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[COMPUTEX]Intel,「50倍省電力」なMIDプラットフォーム「Moorestown」を解説。「Quake III」が軽快に動作
セッションの主役は,手のひらサイズのインターネット端末「MID」(Mobile Internet Device)。Netbookを考えてもらえば分かるとおり,現行の“Ultra Mobility”端末は,PCゲームをプレイすることがほとんど,あるいはまったく想定されていないが,今後はどうなるだろうか? IntelでMID製品部門を率いるAnand Chandrasekher(アナンド・チャンドラシーカー)氏が語った内容から,ポイントをピックアップしてまとめてみたい。
アプリ実行時の消費電力が大幅に低減
アイドル時はMenlowプラットフォームの50倍省電力に
さて,Chandrasekher氏はまず,現行世代のAtomをベースとするMenlowプラットフォームがさまざまなMIDを生み,エコシステム(≒業界全体としての健全な収益構造)を構築できたと,現状を総括する。
また,「『Atom Z550/2GHz』では既存のモバイルプラットフォームと比べて4倍ものパフォーマンスを達成した」と述べ,この,圧倒的に高いパフォーマンスが,新たな市場を生んでいるとも説明。その例として氏は「Quake III」のプレイデモを示し,「Atom搭載機があれば,暇なときにこういうゲームをプレイできるのだ」と述べる。
Atom Z550は,ARMベースとなる現行世代のモバイルプラットフォームと比べて,最大で4倍のパフォーマンスを実現するという |
壇上にオブジェとして飾られていたMIDの一つでは,実際にQuake IIIが実行されていた |
Intelは,Atomが登場したとき――正確には,登場する前から――首尾一貫して,モバイルにおけるソフトウェア互換性の重要性,要するに「x86であること」の重要性を強調してきたが,Chandrasekher氏は,Moorestownで,これに加え,その省電力性を大きくアピールする。
「CPUとチップセットの2チップ構成を実現したことで,Webブラウジングやサウンド生成を行ったときの消費電力が大きく改善している。また,アイドル時で比較すると,Menlowから50倍もの改善を見せた」とし,実際に,ライブデモで実測値を公開した。
Webブラウジング中に動作するコンポーネントが少なくなるため,MenlowよりもMoorestownのほうが消費電力は小さくなるという |
MoorestownとMenlowで,スタンバイ時,720pビデオ再生時,サウンドデータ再生時の消費電力を比較したグラフ。違いはご覧のとおり |
そんなMoorestownで,OSとして訴求されるのが「Moblin 2.0」だ。Moblin 2.0は,「Intel Mobility Event」でも取り上げられていたが,今回興味深かったのは,Moblin 2.0上で,Googleの携帯デバイス向けOS,「Android」のソフトウェアを動かすデモが行われた点である。
AndroidはLinuxベースだが,ソフトウェアはJavaベースなので,Moblin 2.0上でAndroid用ソフトウェアが動作するというのは,不思議でもなんでもない。実際,Moblin 2.0のβ版がリリースされたとき,そのようにアナウンスされていた。
ただ,Androidの主要なプラットフォームはARMアーキテクチャのCPU,つまりAtomのライバルである。AndroidアプリケーションをMoblin 2.0に取り込むというのは,Androidのソフトウェア資産を,ARMアーキテクチャの専売特許ではなくしてしまうということでもあるわけで,このあたりにIntelの作戦が見え隠れしており,なかなか面白い。
「またQuake IIIか」と思うかもしれない。確かにQuake IIIは古く,動作が軽快な3Dゲームなのだが,ゲーム本体がオープンソースになっており,移植が容易なため,こういう場で利用されやすい,ということなのである。
最後になるが,会場にはいくつかMIDの実機が展示されていたので,写真で紹介しておきたい。Moorestownで,性能が向上し,省電力性が高められているという正統進化が示されたことで,ガジェット好き,携帯デバイス好きな読者のなかには,興味を惹かれた人も多いと思う。少なくとも,Quake III時代の3Dゲームなら動くわけで,解像度次第では,カジュアルな3Dゲームや,2Dゲームなら十二分に動作させてくれそうだ。
MoorestownベースのMIDは,2009年後半から市場に投入される見込み。既存のAtomプラットフォームが,ゲーム用途の期待には応えてくれなかったことを考えると,過度な期待は禁物だが,面白そうなデバイスがまもなく,続々と登場しそうなことだけは確かである。
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