この春,Cooler Masterは,それまで使っていた「CM Storm」ブランドを廃し,社名と同じCooler Masterブランドでゲーマー向け製品も扱う方針へ切り替えているのだが,それと前後して世界市場向けに発表されたゲーマー向けマウス製品が,国内ゲーマーコミュニティの一部で話題を集めた。
話題を集めたその製品の名は「
Mizar」(マイザー)。なぜ話題を集めたのかは,COMPUTEX TAIPEI 2014のCooler Master製ブースで撮影してきた実機写真を見てもらえば,ピンとくる人も多いのではなかろうか。
Cooler Masterブースで展示されていたMizarの実機。動作するレベルのサンプルだ
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Mizarを手にポーズを決めるCaster Salley氏(Product Manager, Gaming Peripheral Lines, Cooler Master USA)
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そう,Mizarの外観は,
2013年9月をもって事実上の終焉を迎えたDHARMAPOINTからかつて販売されていたワイヤードマウス「
DRTCM37」「
DRTCM38」と,非常によく似ているのだ。そのため,「細部はともかく,筐体の金型は同じなんじゃないの? Cooler Masterが金型を買ったの?」と,国内で気にする人がいたというわけである。
では,本当のところはどうなのか。今回4Gamerでは,Cooler Masterの米国支社でプロダクトマネージャーを務める
Carter Salley氏に話を聞くことができたので,「実際どうなんですか」と公式見解を求めてみることにした。
MizarとDRTCM37&38は何が違うのか
最初に基本的な話を済ませておくと,Mizarは,PixArt Imaging(旧Avago Technologies)のレーザーセンサー「ADNS-9800」を搭載する右手用マウスだ。ボタン構成は左右メインとセンタークリック機能付きスクロールホイールに加え,スクロールホイール手前側に2個,左サイドに2個となっており,ボタンの機能割り当て設定内容は本体に内蔵されるフラッシュメモリへ保存できるようになっている。
製品コンセプトは,軽量であることと,左右メインボタンのクリック感,そしてそれ以上のクリック感を持つスクロールホイールの採用にあるという。
Mizarの本体両側面には滑り止めのラバーが貼られている
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以上を踏まえたうえで,まずは最も気になる“金型問題”からだが,氏いわく「(金型は)異なる。そもそも,
DH
A
R
MA
PO
I
NTのマウスとMizarは同じ形状ではない」。氏によれば,本体の手前側(=マウス後方側,CM Storm時代からのロゴマークが見えるところ)と右側面のデザインが異なっており,DRTCM37&38はシャープなシルエットになっていたのが,Mizarでは丸みを帯びたデザインになっており,「かぶせ持ち」により適した形状になっているとのことだ。
こちらがDHARMAPOINTのDRTCM38
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「それにしても似すぎてませんか。Mi
z
arはDRTCM37&38の改良版といった感じの認識でいいんですか」という質問への回答は,「それを言うなら,DH
A
R
MA
PO
I
NTのマウス自体が『IntelliMouse Explorer 3.0』の改良版だろう
(笑)」。
IntelliMouse Explorer 3.0に加え,
Logitech(日本ではロジクール)によるMXシリーズの名も挙げたSalley氏は,「これらと,これらをベースにした右手用形状というものに,ゲーマーは慣れ親しんでいる。そこで今回は,それらの要素ひとつひとつを取捨選択していって,さらに,今回の製品開発コンセプトである『軽量』を加えていったところ,結果としてこうなった,ということになる。Mizarは我々独自のデザインによる製品だ」とも述べていた。
では,DRTCM37&38と決定的に異なる部分はどこか聞いてみたところ,間髪入れずに「内部構造だ」という答えが返ってきた。「センサーは(DRTCM38と)同じだが,配置が異なり,(マウスの制御に用いる)マイクロコントローラもファームウェアも異なる」(Sally氏)。
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Mizar(左)とDRTCM38・DRTCM37(右)でセンサーの位置を比べたところ。少なくともMizarとDRTCM38では場所が異なり,Mizarのほうが本体前後中央寄りになっている |
左の写真は,Cooler Masterブースで流れていたMizarのデモムービーより,基板のイメージ。右のはDRTCM38のレビュー記事から,同製品を“殻割り”したところだ。ムービーに映っている基板のイメージが正確だとすると,確かに基板の設計は異なるようである
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「ブースに展示品がない」(Salley氏)とのことで,こちらはAlcorの製品イメージ
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「Mizarは(DRTCM38と)同じセンサーを採用するため,『似ている』と思うかもしれないが」と続けた氏によると,Cooler Masterがもうひとつ準備している光学センサー搭載モデル「
Alcor」(アルコー)は,Mizarと共通のデザインを採用しつつ,Mizarの本体両側面に貼られた滑り止めのラバーを省略することでさらなる軽量化を図っているという。
「DHARMAPOINTのマウスが手元にあるなら,ぜひMizarとAlcorを横に並べて比較してみてほしい。確かに似てはいるかもしれないが,しかし違うということが分かってもらえるはずだ」。
なお,Mizarは北米など,一部の市場で発売済みとなっており,ほかの市場でも向こう1〜2か月で発売になるのではという見通しをSally氏は示していた。AlcorはMizarベースの新型という扱いで,新型センサーを採用することもあり,世界市場における発売は晩夏かそれ以降になるとのことだった。両製品の市場価格は基本的に大きくは変わらない見込みという。
というわけで,Cooler Masterの公式見解としては,「確かに似ているが,“DR
T
CM
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&
38
のCo
ol
er
Ma
s
ter版”ではない」ということになる。少なくとも,微妙に形状が変わり,内部構造も変わっている以上,DRTCM37&38そのままというわけにはいかなさそうだ。
では,そんなMizarとAlcorは,
DR
T
CM
37
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ユーザーの受け皿になってくれれるのかどうか。Sally氏の口ぶりからすると,そう遠くない将来に,少なくともMizarは日本市場でも発売になると思われるが,果たしてユーザーからはどんな評価を受けることになるだろうか。