レビュー
意外とシリアスな物語にも注目してほしい,異色の“ダムマネジメントRPG”
ダン←ダム
本作の舞台となるのは,広大な砂漠の中にあるダムの街「ソワサント」。人々は,この地にはるか昔に建造されたダムの恩恵を受けて街を築き,豊かな生活を営んでいたのだが,ある夜,地下から突然現れたモンスターの襲撃を受け,平和な日々は終焉を迎えてしまう。プレイヤーは,ひょんなことから街の防衛を任されてしまった少年・シオン(名前は変更可能)となって,街とダムを魔物から守り抜かなくてはならないのだ。
冒険者を指揮して街を守り,ダンジョンに侵攻せよ!
街には,ダムのほかに,酒場,鍛冶屋,養生所,研究所,倉庫,神殿があるが,ゲーム開始時のモンスターによる襲撃で,ダム,酒場,倉庫,神殿を除く施設の半数が破壊されてしまう。そこでまずは,残された施設をモンスターから守りつつ,破壊された施設を修復していくことになる。また,この中で神殿だけは特別で,モンスターからの襲撃を受けたり,投資によってアップグレードしたりすることはできない。各施設については,「こちら」で詳しく紹介しているので,併せてチェックしておこう。
酒場で雇った冒険者の編成や「夜」フェーズでの行動の指示は,神殿で行う。ここでは,ダンジョンの探索に最大3パーティ,街の防衛には最大6パーティを指定できる。メインストーリーはダンジョンを一つずつ攻略していくことで進行するが,街の防衛をおろそかにして,全施設が破壊されてしまうとゲームオーバーだ。十分な数の冒険者が揃っていない序盤のうちは,街の防衛に専念しつつ力を蓄えるのがいいだろう。
また,街の防衛/修復と並んで重要となってくるのが,各施設への投資だ。各施設は投資によって,最高5段階のアップグレードが可能(ダムのみ7段階)で,それに伴ってさまざまな恩恵が受けられる。また,施設をアップグレードすることで街が復興し,より多くの収入が得られるようになり,さらに施設の耐久度が上がってモンスターの襲撃に対して強くなるので,ある程度お金が貯まってきたら積極的に投資を行いたい。
このとき,最優先でアップグレードしていきたいのは,何といってもやはり酒場だ。酒場が大きくなると,雇える冒険者の最大人数が増えるほか,冒険者の不満度の上昇を抑えることもできる。冒険者の不満度は毎日の冒険で蓄積していき,不満度が100になると追加費用を払うまでパーティに編成できなくなってしまう。冒険者が次々とボイコットしてしまうと,再雇用の費用もバカにならないので,ほかの施設は後回しにしてでも酒場のアップグレードを進めよう。
ダムといえばやっぱり放水!
強力だが使いどころに要注意
また夜間は,街の防衛と平行してダンジョンの探索を行う時間でもある。ダンジョン内には,敵が出現するポイントである「ゲート」が複数あり,これらをすべて破壊するとボスが出現。ボスを撃破すると,そのダンジョンは攻略ずみとなり,新たに発見されたダンジョンに挑戦できるようになるというのが,ダンジョン探索の基本的な流れだ。
このときに注意すべきなのは,「夜」フェーズの制限時間は,ダンジョン探索中のパーティにも容赦なく適用されるという点だ。制限時間がくると,たとえボスとの戦闘中であっても途中で帰還することになり,次の日にはボスの体力が全快してしまう。防衛パーティにとって「夜」フェーズの終了は安堵の瞬間ともいえるが,ダンジョン侵攻中のパーティにとっては,限られた時間内で目標を達成しなくてはならないという,絶妙な緊張感のあるシステムになっている。
ほとんどの場合,一度破壊したゲートは次の日になっても復活しないので,毎日こつこつとゲートを破壊して,最後にボスを倒せばよいのだが,一部のダンジョンでは毎日ゲートが復活してしまう。こうなると,一晩のうちにゲートを破壊しながらボスまで進撃し,一気に倒さなくてはならないので,「夜」フェーズの制限時間が重くのしかかってくる。 ゲームを進めるにつれてボスの体力がアップし,攻撃もより激しくなるので,街の防衛にも気を配りつつ,いかに強力なパーティをダンジョンに送り込むかがダンジョン攻略の鍵を握っているのだ。
ダムによる放水攻撃は,ゲーム序盤〜中盤に差し掛かるあたりの,あるイベントを契機に使用できるようになる。これ以降,ダムに十分な水が溜まっているときに,ダンジョン探索画面から放水アイコンを選択すると,放水攻撃の準備が行える。放水攻撃の手順は簡単で,複数の流入路が存在する場合には,どのルートに水を流すかを選択し,続いて放水量を指定するだけ。十分な水量を放水すれば,ルート上のモンスターを一気に押し流してしまえる。
ただし,ルート上に味方のパーティが存在した場合,一緒に押し流されてしまう危険性があるという点が非常に悩ましい。ダンジョン内のパーティは,それぞれに与えられた指示に従って独自に行動しており,自由に移動させられないため,どうしても放水に巻き込まれやすい。押し流された味方のうち,半分くらいは自力で街まで戻ってくるが,不満度が大幅に上昇してしまう。しかし,これはまだマシなほうで,街に戻ってこられない仲間も出てしまう。
ゲーム自体は,ウリである放水攻撃なしでも十分クリアできてしまうので,デメリットの大きさを考えると結局,「ダムは使わないでもいいや」という考えに傾きがちになってしまうのが,個人的に本作でもっとも残念に感じる点だ。一応,装備重量が重いキャラクターほど,放水で流されにくくなっているので,放水攻撃を多用したい人はキャラクターの装備にも気を配っておきたい。
なお,攻略ずみのダンジョンへはアイテム探索や鉱石発掘パーティを派遣でき,装備アイテムや鉱石などを入手できる。とはいえ,ダンジョンに派遣できるのは,ダンジョン攻略パーティも含めて合計3パーティまで。戦力の配分は計画的に行おう。
予想に反して,意外とシリアスなストーリーが展開……?
基本的には,好きな順番で選択してストーリーを進めればいいのだが,サブキャラクターの加入/離脱イベントに関してのみ注意が必要だ。サブキャラクターの加入イベントは選択できる時期が限定されており,うっかり先にメインストーリーを進めてしまうと,あとから仲間に加えることはできなくなってしまう。また,サブキャラクターの離脱イベントを進めると,ストーリーの途中でそのキャラクターがいなくなってしまう。
しかも,どれがメインストーリーのイベントで,どれがサブキャラクター加入などのサブイベントなのかが選択肢を見ただけでは分からないのが困りものだ。そのため,初回プレイではうっかりタイミングを逃して,サブキャラクターを仲間にできなくなってしまいがち。せめて,どれがメインイベントで,どれがサブイベントなのかが判別できる表示にしてもらいたかったところだ。
本作では,限られた資源や人材をいかに上手くやりくりし,効率的に街の発展とダンジョンの攻略を行うかという,マネジメントの楽しさが十分に味わえる。一方で,本作のウリであるダムと放水攻撃については,ダムをアップグレードした際の効果が実感しにくかったり,ダムの外見が変化しなかったりする点は,少々残念に感じられる。
とはいえ,部隊を配置したあとはハラハラしながら戦いを見守るだけという,本作ならではの緊張感は,一般的なRPGでは味わえない大きな魅力となっている。また,「昼」と「夜」を交互に繰り返すというゲームシステムの特性上,一プレイごとの区切りをつけやすく,各フェーズもテンポよく進んでいくため,持ち運んで外出先でプレイすることも多いニンテンドーDSとの相性も良い。操作はボタンとタッチペンの両方に対応しており,どちらでもストレスなく遊べるのも好印象だ。一風変わったゲームを探しているRPGファンならば,本作を試してみる価値が十分にあるだろう。
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