連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ / 第18回:「どうせなら良い嘘がいい」
著者近影
八百長。それは,誰が受かってその役を演じるかなんて決まっているのに,主催者の体裁を繕うためだけに開かれる,資本主義社会が産んだ空虚なオーディションのこと。そんな悲しき公開晒し者コンテストを,あなたは受けたことあるかしら?
私はあるわ。私が小中高とサッカーをやっていたのはたまーにここで語っているから知っている人もいると思うけど,これはまさに高校時代のサッカー地区選抜選手選考会での出来事。
その地区の各学校からとくに優れていると判断された選手が一堂に会し,試合を通じて選抜されるといった手順で行われるオーディションに,この私が参加したのね。ゴールキーパーとして。で,自分で言うのもなんだけど,その日に限ってキレキレ。エクセレントセービングを連発してたのよ。
1対1のピンチを果敢な究極飛び出しで防ぐわ,190cmの相手FWにエクセレントハイクロスセービングで競り勝つわ,PKを2本もエクセレントPKセービングでストップするわ,もうそりゃ守護神極まりない活躍。そのうえ,各学校から寄せ集められた選手達を,見事にまとめ上げるカリスマ性も発揮。
で,当初の予定では2試合しか出られなかったはずなのに,急きょ行われることになった大学生チームとの試合にも抜擢されたりして。1年生なのに2年生ばかりのチームの中,キャプテンマークを託されたりして。さすがに大学生相手だから,防戦一方の試合だったんだけど,それでも見事味方オウンゴールによる1失点に抑えたりして。最終的に,対戦相手の大学生から超高校レベルだという太鼓判まで押されたりして。味方から若林くんって呼ばれたりして。
それが何? 次の日の選抜選手の発表で,バッチシ落とされてやんの。聞くところによると,初めからメンバー決まってたんだって。唯一失点を許した相手である味方DFがしっかり選抜されてたのも運命といえば運命。
要するに,地区の全学校でオーディションしたっていう建前がほしかっただけなんだって。SGGK(スーパーグレートゴールキーパー)呼ばわりされてまんざらでもない顔をしていた自分が本気で恥ずかしいわ。っていうか,高校生の純情踏みにじるなと。
で,そんな悲しい出来レースをもう繰り返さないために,誰がなんと言おうと今週は「マリオ&ルイージRPG3!!!」を断固紹介しようって話。
そ,そりゃ「女神異聞録デビルサバイバー」もあるわよ。「わがままファッション ガールズモード」だってある。「デスティニーリンクス」も。確かにどれも予告したような気はする。
でも,「実は決まってました〜」なんて,それら全部を一気に紹介するなんて茶番はもうたくさん! その気もないのに試すようなマネはしない。今週はとにかく,マリオ&ルイージRPG3!!!が面白かったの! あのとき,一番良かった選手を選抜してほしかったの!
……ってなことを言いたくなるぐらい,良く出来てるのよコレ。なんていうか,すべらない。
クッパの体の中が舞台っていう不可思議な設定のRPGで,戦闘がゆるいアクションなんだけどね。このアクション,言ってしまえばタイミング良くボタンを押していくだけなんだけど,これがやたらと面白いの。ちゃんと操作している感じで,プレイヤーとキャラクターの一体感を味わえて,妙に気持ちいいのよ。とくに私なんかの場合,甲羅をタイミング良くけっ飛ばすだけのミニゲームがあまりに気持ち良くて,ついついこればっかり遊んじゃうほど。
あと,クッパが悪ぶってはいるんだけど根本的にはいいヤツってあたりも見逃せないわ。このゲイムをプレイしてクッパを好きにならない人とは,たぶんほかのことでも分かり合える日は来ないと思う。
しかしマリオものって,なんでこんなに高いレベルで安定してるのかしら。前にも書いたかもしれないし書いてないかもしれないということで,疑わしきはもう一度書けみたいなところがあるからあらためて書くけど,私が一番尊敬するゲイムクリエーターは任天堂の宮本 茂氏なのね。で,マリオがすべらないのは宮本氏の功績だと思うのよ。
開発の内部事情とか分かんないし,素人意見でしかないんだけど,マリオもののゲイムって,好き嫌いは別として,基本的には誰がプレイしても確実に面白いじゃない? それが凄い。クリエイターって,既存の概念をどうやって壊すかに苦悩しているイメージだけども,宮本氏の作るものってそういうことより,「プレイしてて楽しい」という本質からブレてないのよね。
そのうえ,ゲイムに作家性を出さない。知識をひけらかすわけでもなく,自分が作ったんだというエゴもなく,遊ぶ人に余計なことを考えさせず,楽しい時間を提供するというスタンス。ここから「ゲイムはプレイヤーのもの」という宮本氏のメッセージが感じられるような気がするのよね。このマリオ&ルイージRPG3!!!を氏が直接作ってないとしても。なぜなら,実際にこの作品をプレイしてみて,「マリオはすべらないなぁ」という感想を抱いてしまったから。
それって,完全に宮本氏の功績でしょう? 宮本イズムの継承者達が作っているってことでしょう? それほど,この作品には隙がないのよ。
もちろん,好き嫌いはあるでしょうけど,それでも子供から大人まで幅広い層が楽しめるはず。とりあえず,プレイしておいて間違いはない。それがマリオ。今回もマリオだったわ。
てな感じで今週は自信をもって紹介したマリオ&ルイージRPG3!!!だけども,ほんっとにマリオには間違いがないんだってば。強いて間違いを探すとすれば映画版のマリオくらいかしら。アレなんだったんでしょうね? 「北斗の拳」にしても「機動戦士ガンダム」にしても,最近でいうと「ドラゴンボール」にしてもそうなんだけどね。
なんでわざわざ可愛らしいものやカッコいいものを現実の延長線上にある実写映画に落とし込もうとするのかしら? 現実を見ないためにゲイムをプレイしたりアニメを見たりしてる人だって私だけじゃないでしょうに。
以上,リング上で現実か嘘かわからない夢を演出するいちプロレスラーの意見でした。また来週! 良い嘘のような一週間を!
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