レビュー
筐体の刷新で完成度を増した新世代モデル2製品
DHARMA TACTICAL MOUSE(DRTCM15)
DHARMA TACTICAL MOUSE(DRTCM12)
DHARMA TACTICAL MOUSE(DRTCM15&DRTCM12) メーカー:DHARMAPOINT(シグマA・P・Oシステム販売) 問い合わせ先:シグマインフォメーションセンター 0120-917-498 予想実売価格:8000円程度(※2010年7月16日現在,両製品とも) |
写真左下がDRTCM15,右上がDRTCM12。ソールのデザインは共通ながら,センサー位置は大きく異なる。なお,ソールは換えが1セット付属 |
レーザーセンサーを搭載するDRTCM15と,光学センサーを搭載するDRTCM12。面白いのは「下2桁の1桁めは製品形状,2桁めはセンサーの世代をそれぞれ示す」というDHARMAPOINTの製品命名ルールに則って共通の新型筐体を採用しながら,両者でセンサー位置が異なるところ。後者のセンサーがごくごく一般的な前後左右中央付近に配置されているのに対し,前者では左メインボタン(=右手人差し指)のほぼ真下に配置されるという,特異な設計になっているのである。
これまでも筆者は,センサー位置の違いがもたらす操作感の違いはマウス選びにおける重要な要素だと触れてきたが,こうして,同じ筐体を採用しながら異なるセンサー位置の製品が登場してきたというのは非常に興味深い。
今回4Gamerでは,製品版サンプルをDHARMAPOINTから入手したので,DRTCM15については発売当日,DRTCM12は発売直前となるこのタイミングで,使用感をお伝えしたいと思う。
DRTCM15製品概要
DRTCM12製品概要
形状は「ミニIE3.0」で,かなりの持ちやすさ
どのような持ち方にもフィットするのがうれしい
DRTCM15の開発コードネームは「Cutlass」(カトラス,反り身の短剣)とされているが,たしかに全体として曲面が多用された印象。ただ,曲面を多用したマウスというと,これまでは大型のものが多かったのだが,DRTCM15&12のサイズは実測67(W)×121(D)×45(H)mmで,小型とまではいかないものの,中型と呼べるくらいの大きさには収まっている。
重量はDRTCM15がケーブル込みで実測110g(※ケーブルを重量計からどかした参考値は92〜95g),DRTCM12が同112g(94〜97g)。DRTCM15とDRTCM12でほんのわずかに重量が異なる理由は分からないが,センサーユニットの重量差や,前者だと上面がさらさらした樹脂,サイドがザラ付きのある滑り止め加工がなされた樹脂を採用するのに対し,DRTCM12では上面,サイドともラバーコートされているといった表面加工の違い,あるいはその両方が影響している可能性はあるだろう。
手に持ってみてもその印象は変わらず,とくに,マウスを「つまみ持ち」したとき,右サイドの上面から底面にかけての膨らみが薬指に伝わる感覚は“いかにも”といったところだ。
つまみ持ちだけでなく「かぶせ持ち」など,いろいろ持ち方を試してみたが違和感はなく,一回り小さくなった分,IE3.0よりむしろ取り回しやすくすら感じたほど。形状面における完成度は高い水準に達していると述べていい。
なお,両製品ではケーブルの付け根がマウスの中央からやや左メインボタン側へズレた位置にあり,おそらくDRTCM15でセンサーが左に寄っていることに合わせた変更ではないかと思われるが,この付け根の位置に関しては良いとも悪いとも感じられなかった。
ボタンの完成度にも不満なし
設定ツールは見た目が変われど内容は変わらず
左右メインボタンは,最近のマウスで多用されている「本体シェルとの一体成形」型でなく,独立したタイプ。手首側から見て最も手前の部分であっても容易に押下可能だ。マイクロスイッチ的でカチカチとしたクリックには安定感がある。
使ってみた限り,左サイド手前側の膨らみに親指をぺったり付けて持つと誤爆しやすかった。親指の先を立ててホールドするか,左右メインボタンの前後中央より奥側に親指の先が来るように持てば問題ないので,このあたりは意識する必要がある。
チルト機能つきのホイールも安心して使える完成度になっている。横方向への入力にはある程度の力が必要なため,ホイールクリックやスクロール操作中に左右へ倒れてしまうようなことはなかった。ホイールクリックしながら上下へ回転させたときには意図せず横に倒れることもあったが,普通,こんな操作をすることはまずないので問題ないだろう。
ちなみに,それでも心配な人のため,DRTCM15&12には,本体底面に「TILT」というスライドスイッチが用意されており,このスイッチを「OFF」に設定すると,本体内蔵のストッパーがチルト機能をハードウェア的に無効化してくれるようになっている。「OFF」にすれば左右チルトは使えなくなるので,そもそもチルトは使わないとか,日常的には使うがゲーム中は絶対に使わないという人にとっては役立つはずだ。
ドラッグ&ドロップ式で操作するというユニークな仕様や,設定内容は基本的にマウス内蔵のフラッシュメモリへ即時書き込まれて反映される仕様は慣れるまで違和感があったものの,ぱっと見の分かりやすさは,初代からずいぶんと改善した印象だ。
単一キーを割り当てる場合でも,SCRIPT SETTINGから「単一キーの押下」というスクリプトを作成し,それをボタンに設定してやる必要があるのは,初代ダーマコントロールと同じだ。
リフトオフディスタンスの調整を行う「LIFT ADJUSTMENT」については後述するが,ともあれ,CPI SETTING&TOOLタブの内容は全プロファイルで共通だ。プロファイルごとに異なるCPIやレポートレート設定を行ったりはできないので,この点は押さえておきたい。
センサーの追従性はまずまず合格点
前衛的なDRTCM15のセンサー位置は一長一短か
さて,冒頭で述べたとおり,DRTCM15が搭載するレーザーセンサーは,本体左前方へ“極端に”寄っている。
センサーが前方に寄ると,円運動の支点である手首や肘から,末端であるセンサーまでの距離が伸びるため,同じ腕の振り方をした場合でもセンサーの移動距離が長くなり,操作感覚が変わってくる。これが肩や肘からの距離であればまあ誤差と言える範囲なのだが,手首からの距離となると影響は小さくないのだ。
ともすれば,手首支点での操作時のみセンシティビティ設定を上げたかのような状態になるので,慣れないうちは照準の動きに混乱してしまい,手首の動きに頼りきったaimになることもある。そういった面からとっつきやすさについて述べるなら,センサーが中央にあるDRTCM12に軍配は上がる。
実際,かぶせ持ち派である筆者の場合,センサー位置を意識して,肩/肘支点の操作と手首支点の操作をうまく使い分けると,オールレンジで対応できるようになるというメリットが得られた。とくに,こちらの不意を突くような相手の動きに対し,フリックショットで合わせられるチャンスが増した印象だ。
もっとも,相応にクセがあるのは間違いない。DHARMAPOINTの英断は尊重するが,DRTCM15とDRTCM12,どちらのセンサー位置がいいのかはプレイヤーそれぞれの判断にお任せするほかないだろう。
……センサー位置に関する言及を終えたところで,今回も表1に示したテスト環境で,2製品の特性をチェックしてみたい。なお,センサーのスペックは,DRTCM15がトラッキング速度150IPS,フレームレート11750fps,最大加速度30Gで,DRTCM12が同40IPS,6400fps,15Gだ。命名ルールから想像できるように,DRTCM12が搭載するセンサーのスペックは,「DHARMA TACTICAL MOUSE OPTICAL(DRTCM02)」と同じである。
テストに当たっての基本設定とテスト方法は下記のとおりだ。
●DRTCM15の基本設定
- ファームウェアバージョン:34
- ダーマコントロール2バージョン:2.16
- トラッキング解像度:5040CPI
- レポートレート:500Hz
- そのほかダーマコントロール2設定:LIFT ADJUSTMENT設定から「リフト機能をカット」(※それ以外はデフォルトのまま)
- Windows側設定「マウスのプロパティ」内「速度」スライダー:中央
- Windows側設定「ポインタの精度を高める」:オフ
●DRTCM12の基本設定
- ファームウェアバージョン:35
- ダーマコントロール2バージョン:2.16
- トラッキング解像度:1600CPI(※ハードウェアのネイティブCPI)
- レポートレート:500Hz
- そのほかダーマコントロール2設定:LIFT ADJUSTMENT設定から「リフト機能をカット」(※それ以外はデフォルトのまま)
- Windows側設定「マウスのプロパティ」内「速度」スライダー:中央
- Windows側設定「ポインタの精度を高める」:オフ
●テスト方法
- ゲームを起動し,アイテムや壁の端など,目印となる点に照準を合わせる
- マウスパッドの左端にマウスを置く
- 右方向へ30cmほど,思いっきり腕を振って動かす「高速動作」,軽く一振りする感じである程度速く動かす「中速動作」,2秒程度かけてゆっくり動かす「低速動作」の3パターンでマウスを振る
- 振り切ったら,なるべくゆっくり,2.の位置に戻るようマウスを動かす
- 照準が1.の位置に戻れば正常と判断可能。一方,左にズレたらネガティブアクセル,右にズレたら加速が発生すると判定できる
テストに用いたゲームタイトルは「Warsow 0.5」。本テストにおいて,ゲーム内の「Sensitivity」設定は,「180度ターンするのに,マウスを約30cm移動させる必要がある」という,マウスに厳しい条件,具体的には0.17(5040CPI),0.6(1600CPI)を用い,読み取り異常の発生を分かりやすくさせている。
そして,DRTCM15とDRTCM12の両製品のテスト結果が表2,3だ。
DRTCM15は,イマドキのレーザーセンサー搭載ゲーマー向けハイエンドマウスらしく,追従性,マウスパッドとの相性とも,非常に高い。「明らかに実用では使わない速度」で高速に動かしたときに,わずかながら加速のような挙動が見られたのも,これまでに登場したいくつかの製品と同じだが,心配するほどのものではない。
一方のDRTCM12も,光学センサー搭載マウスに求められる“普通の”使い方をする限り,問題はない。表で▲を付けたマウスパッドだと,かなり高速に振り回したとき,ポインタ飛びや強めのネガティブアクセルが見られたので,少しでもリスクを減らしたいローセンシティビティのユーザーは慎重にパッドを選んだほうがいいかもしれないが,その程度である。
なお,DRTCM0x時代にアップデートで実装されたリフトオフディスタンス調整機能は,DRTCM15&12のいずれにおいても利用可能だ。
先ほど述べたとおり,今回のテストに当たっては「リフト機能をカット」を選択しているため,表2,3における「反応しなくなる高さ」のデータは,あくまでも無効化したときのもの。ダーマコントロール2を使えば,DRTCM15は0〜785の範囲,DRTCM12は0〜8000の範囲で,自由に設定できるようになっており,リフトオフディスタンスは短くすることも長くすることも思いのままである。
持ち心地,センサーとも良好で,おすすめ
表面の質感とセンサー位置で選ぶのも一計か
ハイセンシのプレイヤーは迷わずDRTCM15だろうが,そうでなければ,両サイドの加工と,センサー位置の違いだけでどちらを買うか決めてしまってもいいくらいである。
……これまでDRTCM0xシリーズ,そして「DHARMA OPTICAL MOUSE(DRM26)」と,小型かつ左右対称形状の路線を歩んできたDHARMAPOINT。だが,その実績を捨てて異なる筐体を採用してきた今回のDRTCM15&12が,これまでで一番良いと断言できるレベルで仕上がっているのには,正直,少し驚いている。一言でまとめるなら,両製品ともお勧めだ。
- 関連タイトル:
DHARMAPOINT
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