ムービー
カプコンの新作,「Bionic Commando」の詳細がNVIDIAのイベントで紹介
Bionic Commandoの詳細が公開に
Christian Svesson氏(Corporate Officer and VP of Strategy Capcom) |
「カプコンは,家庭用ゲーム機にフォーカスしている企業であり,PCゲームのスタジオとしては決して大きくありませんが,PCは今後,無視できない重要なゲームプラットフォームになると考えています。この先,カプコンは欧米ゲームスタジオと組み,世界市場向けにさまざまなPC向けタイトルをリリースしていく計画です」とカプコンのChristian Svesson氏は述べ,新作「Bionic Commando」を披露した。
Bionic Commandoは,1988年にファミコン向けにリリースされたアクションゲーム,「ヒットラーの復活」を大幅にグレードアップした続編だ。主人公や世界観こそ変更はないものの,21世紀のタイトルとして,2Dから3Dのアクションゲームへ生まれ変わる。
名作「ヒットラーの復活」が三人称視点の3Dアクションゲームに生まれ変わった |
いわば「洋ゲー」にカプコンブランドを付けた格好になるわけだが,前作が日本製の2Dアクションゲームだったことや日本市場への投入も意識した関係か,本作は日本でのウケがよい三人称視点のアクションアドベンチャーゲームになっている。
新生Bionic Commandoは
本当の3Dアクションゲームである
Bionic Commandoは本物の3Dゲームである? |
Bionic Commandoの主人公ネイサン・スペンサーの腕にはバイオニックアームと呼ばれる特殊装備が埋め込まれており,そこからワイヤーショットを射出できる。これを3Dシーンの任意の場所に引っかけて,ターザンのような振り子アクションを繰り出せる。このワイヤーの射出,スイング,切り離しによって3D環境内を立体的に移動でき,それを指してGRINは「これこそ3Dゲーム」と言いたいわけだ。イメージ的には映画「スパイダーマン」のアクションを連想してもらうと分かりやすいかもしれない。
3D空間に実際にインタラクトできるBIONC COMMAND |
振り子アクション,3Dシーンとのフルインタラクト,物理シミュレーションとアニメーションの融合といったテーマへ取り組む姿勢は,PlayStation 2用タイトルとして高い評価を得た「ワンダと巨像」を思い出させる。
岩壁や草むらにワイヤーショットを撃ち込んだ際の破片の飛散も効果物理として処理されており,これらはプレイ感覚とは無関係な物理シミュレーションではあるが,リアリティ向上に貢献している。
グラフィックスエンジンには
ディファード・レンダリング・パイプラインを採用
グラフィックスに関しては,最近,にわかに注目を集めているディファード・レンダリング(Deferred Rendering,またはDeferred Shading)技術が実装されている。
ディファード・レンダリングとは,元々複数の光源処理などで最近よく使われていたもので,陰影などの計算をあと回しにして,そのあとのレンダリングに必要となるパラメータを事前にバッファリングしておくテクニックだ。実際のピクセルシェーダによる陰影処理はあとから行うので「Deferred(遅らせた)レンダリング」という名前が付けられている。最近では,レンダリングの前にいろいろなデータを用意しておく手法一般で広く使われる単語になっている。
一つのシーンのレンダリングに高度なピクセルシェーダプログラムを複数動作させる場合,それぞれのピクセルシェーダプログラムが同じ計算中間値を使用することがある。それが複雑なベクトル計算だった場合,その中間値を求めるためにGPUに負荷がかかってしまうので,だったら,その複数のピクセルシェーダプログラムで必要となる計算中間値を共有させることを考えればいいことになる。
そこで,DirectX 9以降で有効になったMRT(Multi-Render-Target:一度のレンダリングパスで複数バッファに異なる値を同時出力するメソッド。DirectX 9では4枚,DirectX 10では8枚の同時出力が可能)を活用し,複数のバッファ(テクスチャ)に対して,そのあとのピクセルシェーダプログラムで活用することになる値を事前にレンダリングして格納してやるのだ。結果は,レンダリング解像度と同じ解像度(場合によってはそれ以下)のスクリーンスペース(画面座標系)で出力するのが一般的であり,出力する値としては深度(Z)値,ポリゴンを構成するピクセル単位の法線ベクトル情報などがある。MRTを使えば,これらのデータを一度に複数のバッファに書き込むことができるわけだ。
まぁ,とりあえず「複雑なシェーダを動かす際の最適化テクニックの一つ」だと思っておけばよいだろう。
リアリティを増すためのさまざまな新技術
このディファード・レンダリングを使った効果の例としてGRINは,「アンビエント・オクルージョン」(Ambient Occlusion)を挙げている。
ここでいうAmbient Occlusionとは,スクリーン・スペース・アンビエント・オクルージョン(SSAO:Screen Space Ambient Occlusion)のことで,Crytekの「Crysis」や,Epic Gamesの「Gears of War 2」にも採用されている先進のビジュアルテクニックの一つだ。
3Dゲームの影生成において,デプスシャドウなどのテクニックを使って生成できるのは,光源からの直接光が生成したものだけとなる。だが,現実世界では,光源からの直接光だけでなく,その光が反射したり散乱したりすることでできる二次的な光源,すなわち環境光(Ambient Light)が作り出す柔らかい影も存在する。こうした影をまともに生成しようとすればレイトレーシング的なアプローチが必要となるわけだが,これを大胆なポストプロセス的アプローチで実現してしまおうというのがSSAOだ。「Ambient Occlusion」を直訳すると「環境遮蔽」という意味不明な日本語になるが,これには「環境光から遮蔽された陰影を作り出す」というような意味が込められている。
SSAOとリアルタイムシャドウとの親和性もグッド |
実際のレンダリングでは,着目しているピクセルを中心に,複数の適当な方向 (4〜8方向など,許容負荷に応じて選ぶ) で適当な範囲の深度値を深度バッファから読み出すことで,その地点が周囲からどのくらい遮蔽されているかを調べていく。もちろん,局所的な遮蔽しか調べられないが,実際問題としてはそれでかまわない。調べた結果,そこの遮蔽の程度が強いのであればそこは暗くなる確率が高いと判断でき,暗い影を付けてやるのだ。
Epic Gamesの新生Unreal Engine 3もSSAOに対応済み |
ただし,ディファード・レンダリングにも欠点はある。事前にZバッファレンダリングをしている関係上,描画時点ではサブピクセル単位のZバッファの更新ができず,それをキーにして行うマルチサンプル・アンチエイリアス (Multi Sampled Anti Aliasing:MSAA)の実行が不可能となっていた。
GRINはこの点について「Bionic Commandoではディファード・レンダリング+アンチエイリアスを実現している」とし,「おそらく,ディファード・レンダリングを実装しながらもMSAAを併用した初めての3Dゲームだと思う」と述べている。
これはたぶん,MRTを使ってカラーバッファに第二の疑似Zバッファを構築することで実現しているものと思われるが,追加のビデオメモリの消費と帯域負荷がかかることになる。余談になるが,DirectX 10.1ならば,ピクセルシェーダからZバッファに対してMSAAを活用しつつアクセスができるため,そうした余計な処理を実装せずともMSAAが実装できる。
PC版Bionic CommandoのPC版は見所多数 |
ムービー中でも確認できる霧や水煙は,パーティクル(3Dスプライト)を使用して描かれているのだが,それらが背景やキャラクターと重なったときにも境界線が見えず,溶け込んだように自然に描かれているのが分かるだろう。これはパーティクル描画の際にシーンの深度値を調べて,その境界線に向かってパーティクルの透明度を上げることで回避するというテクニックで,最近よく見られるものだ。
「被写界深度のシミュレーションにも力を入れた」とのことだが,手前のボケが広範囲にわたる写真的な表現になっており美しい。
個人的にはシーンに存在するすべての植物が動的キャラクター(プレイヤーや敵など)と相互インタラクションするところに感銘を受けた。
Bionic CommandoのPC版は
GeForce最適化がなされている
GRINはNVIDIAとの強い関係性を強調。PC版にはNVIDIAハードウェアが最適? |
Bionic CommandoはPLAYSTATION 3およびXbox360にも提供されるが,PC版には最新GPUを想定したかなり独自のグラフィックスエフェクトや物理エフェクトを盛り込んでくる模様だ。発売を今から楽しみにしていよう。
- 関連タイトル:
バイオニック コマンドー
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