インタビュー
ノンターゲティング式のアクションMMORPG「Red Blood」の日本サービス運営はセガに。ゲーム概要と獲得の経緯を両社スタッフに聞いてみた
「Red Blood」は2006年に発表されて以降,クローズドβテストが2011年に行われてはいるものの,まだ韓国でもサービスインには至っていない(関連記事)。
原作は1990年代に出版され,韓国で知らない人はいないとまで言われる同名の人気SF漫画で,核戦争後に地球を離れた人類が,宇宙戦争などを経て,再び崩壊した地球への帰還を遂げ,文明を再興するまでの物語が描かれる。ゲームでは地球へと帰還した4種族が,激しく対立しているという設定となる。
セガは,2012年10月にMORPG「RUSTY HEARTS」を発表した際,「今後セガは海外のPCオンラインゲームの国内サービスを推進する」と明らかにしていた。本作は,その流れで運営されることになる作品の一つとなる。
では,同社は「Red Blood」にどんな魅力を感じ,本作のパブリッシングを決めたのか。今回,セガの第三運営企画チームマネージャー 吉田一馬氏と,来日中だった開発元のGorilla Banana Studio CEOのKim Chanjoon氏,CTO/ProducerのMu-Sik Jung氏,Senior Project ManagerのSung-Hee Kang氏から,本作の概要を含めて話を聞いてきた。
Gorilla Banana Studio CEO Chanjoon Kim氏 |
Gorilla Banana Studio CTO/Producer Mu-Sik Jung氏 |
Gorilla Banana Studio Senior Project Manager Sung-Hee Kang氏 |
セガ ネットワーク運営部 第三運営企画チームマネージャー 吉田一馬氏 |
家門内のキャラでブラウザゲームのようなミッション遂行も可能。「Red Blood」の特徴とは
4Gamer:
本日は,よろしくお願いします。まずは,本作がどんな作品なのかを教えてください。
「Red Blood」は,正統派MMORPGでありながら,日本のコンシューマゲームのようなアクション性と,オンラインゲームでしか味わえないコミュニケーション要素を兼備した作品になります。
Mu-Sik Jung氏(以下,Jung氏):
具体的にお話すると,「Red Blood」には四つの特徴があるんですよ。
一つめは,韓国,つまり自分達が得意とする“コミュニティのシステム化”と,日本のコンシューマゲームのような,ノンターゲティング形式で奥深いアクション/コンテンツに注力しているところです。
二つめは,各々のボリューム自体はさほど大きくないのですが,数多くのコンテンツによって楽しさが提供できることです。例を挙げると,本作には家門システムというものがあり,その中のコンテンツの一つとして,依頼所クエストという自分の家門に迎え入れた傭兵(プレイアブルキャラクター)に対して,シミュレーションゲームさながらの指示を与えて育成できるというものがあります。
そして三つめは,プレイアブルキャラクターに日本の格闘ゲームのような個性を持たせていること,四つめは,ペット同士の合成で新たなペットが生まれる「ペットシステム」が挙げられます。
4Gamer:
日本のゲームをかなり意識した内容になっているんですね。家門システムと言うと,他社の作品にも同名のシステムがありますが,それとは違ったものなんですか。
Sung-Hee Kang氏(以下,Kang氏):
違いますね。「Red Blood」はアクション性の高い作品ですから,長時間狩りをすると,疲れてしまうというプレイヤーも当然いると思います。そこを解消するコンテンツの一つが本作の家門システムになります。
依頼所クエストについて簡単に説明すると,家門のキャラクターをミッションに派遣すると,自動的に報酬を持ち帰ってくるという,ブラウザゲームの探索のようなコンテンツです。ゲームプレイ中に,残った家門のキャラクターを派遣に出すことはもちろん,指示さえ出しておけば,プレイヤーがログインしていなくてもミッションを行ってくれます。
4Gamer:
なんだか,MMORPG+ブラウザゲームといった感じですね。
あくまで要素の一つなので,そこまで言ってしまうと語弊があるかもしれません(笑)。ですが,認識としてはそれに近い感じですね。このシミュレーション的要素によって家門全体が成長していき,強い家門になればなるほど,最初から強いキャラクターが作成できるようになります。
Jung氏:
家門のミッションの成否には,キャラクターの装備なども影響します。また,育てたキャラクターはほかのプレイヤーと取引(売買)したり,貸し与えたりすることもできます。
4Gamer:
キャラクターの売買が可能なんですか。
Jung氏:
はい。ですが,キャラクターを売ってしまうと,当然ですがそのキャラクターは自分の家門からいなくなるので,それが嫌な人は有料レンタルで貸すこともできます。
実は「Red Blood」におけるプレイヤーの究極の目的として,“強い家門を育てる”という目標を設定しています。家門が強くなれば,強い傭兵が作成できるようになるので,名の通った家門のキャラクター(傭兵)は誰もが欲しがりますよね。
4Gamer:
プレイヤーの間で,強い家門の名前がブランド化しそうです。
Jung氏:
ええ。そういった評判などで,プレイヤー間のコミュニケーションが活発になると考えています。
4Gamer:
自分の家門――作成できるキャラクター数の上限はどれくらいになるのでしょうか。
Kim氏:
最初は1名からのスタートとなりますが,プレイを進めることで,1つ,2つとキャラクタースロットが開放されていきます。また,キャラクタースロット拡張用の課金アイテムを導入することも検討しています。家門には家門専用スキルやバフなどもあり,家門の全キャラクターがその恩恵を受けられます。
一般的なMMORPGでは,レベルキャップまで上げきってしまったキャラクターはもう触らないというプレイヤーもいるだろうと思います。しかし,そういったキャラクターも,ミッションに派遣することで活躍させられるわけです。
「狩り」というより「無双」系。「Red Blood」は豪快で爽快なノンターゲティングアクション
4Gamer:
「Red Blood」は,2006年に開発がスタートしていますが,当時は珍しかったノンターゲティングタイプのMMORPGも,これまでにいくつかの作品が登場したことで,それだけでは注目を集められない状況になっていると思います。
おっしゃるとおりです。しかし,それらと「Red Blood」はちょっと路線が違うのかなと考えています。
そもそもノンターゲティングであるかどうか,というのは意味のない議論になると思うんです。究極的に求めていることは,プレイヤーへ楽しさを提供することですから。
4Gamer:
たしかに,あくまでシステムの話で,ゲームの面白さそのものとはまた別の話ですね。では,「Red Blood」は,どういった楽しさをプレイヤーに提供してくれるのでしょうか。
Jung氏:
ノンターゲティングのシステムを極めていくと,狙いすました攻撃や的確な防御を駆使するといった,奥深いアクション性を目指すことになると思います。ただ我々としては,MMORPGでそこまでの操作感,アクションを目指すことは,プレイヤーにとってのストレスになってしまうと考えています。
4Gamer:
長時間プレイが多いMMORPGでは,疲労が大きくなるかもしれません。
Jung氏:
ええ,コンシューマゲームは,1プレイあたりの時間やライフサイクル自体が短めですから,そういった凝縮された奥深さを求められるのは当然の流れです。
一方,「Red Blood」のノンターゲティングバトルの楽しさは,モンスターのまとめ狩りができる点を重視しています。多数のモンスターをまとめてなぎ倒すことで,豪快で気持ちのいいアクションを提供します。操作に関しても決して難しくはありません。いわゆる「無双」系のゲームに近いのかな。
4Gamer:
なるほど。無双系の爽快感を重視したゲームになるわけですか。
Jung氏:
もちろん,なにもかもをまとめて倒すわけではなくて,ボス戦ではしっかりと敵のアクションを見極めて攻撃を避けたり,攻撃のタイミングを計ったりということが必要になりますが。
4Gamer:
無双系のような爽快感と,ボス戦での緻密なアクションが楽しめると。では,ゲームのメイン部分は,どのように展開していくのでしょうか。
Kang氏:
「Red Blood」はアクションMMORPGですが,正統派MMORPGとしての要素もほとんど入っています。キャラクターの成長はもちろん,生産,NPCからのクエストや,ストーリーを追うなかでのボス戦など,プレイしながら自然にプレイヤー自身が成長できる流れになっています。
エンドコンテンツの一つとして,PvPコンテンツを目指していただけたらと考えています。一口にPvPといっても,いろいろなモード,仕掛けが用意してありまして,軽いPvPから始まって,最終的にはコアなPvPコンテンツにたどり着くということを想定しています。
セガはなぜRed Bloodを獲得したのか。しっかりとした“カルチャライズ”で日本に合ったサービスを実現
4Gamer:
ゲームの概要をお聞きしたところで,なぜセガで「Red Blood」をサービスしようと考えたのか,その経緯についても教えてください。
以前,韓国のゲームショウ「G-Star」で見たのが最初になります。もともと弊社では,海外のオンラインゲームをパブリッシングしていこうという計画がありまして(関連記事),さまざまな出展作品をテストプレイしていました。そこで,たまたま「Red Blood」をプレイする機会があったんです。
その際,本作品が3Dにも関わらず,思い通りの操作で自由に動けるアクションゲームであり,なおかつ非常に爽快感もあったことに驚きました。
4Gamer:
その驚きが最初のキッカケだったわけですね。
吉田氏:
ええ。このゲームをやりたい,と思ってしまう魅力があったんです。社内におけるテストでの評判もダントツによくて「これならいける!」と思いました。
それに,今回同席していただいているGorilla Banana Studioのみなさんは,日本のコンシューマゲームも熱心に研究されていて,お互いに協力してこのタイトルを日本で盛り上げていけるのではないかと,お会いしたときに実感したことが大きいですね。
4Gamer:
セガと言えば,MOとMMOという違いはありますが,「ファンタシースターオンライン2」「RUSTY HEARTS」といったアクション性の高いオンラインゲームをすでに運営しています。今回の「Red Blood」もやはりアクション性の高い作品になりますが,セガとしては,やはり“アクション”にこだわりがあるのでしょうか。
吉田氏:
うーん,そういうわけでもないのですが……まあ,弊社はコンシューマゲーム中心の会社ですので,テストプレイヤーにはアクションゲーム好きが多いかもしれません(笑)。
ただ,「Red Blood」に関して言えば,そこまでアクション性重視ではなく,先ほどの話にもあったとおり,ストレスなく動かせる点,そしてキャラが簡単な操作で手軽に動かせるにも関わらず,グラフィックスがしっかりしている点が特徴です。一見すると操作が難しく見えるかもしれませんが,触ってみればそんなことはないことは,すぐ分かってもらえると思います。
4Gamer:
では,操作面はどうでしょう。「PSO2」ではゲームパッドで遊ぶプレイヤーさんが多いですよね。「Red Blood」でも,ゲームパッドのサポートなどを考えているのでしょうか。
吉田氏:
マウスの左クリックと右クリックを使ったコンボアクションもありますし,MMORPGということもあって,マウスとキーボードのほうが分かりやすいと思います。
MMORPGのファンはあまりゲームパッドでプレイするという意識はないようですし,ゲームパッドを推奨してしまうことが逆にプレイヤー層を狭めると思います。ですが,プレイヤーからの需要が多ければ検討しようと,開発陣と話してはいます。
4Gamer:
無双系というイメージからは,ゲームパッドが合いそうですが,これは実際に触ってみないと分からないかもしれませんね。そこで気になるのが,日本で実際に遊べそうな時期なのですが,これはいつ頃になりそうでしょうか。
吉田氏:
日本で世界最初のサービスが始まるわけではありませんが,今秋ぐらいには,みなさんと一緒にゲームプレイができるようにしたいと考えています。
4Gamer:
なるほど,まだ少し先の話になりますね。
吉田氏:
ええ。ゲーム本体という大まかな仕組みは,もうすでにでき上がっています。現在は,そこにスパイス的にいろいろな要素を追加しており,セガ専用のサーバーを設置してもらって,日夜テストプレイを行っているところです。ですから我々にとっては,いまがもっとも忙しい時期かもしれません(笑)。
そうして実際に遊んでみて,プレイヤー目線でいろいろと意見を伝えています。この先,夏くらいまでは,こういった形でディスカッションを行っていくことになると思います。
4Gamer:
そのスパイスというのは,日本のプレイヤーに向けた調整になるわけですか。
吉田氏:
そうです。
4Gamer:
これまでに,どういった提案をしたのでしょうか。
吉田氏:
ゲームバランスに関しては,Gorilla Banana Studioさんのほうでしっかり考えられていますので,よりゲームが分かりやすくなるチュートリアルを充実させたいと提案しています。
昔のMMORPGだと,いきなり街の中に放り出されて「やれることは自分で探せ」みたいなゲームも多かったのですが,いまはそういった状態ではプレイヤーさんがついてきてくれないでしょうから。
4Gamer:
スパイスとして,日本に関連するコンテンツだったり,キャラクターの特徴だったりが盛り込まれていく予定もありますか。
吉田氏:
もちろんです。開発側から,日本の職業やキャラクターなど,希望があれば言ってくださいと言われていて,弊社から意見を出しているところです。また,キャラクターの外見に関しても,多くの意見を送っています。例えば,韓国ではあまりツインテールやポニーテールといった女性キャラのイメージがないそうです。ですからそういった,日本で受けているキャラクターの資料などを送って,制作していただけるようにお願いしています。
4Gamer:
「PSO2」が“無限のキャラクターバリエーション”というコピーで話題を呼んだように,まず外見から入るプレイヤーさんは多いですよね。
吉田氏:
ええ,そうなんですよ。アバターに関しても,露出や服装のカッコよさというのはほぼ共通の認識なんですが,細かいところで言うと,各国のプレイヤー層で,好みの色が微妙に違っています。ですからそこは妥協せずに,例えば色はPCやモニタの調整具合によっても変化してしまうので,色番号などを使って細部まで詰めて打ち合わせしています。
Kim氏:
「Red Blood」は,我々も日本のコンシューマゲームを意識して作っている部分がありますので,日本のマーケットに対する期待感は高いです。
Jung氏:
吉田さんとは実はずいぶん前からやり取りをさせていただいていまして,今も新バージョンができるたびにプレイしてもらい,フィードバックをいただいています。
4Gamer:
話を聞いていると,本作においてセガは,ただ日本語にローカライズするというわけではなく,ゲーム自体の開発部分にも深く関わっているという感じですね。
Jung氏:
ええ,テキストだけを日本語に直す“ローカライズ”ではなく,コンテンツ自体を日本に合わせていく“カルチャライズ”を行っていますね。
吉田氏:
開発者というのはみんな,作品に対してしっかりとした軸を持って開発していますから,その軸は変えたくないはずなんです。でも彼らは日本のことをすごくよく知っているし,僕らの意見もちゃんと聞いてくれる。もちろん,僕らの意見をすべて丸呑みにするということではなく,ちゃんと話し合って決めてくれます。開発者と一緒に方向性を選べる。そういう点はすごいことですよね。
4Gamer:
プレイヤーからすると,韓国のGorilla Banana Studioの制作した作品をセガが日本で運営するということではなく,両社で育てた「Red Blood」というゲームが遊べる――という感覚でしょうか。
吉田氏:
はい,そう思っていただいて結構です。
Kim氏:
もし,そのまま運営だけを行うという会社であれば,我々は「No」と言っていたでしょう。最初に出会ったとき,彼ら(セガ)はそうではなかった。カルチャライズをとおして,どういうプレイヤーに向けて,何を目指して,どんなコンテンツを完成させていくか。そんなことを言ってくれるパブリッシャを,まさに探していたんです。最も安心できるポイントだったのは,吉田さんと開発陣の相性がとてもよかったところかもしれません(笑)。
吉田氏:
そうですね(笑)。国を隔てているとはいえ,社内では頻繁にカメラとマイクを使って顔を見て打ち合わせしています。目を見て話すときの,温度感のようなものも大切ですから。そのおかげか,今回は来日していただいたのですが,あまり久しぶりな感じはしません。
4Gamer:
では最後に,サービスに向けての意気込みを,と言うにはまだ間がありますが――読者へのコメントをお願いします。
Kim氏:
同時接続人数だったり,売り上げだったり,いろいろな数字的な側面はあると思うのですが,そういったことはあまり気にせずに,長期間にわたって遊んでいただけるタイトルにしたいと思っています。日本のプレイヤーさんに向けて,しっかりとカルチャライズを行い,常に飽きずにプレイできるゲームを目指します。
吉田氏:
「Red Blood」は,これまでのノンターゲティングMMORPGの概念を打ち破る意欲作です。日本向けのカルチャライズを十分に行ってからのリリースとなりますので,ぜひ楽しみに待っていてください。プレイしたとき,必ず驚きが得られる作品になっていると思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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