レビュー
人気レースゲームシリーズの最新/最強作
Race Driver: GRID
» 4Gamerライター中,自動車といったらこの人,UHAUHA氏が挑むのは,イギリスのCodemastersが贈るレースゲームシリーズの最新作「Race Driver: GRID」だ。ストイックにコーナーを攻めたり,繊細なコース取りを要求されたり,すごいグラフィックスだったりと,なんとなく「コアゲーマー向けかな?」という印象のあるレースゲームジャンルだが,本作はビギナーからベテランまで楽しめる,そつのないゲームに仕上がっているらしい。
ドライブゲームの老舗Codemastersが放つ
「Race Driver: GRID」
「Race Driver: GRID」(以下,GRID)は,英国のパブリッシャ/デベロッパであるCodemastersが制作したドライブゲームだ。同社は,派手なドリフト走行が楽しめるラリーシム,Colin McRaeシリーズと,サーキットやストリートで白熱のバトルを演じられる,Race Driverシリーズの二つの看板シリーズを持っている。どちらもかなり有名なので,普段ドライブゲームをプレイしないという人でも,名前くらいは聞いたことがあるはずだ。
Colin McRaeについては2007年6月に「Colin McRae: DIRT」が発売されているが,今回紹介するのはRace Driverシリーズの最新作のほう。前述したようにオンロードレースがテーマであるため,ハンドル取られまくりのダートコースなどは一切ないものの,昨今のスポコン&ドリフトブームの影響か,派手にリアを流して走ったりする。見事なグラフィックスで車をコントロールする楽しみを存分に味わえる一本なのだ。
PC向けの英語版はすでに発売されており,デジタル配信システムの「Steam」などからも購入が可能だ。また「こちら」には,そのデモ版を用意している。
コンシューマ機版に関しては,10月14日に掲載した記事にもあるように,Codemastersの日本法人であるコードマスターズが2009年1月15日の発売を予定している。対応機種はXbox 360とPLAYSTATION 3で,きっちり日本語化されているのが嬉しいところ。まあ,もともとそれほど言語が壁になるようなゲームジャンルではないけどね。
というわけで,日本語版の発売決定を記念してというかなんというか,ここにGRIDのレビューを掲載してみようという寸法なのである。
ちゃんとバトルしているライバルカー達が熱くさせてくれる。はっきりいって,綺麗なボディのままでレースを終えられることはない! |
夜の峠でのレースはライトに頼らざるをえず視界が悪い。対向車が走ってくることもあるから,コーナーを攻めつつも慎重に走る必要がある |
チームメイトとともにさまざまな
レースを戦っていくキャリアモード
ではまず,ゲームモードから紹介していこう。
収録されているのは以下の3種類で,まずは,駆け出しのアマチュアドライバーが,レースを繰り返して世界的に有名なトップドライバーになるまでを描くキャリアモードが,「GRID WORLD」。登場させたいレースカー,サーキットなどを自由に選んでプレイできるのが「RACE DAY」。そして,世界中のプレイヤーとマルチプレイが楽しめる「MULTIPLAYER」。
メインの「GRID WORLD」は,一人のドライバーとして自分のチームを作り,数々のレースに参戦していくものだ。「RACE EVENTS」「DRIVER OFFERS」という二種類のモードがあり,アメリカ,ヨーロッパ,そして日本で開催されるレースに自ら参戦するのが前者,違うチームの雇われドライバーとなってレースに挑むのが後者となる。
それぞれのレースには,渋谷,横浜といった都市を封鎖して作ったコースで順位を競うストリートレースのほか,ニュルブルクリンクなどのサーキットレースなどがある。奥多摩の峠道を使ったドリフトレースなど,日本人なら思わずニンマリしてしまうようなコースもたくさん出てくるので,ニンマリしよう。
ほかにも車同士をぶつけながら走るデストラクションレース,規定周回内で規定速度を出すミニゲーム風のものなど,バリエーションはかなり豊富だ。
地域ごとにルーキー,プロ,ナショナルと三つのレベルがあり,ルーキーのレベルから参戦し,レース結果によって得られる「評判ポイント」(Reputation)によってステップアップするのだ。各地区ごとの累計評判ポイントと,後述する「ル・マン24時間レース」で獲得した評判ポイントを加えたものが「グローバル評判ポイント」となり,このポイントによって各ドライバーのランキングが争われる。
レースをこなして次第に評判ポイントが上がってくると,スポンサーが付く。スポンサーのステッカーを貼ってレースに参戦し,所定の条件を満たしてゴールすると,報酬がもらえるのだ。ゴールするだけで報酬をくれる気前のいいスポンサーもいるが,「トップでゴールする」「三位以内かつノーダメージでゴール」するなど,スポンサーはさまざまな条件を出してくる。
ちなみに,スポンサーにできるのはメインスポンサーを含めて8社まで。それ以上は車にステッカーを貼るスペースがないのだ。メインスポンサーは通常の倍の報酬をくれるので,達成条件などもよく考えてステッカーを貼るべし。
また,プロレベルになると一緒にレースに参戦するチームメイトを雇える。オファードライバーの中から支払う契約金と能力を見極めて契約するのだ。チームメイトとワンツーフィニッシュになれば多額の賞金が転がり込んでくるのだが,自分はトップでも仲間はぐっと下位だったり,仲間がトップで自分が付いていけなかったりすると,なんとなく切ないので,チームメイト選びも意外と頭を悩ませる。
GRID WORLDには“シーズン”という区切りがあり,1シーズンが終了すると節目のレースとして“ル・マン24時間レース”へ出場できる。自分のチームで参戦する以外に雇われドライバーとして走ることもでき,参戦を拒否することも可能。とはいえ,まとまった額の報酬やグローバル評判ポイントを稼ぐためには出場したほうがいいのは言うまでもない。
ちなみに24時間レースといっても実際には1時間が1分で経過する“24分間レース”で,24分で夕方→夜間→早朝と時間帯が変化する。しかもピットインでの給油,タイヤ交換の概念はなく(これはかなりガッカリ),レースが終了するまで,ひたすら集中して走るだけだ。とくに視界の悪い夜間など集中力も途切れがちで,24分間とはいえ集中して走るのはなかなか厳しい。さすがル・マンだ。
プレイしていて強く感じたのが,初心者から上級者まで幅広い層が楽しめる配慮があちこちに施されている点だ。各レースごとにライバルカーの速さをBASICからEXTREMEまで5段階に設定できるほか,リスタートの有無,コクピット視点のみ,トラクションコントロールやブレーキアシストなどアシスト機能の有無といったレース設定を自分の腕に合わせて行えるのだ。
このレース設定によって得られる賞金と評判ポイントが変化し,当然ながら,難度を下げれば少なく,上げれば増える。そのため,得意なレースにはレース設定を厳しくして評判ポイント獲得を狙い,苦手なコースなら設定を緩くして勝ちを狙うという具合に,好みのレース設定で挑戦できるところが面白い。
マルチプレイでは,世界中のドライバーを相手に,最大で12人のプレイヤーによるレースが楽しめる。ランクマッチやランクボード,プライベートレースなどが可能で,クイックマッチ機能があるため簡単に対戦者を見つけられる。また,自分でホストを立てることも可能だ。
何度かクイックマッチを試してみたが,最大人数に達することはほとんどなかったものの,毎回確実に何人かの対戦相手が見つかるようだ。原稿執筆時点では,対戦相手を探すのに苦労することはなさそうだが,やはりマルチプレイでは腕の違いがはっきり出てしまって,トホホ。ただ,ほかのドライバーの走りを外部視点で眺めることも可能なので,速い人のライン取りを盗むのもいいだろう。
フラッシュバック機能で致命的なドライビングミスも
“なかったこと”に!
収録されているレースカーは合計46車種で,世界の有名スポーツカーからオープンホイールのフォーミュラーカー,300km/hオーバーで走ることを前提にしたスーパーレーシングカー,アメリカンなマッスルカーのほか,多くの日本車が収録されており(これも世界的なスポコン&ドリフトブームのせいか),ラインナップはバリエーションに富んでいる。
ダッジ バイパー SRT-10 |
フォード マスタング ボス 302 |
ポルシェ911 GT3 RSR |
ランボルギーニ ムルシエラゴ RGT |
クラージュ C65 |
ニッサン スカイライン GT-R Z-TUNE |
- アメリカ
など15台
- ヨーロッパ
など20台
- 日本
の11台
レースカーの挙動であるが,それぞれの車種の特性,駆動方式の違いなどは当然のこととして,荷重移動による挙動変化など,ドライブゲームを再現する上で重要な要素はきちんと再現されている。全般的に“Codemasters流”の味つけで,操作していて非常に楽しい挙動に仕上がっている。
ただし,セッティングなどは一切できない仕様になっているため,自分好みにガリガリとカスタマイズしてタイムを詰めるなど,コテコテのレースシミュレーションを求めるプレイヤーには物足りないかもしれない。
ちなみに今回はステアリングコントローラではなく,Xbox 360 ワイヤレス コントローラーを使用してプレイしたのだが,微妙なステアリング/アクセル/ブレーキのコントロールもやりやすかった。ほかのゲームパッドを使う場合でも,アナログスティックとアナログトリガが付いているものを使うと良いだろう。
また,車に対するダメージの再現だが,定評のあるCodemastersだけに,今回も「さすが」といった出来。細かいスリ傷から,バンパーが外れたり,ボンネットがひしゃげるほどの大ダメージまで,これでもか! といわんばかりに再現されている。
見た目だけでなく,ダメージが蓄積してハンドリングや駆動系などが次第におかしくなっていくなど,内部的なダメージ処理もきちんと再現しているので,小さな接触も油断できない。ダメージ処理については,過去にリリースされたドライブゲームの中でも最高の出来ばえと言っても過言でないだろう。
またGRIDには,おそらくドライブゲーム初ではないかと思われる面白い機能が実装された。本作で新登場した「フラッシュバック」がそれで,やってしまった致命的なミスや,油断して発生したクラッシュなどを,“なかったこと”にしてくれるというものだ。
トップ争いを演じてきたが残り1周でコースアウトして大きく順位を落としてしまったとか,後続車を抑えて走ってきたが,コーナーで追突されてスピンしてしまったなど,レースゲームではそうした泣きたくなるシーンは数多く発生する。スタート直後ならばリスタートという手段もあるが,レース終盤ともなると,やり直しするのは少々辛い。
そんなときは,すぐにインスタントリプレイを再生しよう。リプレイ画面をミスする前へ巻き戻ししてフラッシュバック機能を使えば,あ〜ら不思議,その時点からレースが再開されるのだ。
フラッシュバックできる回数は難度設定によって異なり,高難度では一切使えないようになっている。とはいえ,いささかズルい機能であるのは間違いなく,プレイヤーの評価も分かれそうだ。もっとも,大きな声では言えないけど筆者も何度かお世話になっている。
リアの流れをコントロールするドリフト走行が無茶苦茶楽しい! インベタギリギリでコーナーを舐めるような走りを決めよう |
小さな擦り傷からバンパーが弾け飛ぶような大きなクラッシュまでダメージ再現が見事。バンパー内までしっかり作り込まれている |
さまざまなレースに参戦でき,さまざまな車を乗りこなせる本作は,手軽にドライブゲームを楽しむのにはうってつけだ。(ル・マン 24分間レース以外は)どのレースも比較的短時間で終わるため,「ちょっと走ってみようかなぁ」という感じで遊べるのが個人的に好印象。前述のとおり,適切な挙動と難度設定により,多くの人が楽しめるようになっている。
もっとも,ストイックに自分のテクニックを高めたいとか,アドレナリンが吹き出すようなスピード感を味わたいという人には不向きかも。というのも,ストリートコースがメインになるため,狭苦しいコースでバトルをすることが多く,さらにライバルカーとの接触や小競り合いなどもあり,レースはやや大味な展開になるのだ。ときにイラっと来ることも多かったが,こういった要素に熱くなれる(笑って楽しめる)プレイヤーならば,本作の面白さを存分に味わえるはずだ。
まずは4Gamerに掲載した体験版(2種類)をダウンロードし,こだわりのグラフィックスやマシンダメージの再現,そして車の挙動など,GRIDならではのレースシーンを自分の目で確認してほしい。
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