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[G★2007#89]実は協力プレイ重視のアクションRPG。「マビノギ英雄伝」プロデューサーインタビュー
企画は「マビノギ」のダンジョンから
お忙しいタイミングで恐縮ですが,さっそく質問を。まずこの企画が立ち上がった経緯を,簡単に教えてください。
Yi Eun Seok氏:
このプロジェクトが浮上したのは2005年のことです。本部長のキム(・ドンゴン氏)が,MMORPG「マビノギ」のダンジョン要素だけを取り出して,独立したゲームを作ってみてはどうかというアイデアを出しました。
4Gamer:
そうしたアイデアからスタートしたと。
Yi Eun Seok氏:
それをどう作ったらスペクタクルなゲームになるかと悩みまして,周囲に落ちているものを武器として利用するといったアイデアが出てきました。そうなると,物理エンジンが必要になりますので,これを組み込むことになります。
既存の「マビノギ」と違うリアルなグラフィックスになったのは,アジア以外の海外市場で,そのほうが評判がよいと判断したからです。
4Gamer:
グラフィックスについては,確かにそうかもしれませんね。
Yi Eun Seok氏:
ご存じのように既存の「マビノギ」は,アニメを見ているようなレンダリング方法だったわけですが,この方法のノウハウは十分に蓄積したという思いもありました。そこで今度は違う側面でのノウハウも,蓄積していく必要があると考えたのです。
4Gamer:
韓国産の作品で,グラフィックスがリアルタッチだとすると,PvPを重視するのかな,と考えてしまうのですが,実際のところどうなのでしょうか?
Yi Eun Seok氏:
いえいえ。マビノギ英雄伝は基本的に,プレイヤー同士の協力モードがメインのコンセプトになっています。
4Gamer:
ゲームモードを複数持っていたりは?
Yi Eun Seok氏:
まったく存在しないわけではないのですが,その具体的な中身は,公式なローンチを待って公表させていただきたいと思います。いずれにせよ,メインは協力モードです。
4Gamer:
うーむ,そこはまだ秘密ですか。ちょっと残念です。ではプレイヤー同士が協力して,決まったコース/ストーリーをとる感じのRPGなのか,それともクエスト/ミッションなどを自由に選びつつプレイするのかを教えてください。
Yi Eun Seok氏:
どちらかというと後者に近い,自由度の高いゲームです。RPGですので,もちろんストーリーは存在するのですが,アクションRPGだけに,その比重はあまり高くありません。
4Gamer:
ブースで触ってみたところ,一度に複数の敵を相手にするといった,軽快なアクション戦闘が印象的でした。これが,このゲームの基本的な魅力だと思ってよいのでしょうか?
Yi Eun Seok氏:
そうですね。もちろん協力プレイでなければならないわけではなく,ソロプレイでも十分楽しめます。ただし,やはりチームワークでやりがいを見付けられることを,最重要視しています。
例えば,発表会のムービーにもありましたが,何人かで役割分担をして,ボスモンスターを鎖で縛り上げ,トドメを刺すといったプレイですね。そこに重点を置いています。
4Gamer:
なるほど。
Yi Eun Seok氏:
もっとも,いまのところ鎖はムービーに登場するだけで,展示バージョンには入っていないんですけどね。代わりに,投げ槍が入っています。
4Gamer:
ええと,槍でどうやって代用したらよいのでしょうか。
Yi Eun Seok氏:
槍の活用方法は二つほどあります。一つめは,敵の急所/弱点を狙って敵をグラつかせ,仲間が攻撃をかける時間を作り出すことです。二つめはかなり高度なテクニックとなりますが,手足を狙ってモンスターを地面に釘付けにしてしまうという戦術です。
4〜5人の英雄達が主人公
仲間の話題が続いたところで,このゲームには職業が何種類くらい登場するのでしょうか。
Yi Eun Seok氏:
来年(2008年)のローンチ時点までに計画が変わってしまう可能性もあるので,少々申し上げにくい部分もあるのですが,いまのところ4〜5種類くらいを予定しています。
4Gamer:
MMORPG「マビノギ」と同じ職業が揃っていく感じですか?
Yi Eun Seok氏:
うーん,既存のマビノギでは,職業はあまり固定されておらず,育て方によって変化していくわけですが,マビノギ英雄伝に出てくるのは何人かの英雄キャラクターで,そのキャラクターの特性のまま,プレイするという形です。
4Gamer:
そこはだいぶ違うわけですね。
Yi Eun Seok氏:
ええ。そしていま導入されている職業は2種類,二刀流の男性「リシター」,盾と剣を持ってバランスのとれた女性キャラクター「フィオナ」です。
4Gamer:
リシター,フィオナというのは……職業名じゃなくて個人名なわけですね?
Yi Eun Seok氏:
モチーフとなる英雄の名前です。ただ,もちろんプレイヤーは,これに代えて自分の好きな名前を付けられます。
4Gamer:
登場するのがはじめから英雄だとすると,気になるのはMMORPG「マビノギ」にあった,変身などの設定があるかどうかですね。
Yi Eun Seok氏:
もちろんそういった企画は存在するのですが,それが正式に採用されるかどうか,まだはっきりしていません。
4Gamer:
ところで話題は変わるのですが,Nexonさんはほかの作品でも,Valveと協力体制をとっていますよね。マビノギ英雄伝で使う物理エンジンを選ぶに当たって,Sourceエンジンを選ぶことはある意味,既定の方針だったのでしょうか。
Yi Eun Seok氏:
いえ,純粋に選んだ結果であって,Valveとの関係がとくに影響したわけではありません。
4Gamer:
ほかのプラットフォーム,つまりコンシューマゲーム機への移植予定はありますか?
Yi Eun Seok氏:
具体的な予定はありません。可能性が完全に閉ざされているわけではありませんし,使っているエンジンの能力も,開発力の点でも可能だとは思いますが,いまのところ計画はありません。
4Gamer:
発表会で,主人公達はエリンの信仰を共有する部族だという説明がありましたが,これに人間以外の種族が入ってくる可能性はありますか? エルフやジャイアント,あるいはそれ以外とか。
Yi Eun Seok氏:
計画はあります。ただ,具体的なスケジュールについては,いまの段階では言えません。
4Gamer:
現時点で,日本でのサービスの可能性については,どうお考えでしょうか。
Yi Eun Seok氏:
海外進出の計画について,具体的に決まっていることはまだありません。
「マビノギ」プレイヤーのスライドにあまり期待していない?
MMORPG「マビノギ」のプレイヤーさんが,英雄伝をシリーズ作品としてプレイしてくれることを,どの程度期待していますか?
Yi Eun Seok氏:
やはり,どうしてもジャンルが大きく異なりますので,正直なところ,そこまで大きな期待はしていません。既存のマビノギは日本のアニメファン好みの要素が強かったわけですが,もちろん,誰もがそれを好きなわけではありません。ですから,今度は違った挑戦をしてみたいということです。
4Gamer:
ふーむ。ではなぜ,あえて“マビノギ”の名を冠し,背景世界を共通にしたのでしょうか。
Yi Eun Seok氏:
簡単に申し上げますと,“マビノギ”というブランドを育てていきたいという構想があるからです。例えばコンシューマゲームタイトルでしたら,1年から2年に1作といったペースで続編が出るわけですが,オンラインゲームは非常にサイクルが長いので,そうしたことができません。
4Gamer:
そこはそのとおりですね。
Yi Eun Seok氏:
そうした条件でも,“マビノギ”という名前の付いた製品を続けて登場させることで,ブランド価値を上げていきたい。そこに意義を見いだしています。
4Gamer:
ブースで試遊してみて,鎧などの描写がすごく美しいと感じました。今後キャラクターが身に着けるアイテムについては力を入れていくご予定ですか?
Yi Eun Seok氏:
もちろん力は入れていきますが,ブースで見ていただいたのは,かなり高レベル向けの高級装備です。実際のゲームでは布製の装備から始まって,革の装備,スケールメイル,チェインメイルと段階的にグレードアップされて,見ためも豪華になっていきます。
4Gamer:
つまりアクションRPGとしての実用性に沿って,装備品が増えていくイメージですね?
Yi Eun Seok氏:
そのとおりです。
4Gamer:
いま予定している課金形態について,教えてください。
Yi Eun Seok氏:
部分有料化(アイテム課金を含む)と考えていますが,それ以上に具体的な構想は,まだ決めていません。
4Gamer:
では最後に。ブースの試遊機は大人気で,たいへんな人出でした。この作品を楽しみにしている多くの人に向けて,メッセージをお願いします。
Yi Eun Seok氏:
まだまだ力不足であり,ノウハウの足りない状態で今回この作品をお見せした次第ですが,予想外の好評を得まして,かなりとまどっています。進捗状況の残り60%に,全力を込めて作り上げたいと思っております。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「真・三國無双」シリーズにも似た軽快なアクション性,良好なテンポを持つことは,試遊を通してよく理解できたが,現状ではほかにどんな要素があるのかが見えず,韓国メディアの間でも「いったいどんなゲームにしたいのかが見えない」という意見がささやかれていた様子だ。
だが,今回の展示はあくまでシングルプレイデモに留まっていたのであって,このインタビューで語られたとおり,「マビノギ英雄伝」の神髄が協力プレイにあるというのであれば,その枢要はまだ公開されていないということになる。
アクションゲームとしてテンポが優れていても,それだけではやがて単調に感じられ,飽きが来てしまうのも事実だ。この良くできた原型を生かして,どのようにドラマティックな戦闘シチュエーションを盛り込んでくるのかが,この作品の当面の成否を決めるといっても,過言ではないだろう。devCAT Studioの経験とセンスに期待して,再会を楽しみにしたい。
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マビノギ英雄伝
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