プレイレポート
オンラインRPGの常識にとらわれないスマートなシステムの数々に注目。MMORPG「Guild Wars 2」βテストプレイレポート
公式フォーラムやSNSなどを見る限り,BWE参加者の満足度はすこぶる高く,2回目のBWEの時点では,なんと96基ものサーバーが稼動し,大きな盛り上がりを見せた。現在も開発中のタイトルであるため,ゲームシステムは目まぐるしく変わっているが,本稿ではこれまでのテストプレイから判明した,次の世代を担うMMORPGの実力を探っていきたい。
「Guild Wars 2」公式サイト
欧米を中心に高い評価を得た「Guild Wars」の続編
前作Guild Warsの素晴らしさを端的に述べると,MMORPGプレイヤーが煩わしさを感じる部分(長時間のレベリングや苦労の多いパーティ編成など)が大胆にカットされているにもかかわらず,面白さがスポイルされていないという取捨選択のうまさに集約されている。また,すべてのゲームプレイが最終的にPvPに行き着き,誰でもスポーツライクに対人戦を楽しめるというのも,当時大きな反響を呼んだ。Guild Warsに関しては,4Gamerでも積極的に記事化していたので,もし興味を持った読者は連載記事などをご覧いただきたい。
続編となるGuild Wars 2に関してArenaNetは,スケジュールよりもクオリティを優先して開発を進めている。4Gamerに初めてそのタイトルが載ったのは2007年7月(関連記事),一般向けに初めて公開されたのは2010年8月である(関連記事)。長い間ファンをやきもきさせてきたわけだが,2012年5月からは,ようやく不定期でのBWEが開催されることになった。ちなみに,北米での発売予定日は2012年8月28日となっているが,日本でのサービスについては未定である。
クラスに相当するProfessionに関しては,合計8種類が用意されている。前作とは異なり,メインとサブを両方選ぶ必要はない。選べるクラス/種族の大まかな雰囲気については,掲載画像をチェックしてもらいたいが,今作ではヒーラー専用のクラスが用意されていない点に注目してほしい。Guild Wars 2ではすべてのクラスが自己回復用スキルを持ち合わせており,ソロプレイでも楽しめるゲームバランスとなっているのだ。
Warrior(Norn/女性) |
Guardian(Human/女性) |
Thief(Charr/女性) |
Ranger(Human/女性) |
Engineer(Human/男性) |
Elementalist(Norn/男性) |
Necromancer(Human/男性) |
Mesmer(Charr/男性) |
キャラクターカスタマイズに関してGuild Wars 2ならではの要素といえるのは,鎧の部位ごとにカラーリングのテーマが決められること。新たな装備品の入手時も,このテーマが最初から反映されるという仕組みで,プレイヤーキャラクターが(オンラインRPGにありがちな)統一性に欠ける外見になりにくいのだ。もちろん,冒険中にこのカラーリングを変えることもできる。
外見を設定したあとは,マイキャラの生まれ故郷や親類の有無,信仰神やポリシーなどといったパーソナリティーを対話形式で決めていく。ここでの回答によってキャラクターの“生い立ち”が決まり,それに応じてメインストーリーなどが微妙に変化するのだ。たとえ同じ種族/クラスでキャラクターを生成しても,プレイヤーによって違ったゲーム展開が待ち受けるという“パーソナルストーリー”は,Guild Wars 2の大きな見どころといえるだろう。
“クエスト”に縛られず,自由度の高い冒険が楽しめる
とはいえ,プレイヤーがその気になれば,他種族のホームエリアで冒険することも可能である。Guild Wars 2ではZhaitanに対抗する各勢力が,Tyriaの中枢Lion's Archに集結しており,ここを通じて各拠点(Divinity Coast等)へワープできるという仕組みなのだ。しかもエリアの各所には“Waypoint”(中継点)が設けられており,一度訪れたあとはいつでもショートカット移動できるようになる。
画面左からKryta地方,Shiverpeak地方,Ascalon地方。各エリア間は地続きとなっているため徒歩でも移動できるが,普通に冒険するとかなりの距離だ |
前作にも登場したLion's Archは,今作ではTyriaの最重要拠点だ。ここにある“Asura Gate”が拠点間を結び付けており,これはレベル1でも利用できる |
従来のオンラインRPGでは,「モンスターを○匹倒してこい」,「○○を届けてくれ」などといった,いわゆるお使い型のクエストを軸にゲームを進めていくことが多く,ときには延々と同じモンスターを倒し続けたりもするが,Guild Wars 2の場合は大きく異なる。主に「Renown Heart」「World Event」「Story」の3通りの方法でゲームを進め,マイキャラを育てていくのだ。ユニークな要素がぎっしり詰まっているそれらの詳細を,詳しく紹介していこう。
【Renown Heart】(Area Goalとも呼ばれる)
エリアの各地にいる住民を手助けして,評判/名声を高めるというもの。一見普通のクエストのように思えるかもしれないが,Renown Heartではプレイヤーが何を成すべきか,直接的な形で指示されないことが多い。しかも,住人を手助けするための手段が複数用意されており,プレイヤーは自分で考えながら行動することになる。
冒険していると,ハートマークで示されたRenown Heartの対象NPCを見つけられる。目的は教えてくれるが,そのための具体的な手段は基本的に自分で考えることになる |
NPCに貢献するとゲージが溜まり,それが満タンになるとクリア。このSSでは敵対モンスターと戦っているが,それ以外にも鉄屑を拾ったり,地雷を除去/撤去したりすることで進行可能だ |
たとえば,とある農民NPCを手助けする場合,プレイヤーは近隣の畑を荒らす土ミミズを探し出したり,手強い巨大ミミズをほかのPCと協力して退治したり,ときおり襲撃してくる盗賊を撃退したり,盗賊に放火されたワラを消火したりと,さまざまな方法で貢献できるのだ。
武器の代わりに水が入ったバケツを手に取り,消火活動中。このように,戦闘タイプ/非戦闘タイプを問わず,どんなキャラクターでも解決できることが多い |
各所にいる“Scout”を尋ねると,近隣のRenown Heartなどをガイドしてくれる。推奨レベルも分かるので,新天地を冒険していても,やるべきことがすぐに見つかる |
【World Event】(Dynamic Eventとも呼ばれる)
World Eventが発生すると,対象範囲がオレンジ色で示され,概要が説明される。周囲にいるプレイヤーキャがこれを見て,わらわらと集まってくるというわけだ |
即席のRaidチームでモンスターを倒したり,隣街へ向かうキャラバンを護衛したり,味方の拠点を敵から防衛したり,あるいは敵の拠点を攻め落としたりと,イベントの内容は多岐にわたる。「Rift」のプレイ経験がある人ならば,“Invasion”のバリエーションをさらに拡張したコンテンツをイメージすると分かりやすいのではないだろうか。
現在地の近くでイベントが発生したからといって,参加義務はなく,パーティを組むことなく連帯感や達成感を共有できるのが楽しい。
たとえパーティを組まずとも,会話を交わさずとも,その場にいる者同士のチームワークが自然に生まれる。このプレイフィールがとても心地よい |
Tyriaでは,World Eventが常にどこかしらで発生しており,場合によっては複数のWorld Eventが連動することもある。それらが生み出す“生きた世界”は,プレイヤーにとって実にスリリングで居心地がいい。“Dynamic Event”とも呼ばれるこのシステムは,Guild Wars 2の最大の見どころの一つである。
NPCのキャラバンを街まで護衛することに成功。参加するプレイヤーの数に応じて,難度がある程度自動的に調整されるようだ |
イベントの発生地点へ向かったところ,NPCの兵士が20体ほど倒れているのを発見。何事かと思い周囲を見渡すと,ジャイアントが派手に暴れ回っていた…… |
【Story】
Storyを通じてGuild Wars 2のメインシナリオを進める。現在のBWEではキャラクターレベル20弱までを対象とするStoryが実装されている |
上で紹介したRenown HeartとWorld Eventは,プレイヤーキャラの種族に関係なく参加できるが,Storyに限っては,マイキャラの種族のホームエリアを中心に展開される。面白いのは,キャラクターの作成時に設定した“生い立ち”によって,シナリオ展開が変化するところだ。プレイヤーキャラは,ゆくゆくは対Zhaitan連合の重要人物として活躍することになりそうだが,そういったシーンが描かれる際に,キャラクターの個性がどのように反映されるのだろうか。
Storyはインスタンス内で展開されるため,ほかのプレイヤーキャラからの干渉を受けない |
前作から大きく変わったキャラクター育成システム
スキル選択は比較的迷わず行なえるように
今作では10個のナンバーキー(1〜0)がスキル使用に対応しており,番号によって役割がある程度決まっている。まず1〜5は「Weapon Skill」で,手に持つ武器のジャンルに応じて,特定のスキルがそれぞれ割り当てられている。ちなみにプレイヤーキャラは,2パターンの武器セットを装備し,これを瞬時に持ち替えることが可能だ。
そして6〜0は,アンロックしたスキルの中から好きなものを割り当てるという,前作に比較的近いシステムで,こちらは「Slot Skill」と呼ばれる。各Slot Skillには大まかな役割があり,6は回復系の「Healing」,7〜9はフレキシブルな「Utility」,0は強力な「Elite」といった具合だ。
右手用の武器は1〜3,左手用は4〜5,両手用は1〜5にそれぞれ対応。今作では武器を変える=1〜5のスキルセットを変える,という意味合いが強い |
新たな武器ジャンルを装備した際は,戦闘を経て1〜5を順番にアンロックしていく。この作業自体はすぐに終わり,チュートリアル的な段階といえる |
前作には,メイン/サブ用のクラスが習得した数百のスキルの中から8つを厳選するという,カードゲームのデッキ構築にも通じる醍醐味があったが,今作では大分違っていることが分かるだろう。個人的な感想としては,育成のバリエーションが若干狭まった分,誰でも迷わずに遊べるようになり,MMORPGとしてのハードルが確実に下がっている印象を受けた。
24時間いつでもサーバー間戦争に参戦可能!
三つ巴のバトルが繰り広げられる「WvWvW」
Guild Wars 2では常に,所属サーバーとは別の二つのサーバーと三つ巴のバトルが繰り広げられている。普段遊ぶサーバーとは別に,“Mist”と呼ばれるクロスサーバーが常設されており,ゲームプレイ中にワンボタンでここへ訪れ,大規模バトルに参戦できるのだ。この三つ巴のサーバー間戦争は,“World vs World vs World”,略して「WvWvW」と呼ばれている。
WvWvWは一定期間開催され,そのスコアに応じて次の対戦サーバーがマッチアップされる。実力に応じた相手とのアツいPvPが期待できる |
大規模PvPに参加するためのハードルは低い。たとえば,ミニマップを確認しながら倒れた味方を探し,次々と“蘇生”するだけでも立派に貢献できる |
Mistへ訪れている間は,キャラクターレベルは一時的に80へ引き上げられ,装備品やスキルなども開放される。たとえ作りたてであっても,直ちにWvWvWに参戦できる環境が整えられているわけだ。しかもバトルの最中に獲得する経験値やアイテムは,元々のキャラクターレベルに準じており,WvWvWを主体に育成することも不可能ではない。
Mistの内部はかなりの広さがあり,砦やタワー,補給ポイントや攻城兵器などが多数設置されている。また,マップ画面を開けば支配状況や味方キャラクターの位置,そして現在の交戦地などが一目瞭然だ。Mistでは,少数による遭遇戦から数百人規模の攻城戦まで,対人戦闘にまつわるあらゆるプレイスタイルが満喫できる。
1対1ではなく三つ巴というところもポイント。仮に一つのワールドが突出した戦果を挙げた場合,他の2ワールドが共闘する展開も起こりうる |
少人数同士によるチーム戦も用意されている。相手を倒したりして500ポイントの獲得を競うスポーツライクな仕様で,こちらも24時間気軽に参加できる |
欧米のMMORPG勢力図を大きく塗り替えるポテンシャル
コアプレイヤーは今後の展開を要チェック
クエストに縛られないゲームプレイが強く印象に残る。何を成すべきか自分で考えていくのは,ある意味テーブルトークRPGにも通じる面白さがある |
だが,2回目のBWEの時点で96基ものサーバーが稼動しており,Dynamic EventやWvWvWで大きく盛り上がっているゲーム内の様子からは,リリース後に欧米のMMORPG勢力図を大きく塗り替えるポテンシャルを感じ取れる。正式サービスはしばらく先の話になりそうだが,MMORPGのコアプレイヤーなら,今後の動向をチェックしておいて損はないはずだ。
「Guild Wars 2」公式サイト
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