インタビュー
麻雀ゲームに物理エンジン? こだわり抜いたリアル志向のオンライン麻雀「雀龍門」が目指すもの
エヌ・シー・ジャパンといえばMMORPGのイメージが強く,今もまさに近日サービス開始予定の新作「The Tower of AION」が注目を集めている真っ最中。このタイミングで,なぜあえて麻雀ゲームを投入するのか? エヌ・シー・ジャパンの,デジタルエンターテイメントユニット カジュアルビジネスデパートメント/カジュアルビジネスチームの須藤清智氏とパク・チャン氏に話を聞いた。
麻雀の緊迫感を再現するリアルなグラフィックスとゲーム的な演出
本日はよろしくお願いします。まずは雀龍門がどういったゲームなのか,概要を教えてください。
須藤清智氏(以下,須藤氏):
実際に見ていただければお分かりになるとおり,リアルさを重視したオンライン麻雀ゲームで,エヌ・シー・ジャパンで企画した初のタイトルになります。
4Gamer:
なるほど,日本発の企画なんですね。
はい。既存の麻雀ゲームにはないリアルさを追求しました。例えば,ボイスを使った演出や実際にプレイヤーの手の動きが表示される演出,またその手自体をアクセサリーで装飾するといった楽しみ方などがあります。さらに,手の動きは雀プロの動作をモーションキャプチャー,牌の動きも物理エンジンを使って表現していますので……。
4Gamer:
わざわざ物理エンジンを?
須藤氏:
ええ。なので,毎回決まったところに牌が置かれるのではなく,手の動きに合わせて牌を置く場所が変わります。細かいところでは牌が振動で微妙に動いたりもしますし,手が牌を揃えるモーションをすれば,それに合わせて牌も綺麗に揃います。そういった,実際に麻雀を打っている感覚に近い環境を提供しています。
実際,これまでのβテストでのプレイヤーの反響はどうでしょう?
須藤氏:
ほかの麻雀ゲームと比較して,緊張感があるという意見をいただいています。具体的には,役を和了ったときの演出が効いているようです。高い役を和了れば派手な演出となる仕様ですので,それがプレイヤー各自の攻める爽快感と守るドキドキ感を強め,結果として緊張感に繋がっているわけです。そういった麻雀の心理戦を,上手く再現できているのではないでしょうか。
4Gamer:
なるほど。
須藤氏:
またイベントも好評ですね。ログインしてプレイするだけで,自動的にプレイヤーの皆さんが参加できるイベントを連日実施しているんです。雀龍門をプレイする本来の目的は,強くなってランキングの上位を目指すことですが,それはあくまでも長期的なものです。これはもう黙々とやるしかないものですので,変化を味わう意味でも短期的に楽しめるイベントが支持されているのではないでしょうか。これは実際に,継続率やリピート率にも現れていますね。
4Gamer:
具体的に,どういった内容のイベントを行っているのでしょう?
上級者向けには,やり込めばやり込むほど何かしらのランキングが上がるというタイプが中心です。しかし,それだけでは初心者が参加しにくくなってしまいますから,より幅広い層向けに,特定の役を和了ると抽選の対象になるようなイベントを提供しています。
須藤氏:
あとは弊社のゲームポータルplayncとの連動ですね。我々は,雀龍門を単体のゲームとしてだけでなく,Webコンテンツの一つとして捉えています。和了率やリーチ回数といった詳細な戦績が即座にWebサイトに反映されますので,ゲームにログインしなくとも個人の戦績や全体のランキングを確認できます。また,playncのアバターがそのまま雀龍門でも表示されますので,プレイヤーそれぞれのアイデンティティを表現することができます。これまで弊社で扱ってきたタイトルとは異なる楽しみ方を提供できているといえます。
サラリーマン層を対象にしたクオリティの高いセカンドゲーム投入でplayncを強化
4Gamer:
なるほど。しかし麻雀ゲームにしろ,そうしたポータルとの連動にしろ,すでに他社が取り組んでいますし,高い実績を挙げているところもありますよね。なぜ,このタイミングでわざわざ挑戦するのか? という疑問が出てきます。そもそもエヌ・シー・ジャパンといえば,MMORPGの老舗というイメージが強いですし。
そこは逆に,今までMMORPGに特化していた弊社が,そのこだわりを持って麻雀ゲームに取り組むとこうなる! みたいな部分を見ていただきたいんですよ。
パク氏:
それこそ「なにも物理エンジンを使うほど,こだわらなくても……」といったところでしょうか(笑)。実際,PCオンライン上で,どこまで実際の麻雀に近づけるか開発側が挑戦しているという面もありますし。
4Gamer:
最初に日本発の企画という話がありましたが,開発は韓国で行っているんですよね?
パク氏:
はい。リアルさを追求するにはNCsoftの3Dゲーム開発技術は必要不可欠でした。また,世界中で親しまれている麻雀ではあるものの,日本は独自のルールがある点や,国内ユーザーに満足していただけるクオリティを提供するためには,我々企画チーム(日本)と開発チーム(韓国)の密な連携も欠かせませんでした。
須藤氏:
そんな事情ですから,日本から細かい指示を逐一出していまして。麻雀をゲームにする場合はそもそも網羅すべき点が膨大なのですが,それ以外にも我々が通常考慮しないような──それこそ0.000……1パーセントの確率で発生するようなことも想定して開発を進めなければなりません。韓国の開発スタッフが,ここまで完成度を高めてくれたことも,プレイヤーさんから支持される大きな理由になっていると思います。
クオリティについては,本当に自信を持っています。
4Gamer:
こだわりを持ってクオリティを高めた部分こそが,雀龍門であると。
須藤氏:
麻雀をする,という部分はどの麻雀ゲームも同じですから,後発の雀龍門でいかに差別化していくかを考えた結果,ビジュアルや演出に力を入れているというわけです。今,キャッチコピーにしている「リアル,スリル。楽しめる」は,まさに雀龍門がほかと差別化している部分を表現しています。また,それがプレイヤーさんに受け入れられている部分でもあります。「もう,ほかのPC麻雀ゲームには戻れない」といってくださる方もいらっしゃいますし。
パク氏:
欲をいえば,PCオンライン市場だけでなく,アーケードの麻雀ゲームとシェアを競うレベルにまで完成度を高めたいと常に意識しています。ゲームセンターって,深夜は営業していないじゃないですか。ゲームセンターの閉店時間になると,アーケード麻雀ゲームのプレイヤーさんが雀龍門にログインしてくるんですよ。そしてロビーで雀龍門とほかの麻雀ゲームを比較するようなチャットを交わしています。そういった状況を踏まえて,近い将来にはアーケードのプレイヤー層をターゲットにすることも考慮に入れているんです。
もうすでに,ある程度の手応えは感じているという感じですね。
須藤氏:
はい。あとは少々戦略的な話になってしまうのですが,playncの既存ユーザーは,ほかのゲームポータルさんに比べて若干平均年齢が高めです。そこでカジュアルゲームの中でも,サラリーマン層に人気のある麻雀を取り扱おうと考えた部分があります。これも狙いとしては結構当たっていまして,弊社MMORPGのプレイヤーさんがゲーム内コミュニティで誘い合って雀龍門をプレイしてくださるケースが見受けられます。
4Gamer:
同じポータル内のいわゆるセカンドゲームとして──例えば,ゲームポット内のMMORPGタイトルに対する「スカッとゴルフ パンヤ」みたいな位置関係で機能しているイメージでしょうか。
以前からポータル内をそのように相互に連動させる構想はあったのですが,今回,雀龍門の投入によってようやく実現できました。
逆に雀龍門のコミュニティから,弊社のMMORPGをプレイしていただけるようになるのではないかとも期待しています。
パク氏:
また,オンラインゲーム市場が停滞しているといわれて久しいですが,今回,雀龍門のサービスを始めたことで,playncは多くの新規ユーザーを獲得できています。年齢層も従来から多かった20代だけでなく,50代の人も見受けられるなど,幅広くなっていますね。
4Gamer:
実際,プレイヤーの年齢層はどうなっているのでしょう? 今の20代はあまり麻雀をやらない印象があるのですが。
パク氏:
アンケートを見る限りでは,20代が中心でそのあたりはMMORPGとあまり変わらない感じです。10代の方もいますしね。
4Gamer:
なるほど。MMORPGプレイヤーの年齢層に,40〜50代の層が加わっているイメージですね。
アバタービジネス,ネットカフェ展開と事業面での大きな効果も期待
雀龍門というと,画面上に表示される手にアクセサリーを付けられるのも特徴ですが。
須藤氏:
はい。「雀珠」(じゃんたま)と呼ばれる,いわゆるゲーム内マネーを使って,指輪や腕時計などのアクセサリや刻印を購入し,装飾できます。
4Gamer:
ゲーム内での人気はどうでしょう?
パク氏:
毎日ログインされる方なら,結構利用している感じです。四人で対局した場合には,一人か二人は何かしら付けているという状況ですね。
また,playncのアバターアイテムも好調に推移しています。これは雀龍門のゲーム内やWebのランキングなどで,以前よりもアバターが多くの人の目に触れるようになった結果でしょう。
パク氏:
これまで,playncのアバターはWebサービスの一要素にすぎなかったので,あまり気に留めている人がいなかったんですよ。それこそ雀龍門のクローズドβテストでは,対局した全員がデフォルトの服のままみたいな状況でした。ところが雀龍門と連動したことでアバターがクローズアップされた結果,今では皆さん結構着飾ってきていますね。
4Gamer:
なるほど。今後は,アバタービジネスの成長も期待できそうですね。
須藤氏:
はい。ビジネスといえば,雀龍門も従来の弊社タイトル同様にネットカフェでの展開にも力を入れています。
オープンβテスト段階では400店舗で展開しています。テストの準備で慌ただしかったため,400店限定となってしまいました。正式サービス時には,全国のネットカフェで,ネットカフェ専用のプレイができるように準備を進めています。
すでに導入済みの店舗では,麻雀としてのクオリティの高さを高く評価していただいています。ネットカフェのスタッフで内々のトーナメントを開いているところもあるようです。
須藤氏:
雀龍門は,ネットカフェからアーケードゲームに匹敵するクオリティとご評価いただいているみたいです。従来のPCオンラインゲームにはなかった動きやグラフィックスクオリティの高さは,アーケードゲームのそれと近いものがあります。そのあたりで,新たな顧客獲得の可能性を感じるとご支持いただいている次第です。
リアル志向ながら麻雀初心者への配慮とゲームならではの楽しさも追求
麻雀ゲームというと,ルールを覚えなければプレイできないという大きな壁があります。例えばこの記事を読んで雀龍門に興味を持ったけれど,麻雀はよく知らないというような人に向けた施策などはありますか?
パク氏:
私自身,雀龍門に関わった当初は,まったく麻雀の知識がない状態でした。しかし,さまざまな作業を通じてプレイしているうちに,いつの間にかボチボチ打てるようになっていたんです。というのも,チュートリアルやCPU戦があるのはもちろんですが,自分の牌の上にマウスカーソルを合わせると同じ牌が場に捨てられているかどうか分かったり,あるいはドラがピカピカ光っていたりと,結構初心者にも優しい仕様になっているからなんですね。それに,これからオンライン上で麻雀を覚えようというなら,やはりクオリティの高いゲームのほうがモチベーションを保ちやすいでしょう。
4Gamer:
クオリティの高さは,初心者にも有効に作用するであろう,と。
ボイスなんかも結構凝っていて,友達同士で麻雀をやるならこんな感じになるだろうという雰囲気が出ていると思いますよ。
須藤氏:
競技麻雀に詳しい方からは「対局中に喋るのはマナー違反」という指摘をいただくのですが,そこはゲームですから勘弁してください(笑)。
あと,あまり大きく発表していないのですが,実はゲーム内の「新米雀士」のボイスは,声優の生天目 仁美さんにお願いしたんですよ。
4Gamer:
ああ,そうだったんですか。かなり力を入れていますね。
ところでゲームモードにはチュートリアルのほかに,オートマッチング/固定ルールで勝敗がランキングに反映される「公式戦」と,フレンド同士の対戦を前提にルールの選べる「友人戦」がありますよね。こちらの利用状況はどういった感じでしょう?
大半が公式戦で,数パーセントが友人戦といったところです。友人戦には,ルーム作成者が設定したマッチコードを入力しないと参戦できない仕様もあります。現在は,mixiさんなどの外部コミュニティや各種メッセンジャーを使ってマッチコードをやり取りしているプレイヤーさんが多いようですね。本音をいうなら,playncにも「クラブ」という会員同士で情報交換を行えるコミュニティ機能がありますので,そこで交流していただけるとありがたいのですが(笑)。
「雀龍門」で世の中のサラリーマン層に活気を! 気になる今後の予定は?
それでは,今後の予定などをお聞かせください。正式サービス開始の日程などはどうでしょう?
須藤氏:
スケジュールの発表に関しては,もうしばらくお時間をください。
今,大きく支持されているのは,プレイヤーの皆さんからいただいた意見をきちんと検討したうえで反映している部分です。我々としても,そうした部分を大切にして皆さんと一緒に雀龍門を作り上げていこうという方針です。今はまだまだ確立の段階かな,というところですね。サービスを始めたばかりですので,他社さんに追いつき追い抜くこと,そして雀龍門独自の要素の双方に挑戦しなければなりません。
4Gamer:
というと,表面的には当面現状維持という感じですか?
須藤氏:
当然,正式サービス開始と同時に有料アイテムの販売などは開始しますが,これも内容に関しては追って発表ということになります。
パク氏:
まずは,まったくの無料でも楽しめる状態にして,「これくらいなら払ってもいいか」と思えるような範囲での便利な機能を有料で提供する予定です。
4Gamer:
ゲームモードなどの追加はどうでしょう?
パク氏:
時期は未定ですが,より高い倍率の公式戦チャンネルを導入する予定です。簡単にいうと一度の勝敗で増減する雀珠の量が増え,よりスリルのある駆け引きを楽しめるというわけです。
4Gamer:
それでは最後に,雀龍門のプレイヤーと4Gamerの読者に向けてメッセージをお願いします。
なにより,世の中のお父さんを元気にしたいですね。また,麻雀というと,どうしても少しダークなイメージがあるのですが,本来的な頭脳を駆使する心理戦という部分を強調していきたいです。ぜひ雀龍門をプレイしてみてください。
パク氏:
後発だけに,麻雀ゲームとしてのクオリティには徹底していると自負しております。これまでのオンライン麻雀では感じたことのないリアルさをぜひ満喫していただきたいと思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
このインタビューから,雀龍門がplayncの基盤を固める重要なタイトルとして──少々大げさにいうならエヌ・シー・ジャパンの事業戦略の一環として,位置付けられていることを読み取ってもらえれば幸いである。
また,そうしたビジネス的な側面を抜きにしても,雀龍門は純粋にクオリティの高いオンライン麻雀ゲームに仕上がっている。興味があるならば,ぜひ一度プレイしてみていただきたい。
雀龍門公式サイト
http://janryumon.plaync.jp/- 関連タイトル:
真・雀龍門
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