レビュー
全裸で疾走し,糞尿をまき散らして街を牛耳れ! ますます悪ふざけの過ぎる第2弾
セインツ・ロウ2 日本語版
ズーは1月30日(金),PC版「セインツ・ロウ2 日本語版」を発売する。
本作は架空の大都市「スティルウォーター」で,一人の人間がギャングとしてのし上がっていく物語を描いたクライムアクションゲームで,前作「セインツ・ロウ」の正統な続編となっている。
前作のラストで船の大爆発に巻き込まれ,壮絶な死を遂げたかと思われていた主人公。しかし,実は意識不明のまま刑務所に収監されており,本作で数年ぶりに目を覚ます。
目を覚ますやたちまち脱獄した主人公は,再びスティルウォーターに舞い戻り,かつての所属組織「サード・ストリート・セインツ」(以下,セインツ)の栄光を取り戻すために動き出す……というのが,「セインツ・ロウ2」の大まかなストーリーだ。
強烈な個性を放つ敵ギャング達に対抗し
己のギャングスタ・スタイルを見せ付けろ!
かつて,敵対するギャング組織をすべて叩き潰し,一度はスティルウォーターの頂点に君臨したセインツだったが,主人公の投獄とリーダーの失踪によってあえなく瓦解。
「2」では裸一貫から出直すハメになり,しかも新たに台頭してきたギャングどもは,前作以上にアクの強い連中と来ている。まさに踏んだり蹴ったりといった状態だ。
■ローニン
東京からやって来たアジア系ギャング組織。サムライを意識しているのか,背中に日本刀をかつぎ,変な漢字の書かれた車やバイクで街を疾走している。間違った日本観バリバリの非常にエキセントリックな連中。
主にカジノやエンターテインメント産業を裏から牛耳っており,潤沢な資金を蓄えている。街の開発を一手に担う大企業,アルター社ともつながっているようだ。
■ブラザーフッド
脳ミソまで筋肉で出来ているような,街のゴロツキどもで構成された暴走ギャング組織。無数のピアスと全身に彫られたタトゥーが特徴で,巨大なモンスタートラックを乗り回している。
銀行で通帳の代わりに圧倒的な暴力を提示し,無理やり金を引き出すような荒っぽい連中だ。
■サンズ オブ サムデイ
ハイチ人によって構成された,宗教色の強いギャング組織。組織名にブードゥー教の死の神の名を冠しており,独特のレゲエファッションと相まって不気味な雰囲気を醸し出している。
彼らが作り出した新種のサプリ「ロアダスト」は,スティルウォーターの大学生やジャンキー達の間で絶大な人気を誇っており,大きな資金源となっているようだ。
だが,個性の強さでは主人公も負けてはいない。本作のキャラクターメイキングは非常に自由度が高く,人種,性別,年齢から歩き方に至るまで,細かく設定可能だ。しかも,街で販売している服は性別に関係なくすべて着られる。「おまえ何年間寝てたんだよ!」と,ツッコミを入れたくなるような白ヒゲのギャングスタ・ジジィや,性別が女なのに声が男,逆に性別が男なのにファッションがTバックギャル,というようなハジケたキャラクターを作り出せるのだ。
しかし,そんな明らかにツッコミ待ちな外見で旧友に再会しても,感想は「髪いじったか?」の一言で済まされてしまう。セインツ・ロウワールド,恐るべし。
整形外科に行けばいつでも容姿を変更可能。一瞬で性別までも変えてしまう,スティルウォーターの驚異の医学力 | |
かつてセインツで共に戦った戦友,“ジョニー”のピンチに颯爽と駆けつけた主人公。あまりのカッコ良さに警官も即降参 |
狂気の沙汰ほど面白い! 暴れて暴れて暴れまくれ!
ゲームの基本的な流れは前作から変わっておらず,メインストーリーを進めるには“リスペクト”が必要となる。リスペクトはギャングや警官を倒したり,車でスタントを決めたりなど,ゲーム中での行為に応じて少しずつ得られるが,街の随所に存在する“アクティビティ”をクリアすることで一度に大量のリスペクトを稼げる。
ストーリーミッションはギャング組織ごとに用意されており,どの組織から潰していくかはプレイヤー次第。まんべんなくジワジワと攻略してもよいし,一つの組織を集中的に攻めてもよい。
アクティビティの種類は非常に豊富で,どれもこれも内容的にブッ飛んでいる。“犯罪”の一言で片付けるには,スケールのデカすぎるものばかりだ。
わざと車に轢かれて保険金をせしめる「保険金詐欺」では,猛スピードで突っ込んでくる車に全力でタックルしまくるという,正気とは思えない光景が繰り広げられる。「ファイトクラブ」では多人数を相手にルール無用のデスマッチを展開。淡々と対戦相手の首をへし折って行く主人公には,スティーヴン・セガールも真っ青だろう。
「デモリッションバトル」は,スパイクやニトロで改造した車でライバルの車に突撃,爆発炎上させるという危険極まりないスポーツ(?)だし,街のあらゆるものを破壊して金を稼ぐ「メイヘム」に至っては,もはや無差別テロの領域。弾数無制限の手榴弾を撒き散らすボンバーマンと化した主人公は,もはや誰にも止められない。
要人を警護する「群集整理」ではタチの悪いファンをまるで人形のように投げまくり,「スカウト」では他店のスカウトを殺害し,エステティシャンを拉致。そして「治安警察24時」では偽警官となって,夫婦喧嘩を火炎放射器で解決するという滅茶苦茶っぷりだ。
それらの中でもとくに「頭がおかしい!」と感じたのが「正義の汚水」。バキュームカーで街に糞尿を撒き散らすゲームなんて,筆者が知る限りでは本作だけだ。スタッフはサプリをキメながらゲーム開発をしているのではないだろうか? まったくイカれている!(褒め言葉)。
いくつか挙げてみたが,ほかにもまだまだアクティビティは存在するし,本作では「デパージョン」というミニゲーム的な要素もいたるところに散りばめられている。走っている車の上に立ち,バランスを取る「カーサーフィン」や,タクシーを奪ったときに発生する「タクシードライバー」など,本筋にはほとんど関係しないが,不思議とハマってしまうものばかりだ。
中でも,個人的に気に入ったのが「ストリーキング」。真っ裸で街を徘徊し,通行人にショックを与えるというどうしようもない内容だが,筆者はそのバカバカしさの虜になってしまった。以下の画面写真を見てもらえれば,物凄く悪い方向にハッスルしている様子が伺えるだろう。
ちなみに今エロいことを考えたそこのキミ。たいへん残念なお知らせだが,女性キャラクターはオッパイにもモザイクがかかるぞ。
道徳無視のアウトロー殺法!
フレンドと組んで街を支配しろ
「2」ではピストルとサブマシンガンの両手持ちが可能となり,より派手な戦闘を楽しめるようになった。2丁分の弾が使えるため,戦闘を有利に運べるし,リロードの仕方もいちいちカッコイイ。
本作にはロックオン機能が存在しないため,戦闘では自力でエイムする必要があるが,FPSやTPSが苦手な人でも,“下手な鉄砲数撃ちゃ当たる”戦法で押し切ることは可能。そのぶん弾薬の消費は半端じゃないだろうが……この世界では比較的簡単に武器が手に入るので,ガンガン使っても問題ない……銃(ガン)だけに。
そして,ヒューマンシールドは,本作の戦闘における最重要テクニックといっても過言ではない。その名のとおり,人間を盾にするのだが,その状態でも銃を撃てるので非常に便利な技だ。警察官はもちろん,さすがのギャングも自分の仲間には攻撃しづらいようで,人質さえ取ればノーダメージで敵を全滅させることも可能。まさに外道な戦法だが,ヒューマンシールドさえしっかり活用できれば,戦闘で死ぬことはほとんどないだろう。
また,本作ではマルチプレイも非常に魅力的な要素となっている。最大12人での対戦が可能なほか,フレンドと二人で協力してストーリーモードを進めることもできるのだが……,このレビューを執筆している時点で,まだ本作は発売されていないので,残念ながらこちらは未プレイだ。
しかし,本作はXbox 360版とPLAYSTATION 3版がすでに発売されており,筆者はXbox 360版をクリア済みなので,その内容を参考にしてプレイフィールをお伝えしようと思う。恐らく,内容的に大きな相違点はないだろう。
とにかく言っておきたいのが,「協力プレイが滅茶苦茶面白い」ということ。これまでオープンワールド系のゲームで本格的な協力プレイというのは,実はありそうでなかなかなかった。本作でストーリーモードが最初から最後まで,すべて協力プレイ可能となっているのは,凄いことなのだ。クリアできないミッションやアクティビティを手伝ってもらうほかにも,実際にフレンドとボイスチャットをしながら遊んでいると,悪ふざけを元に新たな遊びを発見できたりもする。
子供の頃,公園で走り回っているうちに,新しい遊びが思い浮かんだときの感覚。それと同じ感覚を,広大なスティルウォーターで味わえるのだ。PC版では,Xbox 360版よりもさらに美しいグラフィックスで描かれた世界を暴れまわることができるだろう。
この程度の修正は家庭用ゲーム機向けのタイトルならば仕方ないし,幸いゲームシステムに大きな影響を与えるような要素でもないのだが,やはりPC版のほうに魅力を感じる人も少なくないことだろう。
バカゲー好きなら要チェック!
ただの暴力ゲームと思うなかれ
本作は“素晴らしきバカゲー”だ。「口より先に銃とナイフが出る」というバイオレンスな面は魅力でもあり,好き嫌いの分かれる部分でもある。しかし,それで敬遠してしまうのはあまりにももったいないだろう。
なにかと「グランド・セフト・オートIV」と比較されることの多い本作。確かにゲームシステムには共通点が多いが,あちらが“シリアス”ならばこちらは“コメディ”という印象で,面白さのベクトルは大きく違っている。どちらが優れている,劣っているという話ではなく,それぞれしっかりと棲み分けが出来ているという印象だ。
本作の,あまりにも欲望に忠実で,行き当たりバッタリな主人公達の行動には,呆れるをとおり越して「俺もこいつらみたいにバカな生き方がしてぇ!」という憧れすら感じてしまう。
気の早い話だが,もしも続編が発売されることがあれば,「セインツ・ロウ」シリーズにはこれからも愛すべきバカゲー路線を突っ走ってほしいものである。
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セインツ・ロウ2 日本語版
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