レビュー
SideWinderの名を冠した7年振りの新作に見る,Microsoftの本気度
Microsoft SideWinder Mouse
» 2007年末の発売から時間がかなり経ってしまったが,fumio氏による「Microsoft SideWinder Mouse」のレビューをお届けする。奇抜なデザインと巨大なサイズが注目されがちな同製品を,FPSの国内トッププレイヤーはどう見たのか。気になる人はぜひご一読を。
量販店で購入できるMicrosoft製マウスとしてはひときわハデな同製品。今回4Gamerでは同社の日本法人であるマイクロソフトから製品サンプルを入手し,長期間使う機会を得たので,ゲームで使い込んだうえでのインプレッションを述べてみたいと思う。
外観からは感じ取れない
意外な持ちやすさが好印象
最も印象的なのが,本体左サイドのサイドボタンより手前側,右手親指が触れる部分だ。直線的なデザインがなされていることもあって,ぱっと見ただけでは気づきにくいが,実は中心部がわずかに窪んでいる。そして握ってみると,この窪みのおかげで,親指が自然に収まるようになっているのだ。
本体右サイドの膨らみも,「SteelSeries Ikari Optical」や同「Laser」と同じく,指と本体の隙間を埋める役割を果たしており,フィット感と持ち上げやすさの向上に一役買っている印象。しかも,Steel Series Ikariシリーズとは異なり,指先の収まるスポットの真上(※下の写真,黄枠で囲んだ部分)が若干外へ張り出していて,ここに指を引っかけられるようになっている。この構造のおかげで,マウスを持ち上げるときに右サイドの指が滑らないようになっているのだ。
親指と薬指&小指でホールドするときはもちろん,筆者のようにマウスを親指と小指のみでホールドするスタイルの場合でも,マウスが手から落ちていくようなことはない。これは大変ありがたいことである。
やや大きめで人を選ぶフォルムだが
サイドボタンの位置も含め,合う人には絶妙
ファーストインプレッションでも指摘されているとおり)日本人の手にはやや大きめであることと,盛り上がりが本体後方,手首側にある点が目立つ。
この盛り上がりは,筆者のように,マウスに手のひらを密着させ,かなり深めに握るタイプからすると大いに歓迎できる。マウスの“尻”全体を手のひらで包み込むような格好になってホールド感が上がり,指の負担も減らせるからだ。
さらに,深めに握ると,親指がちょうどサイドボタンに触れる位置に来る。筆者は普段,微妙にAIM(≒狙い)が狂うのを嫌って,サイドボタンをいっさい使っていないのだが,SideWinder Mouseの縦に並んだサイドボタンなら親指をほとんど動かさずに押し分けられるため,AIMの心配をあまりせずに使うことができる。これも嬉しい。
ただ,あまりにも持ち方を決め打ち過ぎているきらいもある。筆者と同じような握り方ではない,例えば手のひらを浮かせて指先でマウスをつまむように持つタイプからすると,本体後方の盛り上がりは邪魔だろう。また,浅く握るのが好きな人にとっては,サイドボタンもいささか遠く感じられてしまうはずで,このあたりは評価が難しいところだ。
高く評価したいのは,このケースがケーブルアンカー(※ケーブルスタビライザー,あるいはケーブルホルダーともいう)として機能すること。市販のケーブルアンカーを持っていないような人にとっては非常に有用であり,素直にいいアイデアだと思う。
テフロン含有率100%の白色と,50%の灰色,0%の黒が各1セットずつ用意されたマウスソールについても,「消耗品なのだから,1セットずつというケチなことは言わず,予備を用意してほしかった」など,言いたいことはあるが,選択の自由が用意されているのはいい。ちなみに白色ソールの滑りは,市販のソール(※Hyperglideなど)とほぼ同じか,わずかに滑りずらい程度のものと理解しておけば問題ないだろう。
本体,そしてメインボタンの重さは気になるが
慣れれば総じて良好な使い心地
ここからは筆者が数週間に亘(わた)って実際に使ったうえでのインプレッションをお届けしたいと思うが,筆者はマウスの利用に当たって,ドライバソフトウェアをインストールせず,OS標準ドライバを用いるため,設定ツールに関する言及はいっさい行わない。あくまでハードウェアとしてのマウスについての評価となることをお断りしておく。ソフトウェア周りについてはファーストインプレッションが詳しいので,併せて参照してもらえれば幸いだ。
テスト環境は表のとおり。いわゆるスポーツ系に分類されるFPS「Warsow」のマルチプレイを中心に評価した。
もっとも,重さが原因で,ゲーム操作そのものがやりづらくなっているような印象はない。その理由としては,
- 本稿の序盤で述べた窪みのおかげで,操作に当たってさほど大きな力は必要ない
- センサーの位置が本体中央よりやや前方に設けられているおかげで,左右への切り返しや指先での微調整を行いやすい
- 同じくセンサー配置のおかげで,レーザーセンサー特有となる,リフトオフディスタンスの長さがそれほど大きな障害にはなりにくい
ことが挙げられるだろう。一般的なUSBデバイスだとポーリングレート(※レポートレートともいう)が125Hzのところ,PCと接続しただけで500Hz動作するため,ポインタの動きも滑らかだ。
半面,若干気になったのがメインボタンで,筆者が慣れ親しんでいるRazer製品と比べると,やや重いクリック感に仕上がっており,これがゲームプレイ時の正確な操作を妨げる例があった。
Warsowの場合,常にジャンプを繰り返して移動速度を保つ必要がある。具体的には,平均して約0.8秒に1回のペースで“ジャンプボタン”を押さねばならない。そのため,筆者は同ボタンをマウスの右クリックに割り当てているのだが,SideWinder Mouseだと,ゲーム中まれにある「ジャンプボタンの連打が必要なシーン」で,メインボタンの重さが災いしてジャンプに失敗することがあった。
この問題は,マウスを浅めに持った状態で,メインボタンの“根元側”をクリックするような状態では,より頻発するようになる。持ち方次第といってしまえばそれまでだが,クリック感そのものはカチカチとしっかりしているだけに残念だ。
ちなみに,マウスパッドとの互換性は以下のとおり。裏返すことで「Speed」「Control」とサーフェスを切り替えられるRazer eXactMatと,SteelSeriesのIcemat Purple 2nd Editionは厳しい感じだったが,それら以外ではとくに問題なく動作した。
- DHARMA TACTICAL PAD[HARD TYPE]:○(ほぼ問題なし)
- Icemat Purple 2nd Edition:×(すぐ飛ぶ)
- Razer eXactMat Speed:△(若干厳しい)
- Razer eXactMat Control:×(わりとすぐ飛ぶ)
- Razer Mantis Speed:○(ほぼ問題なし)
- SteelSeries QcK mass:○(ほぼ問題なし)
最後に,十分に検証できたとはいい難く,原因も特定できていないので余談に留めるが,プレイヤーの反応速度を測定するAdobe Flashである「Reaction Test」を使って自分の“反射性能”を測定したところ,SideWinder Mouseを使ったときだけスコアが平均で0.03秒よくなっていた。最初はポーリングレートの影響かとも思い,別途500Hz動作するマウスでもテストしてみたが,やはりSideWinder Mouseのほうがスコアがいいのだ。
ほかに考えられる原因は,メインボタンのスイッチの違い――SideWinder Mouseは一般的なマイクロスイッチではなく,タクトスイッチを採用している――くらいだが,これ以上は調べようがないため,何ともいえないところである。
選択肢としては十分にアリ
自分に向くか,購入前によく見極めるべき
性能的には,光学センサーを搭載した最新世代のゲーマー向けマウスには劣るが,実用上問題のないレベルにまとまっており,全体の作りもしっかりしている。とにかくその仕様が人を選ぶものの,手にフィットさえすればいいデバイスだ。気になった人は,購入前に展示機を触るなどして,しっかり吟味してほしい。フィット感が気に入った人なら,購入して後悔することはないだろう。
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