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印刷2009/08/28 12:23

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第230回:TGSとE3を足したより巨大だったGamescom

奥谷海人のAccess Accepted

 ドイツのケルンで新しく始まったゲームイベント,Gamescom。「会場がデカくて移動が苦痛」「水のボトルが500円もする」「水着のセクシーコンパニオンが一人もいない」など,連日取材を続けた取材班からは不満の声も聞こえてきたが,一般参加者や業界関係者からは好評だったようで,「世界最大規模のゲームイベント」としての地位を築いていきそうな気配。とりあえず,今回は事後報告としてGamescomのおさらいをしておきたい。

第230回:TGSとE3を足したより巨大だったGamescom

 

いきなり「世界最大のゲームイベント」になったGamescom
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ケルッシュビールとオーデコロン,そして世界遺産の大聖堂で有名な街ケルン。そこで,第一回のGamescomが開催された。25万人近くの来場者数を記録する活況で,いきなり世界最大のゲームイベントとして姿を現したのだ。昨年(2008年)イギリスを抜いてヨーロッパ最大のゲーム市場となったドイツの威勢を見せるイベントとして位置づけられそうだ

 2009年8月19日から23日までの5日間,ドイツのケルンにあるKoelnmesse(ケルンメッセ)において第一回となるGamescomが開催された。ドイツといえば,ここ数年はライプツィヒで毎年8月に開催されるGames Conventionが有名であり,第2回となる2004年以来,4Gamerでも毎年取材班を送ってきた。詳しくは後述するが,このGames ConventionからGamescomへの変更はドイツでゲームソフトの販売を行うメーカーの業界団体「BIU」にとって大成功だったといえ,単純に参加者数で考えれば「ヨーロッパ最大」はおろか「世界最大」のゲームイベントを実現することになった。

 参加者総数は実に24万5000人。このうち,業界関係者は1万7000人,そしてジャーナリストは4000人と発表されているので,残り22万4000人が一般入場者ということになる。
 参加企業は31か国から458社で,その数は,東京ゲームショウとE3(Electronic Enertainment Expo)を合わせたほどになる。一般入場日の週末ともなれば,会場はまさに「人,人,人」といったところで,ほかのゲームイベントより数万人単位で参加者が多いのが,遠くから見ているだけでも実感できた。

 

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 主催者であるKoelnmesseは,「Gamescomはゲーム産業における重要なフェアになることを証明した」と,業界のトップイベントとしての位置が確立されたことを手放しで喜んでいる。ライン川を挟んで対岸にあるケルン中央駅では,ちょうど恒例の音楽祭が行われており,双方のイベント入場者が行ったり来たりしたという相乗効果があったのも間違いない。

 Koelnmesse会場の雰囲気は,ライプツィヒのそれと変わらない。最新ゲームのデモを見たり,実際に試遊台でプレイするために長い行列を作ったり,無料配布のTシャツをその場で身につけて,楽しそうに歩き回ったりしている。
 一般入場者向けの一日入場券なら15ユーロ(約2000円)ほどだが,まだ発売されていない「Diablo III」「FIFA 10」「Halo 3: ODST」「GOD OF WAR 3」「Call of Duty: Mordern Warfare 2」「StarCraft II」「The Beatles:Rock Band」といった期待作を発売前に楽しみ,それでTシャツを数枚手に入れられるなら,ゲーマーにとっては高くはないだろう。

 

BIUにケルンが見初められた理由とは?
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 これまでのヨーロッパ最大という称号を持っていたゲームイベントといえば,毎年8月に開催されていたライプツィヒのGames Conventionだった。
 Games Conventionは,ファンイベントと業界向けのトレードショー,そして開発者会議の三つをうまく融合させ,毎年数万人単位で参加者数を増やしていたものの,今年になってBIUを母体とするヨーロッパのゲームパブリッシャがこぞってGamescomへの参加を表明したため,Games Conventionのほうは「Games Convention Online」へ名前を変え,カジュアルなオンラインゲームやブラウザゲーム,モバイルゲームなどを展示するイベントになった。Games Convention Online 2009の参加者総数は4万3000人と発表されている。

 このようなことが起こったそもそもの原因は,ライプツィヒが毎年増え続ける来場者をさばききれなくなったことにある。人口48万人ほどのライプツィヒは,それなりに観光産業があるとはいえ,一度に数万人近い外国からの参加者をまかなうホテルの数が絶対的に不足していた。タクシーや列車で1時間も離れた街に宿泊する業界関係者も少なくなく,ファンイベントだけではなく,トレードショーとしても機能させたいBIUは不満を覚えていたのである。

 BIUは,ライプツィヒ以外の地域での持ち回り開催を行うことなどをGames Conventionの主催者であるLeipzig Messe(ライプツィヒメッセ)に提案していたが,そもそもドイツでのメッセ運営は地元と強く結びついた民間企業が行っており,ゲームイベントの開催も観光資源としての意味合いが強い。Leipzig Messeは当然のようにほかの地域での開催を拒んだため交渉は決裂し,BIUは新たなイベントの開催地としてKoelnmesseに白羽の矢を立てたのだ。

 ドイツ西部にあるケルンは人口約100万人の都市であり,フランクフルトやデュッセルドルフといったライン川の流域にある都市群とは,高速鉄道ICEでつながっている。ベルギーやオランダ,ルクセンブルグなどからも日帰りができ,観光目的の往来は昔から少なくない。ここ数年は,100万人の観光客を集めるヨーロッパ最大のフェスティバルを秋に開催しており,その四分の一(25万人)程度のゲームイベントであれば,苦もなくさばけるのだろう。

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ライプツィヒと比べて,小中学生の数がなぜか少なく,高校生か大学生風の参加者が目立った。ただ家族向けを考慮したのか,美人の街ケルンなのに水着姿のコンパニオンなど一切ないのが,ちょっとしたマイナス(?)点。真ん中の写真は,SCEブースのあった「Buzz! Quiz TV」というクイズゲームで息子に勝って大喜びな,ちょっと大人気ないお父さんの図

 

 

今後は,イベントの重要性強化が焦点に
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黒山の人だかり,とはまさにこのこと。24万5000人という数は,5日間の延べ人数であるのだが,こんな長大な中央通路が人で埋まってしまうほどの混雑だ。ビーチバレーやロッククライミングなどGames Conventionにもあったお楽しみコーナーもGamescomには存在したが,あまりにも広すぎ,人多すぎで,取材する気さえ起こらなかった。オランダの会社が有機栽培の野菜を無料配布しているコーナーもあったが,ゲームとの関連性は不明

 Koelnmesseは,世界で4番めの規模を誇るイベント会場であるとのことで,Leipzig Messeよりも広い12万平方mものホール面積を有する。業界関係者専用の商用ブースと,一般向けのエンターテイメントエリアが分かれて共存する「ライプツィヒ方式」を採用しており,メーカーへの取材は非常に円滑に行えた。メッセの面積的余裕,街の広さ,参加者の多さは,業界関係者の多くに賞賛されるものだった。

 しかし,その面積の広さは,我々のように“足で稼ぐ”プレス関係者に重くのしかかってくる。  Electronic Artsの一般向けブースが一番奥にある6番ホールは,ジャンボ機が何台も並べられるような広さで,入り口から見るとEAのおなじみのロゴがはるか遠くにかすんで見える。まるで,映画「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」のラストシーンに出てきた,木箱が積み上げられた倉庫を思い出させるほどだ。プレスセンターはビジネスブースからあまりにも遠く,しかもPCやデスクの数が少な過ぎるため,待ち合わせに一度利用しただけで二度と訪れることはなかった。

 ゲームイベントという観点から見ると,やはりE3と東京ゲームショウの間の時期にあるデメリットは隠し切れない。
 Microsoft Game Studiosが,Lionhead Studiosの新作「Fable III」を,またElectronic Artsが「Command & Conquer 4」を,そしてSEGAが人気RTSシリーズの最新作「Napoleon: Total War」を発表するなど新情報もあったが,Gamescomはまったく新しいゲームの情報が出るイベントというよりも,昨年までのGames Convention同様,「遊んでナンボ」なファンイベントとしての性格が強いものだ。来年以降は,ファンイベントとトレードショウという二本柱に加え,「Gamescomならでは」という要素を強化していく必要が出てくるだろう。

 

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 2万9980円(299ドル/ユーロ)というニュープライスの新型PlayStation 3を発表したこともあって,Sony Computer EntertainmentはGamescomで最も活発なプラットフォームホルダーだった。それに対しMicrosoftや任天堂は,BIUへの“おつきあい”程度のブースや出展内容だったが,それでもプラットフォームホルダー3社が一つのイベントに顔を出すのは,ゲームイベントとして非常に重要なことだ。
 Electronic ArtsやUbisoft Entertainmentなど,欧米のパブリッシャは各タイトルをプレイアブルな状態で展示してがんばっていたが,とくにActivision Blizzardのブースはすごかった。E3でも展示/公開されなかったDiablo IIIやStarcraft 2に加え,Modern Warfare 2や「Guitar Hero 5」などがズラリと並んだブースは,これまで見たどんなイベントより多くの人々が群がっていた。

 Gamescomで行われた場内アンケートによると,来場した一般客の90%が,「また来年も参加したい」とリピーター宣言をしたそうだ。Koelnmesseは,第2回のGamescomを2010年8月18日から22日に開催することを発表しており,ひょっとしたら,軽く30万人超えなんてことになる可能性もある。「Diablo IIIをプレイしたさに日本から参加」というツワモノも読者の皆さんの中から出てきたりするのではないだろうか。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けてきた。業界に知己も多い。本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,連載開始から200回以上を数える,4Gamerの最長寿連載だ。
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