしないといけなかったりで。
4Gamer:
時間の代わりに数百円なりを使うから,買わせてくださいという声は確かに出てきますよね。
課金アイテムは当初,どれぐらいの種類を予定していますか?
佐藤氏:
まさにそこが,正式サービス開始のポイントになる部分ですから,今,運営チームに考えさせています。多すぎず,少なすぎず,バランスを崩さず……というのは悩ましいところですね。
4Gamer:
三度目の正直になるといいですね。
佐藤氏:
ええ。プレイヤーさんの目も肥えてますからねぇ……。ただ,アイテムの販売だけでなく,体制や集客などについても,期待に応えられるサービスにしていかないといけませんよね。
4Gamer:
それこそ韓国では,今回のイベントにあれだけ多くのお客さんが来たわけですし。
佐藤氏:
目標は3万人だったんですけど,誰も来てくれなかったらどうしようと。でも,朝並んでくれた方達を見てみると,ゲットアンプドで遊んでくれている人達が3〜5人のグループで来てくれて……嬉しかったですねぇ。日本の運営陣は,WindySoftさんがこれまでに行ってきたことを参考にして,学んでいく必要があるでしょうね。
■三つのカジュアルアクションゲームを準備中
このあたりで「ロボ聖紀C21」についても聞かせてください。2月8日には,NHN Japanのゲームサイト「ハンゲーム」でのサービスもスタートしましたね。
佐藤氏:
おかげさまでプレイヤー数も一気に増えました。これまでは上級者のプレイヤーが大多数で,彼らに向けてGMが難度の高いサービスやイベントを提供するという循環になっていたんですよ。でも,新規のプレイヤーが増えてきたので,そういった人達に向けた面白おかしいイベントなどもやっていくつもりです。
アップデート内容や,販売物のラインナップも見直す必要がありますし,初心者の人は初心者なりに楽しめるようにしていきたいですね。もちろん,上級者にとっても,やりがいのあるゲームにしたいです。
4Gamer:
何か隠し球みたいなものはあるんですか?
佐藤氏:
まだお話できないんですけど,アニメやマンガのロボットものが好きだった人に,「おっ!」と喜んでもらえるようなネタを,3月中には発表できると思うので,楽しみにしていてください。それ以外にも,定期的なアップデートは続けていきますし。
4Gamer:
現在はゲットアンプドとロボ聖紀C21の2本を開発/運営されていますが,3タイトルめの予定などがあれば教えてください。
佐藤氏:
4本目までは開発に着手していまし,5本目も今期中には着手したいと思っています。当社は基本的に開発会社ですからね。いいタイトルを増やし,展開する地域も増やし,動作プラットフォームも増やし……というのが理想なんですよ。先ほどもお話ししたとおり,プラットフォームはなかなか実現できていないのですが。ただ,タイトルを増やすことで,また違う可能性も広がっていきますから。
4Gamer:
具体的に,どのようなタイトルを準備しているのですか?
佐藤氏:
サイバーステップは,アクションゲームを専門にしているわけではないんですが,世の中にないようなゲームで,なおかつ僕らが創りたいと思うゲームは,アクション寄りであることが多いんですよね。
4Gamer:
となると,やはりカジュアルなアクションですか?
佐藤氏:
ええ。一番日本的なゲーム性を表現しやすく,技術的な難度も高いジャンルだと思いますから。プレイヤーにとって,オンラインゲームとしてはこれまでに存在しないようなジャンルを狙っていくと,こうなるんですよね。すでにあるようなゲームを,わざわざ開発することもないじゃないですか。
4Gamer:
ちなみに,新タイトルのアイデアは,どなたが考えているんですか?
佐藤氏:
大規模なタイトルに関しては,創業メンバーが率先して考えて,実現まで持って行ってくれています。もちろん,周りの開発者の力があってこそですが。その中で僕は,営業したり,採用活動をしたり,人と話したりすることが仕事になっていますね(笑)。
4Gamer:
佐藤社長として,作ってみたいゲームはありますか?
佐藤氏:
もう少し,幅広い年齢層や,女性に楽しんでもらえるようなタイトルを開発したいとは思っているんですけどねぇ……。具体的にはまだまだです。
4Gamer:
つまり,5タイトル目まではそういう感じではないんですね。
では最後に,佐藤社長がサイバーステップという会社をどういう方向にかじ取りしていこうと考えているのか,教えてください。
佐藤氏:
純粋に楽しんでもらえる日本的なものを,思想信条や地域など関係なく,世界中の人達にいつでも楽しんでもらえるものを提供できるような,楽しくて個性的な会社にしたいんです。そのためには,ある程度の体力や収益も必要になりますから,売り上げはできるだけ多く立てたいですね。でも,売り上げを立てることを目的に何かを作るのではなく,作ったものを多くの人に楽しんでもらうために,売り上げを立てていくような……。
4Gamer:
世界中の人に楽しんでもらいたい,というのが第一義なんですね。
では少し角度を変えてみます。サイバーステップの社員の方々にとっては,どのような会社にしていきたいと考えていますか?
佐藤氏:
そこが難しいところなんですよね。社員は60人を超えたのですが,人間の考え方って本当に十人十色で,個々の社員が何を考えているのかを全部把握することはできないんですが……。やっぱりできるだけ,ほかの会社ではできないようなことを実現できて,それでいて所得や勤怠で苦しまなくて済むような,できるだけいい暮らしができるような形にはしたいと思っています。
4Gamer:
“いい暮らし”とは?
佐藤氏:
やっぱり新しいことを知る機会がないと,開発にしろ営業にしろ管理にしろ,行き詰まってしまうんですよ。いろいろな情報が溢れている世の中ですが,実際に体験したことに勝るものはないですから,いろいろと体験して,それを仕事や生活に活かしてほしい。体験したいことはあるのに,お金も時間も足りないとか,そういう状況は良くないな,と。バブリーな会社にするつもりはないですけどね。
4Gamer:
その第一歩が,佐藤社長が毎日何かしら買っているというマンガを,学級文庫のように会社に置くところから始まるわけですね。
佐藤氏:
ええ。マンガは日本の最たる文化ですからね。最先端の情報や風俗がつまっていますから。
4Gamer:
佐藤社長オススメのマンガを読んで,刺激を受けた開発者が,これまで以上に良い仕事をするのを楽しみにしています。今日はありがとうございました。
佐藤氏:
こちらこそ,ありがとうございました。
前述のとおり,インタビューを行ったのは,ゲットアンプド世界大会2007が閉幕した夜のこと。さすがに疲れた表情を見せていた佐藤社長だが,こちらの質問に対してよどみなく答えてくれた。とにかく,世界中の一人でも多くの人にゲットアンプドで楽しんでもらいたいという姿勢が,非常に印象的だった。
佐藤社長の言葉どおり,200地域で10億人のプレイヤーを獲得する日がやってくるのか。そのほかのタイトルの動向も含め,同社の動きは,俄然にぎやかになりそうだ。
(2007年2月10日収録)
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