連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第190回「どうすれば文章で食っていけるか」
で,よく言われるのよ。「“プロレスラーにしては”文章がうまい」って。違うの。逆。そもそも私,プロレスラーになる前はライターだったの。もちろん,今となってはプロレスラーのほうが本業になってしまったけど,何かを書いているときは意識の中ではライターであることのほうが強いのよ。ゆくゆくは文筆で一発当てて,働かずして印税で儲けて,イケメンというイケメンを札束でビンタしたい。そのために今はプロレスを頑張ってるの。ずいぶん遠回りな気がしなくもないけど。
話が逸れたわね。何が言いたいかというと,私が“プロレスラーにしては”文章がうまい,というのは完全にまやかしなのよ。別にうまくはないわ。ボロを出さないようにしてるだけ。すなわち,短文でつなぐ。これで大概は誤魔化せる。
「吾輩は今のところ名前がまだつけられていない状況の猫である」よりは,やっぱり「吾輩は猫である。名前はまだない」のほうが文章としてスッキリ見やすいし,独特のリズムが生まれるのね。これさえ気をつけときゃ,とりあえずはライターを名乗れるわよ。プロレスラーにしてもライターにしても,名乗ったもん勝ち。あとは仕事が来るかどうか。
では,文章がうまい人とそうでない人の差は何か? ま,ここにはいろんな要素があるわね。私にも分かんない。分かっていたらもうすでに夜な夜なホストクラブでイケメンを札束ビンタしてるわよ。
ともかく! 今の私は印税で暮らしていくことを夢見る35歳ゲイプロレスラーに過ぎず,どうすれば文章で食っていけるかを日々研究しているわけですよ。そして,その研究結果のうちの一つをここで発表するとしましょうか。
ライターとして売れる売れないの境目を分かつもの,それは「読者がその文章を読んでいられるかどうか」,これがけっこう大きな要素なんじゃないかと。要するに文章なんて,読まれなきゃ意味が無いのよ。
例え「面白くない」という評価をされたとしても,読まれたのであればその文章には意味が生まれるわ。逆に,どれだけ「面白い」という評判があったとしても,読んでない人にとっては文章としての意味なんてゼロなの。だから,読みやすさが重要。そしてその読みやすさを一番簡単に演出できるのが,「短文でつなぐこと」だと思うの。
RPGをクリアするには長い時間を使う覚悟がいるけど,例えばモンハンだったら「あともう1クエストだけ」って思ってプレイできるでしょ? で,結果的に2〜3時間プレイしちゃったりね。最初からその数時間をRPGに費やしても良かったんじゃ……? なんて後から思ったりもするけど,やっぱり40分程度でカタがつくと思えば,そちらのほうがとっつきやすい。
で,「タイムトラベラーズ」(PS Vita / 3DS / PSP)も,まさにそんな感じのゲイムと言えるでしょうね。自分で言うのもなんだけど,今週はうまくつながったわね。で,タイムトラベラーズ,ひと言で表現すると,短文をつないだ感じの構成。パッとプレイした感触だと,イシイジロウ氏の作品らしさが大爆発してる。分かりやすいところで言うと,「428 〜封鎖された渋谷で〜」(Wii / PS3 / PSP /iOS)っぽい。
まず,このゲイムが気になっている人の中には,今までのイシイ作品っぽさはちゃんとあるのか? っていう部分が気になっている人も多いと思うんだけど,そういう人に対して私は,「まぎれもなくイシイ作品だ」と言い切れるわね。ゲイムの物語を形作る一つ一つのパーツが,とても緻密に配置されていて,ストーリーが進むにつれてすべてが収束していく感じなんか,とくに。
ノベルタイプのアドベンチャーゲイムなので,ストーリーの好き嫌いはあるでしょうけど,それを踏まえた上で「プレイしやすい」っていうのも,このゲイムのいいところ。そして,この「プレイしやすい」には,難度も含まれているわ。
そう,今までのイシイ作品に比べて,格段に易しいのよ。これに関しては,ストーリー以上に好き嫌いが分かれる点かもしれない。ただ,さっき私は「文章は読まれなければ意味が無い」と書いたわよね? で,この考え方に賛同できる人ならば,難度が高くなく素直にストーリーを追うことができるこの作りを,きっと正しいと思うはず。
ストーリーをつなげる快感,その結果,ストーリーが流れていく快感。これは,いずれにしてもストーリーそのものに自信が無いとできない作り方ね。だって,このタイムトラベラーズは,プレイヤーにストーリーを読んでもらうゲイムなんだから。
そして,私はまんまとストーリーに引き込まれている。っていうか,厳密にはついついプレイし続けてしまっている。完全に制作サイドの策略にハマっているわけね。ま,悪い気はしないわ。サウンドノベルに抵抗が無ければぜひ。
あと,レベルファイブファンならば,細かいところにも注目していいかもしれないわ。私が気付いたところだと,「セキュリティコードのパスワードが428」「雷門大学という大学がある」「のちの強化ダンボールについての言及」。
こうした小ネタが,ゲイムの進行には全くと言っていいほど関係ないけど,けっこういろんな場面に散りばめられてるのよ。こういうのを全部探しだそうぐらいの勢いでプレイするっていうのも,楽しみ方の一つだと思うわよ。もうすでにプレイしてる人は,より楽しめる+αの要素として探してみたらいいわ。
ちなみに,私がプレイしているのはニンテンドー3DS版。PlayStation Vita版やPSP版との違いまではチェックしてないけど,とりあえず3DS版は,プレイするにあたって大きな不満はないわね。ま,好きな機種のを選べばいいんじゃないかしら。アドバイスになってないけど。
さて,今週はタイムトラベラーズを紹介したわけだけど。実はなにげに今,アドベンチャーゲイムの戦国時代なのよね。今週発売される「スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園」や,ちょっと前に出た「ROBOTICS;NOTES」(PS3 / Xbox 360)。えーとさらに,「実況パワフルプロ野球2012」(PS3 / PS Vita / PSP)のサクセスモードもアドベンチャー系と言えなくもない。
ちなみにパワプロ2012のキモは新モード「パワスタ」だと思ってるんだけどね。この話はまた機会があれば。ただ,ソーシャル的なアプローチはコンシューマのコンテンツになり得る,とだけ申しておきましょう。何だか知ったかぶった感じで,いけ好かないわね,私。ま,こんなところで。また来週。
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 3:「アーシャのアトリエ〜黄昏の大地の錬金術士〜」
PlayStation Vita:「プロ野球スピリッツ2012」
PSP:「CONCEPTION 俺の子供を産んでくれ!」
Wii:「零 〜眞紅の蝶〜」
ニンテンドー3DS:「タイムトラベラーズ」
Xbox 360:「トロピコ4 日本語版」
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(C)2012 LEVEL-5 Inc.
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