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オートデスク,ゲームエンジンStingrayの入門イベント「Road to Stingrayイベント第1弾」を開催
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印刷2016/03/15 11:55

イベント

オートデスク,ゲームエンジンStingrayの入門イベント「Road to Stingrayイベント第1弾」を開催

画像集 No.001のサムネイル画像 / オートデスク,ゲームエンジンStingrayの入門イベント「Road to Stingrayイベント第1弾」を開催
 2016年3月11日,Autodeskの日本法人となるオートデスクは,都内・秋葉原UDXシアターにて「Road to Stingrayイベント第1弾」を開催した。これは同社の日本地域での情報サイト「AREA JAPAN」で連載されているゲームエンジン「Stingray」関連記事)を使ったゲーム制作講座「Road to Stingray」(関連リンク)をもとに,Stingray活用のノウハウなどを紹介するイベントだ。

画像集 No.008のサムネイル画像 / オートデスク,ゲームエンジンStingrayの入門イベント「Road to Stingrayイベント第1弾」を開催
 Stingrayは,昨年発表され,Autodeskによるゲームエンジンとして大いに話題を呼んだが,実例を欠いているためか,いまひとつ浸透していない感もある。
 Road to Stingrayでは,実際にStingrayを使ったゲーム作りが解説されており,プロジェクトファイル一式もGithubで公開されている。このイベントでは,その開発の模様や開発で得た知見などが公開された。

 冒頭,オートデスク マーケティング担当の一之瀬真一郎氏からStingrayの概要が紹介されたあと,AREA JAPANでの連載を担当しているGUNCY'Sの代表取締役社長である野澤徹也氏が連載企画で制作中のゲームタイトルを公開した。

画像集 No.004のサムネイル画像 / オートデスク,ゲームエンジンStingrayの入門イベント「Road to Stingrayイベント第1弾」を開催
一之瀬真一郎氏
画像集 No.005のサムネイル画像 / オートデスク,ゲームエンジンStingrayの入門イベント「Road to Stingrayイベント第1弾」を開催
野澤徹也氏

Stingrayの特徴
画像集 No.002のサムネイル画像 / オートデスク,ゲームエンジンStingrayの入門イベント「Road to Stingrayイベント第1弾」を開催
Stingrayのライセンス料金は月5000円。なお,Maya LTのライセンス料は月4000円だがStingrayが無料で使える。Stingray「解せぬ……」
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 「Meowedfull Days」というロゴが目立つが,正式タイトルは「ミャ〜ドフルデイズ〜ぱぴこのネコすぎる日々〜」である。「Meow」というのは英語でネコの鳴き声だそうで,英語圏ではネコは「みゃ〜」と鳴くらしい(日本でもあまり変わらないが)。

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 このゲームは3Dで制作されているが,基本的に一直線のランニングゲームとなる模様だ。走っていくぱぴ子をたまにジャンプさせて障害物を乗り越えるといったタイプのゲームとなる。
 ターゲットはF1層,つまり20代から30代の女性とされている。最近は猫ブームでF1層は可愛いモノ好きで,ソーシャルメディアでの支配層とも言われているわけではあるが,ビジュアル的にはM1層寄りの「可愛さ」であり,SteamでWindows専用ゲームとして配信する時点でF1層はなさそうな気がしないでもない。

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 それはともかく,このゲームは地理的に離れた場所にいる人々が,共同して制作しているという。そこで,いったいどうやって遠隔地での共同作業を行っているのかが紹介された。
 それによると,プログラムコードのバージョン管理にはGithub,アセット管理には「Perforce」を使い,全体的な進捗管理にはAutodeskのプロジェクト管理ツール「SHOTGUN」を使うという多段構成で運用したという。データ自体はAmazon Web Serviceのサーバー上に置き,GitHubとPerforce間の同期は,Perforceのサポートツールである「Git Fusion」で行っているという。
 ちなみに,Perforceはグラフィックスデータなどの重いデータを効率よく管理できることからアセット系のバージョン管理でよく使われるツールだ。20人,20ワークスペースまでなら無料で使えるとのこので,小規模プロジェクトでの活用を勧めていた。

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 続いて,フリーランス企画・開発者の谷口直嗣氏による,Stingrayでゲームロジックを記述するビジュアル言語「Flow」とスクリプト言語「LUA」の使い分けや活用についての解説が行われた。
 Stingrayには,コードを使わずにブロックを線でつなぐだけでゲームができるFlowと,ゲーム系では定番のLUAという2種類のロジック系がある。

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 Stingrayではゲーム内で使われるオブジェクトをユニットと呼ぶ。3Dモデルデータにモーションやコードなどが組み込まれたものだ。
 3Dデザイナーが作成したデータをユニット化し,プログラマがユニットの中身を作って,テストを繰り返す,これがプログラマ側から見た基本的な作業フローとなっている。

 ゲームデザイナー側から見た場合,作業内容が違うのでフローも変わってくる。まず,本作ではレベル(ステージ)情報を外部に持ち出している。マップの構成は「Google Spreadsheet」上で作られているという。

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 レベルエディタを備えたツールを使いながら,レベル情報を外部で作るのはいかがなものかという気もしないではないのだが,外部化することで,マップデザインを分業化できるようになり,複数人で開発を行うには都合がいい,ということらしい。CSVファイルで書き出されたユニットの位置情報をもとに,実行時にパーツを配置していく感じの実装になる。

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 まずはFlowの使い方から見ていこう。Flowには,「Level Flow」と「Unit Flow」の2つの要素がある。Level Flowで,ユニットの配置情報や初期化などを扱い,ユニットそれぞれの動作は,Unit Flowで記述という流れだ。ちなみに,Level Flowはメイン画面のタブですぐに確認できるが,Unit Flowはユニットごとに選択して開く必要がある。
 筆者は以前に,Stingrayのサンプルプロジェクトを見て,どこにもイベントハンドラなどがないので「どうやって動いているんだろう?」と不思議に思っていたのだが,全然別の場所にあるというオチだった。

 さて,Flowは構成要素の配置が自由であるため,処理を読むときには分かりにくくなる傾向がある。そこで,だいたいの場所でなにを置くかを決めておくのがよいという。このプロジェクトでは,全体の左半分にキー入力処理が並び,右側にメインルーチンの各種動作が並んでいく構成を採用しているとのこと。どこにどんな処理があるかが決まっていれば,フリーフォーマットのビジュアルスクリプトも読みやすくなりそうだ。

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 先ほども出てきていたように,このゲームではレベル情報を外部化している。それを行っているのはLUAによる次のようなコードだ。

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 読み込む側のCSVファイルは,次のような構造で,オブジェクトファイルのパス名と初期位置,初期角度が与えられる。そのファイルを処理することで,目的のマップが再生されることになる。

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 このようなLUAスクリプトは,Flowとは別に管理されるのだが,LUAスクリプトを呼び出すFlowのカスタムノードを作ってやれば,Flow上で全体的な処理をビジュアルに管理もできるというわけだ。

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 Stingrayでの開発を補助するものとしては,「Performance Hud」というツールが紹介された。これは画面に重ねて,どの部分でどれくらい時間がかかっているかをビジュアルで示してくれるツールである。

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 また,LUA使用時にはブレイクポイントを設定したり,ステップ実行が可能なことが大きな優位点として示された。現状のFlowではそういった処理ができないので,LUAでロジックを組むほうが効率的な開発ができるとのこと。
 結論的にいうと「FlowでプロトタイピングしてLUAで仕上げろ」ということにはなるようだ。

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 Flowでは,デバッグ補助機能として,画面に変数値などをオーバーレイで表示できる「Debug Screen」も紹介された。また,あちこちで使う処理はコピペで使いまわすのではなく,Flow Subroutineにして活用することが推奨されていた。

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 さて,ここまで説明したツールや機能を使って,実際にどんなことができるのかの例として,FlowとLUAを使った,Stingrayでの「リアルタイムリグ」の試みが,フリーランスの上原達也氏から紹介された。最近ではキャラクターに設定する要素として,いわゆる「ボーン」以外に,補助的な骨を利用することが多い。補助の骨を使って体の動きを補正したり,衣服などの動きを表すために使うのである。
 だが,そうした要素を多用すると,動きは改善されるがアニメーションデータは重くなっていく。そこで,実行時に補助骨の動作を動的に指定できないかというのが,リアルタイムリグの基本的な考え方となる。

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 今回のセミナーでは,キャラクターにおける肘関節の位置を,より正確に処理するための補助骨などについての実装が紹介された。ちなみに,写真ではよく分からないかもしれないが,サンプルモデルとして使われていたのは,G-Tuneの公式キャラクターのGちゃんだ。今回のイベントで使用した機材をマウスコンピューターが提供していたこともあって,公式キャラクターのモデルをFBXに変換して使っているそうだ。

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 写真では分かりにくいのだが,デモを見ると,肘の頂点部分が腕の曲げに従って少し移動することが確認できた。こういった動きは腕の角度に依存して頂点の位置を決められるので,リアルタイムリグによる処理に向いているようだ。

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 リアルタイムリグの説明では,最初に作られたMayaでの処理とそれをFlowとLUAで実装したものが紹介されていた。Mayaでは自動的に角度を補間してくれる関数「AngleBetween」が用意されているので比較的簡単に記述できたようだ。ただ,三角関数などの細かいものが用意されていないので,逆にそれがなかったらお手上げだったかもしれないとのこと。

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 Flowでは配列が使えないので,個別の頂点に対しての処理を展開して記述し,三角関数で座標値を求めている。細かい処理もできなくはないが,煩雑になるといったところらしい。一方,LUAでは配列を使って比較的あっさりと処理を記述している。

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 この処理を実際のゲームに組み込む例も紹介された。プレイヤーキャラクターとなる「ぱぴ子」のポニーテール部分をリアルタイムで動かそうという試みだ。元々のアニメーションデータは,ポニーテールの根元の部分しかなく,そのまま動かすとポニーテール状の物体が動きとともに角度を変えるようなアニメーションが行われるようになっている。

元のアニメーション
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 で,実際に適用した結果だが……,どうやら制作時のマシンスペックとデモ時のマシンスペックがかなり違っていたようで,髪の毛は触手のように暴れまわっていた。その後のスライドでは,性能に依存するので気をつけようといった記述もあり,フレーム時間を計って処理していたようではあるのだが,懸念された事態に陥ってしまったようだ。

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 今回の処理を簡単にまとめると,「Mayaで記述された処理をFlowとLUAに移植する」作業といえるわけだが,それぞれのツールで使えるものが違うので,個別に作っていくのは効率が悪い。なんらかのコンバータを用意するか,共通の処理範囲で記述したほうがいいだろうというのが課題として挙げられていた。ただ,共通範囲では実装可能な処理がかなり限られてくるので,Stingray側の機能拡張にも期待したいところだ。

FlowとLUAで同じ処理を記述している
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 同様な処理をNVIDIAの「PhisX」で行うデモも示された。PhysXは,Stingrayが標準でサポートしている物理演算ミドルウェアであり,もちろんNVIDIA GPU以外でも使用できる。
 導入には,Mayaで出力されるPhysX用ファイルとユニット名の拡張子を除いた部分を合わせておくだけで,自動的に取り込んでくれるとのこと。
 一方で,PhysXを使うときの注意点として,キャラクターアニメーション用の状態遷移と,物理処理用の状態遷移を分けておかないとうまく動作しないことや,大きな動きでは暴れがちになることなどが紹介された。

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 次に示されたのは,これもStingrayの標準ミドルウェアである「HumanIK」を利用する方法だ。HumanIKは,用意したキャラクター用のアニメーションデータを状況に合わせて変更し,平地以外における足の接地や,障害物などとの物理的な干渉を解決してくれる機能を持っている。
 最初の例としてあげられたのは,特定の方向を見るというLookAt処理だ。デモでは,駆け回るぱぴ子ちゃんが常にカメラのほうを向く様子が示された。これは顔だけを向けているのではなく,上半身ごと無理なく回転して処理される。

 続いて,体の一部を引っ張られたり,逆にものを避けるような処理となるReachの適用例が示された。披露されたのは一定のオブジェクトを避ける処理だが,のけぞったり傾いたりというアニメーションを,それ用のデータを用意することなく実現できており,多彩な動きを実装できることが分かる。

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V-Ray用のモデル。フレネル反射成分が大きめで,輪郭部分の光沢が強い
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 最後に講演したフリーランスのシステムアドバイザーであるハヤシヒカル氏は,3ds Maxの「V-Ray」を想定した素材をStingrayに持ってくるときの注意点などを紹介した。物理ベースシェーダが基本のStingrayで,別系統のシェーダをあえて使うといった内容だが,すでに3ds Maxのデータを多く持っている人には有効なノウハウだろう。
 その手順だが,ノーマルマップについては,Stingrayのバンプマップに差し替える必要があるものの,それ以外は簡単な操作で,とくに問題なく移行できるようだ。

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なにもしなくても光学系のフィルタが綺麗にかかるところがお気に入りとのこと
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3ds MaxのデータをStingrayに読み込んだところ
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 イベントのタイトルに第1回とあることから想像できるとおり,今後もAutodeskでは,同様のイベントを開催していく予定とのこと。連載で作成しているゲームは,2016年6月に公開予定ということで,今後も短期間のうちに,多くの内容がアップデートされそうだ。
 実際のプロジェクトが公開されいているので,Stingrayに興味がある人は,体験版をダウンロードして試してみるといいだろう。

オートデスク AREA JAPAN「Road to Stingray」


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