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  • 発表日:2009/01/08
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「Phenom II」正式発表。AMD初の45nmプロセス採用デスクトップPC向けプロセッサのキモを整理する
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印刷2009/01/08 14:01

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「Phenom II」正式発表。AMD初の45nmプロセス採用デスクトップPC向けプロセッサのキモを整理する

画像集#002のサムネイル/「Phenom II」正式発表。AMD初の45nmプロセス採用デスクトップPC向けプロセッサのキモを整理する
 2009年1月8日14:01,AMDは,開発コードネーム「Deneb」(デネブ)として知られてきたクアッドコアCPU,「Phenom II X4」(フェノム ツー エックスフォー)を正式に発表した。AMDによる公式な製品名は「AMD Phenom II X4 Processor」。同社のデスクトップPC向けCPUとしては初めて,45nmプロセス技術で製造される製品となる。
 2008年11月13日の製品名発表から2か月弱。気になるパフォーマンス検証は別途掲載しているレビュー記事に任せ,本稿では,AMDの日本法人である日本AMDが開催した報道関係者向け事前説明会の内容を中心に,Phenom II X4のポイントをまとめてみたい。


第1弾製品はBlack Editionを含む2モデル

AM2+パッケージ採用で,価格は300ドル以下


 いきなり結論めいたことを述べてしまうと,Phenom II X4は,

65nm SOIプロセスで製造されていた従来のPhenomを,45nm SOIプロセスへとシュリンクし,同時に,CPUコア間で共有されるL3キャッシュの容量を従来の2MBから6MBへと増強。さらに,いくつかの新機能を追加したプロセッサ

である。

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事前説明会で展示されたPhenom IIのウェハ
画像集#004のサムネイル/「Phenom II」正式発表。AMD初の45nmプロセス採用デスクトップPC向けプロセッサのキモを整理する
Phenom II X4の概要。AMD史上最高の性能と下位互換性を持ち,低消費電力化を実現したプロセッサであるとアピールされる
 最近のAMDは,まずサーバー/ワークステーション向けCPU「Opteron」(オプテロン)を市場投入し,デスクトップPC向けCPUはそれをベースとする戦略をとっているが,果たしてPhenom IIは,2008年11月に発表された45nmプロセス版「Quad-Core Opteron」で,開発コードネーム「Shanghai」(シャンハイ)として知られて来た製品と,根幹を同じくしている。

 トランジスタ数は7億5800万個で,ダイサイズは258mm2。Phenomだと順に4億5000万個,285mm2だったから,トランジスタ数は70%近く増えた一方,ダイサイズは約10%の小型化を実現した計算だ。
 CPUパッケージはAM2+で,これは従来のPhenomと同じ。AM2+対応のSocket AM2搭載マザーボードで,適切な電源設計がなされている製品であれば,BIOSのアップデートによってPhenom IIにも対応できる可能性が高い。

 発表時点の製品ラインナップは下に示したとおりで,モデルナンバーは今回から3桁に刷新されている。既存のPhenom&Athlonファミリーも,需要がある限り併売されていくという。

■Phenom II X4 940 Black Edition/3.0GHz
  • HyperTransport:3.6GT/s(片方向1.8GT/s)
  • メモリコントローラ:DDR2-1066対応
  • コア電圧:0.875〜1.5V
  • Tcase:62℃
  • TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力):125W
  • メーカー希望小売価格:275ドル
■Phenom II X4 920/2.8GHz
  • HyperTransport:3.6GT/s(片方向1.8GT/s)
  • メモリコントローラ:DDR2-1066対応
  • コア電圧:0.875〜1.5V
  • Tcase:62℃
  • TDP:125W
  • メーカー希望小売価格:235ドル

Phenom IIはDragonプラットフォームの「心臓部」として訴求される
画像集#005のサムネイル/「Phenom II」正式発表。AMD初の45nmプロセス採用デスクトップPC向けプロセッサのキモを整理する
 なお,これも事前に発表されているが,AMDは,Phenom II X4と「AMD 790GX」もしくは「AMD 790FX」チップセット,そしてATI Radeon HD 4800シリーズを組み合わせたプラットフォームを,「Dragon」(公式には「Dragon Platform Technology」)として訴求していく。
 事前説明会で挨拶に立った,日本AMDの吉沢俊介代表取締役社長は,「Dragonには,『Power』(力),『Wisdom』(知恵,賢明),『Strength』(強さ,強靱さ)という,三つの意味が込められている」と,Dragonプラットフォームが持つ総合力の高さをアピール。また,製品説明に当たった同社の土居憲太郎氏は,「Power」に「ユーザーの好みに合わせてカスタマイズが可能」,「Wisdom」に「HDコンピューティングを,より低消費電力で実現する」という意味も込められていると補足する。

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Power,Wisdom,Strengthの象徴として,Dragonプラットフォームがある……というスライド
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既存の「Spider」プラットフォームを圧倒するDragon。ATI Radeon HD 4800効果でゲームにおける伸びが大きい


45nmプロセスの「ヘッドルーム」を強調するAMD

AM3版は発表されず。AM2+版は最初で最後!?


吉沢俊介氏(日本AMD 代表取締役社長,上)と土居憲太郎氏(日本AMD コンシューマープロダクトマーケティング部 部長,下)
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 先ほど,「CPUパッケージはAM2+」と述べたが,これには追加の説明が必要だろう。
 ご存じの読者も多いと思うが,AMDは2009年第1四半期内――つまり3月中まで――に,DDR3/DDR2 SDRAMの両方をサポートした新世代CPUパッケージ「AM3」へ移行する予定とアナウンスしている。AM3パッケージ版のPhenom IIは,新型CPUソケット「Socket AM3」を搭載し,かつDDR3メモリスロットを用意したマザーボードと組み合わせることで,DDR3メモリを利用可能。一方で,Socket AM2環境との下位互換性も確保されるため,本来であれば,DDR2メモリしかサポートされないAM2+版をわざわざ投入する理由はない。

 ではなぜか。土居氏は,「Socket AM3では,DDR3メモリモジュールのバリデーションなどに時間がかかる。そのなかで,できる限り早いタイミングで市場に45nmプロセスの製品を投入するため,AM2+を先行させた」と,その理由を明言する。つまりAM2+版は,先行発売版というわけだ。AM2+版は,おそらく今回の2製品で打ち止めになるはずで,相当レアなアイテムということになりそうである。

Phenom IIの互換性についてまとめたスライド。AM3版Phenom IIはSocket AM3/AM2のどちらでも利用可能だが,今回発表されたAM2+版Phenom IIはSocket AM3をサポートしない
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Phenom II X4 940 Black Editionは,「Phenom X4 9950 Black Edition/2.6GHz」と比べて120%以上の性能向上を実現したと謳われる。IPC向上率は3%とのこと
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 さて,気になるパフォーマンスについて,具体的な値はレビュー記事を参照してほしいが,土居氏は従来のPhenom X4と比較しつつ,「IPCで3%の性能向上を果たしている。単に『45nmへシュリンクしただけ』ではない」と強調する。

 AMDは,45プロセス世代のプロセッサに関連して,このIPC(Instruction per Clock:1クロック当たりの命令実行数)という言葉を繰り返し使っている。だが,今日(こんにち)のCPUにおいて,IPCを正確に見積もるのは難しい。実際,AMDですらも,45nmプロセス版Quad-Core Opteronの発表時には「キャッシュなどいろいろ含めて従来比20%くらい高速」と述べるに留まっていたほどだ。
 その意味において,土居氏の挙げる「3%」という数字は,コアアーキテクチャそのものに手を付けないまま達成できる数字としては,相応に納得できるものだが,正直,体感できるレベルではない。IPCという言葉を繰り返すのは,「(わずかながらにせよ)改良されており,“あの”Phenomとは同じではない」と言いたいがため,くらいに受け取っておくのが正解と思われる。

従来のPhenomと比べて,オーバークロックに当たってのヘッドルームが圧倒的に高いという
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 むしろPhenom II X4に関して注目したいのは,動作クロックの引き上げ,そして,「Phenom II X4 940は空冷でも3.8GHz,液冷や液体窒素冷却時には5〜6GHzといったオーバークロックが可能」(土居氏)と強調されるほど拡大したヘッドルームである。
 今回発表された製品だと,動作クロックは最上位で3.0GHz。Phenom X4の最上位モデル「Phenom X4 9950 Black Edition/2.6GHz」と比べて,400MHz引き上げられたことになる。3.8GHzまで空冷で引き上げられるなら,もっと高い規定クロックのモデルがあってもいいような気はするが,土居氏は「TDPの兼ね合いで3.0GHzになった」と述べていた。消費電力が厳しくチェックされる現在,ワット当たりの性能に注力するAMDが,125Wを大きく超えるTDPの製品は出しづらいということなのだろう。

 また,AMD純正オーバークロックツール,「AMD OverDrive」は,Phenom II世代にバージョン3.0となり,必要に応じて動的に動作クロックを引き上げる「Smart Control」が追加される予定だ。
 AMD OverDrive 3.0の公開予定時期は2009年第1四半期中で,「まだ詳細な機能は決定していない」(土居氏)。スライドに示されているスクリーンショットを見るに,CPUコアごとの電圧設定なども可能そうだが,AM3環境対応らしいので,Socket AM3環境が出揃ってからの登場になるのではなかろうか。

会場で示された,AMD OverDrive 3.0のデモ。写真は,空冷で3.8GHz動作を実現している様子だ。このほか,オンデマンドで(=必要に応じて)動作クロックを引き上げるSmart Controlなど,いくつか新機能が用意される見込み
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 なお,パフォーマンスとは少々離れるが,事前発表会ではPhenom IIの電力効率の高さもアピールされていた。基本的には,45nmプロセス版Quad-Core Opteronと同じ低消費電力技術が採用されているわけだが,AMDはPhenom IIのそれを「Cool'n'Quiet 3.0」と命名している。従来のPhenomだとバージョン2.0だったから,バージョンが一つ上がったわけだ。
 バージョン2.0との主な違いは,45nmプロセスによる低消費電力化に加えて「機能的にはPステート(筆者注:動作ステート)がひとつ増えている」点や,「最低動作周波数が下がっている。Phenom II X4 940は800MHzまで下がる」(いずれも土居氏)点にあるという。

会場では,Phenom II X4 940 Black EditionとCore i7-920の消費電力比較デモが行われた。CPUとマザーボード,メモリモジュール以外の構成を揃えた状態で,アイドル時には30W前後,高負荷時には50W程度,Phenom II X4 940 Black Editionのほうが消費電力は低いとされる(※右の写真はアイドル時のもの)
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コストパフォーマンスの高さをアピールするAMD

Phenomの存在感は確実に増すはず


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 冒頭で紹介したとおり,発表されたPhenom II X4のモデルナンバーは940,920。土居氏は「たまたま」と述べて笑っていたが,最上位モデルであるPhenom II X4 940 Black Editionが競合の最下位モデル(※i7-920)とほぼ同価格という,意欲的な設定されているあたりからしても,Core i7を意識した製品ラインナップであることに疑いの余地はほとんどない。
 いずれにせよ,Socket AM2という,今ある環境を(すべてではないが)そのまま利用できる点も含めて,対Core i7では十分過ぎるほどの価格競争力を持っており,PCショップにおけるPhenom II,そしてAMD製CPUの存在感は確実に増すものと思われる。

 ユーザーとして気になるのは,今回発表されたAM2+版Phenom II X4が明らかに“つなぎ”という点だろう。Socket AM3の投入が第1四半期に予告されているうえ,下位互換性も確保される以上,「安定したゲーム環境」を第一に考えるなら,AM3マザーボードが出揃って,価格がこなれるのを待つというのも悪くない選択肢となる。AMD派,あるいは,価格対性能比を第一に考えるPCゲーマーにとっては,嬉しくも悩ましい時期が到来したといえそうだ。
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