連載
ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:第3回「夏だカンフーだジャッキーだ!」<前編>
ということで今回は,数々の映画誌におけるシネマゲーム系のページや,自著「ゲームになった映画たち」でも満賀道雄と才野茂な関係で執筆を分担していたフリーライターの灸怜太氏との対談形式で,ジャッキーに縁のあるシネマゲームを紹介していこう。
「カンフー・パンダ」だってジャッキー映画だ!
イキナリですけど,いよいよ“ジャッキーサマー”がやってきますよ!
ジャンクハンター吉田(以下,J):
「バーチャファイター」の話? 開幕でシャコっ! ってブっ放されるとキツいんだよね……。
灸:
違いますよ,我らがジャッキー・チェンの映画が,この夏にドンドンと公開されるって話ですよ,「カンフー・パンダ」に「ドラゴン・キングダム」に!
J:
たまたま日本公開の時期が重なっただけで,ジャッキーサマーなんて騒いじゃって……。
灸:
ま,僕にとっては毎年が“ジャッキーイヤー”ですけどね。常に臨戦態勢ですから!
J:
はいはい,ただの熱狂的なファンね。……でも君は,日本で一番ジャッキーのゲームに詳しいと思うから,今回はジャッキーのゲームと新作映画についてたっぷり語ってもらうことにしようか。
ところで,カンフー・パンダって,ジャッキー映画なの?
パンダのポー役がジャック・ブラックで,師匠のシーフー老師の声はダスティン・ホフマンです。そして我らがジャッキーも,ボイスアクターで登場してるんですよ。
J:
え,でも……ジャッキーが師匠役ってわけじゃないんだ? ということは敵のボスとか? 師匠の師匠役とか?
灸:
ジャッキーはサルの役ですね。ほとんどセリフはありません。
J:
それって単なるカメオ出演じゃ……。
灸:
いや,十分に意味のある出演ですよ! これは要するに“象徴”というか……言い方を変えれば“保険”ですね。
J:
ジャッキーの名前で少しでも客を呼ぼうという戦略?
灸:
それもあると思いますけど,もっと現実的なことだと思いますね。カンフー・パンダは,予想以上にちゃんとしたカンフー映画なんですよ。基本的には荒唐無稽なアニメなんですけど,闘いのシーンなんかはしっかりしてるんです。
J:
へー。実はカンフーってアニメだと表現しづらいんだよね。どうしても技や動きが軽くなっちゃう。
そこがしっかり作り込んであるんですよ。CGアニメで,しかも動物キャラなのにちゃんと腰が入ってるという。
J:
馬歩で鍛えたんだな,馬歩で!
灸:
そしてカンフーの動きや闘いの展開,それにカメラワークには,かなりジャッキー映画っぽい部分があるんです。
J:
まぁ,ジャッキーはカンフー映画であらゆることをやってきてるからね。どうしても似てくる部分はあるかもしれない。
灸:
だから,あえてジャッキーを呼んで,メンツに入れておけば文句を言われることもないってわけですよ!
J:
なるほど,そういう保険か。そういえば,ジャッキーが「酔拳2」で使った技を「バーチャファイター3」の舜帝が使っているのを見たとき,その場にいたセガの人に無言で手を差し出したなんて逸話があるぐらい,お金には大変シビアらしいからね。本人は,「あれは冗談だ」なんて言ってたけど。
灸:
いや,そのぐらいは当然ですよ! セガはバーチャファイターの新作を出すたびにジャッキーへギャラを支払うべきです。もしくは自伝「愛してポーポー」を買いまくるとか。
J:
そんな自伝本,もう売ってねぇし知っている人いねぇよ!
初期ジャッキーゲーは死屍累々の様相
J:
カンフー・パンダはシネマゲーム化もされていて,日本でも公開と同時期にPLAYSTATION 3とニンテンドーDS,Wiiでリリースされるんだよね。
灸:
海外ではPC版も出たんですけどねぇ……。
J:
PC版のデモ版は4Gamerにアップされていたから遊んでみたんだけど,キーボードじゃ指が忙しかったなぁ。ゲームパッドがないと操作がきつい印象。オレは日本語化もされているコンシューマ版を買って遊ぼうかな。
灸:
でも,カンフーパンダのゲーム版は,なかなか出来の良いほうだと思いますよ。ジャッキー関連のゲームは微妙なモノが多いですからね。とくに初期は。
ファミコンやアーケードで大ヒットした「スパルタンX」は面白かったけど,あれはアイレムが作った「カンフーマスター」に,後付で版権を乗せたシネマゲームだからね。
灸:
五重の塔を昇っていくっていう設定は,どちらかというとブルース・リーの「死亡遊戯」ですからね。
J:
しかも,MSXに移植されたときには版権絡みのすったもんだで「聖拳アチョー」とタイトルが変わってたんだよな……。PC系のジャッキーゲームはとくにヒドかった印象があるよ。
灸:
ポニーキャニオンからリリースされた一連の作品群ですね。最初は「キャノンボール2」。
J:
パッケージにはジャッキーの写真が入ってるけど,中身はただのレースゲーム。あれはダマされた。
灸:
そして「プロジェクトA」。これは最後のステージが洞窟でボスが海賊ですから,再現度はかなり高いほうかと。
MSXカセットテープ版「プロジェクトA」。なぜかローマ字でストーリー解説が始まる。そしてボートを漕いで上陸し,「カラテカ」のように後ろへ下がると見事に死亡遊戯! |
マウントポジションを奪って攻撃したり,逆にやり返されたりと,ジャッキー映画ではあまり観られない光景 |
MSX版「ポリスストーリー」。常に警察帽を被っているジャッキーは,顔のデカさがさらに際立ってしまい,やたら不恰好なプロポーションに |
MSX版「プロテクター」。ジャッキーの髪の毛が真っ青。ゲーム自体はマッピーにアクション要素が加わったような内容。決して面白いとは…… |
技は多かったんだけど,動きのモッサリ感が残念だったんだよね。クリアするまで何度も遊んではカセットテープをロード……っていう繰り返しで,3か月ぐらいかかったっけなぁ。でも,次の「スパルタンX」は,かなり良かったと思うよ。オレはファミコン版より好きだな。
灸:
いきなりジャッキーがバイクと併走しながらダバダバ走るんですよね。
J:
そう! 走っていくと,だんだんガウディの塔が見えてくる。それで,塔の中に入ってモンデール伯爵とフェンシング対決!
灸:
モンデール伯爵を演じたペペ・サンチョはアクションがイマイチだったんで,映画の中でサモ・ハンと戦ってるシーンはユン・ピョウがマスクを被って演じていたらしいですよ。
J:
もの凄く細かい豆知識だね(笑)。ゲームのほうは,それから「ポリスストーリー 香港国際警察」「プロテクター」と,映画公開のたびにリリースされてさ。とりあえず出たら買っちゃうんだけど,全部ヒドかったな……。
灸:
グッズみたいな感覚ですよね。下敷きと缶ペンみたいな。ポニーキャニオン系で最後に出た「プロジェクトA2」は,プラットフォームがMSX2になったんで表現力は増したんですけど,長いマップをウロウロするだけでゲーム性はぜんぜん改善されてなかったですね。
J:
この辺のゲームには,あんまりいい思い出はないよね。ジャッキーゲーム=ハズレみたいなイメージ。
灸:
たぶん,ジャッキー本人もそのあたりは快く思ってなかったんじゃないですかね。だから,ジャッキーゲームの第2期は,映画をゲーム化するんじゃなくて,ジャッキー自身をゲーム化したものになっていくんですよね……。
というわけで前編はここまで。
次回は驚愕の“ジャッキーご当人ゲーム”の数々を紹介しつつ,奇跡のジャッキー×ジェット共演作「ドラゴン・キングダム」や,ジャッキーとジェットの似てるようでかなり違ったゲーム観にも迫る予定。お楽しみに!
怪鳥ベニー・ユキーデと思しき敵キャラは,なんとネックハンギングツリーや中西 学もびっくりなアルゼンチンバックブリーカーを使ってくる |
緑色の不気味なカラーリングを施されたキャラがジャッキーが,ダウンしたベニー・ユキーデと思われる敵キャラの股間へ容赦なくパウンドを落とす |
とても異色なAmstrad CPC版。掴み男がMr.マリックに見えて仕方がない |
3階のボスである巨人男は,チェ・ホンマンに見えて仕方がない |
ドブ漬けGAMEスープレックス(3)
Wii「ブーム ブロックス」(エレクトロニック・アーツ)
Electronic Artsとスティーブン・スピルバーグ監督が,三つのオリジナルのゲームの開発について契約した中の第一弾が,この「ブーム ブロックス」。
元々「プライベート・ライアン」で一緒に仕事をした軍事アドバイザーのデイル・ダイ氏と共に,「メダル・オブ・オナー」シリーズにもちょこっと参加していたスピルバーグ監督だったので,EAとのパートナーシップが発表されたときも大して驚きはなかった。1995年に「THE DIG」というSFアドベンチャーゲームの開発に携わったり,1996年に「スティーブン・スピルバーグのディレクターズ・チェア」で映画の作り方を学ばせようとしたりと,けっこうマジメにゲームへ取り組んでいた人なので,本格参戦への期待も膨らんでいた。
そして登場したのが,ブーム ブロックス。見た目はちびっ子向けのブロックスパズル。しかし遊んでみたところ……やっぱりちびっ子向けのブロックスパズル。でも,不思議と中毒性が出てくるのはなぜか? それは積木くずしだからだ。でも,穂積隆信とは関係ない。子供の頃,何人かの友達と積木や将棋の駒で作った山を崩して遊んだことのある人は多いはず。そんな記憶が甦って,ノスタルジックな気分にさせられるのだ。そういう意味でも,4人での対戦がオススメ。
正直なところ,スピルバーグ監督の抱いていたゲームのアイデアはこんなものだったのか……と思ったりもしたが,以下のようなコメントを聞いて思わず納得。
曰く,「私自身がゲーマーなので,子供達と一緒に遊べるゲームが欲しかったのです。『ブーム ブロックス』はチャレンジ性やさまざまなシナリオがあるので,お子様一人でも楽しんでいただけますが,友達や家族みんなで楽しんでもらえればと思って作りました。今回の作品は,私が初めてWiiで遊んだときにひらめいたものです。最初のコンセプトから,Wiiがもたらすゲームプレイの革新を軸に開発に臨んできました。『ブーム ブロックス』はブロックを組み立てたり,壊したりと年齢制限なく楽しく遊べるようになっています」とのことだ。
そういえばいつぞやのE3では,スピルバーグ監督が娘さんと一緒にお忍びでゲームメーカーのブースを渡り歩いていたのを目撃したこともある。やはりWiiというハードの特性を考えて,ちびっ子向けの作品を作ったということなのだろう。
だけどやっぱり次は,映画の「激突!」や「ジョーズ」のように,緊迫感が持続するゲーム,スピルバーグ監督ならではの毒のあるゲームを期待したい。パズルゲームは,ブーム ブロックスでお腹いっぱいなので。
「ブーム ブロックス」公式サイト
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