連載
インディーズゲームの小部屋:Room#353「The Vanishing of Ethan Carter」
久しぶりにハンター生活に復帰したら,すっかり腕がなまっていた筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第353回は,ポーランドの独立系デベロッパThe Astronautsの「The Vanishing of Ethan Carter」を紹介する。本作は,特殊な能力を持った探偵となり,失踪した少年の行方を追っていくという一人称視点のアドベンチャーゲームだ。まあ,もともと大した腕ではないんですけどね。ハチミツください(定型文)。
The Astronautsは,「ペインキラー」や「バレットストーム」の開発元として知られるPeople Can Flyの元メンバーによって2012年に設立されたデベロッパで,本作はそのデビュー作にあたる。本作のグラフィックスには,さまざまな角度で撮影した写真をデータ化し,それをもとにリアルなオブジェクトを再現する“フォトグラメトリー”という技法が使われており,非常に美しい景観が生み出されている。
主人公となるのは,タイトルにもあるEthan Carterという少年から奇妙な手紙を受け取った探偵のPaul Prospero。その手紙から何か不吉なものを感じたPaulは,Ethanが住むRed Creek Valleyへとやって来るが,そこには無人の荒れ果てた家々だけが残されており,Ethan自身も失踪していた。一体,ここで何が起こり,Ethanはどこに行ってしまったのか? その謎を探るため,PaulはRed Creek Valleyの調査を開始する……。
Paulはオカルトや超常現象を得意としている探偵で,彼自身にもある特殊能力が備わっている。実はPaulはある種のサイコメトラーのようなもので,物に残された記憶を読み取り,それを再現することができるのだ。ゲームではこの能力をフルに活用して,死者(?)の声を聞いたり,現場に残された遺留品から過去を再現したりしながら,Red Creek Valleyで起きた恐ろしい出来事の謎に迫っていく。
ネタバレを避けるために,ストーリーについてこれ以上深く触れることはしないが,ゲームシステムに目を向けると,本作はオープンワールドタイプのアドベンチャーになっており,ゲーム開始直後からRed Creek Valleyのほぼ全域を自由に探索できるのがもう1つの特徴。上述したフォトグラメトリーによって表現されたRed Creek Valleyの景観は,本当に溜め息をつくほど美しく,いつまでも眺めていたくなるほどだ。
しかし,オープンワールドタイプのマップを採用したことによって,ゲーム的には少し困ったことにもなっており,物語を進めるための謎や手がかりがどこにあるのかが非常に分かりにくく,ヒントも少ない。謎を解こうが解くまいが,どんどんマップの奥へと進めるため,手前のエリアにある手がかりを見落としたまま進むと,いつまでも経ってもストーリーが進展しないという事態に陥ってしまうのだ。
基本的には,手前のエリアの謎から順番に解いていくようになっているので,ゲームを開始したらまずは周辺をじっくりと調査するところから始めるといいだろう。
本作は探索と発見に重きが置かれており,謎解き自体はそれほど難しくないものの,ちょっとまどろっこしいところがあるのが個人的には気になるところだ。しかし,思わず息をのむほど美しいグラフィックスと,続きが気になるオカルトめいたストーリーは大きな魅力で,ぐいぐいと引き込まれてしまう。アドベンチャーゲームが好きな人はぜひプレイしてみてほしい。そんな本作は,Steamにて1980円で発売中だ。
■「The Vanishing of Ethan Carter」公式サイト
http://ethancartergame.com/- 関連タイトル:
The Vanishing of Ethan Carter
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