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[GDC 2010]164年分の作業が1週間で片付いた!?「Star Wars:The Old Republic」,表情アニメーションの自動化で難題を解決
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印刷2010/03/15 17:15

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[GDC 2010]164年分の作業が1週間で片付いた!?「Star Wars:The Old Republic」,表情アニメーションの自動化で難題を解決

BioWare Austinに在籍する「Star Wars: The Old Republic」のシニア・テクニカル・アーティスト,Ben Cloward(ベン・クロワード)氏
画像集#001のサムネイル/[GDC 2010]164年分の作業が1週間で片付いた!?「Star Wars:The Old Republic」,表情アニメーションの自動化で難題を解決
 「我々が制作しているゲームは,とてつもなく巨大なプロジェクトなんです」と語るのは,現在「Star Wars: The Old Republic」(以下,The Old Republic)を開発中のBioWare Austinに在籍するシニア・テクニカル・アーティスト,Ben Cloward(ベン・クロワード)氏だ。The Old Republicの脚本は,古くは「Baldur's Gate」から最近の「Mass Effect 2」まで,BioWareの全作品の脚本を積み重ねたよりも分厚く,ゲームに登場するすべてのキャラクターのセリフが,フル音声で聞けるという莫大なデータ量を誇っている。
 本作に登場するNPC達は数百体の規模になるのだが,クロワード氏の推定では,彼に託されたそれぞれのキャラクターの表情アニメーションを,1週間で40時間の労働時間を守って自分の手作業で進めると,なんと164年間もかかってしまうことになるという。彼を含めた4人のチームメンバーが,24時間働き続けても,10年間はかかってしまうという,とてつもない作業量だ。

画像集#002のサムネイル/[GDC 2010]164年分の作業が1週間で片付いた!?「Star Wars:The Old Republic」,表情アニメーションの自動化で難題を解決

画像集#003のサムネイル/[GDC 2010]164年分の作業が1週間で片付いた!?「Star Wars:The Old Republic」,表情アニメーションの自動化で難題を解決
 The Old Republicは,まるで水彩画のようなテクスチャーアートからも分かるように,「手作りっぽさ」が大切にされている。しかし,キャラクター数が膨大過ぎるし,スター・ウォーズの世界では,人間だけでなく様々なエイリアンが登場するので,何かのソリューションが必要だったのだ。「我々も一つずつを手作業で微調整したいし,そうしたほうが自分の満足できるものになるのは分かっています。しかし,この164年分もの作業を,何とか期日内に終わらせる方法を考えなければならなかったのです」と話すクロワード氏が,時間をかけて行なったのが,表情アニメーションを自動化するプラグインの制作だったという。
 ちなみに,BioWareは「FaceFX」という表情アニメーションツールを使っており,基本的なアニメーション技術は「Mass Effect」チームのものを下地にしているらしい。

 クロワード氏の解説は,まずどんなエイリアンの表情でも対応できるよう,「キャラクター・リグ」(キャラクターモデルの特定部位を動かすために使う複数のマーカー)の配置を工夫して,目や口の動きをパターン化することから始まった。とくに苦労したのは,発音したときの口の動きだったが,唇は「Eee」の発音に近い横開きの状況が100%,「Ooo」の発音のつぼんだ状態を0%にするスライダーを作り,さらに上下にも似たようなスライダーを制作。すべての唇の動きは,この二つのスライダーの0%〜100%の中で調整するというわけだ。続いてセリフの音声データとの調整をしていくそうだが,短いセリフや,「b」「p」など感情によって上唇と下唇の合わせ具合が微妙に異なってくる破裂音は,かなり難しいとのことだ。


画像集#004のサムネイル/[GDC 2010]164年分の作業が1週間で片付いた!?「Star Wars:The Old Republic」,表情アニメーションの自動化で難題を解決 画像集#005のサムネイル/[GDC 2010]164年分の作業が1週間で片付いた!?「Star Wars:The Old Republic」,表情アニメーションの自動化で難題を解決

 そうやってキャラクターの表情を作り出せるようになると,今度は表情のパターン化に着手する。Disgust(嫌気),Joy(喜び),Fear(恐怖),Sadness(悲しみ),そしてAnger(怒り)の五つのパターンを制作したあと,さらにそれぞれにStatement(陳述),Question(質問),Exclamation(感嘆)のパターンを掛け合わせ,合計15種のパターンに増幅。これに,Eager(熱心),False(嘘つき),Melancholy(懐かしみ)など,特殊状況における表情を加えることで,総計27種の基本パターンを作り上げた。
 さらに,それぞれを2回作り直す手作業で,同じパターンながら3種の異なるものを用意することで,ランダム性を与えている。つまり,後述する特定のコマンドを認識すると,指定された基本パターンの3種から一つをランダムに選び出して,キャラクター・リグをスムースに動かし,表情を自在に変化させていくという仕組みなわけだ。

画像集#007のサムネイル/[GDC 2010]164年分の作業が1週間で片付いた!?「Star Wars:The Old Republic」,表情アニメーションの自動化で難題を解決

 表情の基本パターンができあがると,今後はセリフの音声データとの調整をしていく。その手法は,裏データの会話テキストに追加された“シンボル”を利用し,その時々に利用されるべき表情パターンにコマンドを出していくというものだ。これは,例えば「怒り_質問」のパターンであれば「*」のシンボルを,「恐怖_心配」であれば「〜」を,裏データのテキスト文に混ぜることでコマンドするのである。つまり,

「私はあなたと同じシスです。あなたの広い心で判断して,戦いの試練を私にください。お願いです。」

 というセリフがあったとすれば,

「私はあなたと同じシスです$ あなたの広い心で判断して=,戦いの試練を私にください お願いです#」

※$は「悲しみ_悲哀」,=は「喜び_興奮」,#は「悲しみ_無念」

 というシンボルを加えた文章にしておくことで,そのシンボルが音声ファイルの到達時点で自動的に処理されて,会話中に3種の表情アニメーションが連続的に作り出されていくわけだ。

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 こういった目や口の動きとともに大切な,頭部や眼球の動作もパターン化しておくことで,さらに真実味のあるアニメーションへと変えていく。クロワード氏は,「他人と話しているときに,どれだけ頭や眼球が動くかを観察してみてください。その動きがあるかないかで,ゲームキャラクターのリアリティも随分と変ってくるのです」と強調する。
 こういうアニメーション技術を応用することによって,当初164年と推定されていた労働時間も,あっという間の1週間分に短縮。当然ながら,基本テクノロジーの開発に相当な時間をかけているし,キャラクターモデルも徐々に送られてきたはずなので,仕事を一気に片付けて,ここ数か月は「オフィスの中でコーヒー片手に談笑していただけ」なんてことではない。アニメーターには,顔以外にもさまざまなゲーム要素をアニメーションする責務があるのだ。

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 もし近い将来,読者の皆さんがThe Old Republicに触れる機会を得たときには,ここに述べられたような表情アニメーションに隠れた,クロワード氏ら技術者の苦労を思い出してもらいたい。NPCが明らかに怒った口調で皆さんに笑いかけていたら,それは見落とされた設定ミスなので,バグレポートを送るのを忘れないように。
  • 関連タイトル:

    Star Wars: The Old Republic

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