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[E3 2007#21]番外編:新しく生まれ変わったE3 Summitに見る,ゲーム産業新時代の幕開け
まず強調しておきたいことは,E3の縮小をもって,北米ゲーム市場の縮小と混同してはならないということである。E3 Summitへの変化は,そもそも旧E3で目に付いていたさまざまな弊害から脱するための処置であり,例えば,新世代機用ソフトのリサーチ&開発への投資が祟ってアメリカのゲーム産業が弱体化している,などという理由でないことは,今回のE3 Summitに至るまでの経緯を考慮すれば明らかだろう。
2006年,旧E3に参加していたハード/ソフトメーカーは総勢400社。90か国近い国々からゲーム業界関係者が集まり,その数は5万人を数えた。形式的とはいえ,これだけのゲーム業界関係者が一同に介するというのは,それはそれで凄いことだった。
一方E3 Summitでは,イベントの主催者であるESA(Electronic Software Association)の正規メンバー19社を中核として,合計でも37社しか登録されていない。この正規メンバーには,各プラットフォームホールダーやElectronic Arts,Ubisoft,THQ,Square Enix,Konamiといったゲームソフトのメーカーが含まれている。
このイベントへの参加資格は,これらの企業から商談依頼を受けた(あるいは申し込まれた)バイヤーや,招待された一部のメディアだけが得られるという「完全招待制」になったことから,当初の発表ではメーカー側を含めての参加者総数が5000人程度であった。参加企業,そして参加者ともに,実に10分の1の規模になったという計算は間違っていない。
「10分の1」を構成するESAのメンバーは,北米市場に展開している大手や中堅のメーカーばかりで,そもそも北米市場の年間売り上げの90%を,これらの企業が掌握していると言われる。そのほかの,10分の9の非ESA企業からの新作を実際に目の当たりにする機会がなかったのは非常に残念だが,年末から来年にかけてリリースされる大作/期待作は,今年のE3 Summitにおいて実質的にほぼ網羅されていると考えて良いだろう。
もちろん,無数の映像と音響による「情報の洪水」に,ある種の面白味を見出していた筆者のような人間にとって,あの喧騒が過去のものになったのは寂しい限りだ。何か,ゲーム業界やゲーマー達のお祭りが,無期限延期されたような気分である。今回参加しているメディア陣にも,ミーティング会場がサンタモニカ市内の各所に散らばっていることが不評で,E3 Summit不要論さえも,あちらこちらから聞こえてくる。
しかし,巨大なゲームイベントである必要がなくなりつつあったのも確かで,1995年に始まった旧E3は,第12回で役目を終えた。そして,次へのステップが切り開かれつつあるのが,2007年時点における現状である。
あと数年を待たないと,このE3 Summitがどのように成長していくのかは分からないが,新世代ゲーム機とWindows Vistaが出揃い,ブロードバンドや携帯ゲーム機の浸透を追い風としたカジュアルゲーム市場への着目は,まさに「ゲーム産業新時代」の,幕開けともいえる状況だ。そのマイルストーンになったという意味で,参加者から賛否両論のある今回のE3 Summitも,非常に有意義なものといえるだろう。(ライター:奥谷海人)
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