レビュー
ストイックな正統派シミュレーションRPGを約20年ぶりにリメイク
キングズ バウンティ
ザ レジェンド 日本語版
王直属の“探索者”として軍隊を率い
世界を冒険するシミュレーションRPG
そうした経緯を持つ本作が,4月24日にズーより完全日本語版として発売されたので,さっそくレビュー記事をお届けしていこう。
本作の内容は,プレイヤーが王直属の“探索者”となって,エンドリア大陸にて冒険を繰り広げるというもの。PCはさまざまなユニットを率いて,世界各地でクエストをこなしつつ,王から受けた任務を忠実に遂行してくのだ。
勇者(PC)が率いる軍隊はフィールドマップ上を冒険し,マップ上の敵と接触すると戦闘モードへと切り替わる,シンボルエンカウント形式で戦闘が行われる。戦闘モードはターン制&ヘックス状のマップで進行し,このあたりはシミュレーションRPGとしてはオーソドックスな部類といえるだろう。
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戦闘画面を見る限り,一度に参加するユニットはそれほど多くない。しかし実はこれらのキャラクターは,それぞれが多数のユニットで構成された“兵団”を示している。一つの兵団は数十から100以上のユニットで構成されており,実際にはパッと見よりもかなり大規模なバトルになる。
ゲームに登場するユニットは合計で90種類以上あり,それぞれ個性豊かなスキルを持ち備えている。雇用できるユニットには,人間やエルフなどといったヒューマノイドのみならず,モンスターも数多く登場し,プレイスタイルによって軍隊全体の雰囲気(と戦術)が大きく変わっていくのだ。
プレイヤーが扮する勇者自身は,戦場モードではユニットとしては登場せず,主に魔法などによる戦闘支援を行っていくことになる。
フィールドマップでモンスターにターゲットを合わせると,強さが左上に表示される。ときにはモンスターの目をかい潜って奥へと進んでいく |
クエスト名の左に王冠のマークが付いているのは,ストーリーの進展に必須のメインクエスト。それとは別に膨大な数のサブクエストがある |
人間からモンスターまで
個性豊かなユニット達で“兵団”を編成
勇者は一度に5種類までの兵団を同時に管理でき,それぞれが数十〜100以上のユニットで構成されるのは先述したとおり。雇用できるユニットを大きく分けると,「人間」「エルフ」「ドワーフ」「アンデッド」「デーモン,オーク」「他モンスター」の6種族になる。
各ユニットは専用のスキルを習得しており,これには魔法効果が付随した矢を放ったり,クマを召喚して戦わせたり,敵味方の死骸からモンスターを生み出したりなど,さまざまなタイプがある。またユニット同士には戦闘時の相性関係もあるので,冒険するエリアや戦う場所などによって,より効果的に戦えるユニット構成を考えていくのだ。
ユニットのステータス画面を開いてみたところ。ベルセルクが使える“疾走”スキルは,広めのマップで戦う際に重宝しそうだ |
一度に雇えるユニット数を左右する統率値は,レベルアップをはじめクエストやアイテムの発見などで上昇する。次第に大規模編成が可能となるのだ |
しかし,好きなユニットを好きなだけ雇えるわけではない。ユニットごとに,1体あたりの雇用に必要な“統率”というパラメータが設定されており,勇者の側にも統率のキャパシティが決まっている。つまり,何体まで兵団に所属させられるかは,ユニットによって違うのだ。
ゲームを進めると,レベルアップやクエストの報酬などで,勇者の統率値が上昇していく。こうして,さらに大規模な兵団を編成できるようになるというわけだ。
続いてバトルシステムを見ていこう。ゲーム中のフィールドマップでは,モンスターが目に見える形で徘徊しており,それにPCが接触すると戦闘モードへと切り替わる。バトルはターン制のゲーム展開で,一度のターンで移動+攻撃の両方を行う。まぁ事細かに説明するより,このムービーを見てもらえばすぐに理解できるだろう。
直接攻撃系のユニットの多くは,被攻撃時に反撃を行う。またAIが賢いため,オートバトル機能が積極的に利用できる。そのため戦闘のテンポが良く,ゲームがサクサクと進められる印象だ。ちなみに上で掲載しているムービーの内容も,オートバトルのものである。
また,本作はグラフィックスの描写がとても丁寧で,新たなユニットが雇用できるようになるたびに,思わずモーションやスキルを発動させる姿をしげしげと眺めてしまう魅力を持っている。各ユニットのグラフィックス関連は,個人的にはとても好ましく思えた。
どちらかの軍団が全滅すると戦闘は終了となる。見事に勝利を収めると経験値やゴールドなどを獲得し,それによって勇者を強化していける。逆に敗退してしまった場合,兵団の大半を失うものの,勇者自身は拠点に戻ったうえで軍資金をもらい再スタートできる。国産のシミュレーションRPGのタイトルだと,セーブポイントからのトライ&エラーを繰り返すはめになることも珍しくないが,本作はそういったタイトルと比べると気楽にゲームを進められる。
ただしボスモンスター戦など,特定の戦闘では負けると即ゲームオーバーとなってしまう。場合によっては“ハマり”の危険性もあるので,ボスなどに挑むときは,その少し手前でセーブしておくのがよいだろう。
戦闘モードの内容は極端に難しくはない。しかし兵団に所属するユニット数が多いので,10ターンを超えるような長期戦になることもしばしばある |
ほとんどの戦場では,画面中央付近に何らかのオブジェクトが配置されている。闇雲に突進してしまうと,敵と接触する前に痛い目を見ることにも |
軍隊を指揮する勇者自身の育成もボリュームたっぷり
ちなみにスキルなどの支援行為は,戦闘モードにおいて味方のターンで使用可能である。とはいえ無尽蔵に使えるわけではなく,画面左上にあるMPや“憤怒”のリソースを必要とする。
画面左上に赤と青のゲージがあり,勇者はこれをリソースとして各種支援を行っていく。いちユニットではなく,あくまで軍団の長としての立場だ |
魔法には「秩序」「歪曲」「混沌」の3ジャンルがあり,全体の数もかなり多い。メイジのクラスが,これらの能力に長けているのは言うまでもない |
また,勇者はツリー形式で新たなスキルを習得可能だ。スキルには,戦闘中にユニットのHPを回復するものや,特定のユニットを指揮したときにブースト効果が得られるものなどがある。
スキルツリーには「秩序」「歪曲」「混沌」の3系統があり,すべてを習得することはできない。クラスやプレイスタイル,そして主力とするユニットの種族などによって,スキルツリーなどの育成パターンが違ってくるため,リプレイアビリティは比較的高い。
画面右にあるのが,勇者のスキルツリー。こうして見ると,勇者の育成ボリュームは相当あることが分かるだろう |
フィールドを探索していたところ,建物の裏側に青いクリスタルを発見。ドラクエの“ちいさなメダル”集めに似た楽しみかも |
スキルツリーで新たにスキルを習得するには,「力」「精神」「魔法」の3種類ある“ルーン”を所定数集める必要がある。ユニークなのが各ルーンの入手方法で,レベルアップ時に得られるほか,なんと,フィールドマップ上に普通に落ちていることも珍しくない。ルーンのほかにもゴールドや,統率値を上げるシンボルなどがマップ上に点在しており,モンスターを避けながら気ままに探索しているだけでも,それなりの数のルーンが得られる。中には建物の陰に隠されていたり,地面に埋まっていたりすることもあり,フィールドマップ上での宝探し的な要素が面白い。
精霊は知能を持っており,彼らを従えるのはなかなかの苦労が伴う。性格も一癖も二癖もあるものばかりで,会話内容にも注目したい |
精霊スキルの一種“スマッシングソード”を使った瞬間。天から巨大な剣が降り注ぎ,ザコ敵なら兵団に壊滅的なダメージを与えられる |
だが,もし本格的にルーンを収集しようとしたら,モンスターとの戦闘は避けられないだろう。目指すべきプレイスタイルを実現するために,スキルを習得を目的とする。そのために必要なルーンを集めるべくフィールドエリアを探索していく。そのようにして,自然な形でゲーム内の世界が広がっていくわけだ。
精霊は「石のゼロック」「沼のスリーヌ」「氷のリナ」「死のリーパー」の4種類いて,それぞれが複数のスキルを使える。精霊を使役する際はちょっとしたクエストやバトルが必要になるのだが,スキルはかなり強力な効果があるので,ぜひとも手に入れたいところだ
落ち着いた雰囲気の
ファンタジー系タイトルが好きな人にオススメ
ワールドマップはかなり広い。キャラクター育成のバリエーションもあるので,ゲームのボリュームが物足りなく感じることはないだろう |
ゲームの比較的序盤から,海やダンジョンで冒険することが多い。お使い系のクエストが中心なものの,マンネリさは感じなかった |
なんというか,ゲームの隅々まで,丁寧でなおかつ上品な作りになっている印象を受ける。“ロシア産のファンタジー”と聞いて,最初はいまいちイメージが掴めなかったのだが,シナリオなどにぎこちなさを感じることはない。ファンタジーとしての世界観を楽しむという意味では,本作はかなりオススメのタイトルだ。
あえていうならシナリオに関して,いわゆる「お使い系」が中心というところが,人によっては不満に感じる部分になるだろうが,大半の人にはそれほど気にはならないだろう。
「キングズ バウンティ ザ レジェンド 日本語版」は極端なインパクトは少ないものの,最後まで安心してプレイできる佳作である。リプレイアビリティも高いので,落ち着いた雰囲気のファンタジー系シミュレーションRPGを探している人に,広くオススメしたい。
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