インタビュー
アジア戦略としてのオンライン版。「EA SPORTS FIFA Online 2」を開発する,EAシンガポールのプロデューサーに話を聞いた
せっかくの機会なので作品の具体的なプレイ要素のみならず,EAの世界戦略の中における立ち位置についても聞いてみた。一方で日本国内サービスにおけるコミュニティ機能については,ゲームオンがそのノウハウを活かして取り組む要素が大きいようだ。
中国サービスについては,現在も交渉継続中
4Gamer:
本日はインタビューに応じていただき,ありがとうございます。まず「EA SPORTS FIFA Online 2」のワールドワイドでのサービス予定国を,より細かく教えてください。
ご存じのとおり,韓国ではすでに正式サービスが始まって1年ほど経っています。タイとシンガポールでは間もなくローンチ予定,つまりクローズドβテストが始まります。ほかの国に関しては,現在交渉中です。
4Gamer:
大陸中国においては,すでに伝えられているとおりThe 9(第九城市)がサービスすると考えてよいのでしょうか?
シャルマ氏:
そうなると思います。ただしThe 9とは現在交渉中で,中国におけるローンチプロセスについて,まさに話し合っている最中です。
4Gamer:
今年のChinaJoyでは,EAブースに加えてThe 9ブースでも参考出品されていましたが,それは現状を反映してのことなわけですね。
シャルマ氏:
実はChinaJoyには行っていないので,詳しいところまでは分からないですが,そうだと思います。ChinaJoyの時点では,中国サービスに関する正式なプレスリリースも出ていませんでしたし。
ちなみにChinaJoy開催当時,私はシンガポールにおけるローンチ準備に追われておりました。
4Gamer:
なるほど。ところで「EA SPORTS FIFA Online 2」は,EAシンガポールの開発作品であると捉えてよいのでしょうか。EA本体ではなく。
シャルマ氏:
そのとおりです。開発は主にシンガポールで行われ,韓国におけるパートナーとの共同開発という位置付けです。
4Gamer:
サービス展開国を見る限り,サッカーの競技人口等々ではなくて,オンラインゲーム市場のサイズに応じてお話が進んでいるように見えますが,この認識は正しいでしょうか。
シャルマ氏:
そうかもしれませんね。確かにサッカーファンの数を基準にしているわけではなく,オンラインゲームやそのほかのWebコミュニケーション人口をカバーしたいというところから,現在のサービス予定国がリストアップされています。
4Gamer:
「EA SPORTS FIFA Online 2」の基本的なマーケットとしては,最初からアジア地域が想定されているのでしょうか。
シャルマ氏:
少なくとも現在はそうです。「EA SPORTS FIFA Online 2」に関してはまずアジアを中心に進めておりますので。
4Gamer:
それは,「FIFA」パッケージソフト版との差別化を考えてのことでしょうか?
シャルマ氏:
差別化というよりも,互いに補い合う位置にいると思います。違いがあるとすれば――発表会で述べたとおり――プレイヤーコミュニティに対するアプローチが挙げられますが,対立する製品同士というわけではありません。
4Gamer:
現実的な判断として,アジアでオンライン版を先に展開することの背景には,海賊版の問題がありますか?
シャルマ氏:
それも理由の一つではあるのですが,それよりも大きいのはコンソールゲームをめぐる違いです。欧米諸国ではコンソール機でゲームをプレイすることが多く,オンラインゲームについてはアジア市場のほうが先行しています。
4Gamer:
その考えを延長していくと,実のところ南米諸国は競技人口的にも,オンラインゲームの普及度からいっても,「EA SPORTS FIFA Online 2」の有望な市場であるように思えます。近くサポートする予定はありませんか?
シャルマ氏:
現状では,とにかくアジア市場に集中する予定です。これがある程度発展したあとには,そのあとどこを攻めるかという戦略が浮上するでしょう。そのとき,南米なりあるいは北米なりといった市場にフォーカスしていくことになると思います。
ブーストアイテムはチーム単位,
アバターアイテムは控えめ
4Gamer:
では,ゲーム自体について。サービス提供各国のナショナルチームのサポートは,個別に行われていますか?
FIFA包括のライセンスに基づいて制作されていますので,基本的に各国ナショナルチーム所属選手のデータは入っています。例えば韓国については,韓国代表チームのメンバーアップデートをゲーム内で実施していますし,選手のグラフィックス等については,開発を進めるうえでさらに改善していきたいと思っています。
4Gamer:
FIFA,アソシエーション自体に参加しているチームはOKだとして,そこに入ってくる可能性のあるローカルリーグ所属チームの選手も,可能性として再現される必要がありますよね? そこはどうなっていますか。
シャルマ氏:
まず,代表チームのメンバー変更には,常時データベースのアップデートで対応していきます。
4Gamer:
ではローカルリーグに実在するけれど,代表チームに入ってはいない選手のデータについては,どのように扱われていますか?
シャルマ氏:
プレミアリーグ(イギリス),ブンデスリーガ(ドイツ)などといった,代表的な四つのローカルリーグの所属選手については,サポートしています。
4Gamer:
では,FIFA包括と異なるライセンス交渉が必要だった選手データのサポート例は,これまでのサービスで存在しましたか?
シャルマ氏:
ライセンスについてはEA本体の所轄となりますので,私からあまり詳しいお話はできないのですが,例えばコリアン・リーグがその実例ですね。そういったわけで,別個に交渉が必要だった例はあります。
4Gamer:
分かりました。ところでこのゲームは,基本無料/アイテム課金で運営されると聞いています。韓国サービスを通して,有望と目されたアイテムにはどういったものがありますか?
シャルマ氏:
何が売れているかについては,機密条項なので……。
4Gamer:
では,どんな有料アイテムが用意されているか,大まかなところだけ教えてください。
シャルマ氏:
韓国サービスでは,二つの人気ジャンルがありました。一つは選手のカスタム/デコレーションアイテム,もう一つはチーム単位での拡張アイテムですね。
4Gamer:
選手をデコレーションするアイテムというと,具体的にはどんな感じでしょうか?
シャルマ氏:
リストバンドやヘッドバンド,ニーパッドなどの小さなものです。
4Gamer:
では,それほど選手の能力を大きく左右するものではないと。
シャルマ氏:
そうです。能力的に変化があるわけではありませんが,別のチームと戦っているときに目立ったり,見分けやすかったりするというメリットがあります。
4Gamer:
では,能力を引き上げるのは主にチーム単位で適用するアイテムのほうでしょうか?
シャルマ氏:
はい。減ったスタミナをどれだけ早く回復できるかなど,発揮能力に関わる部分ですね。
課金アイテムの中身とコミュニティ機能は,
ゲームオンの仕切り
4Gamer:
オンラインバージョンとして,コミュニティ関連とコミュニケーションの機能に注力するというお話があったかと思います。これについて,もう少し詳しいお話をいただけますか?
「ギルド」の中身については,むしろゲームオンさんが取り組んでいかれる部分なので,私から詳しいお話はできませんが,「ギルド」以外にもフレンドリストやチャットリスト,8プレイヤーまで参加できるトーナメント機能などを備えています。
4Gamer:
ところで,プレイヤーの立ち位置はチームのオーナーなのでしょうか,監督なのでしょうか?
シャルマ氏:
プレイ内容からすれば,監督でしょうね。プレイを重ねることで監督としてのポイントが溜まり,それを使うことで選手を連れてチームを移ったりもできますから。
4Gamer:
では,一人のプレイヤーはアカウント上,いくつまでチームを持てるのでしょうか。
シャルマ氏:
3チームまでです。
4Gamer:
それはオンラインRPGでキャラクターを複数持てるのと同じで,3チーム互いの存在は排他だと考えてよいのでしょうか?
シャルマ氏:
そのとおり,まったく別個です。その3チームの間で選手を入れ替え可能だったり,戦績が合算されたりはしません。
4Gamer:
選手の入れ替えという話題が出たところで,発表会でも出た,選手のオークションとトランスファー(移籍)について教えてください。
シャルマ氏:
シングルプレイでもマルチプレイでも,新しい選手は補充できます。これが選手のトランスファーです。ただし,これは最大人数が決まっていますので,今度は自分のところの選手をオークション市場に出して,ほかのプレイヤーに落札してもらうことが可能なのです。
4Gamer:
選手獲得の対価として支払うのは,一種のゲーム内通貨だと考えればよいのでしょうか。
そうです。もちろん現金ではありません(笑)。プレイを重ねることでゲーム内通貨=ポイントが増えていきます。ちょっと詳しく説明しましょう。
シングルプレイのとき,マルチプレイのとき,そしてある種のアイテムを入手したとき,それぞれリーグポイントが入手できます。そして,このリーグポイントが,例えば先ほどの選手獲得の対価として使われるわけです。
4Gamer:
リーグポイントは選手だけでなく,アイテムの入手にも使えるわけですね?
シャルマ氏:
はい。ただしどのアイテムをリーグポイントで購入し,どのアイテムに現金が必要になるかは,日本サービスに関しては未定です。これから始まるβテストで,動向を見定めてから,ですね。
オンラインゲーム市場そのもののあり方が,日本と韓国では異なります。韓国市場での経験を踏まえつつも,日本ではどういったことが必要になるか,注意深く見極め,決めていかねばなりませんので。
4Gamer:
では最後に,日本のサッカーファンおよび「EA SPORTS FIFA Online 2」をプレイしてくれるであろう人に向けて,ぜひメッセージをお願いします。
シャルマ氏:
やはりサッカーは,世界をつなぐことのできる競技だと思っています。みなさんにはぜひ,勝っても負けても自分のチームを適切にサポートできるような楽しみ方を,していただきたいと思っています。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「FIFA 08」だって,日本ではちゃんと売れているものの,やはりマーケット全体との割合で見た場合,欧米とは比較にならない。「EA SPORTS」ブランド側から捉えたとき,日本はこれから開拓されるべき市場なのであり,そこはまた,EA アジア・パシフィックブランチの地盤でもあるわけなのだ。
ChinaJoyにおける「EA SPORTS FIFA Online 2」の展示にまつわる謎が解けたという個人的な感慨はともかくとして,サッカーそのものではなくサッカーゲームをオンラインでサービス展開するときの市場認識で世界を眺めてみるのも,なかなか興味深いと思った次第である。
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