レビュー
前作「インペリアム ローマ 〜ローマ都市建国〜」からどこが変化しているのかを探る
グランド エイジ ローマ 日本語版
歴史的に有名なパトロンの依頼をこなして
古代ローマ帝国を築き上げよう
ローマ帝国から任命された提督となり,貧しい村を大都市へと発展させていく都市建設シム「グランド エイジ ローマ 日本語版」が2009年6月12日にズーから発売されている。
グランド エイジ ローマは同社から発売中の「インペリアム ローマ 〜ローマ都市建国〜 日本語版」の続編で,登場する資源や建物の種類,インタフェースやグラフィックスなど,ほとんど前作から変わっていないように見える。しかし実はゲームシステム全体に手が加えられており,前作のプレイスタイルのままプレイしようとすると,建物は建てられなくなるわ,次々と火災が発生するわ,赤字で破産するわで,筆者と同じく悲しい道を歩むことになるだろう。とほほ。
そんなグランド エイジ ローマのレビューなわけだが,今回は前作と比べて新たに付け加えられた部分,大きく変わった部分を中心に触れていくので,前作をプレイしていない人は,まずは当サイトに掲載してある前作のレビュー記事を読んでほしい。
都市をズームアップして眺めると,人々の暮らしを垣間見ることができる。細かく描き込まれたグラフィックスは溜息の出る美しさ |
歴史的に有名なパトロン達からの依頼に挑戦する「キャンペーン」では,複数の依頼の中からミッションを自由に選んで挑戦できる |
メインとなる「キャンペーン」では,紀元前1世紀のローマ共和制での出来事に関する40ミッションに挑戦していく。ミッションは「カエサル」「マルクス・アントニウス」「オクタウィウス」「クレオパトラ」などの歴史的に有名なパトロンからの依頼に挑戦していくことになり,ミッションをクリアすると関連する新たなミッションに挑戦できる流れだ。
複数のミッションがある場合は挑戦するものを選択できるが,この選択により対立するパトロンのミッションが出現しなくなるなど展開に変化があるようで,古代ローマの歴史に興味のある人は,そういう意味でも楽しめるだろう。ちなみに筆者は箱庭ゲーム好きでこそあれ,そのへんの歴史にはあまり興味のない人間だが,登場するミッションを次々にクリアしていくだけでも十分に楽しめた。
用意されたマップの中に自由にローマ帝国を作れる「フリービルド」は,自由気ままな都市作りを楽しむのに打って付けのモードだ |
完遂すればミッションクリアとなる「主要目標」のほか,クリアには影響せずに報酬が得られる「ボーナス目標」があるのは前作同様だ |
ほかにはブリタニア,ヒスパニア,ガッリア,アレクサンドリアなどの14種類のマップで,あらかじめ建設された都市を発展させたり,豊富な資源のある土地で鬱陶しいパトロンの目標などは気にせず自由な都市作りを楽しめたりする「フリービルド」がある。
また,2〜4人の「マルチプレイ」ができるようになり,2人&4人用を含めた14種類のマップと,「最後に残る男」「40000デナリウス」「すべてのモニュメント」「蛮族をすべて倒す」「丘の王」「オール・イン・ワン」という,勝利条件の異なる6種類のモードが用意されている。
初めてプレイする人だけでなく,前作をプレイしている人も基本チュートリアルと戦闘チュートリアルは一度くらいプレイしておこう |
マルチプレイは専用サーバーのロビーに集まって対戦者を募るスタイルだ。プレイヤー人口が非常に少なく,賑わっていないのが悲しい |
五つのファミリーの才能を生かした
都市開発ができるかがキモ
グランド エイジ ローマでは,プレイヤーのキャラクターである“ファミリー”を選択する。登場するファミリーはアエミリウス家,ウァレリウス家,ルキウス家,フラウィウス家,ユリウス家の五つで,ファミリーごとに持つ個々の才能を,都市開発に利用できる。
才能にはすべてのファミリーで共通となる「都市の才能」「軍の才能」のほか,ファミリーごとの「ファミリーの才能」が,それぞれ15種類ずつ用意されている。最初からすべての才能が使えるわけではなく,ミッションをクリアすると得られる“才能ポイント”によって獲得していくことになる。
「都市の才能」「軍の才能」には,平民が犯罪者にならない“プラエトル”,官舎が2倍速く火災を消火する“夜警団”,兵舎と士官学校が2倍の速さで兵士を育成訓練する“ローマ軍団動員”,軍事野営地の価格が半分になる“軍事護民官”など,内勢と軍事に関するものが揃っている。
ハスタティを派遣して前哨地を作れば,離れた場所に別の地域を作ったり資源の確保ができたりする。全体マップを見て派遣しよう |
領地で資材を調達して“5棟の無料建築物”を使えば,ゲーム開始早々に通常1000デナリウス必要なフォルムも無料で建てられる |
「ファミリーの才能」は,生まれながらの兵士の一族であるアエミリウス家の場合は,騎士の住宅が半額の“安い住宅”,敵の部隊を倒すと500デナリウス(資金)を獲得できる“戦利品”など,戦闘に関する才能が多い。
また,どのような商品でも短時間で多く生産できるルキウス家には,農場や採掘などがアップグレードされる“より良い生産”,奴隷が平民と同じように働く“奴隷マスター”,鍛冶場の生産ボーナスが倍になる“ウルカヌス神の恵み”といったものが用意されている。
このように,ファミリーの持つ個性によって異なる才能が利用できる。
それぞれのファミリーの才能は,ただ“プレイのどこか一部分を楽にしてくれる”というだけものではなく,自分の才能を重視したプレイを,常に意識しなければならなくなるほどの存在だ。例えば奴隷を有効利用できるのに奴隷を一切使わないのでは,まったく意味がないので,「奴隷を使った都市開発」というものがテーマになってくる。同じミッションでも選んだファミリーによって遊び方が変わってくるため,リプレイ性が高いといえる。
すでにクリアしているミッションはリプレイできる。クリア時のスコアにより月桂樹の冠の色が異なるので,すべてゴールドを目指そう |
筆者が好んで使っているルキウス家は,奴隷が平民と同じように働き,資源の生産力が高いという初心者にオススメのファミリーだ |
才能というアイデアも面白いが,ミッションクリア時に個人財産と領地が獲得できるのも面白い。個人財産はゲーム中に利用できる資金のことではなく,ミッションおよびボーナス目標のクリア,マルチプレイで勝利すると得られる報酬のことだ。この個人財産を使って領地を購入すれば,追加資源の提供が受けられるので,ちょっぴり楽に都市開発をスタートできるのだ。
領地には「木材を+20提供する」「小麦粉を+15提供する」「新兵を+15提供する」などの効果があり,新たなミッションをクリアすれば新たな領地が登場する。領地は最大五つまで所有でき,ほかに良さそうな領地が登場したら手持ちの領地を売却(元値の25%)すれば,新しい領地を利用できる。
プレイするミッションに合わせて領地を取っ替え引っ替えしてもいいと思うが,間違いなく個人財産が足りなくなる。しかし,既にクリアしたミッションは再挑戦できるので,楽に稼げるミッションを繰り返しプレイすれば個人財産を稼ぐことは可能だ。面白かったミッションや苦労してクリアしたミッションを,才能と領地を手に入れてから再挑戦すれば,これまでとは異なる展開でより楽しめ,個人資産も入るという,一粒で二度美味しい仕様? なのだ。
キャラクター画面ではミッション開始前に個人財産や都市,軍事,ファミリーごとの才能,所有&購入可能な領地の設定ができる |
キャラクターデータをいくつも作れるので,ファミリーごとに用意してもいい。データ同士に連携はなくデータごとのプレイが必要になる |
資材の供給が変わったことにより
前作とは異なる都市開発を楽しめる
前作では住宅は,場所の格や私財によって自動的にアップグレードされたため,そこに住む住民階級や建物を自由にコントロールすることはできなかったが,グランド エイジ ローマでは平民,騎士,貴族,奴隷,それぞれの住民階級と建物を自由に建てられる。これにより,思いどおりのレイアウトの都市作りが可能になった。
また,住民達は階級ごとに要求があり,これを満たしてやる必要があるというのは前作と同様。平民は食料,宗教,娯楽しか求めないが,騎士と貴族はほかに商品(グッズ),オリーブ油と衣服を要求してくる。これらの生活環境が満たされないと,住民達は建物に火を付けたり,暴動を起こしたりと,相変わらずやりたい放題だ。とはいえ,前作に比べればヤツらのご機嫌を取るのが楽になった印象だ。
登場する建物は,本作から新たに登場する建物を含め,木こり小屋,市場,仕立屋,養豚場,闘技場,酒場,学校,官舎,兵舎,射的場,造船場,港など30種類以上あり,すべての建物は必要な資材を消費して建設される。住宅には階級が割り当てられたが,それに伴って資材や満足度を生産する建物で働ける階級も割り当てられるようになった。
造船所で船を造れば海上にある離れた地域へ部隊を送れる。陸路ではなく海上からこっそり近づいて攻撃を仕掛けることも可能だ |
建物によって二つの住民階級を労働力として利用でき,平民と奴隷ならば平民,騎士と貴族ならば貴族といった具合に,上級階級を雇用すれば生産力が上がる |
例えば,木こり小屋や金採鉱所などは平民と奴隷,交易所や穀物倉などは平民,精肉所や劇場などは平民と騎士,官舎や港,武器工房などは騎士,酒場や宿屋などは騎士と貴族,図書館や浴場などは貴族が働ける。住宅と仕事場はワンセットで建てていくのがベストだ。もちろん,建物を建てるときは建物同士が与える影響(影響圏),人気度(配置ボーナス)も考えながらレイアウトしていく必要がある。それにしても,ポコポコと建物を建てていく作業はやっぱり楽しい。
前作から大きく変わったといえるのが,資材の取り扱いが「在庫量」ではなく「生産力」になった点だ。建物を建てるには木材,レンガ,石材などの資材が必要になるが,前作では資材は在庫量で管理されていたため,たくさんの木こり小屋を建てれば大量に木材の在庫が確保できた。しかし,グランド エイジ ローマではすべての資材において,都市全体でその資材がどれだけ生産できて,“維持”のためにどれだけ消費されるのかということが「生産力」として管理されるようになった。
在庫量で管理された前作では,しばらく待っていれば時間の経過と共に資材の在庫は溜まり続けたが,今回はどれだけ待とうが生産力の上限は変わらない。ここが前作との大きな違いだ。
平民住宅を隣り合わせて建てたり,小麦農場の近くに養豚場を建てたりなどすると,建物の人気度や生産率アップのボーナスが得られる |
小麦農場,養豚場,ブドウ園などの農場は,農地の近くにのみ建てられる。農地は限られているのでアップグレードして生産力を上げよう |
このシステムの怖いところは,一部の建物の機能が停止すると芋ズル式に都市全体の機能が停止してしまうところだ。例えば,養豚場で生産された肉は農民市場で消費され,精肉所でソーセージへと加工されて酒場で消費されるが,もし養豚場が火災,暴動,敵からの攻撃を受けて崩壊すると,農民市場,精肉所,酒場まで操業が止まってしまう。
影響はそれだけではなく,肉が供給されなくなった影響で食料の満足度が減って住民が住宅を出てしまい,その住民が働いていた木こり小屋の操業が止まれば,木材の生産力が下がって既存の建物を維持する資材を確保できず,他の建物も操業が止まる……という具合に,一つの影響が引き金となって大変な事態に陥るのだ。都市開発は面白いけれど,判断を間違えるととんでもない事態に陥ることがあるからメチャクチャ怖い。
この生産力というシステムに最初は戸惑ったが,コツを掴んでくると在庫量のときよりも資材の動向を把握しやすいうえ,なによりゲーム性が高まって都市開発の面白みは増したと思う。
交易所と港を建てて外部と資材の売買を行う。余るほどある資材は高く売り,必要な資材は安く仕入れるのが基本中の基本である |
全体マップでは資源や水源,マイルストーンの位置が分かるようになっている。マイルストーンを確保して外部との交易を行おう |
一段と奥が深くなり面白さもアップした
ローマ帝国建国に挑戦しよう
火災が発生すると消火作業を行い,維持資源コストを減少させる「官舎」,オリーブ油や衣服で商品を提供する「職人市場」,疫病から住民を守る「薬草店」のほか,「ヴェスタ神殿」や「マルス神殿」など,研究を行わないと建てられない建物が12種類ある。農場や鉱物などの生産率を上げるテクノロジーは,才能や領地と併せて利用すれば高い効果が得られるだろう。
敵陣の城壁や建物を破壊するにはバリスタが効果覿面。戦闘重視のミッションでは,どの部隊&兵器を使うかもポイントになる |
前作では住宅に住む家族一人一人に名前や職場が割り振られていたが,今回は住宅一軒につき一つの職場が割り当てられるようになった |
この12種類の建物は,重要な役割を果たすものや大きな都市になるほど必要になるものばかりなので,研究するのをすっかり忘れていて大慌てで研究をした,なんてことも起きる。一つの研究が完了するまでには時間がかかり,高度なものほど長い研究時間を要するため,早めに学校を建てて研究を進めておきたい。とはいえ,研究キューに研究項目をセットしておけば,研究完了後に自動的に次の研究が開始されて,逐一メッセージ表示されて進捗が分かるようになっているので,研究自体はそれほど面倒な作業ではない。
それと都市の防御の要となる軍事関係が,前作と比べてかなり充実している。まず,都市の中心部より離れた場所に建物を建てたい場合は,部隊を派遣して前哨地を建てれば,その周辺にほかの建物を建てて,離れた位置にある資源を調達するなんてことができる。
インタフェースは前作を踏襲しており,建設できる建物を選んでマップ上に置いていくだけだ。住宅と職場はセットで建てよう |
油断していると蛮族が大軍で攻め込んでくるので逐一応戦だ。マップ内を移動している同盟軍が加勢してくれることもある |
軍事ユニットは,ローマ帝国の主力戦力である「ハスタティ」,馬を使って機動力の高い「騎士」,弓で武装した「弓兵」などのほか,攻城兵器工場で「バリスタ」も作れるし,「ケルト」「ゲルマン」「女弓兵」などの支援軍部署を建てて,支援を受けることもできる。ほかにも「トリアリイ」「高地連隊兵」「近衛兵」「戦闘象」「カタパルト」など,合計16の部隊を使える。
軍事ユニットは騎士住宅から,それぞれ10人の新兵を得られ,その合計人数分の部隊を持つことができるので,多くの部隊を使うのならば,それに見合った騎士の住宅が必要だ。とはいえ,部隊ごとに経験とレベルが用意されており,戦闘や育成訓練によってレベル4までレベルアップが可能だ。さらに戦闘記念塔のモニュメントを建てればレベル8までレベルアップ可能で,うまくやれば少数部隊で大きな勝利を勝ち得られるかもしれない。リアルタイムストラテジーほど戦闘が重要なゲームではないが,油断していると蛮族が大群で押し寄せて都市が火の海にされたりするので,しっかりと自軍を鍛えて戦いに備えておこう。
見た目はほとんど変わっていないが,ゲームシステムがかなり変更されており,初めてグランド エイジ ローマをプレイしたときは割と戸惑った。しかし,もともと都市開発シムとしてはシンプルなゲームシステムだったのが,奥の深さがプラスされており,前作と比べるとゲーム性が高まって面白さも各段にアップしている印象だ。前作をプレイしている人ならばプレイして損はないだろうし,前作未経験でグランド エイジ ローマが初めてのローマ提督デビューとなる人も,基本チュートリアルと戦闘チュートリアルをしっかりプレイしてからキャンペーンをこなしていけば,問題なく楽しめるだろう。ぜひ,グランド エイジ ローマでローマ都市建国の楽しさを味わってほしい。
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