インタビュー
[E3 2013]「Thief」プレイレポート&インタビュー。10年間音沙汰がなかった名作が,研ぎ澄まされて帰ってきた
開発を担当しているEidos Montrealによれば,本作は既存シリーズ作品の続編や前日譚ではなく,「Thief」という作品を「reinvention」(再創作)したものとのこと。“一人称視点のスニークアクション”というシリーズ最大の特徴をはじめとするDNAを受け継ぎつつも,新しい要素が追加されたものとなる。
本稿では,先日のE3 2013で披露された本作のプレイデモと,プロデューサーのStephane Roy氏へ行ったインタビューの模様をお届けしよう。
シリーズの特徴である自由度を
「Focus」システムがさらに高める
今回のプレイデモは,主人公である盗賊のギャレットが,希少な宝石「The Heart of the Lion」を盗むため,革命騒ぎの混乱に乗じて屋敷に忍び込むというところからスタートしたが,解説を担当したシナリオディレクターのSteven Gallagher氏はまず,本作の特徴が高い自由度にあると説明。今回は戦闘を織り交ぜてプレイするが,ステルスに徹して敵を1人も倒さずにクリアできることや,今回通るものとは違うルートが複数存在することを紹介した。
屋敷内では警備兵が巡回しており,まずは彼らに見つからないように進んでいくのだが,ここで重要になるのが画面の左下に表示される「Light/Shadow Sphere」だ。これはギャレットが敵に見つかりやすいかどうかが分かるインジケーターのようなもので,場所を移動するごとに表示が変化していく。これを確認しながらステージを進むのがプレイの基本となるだろう。
もちろん,隠れやすい場所を進むだけでクリアできるほど甘くはない。ときには自分で暗闇を作り出したり,衛兵の気を引いて道をつくったりといったことが必要になるのだが,このときに役立つのがさまざまな種類の矢だ。
プレイデモ中では「Water Arrow」をランプに当てて火を消したり,「Blunt Arrow」で瓶を割って音を立てたりといった使い方が披露された。ほかにも,オイルに火を着けるなどして敵の陽動に使える「Fire Arrow」といったものがあり,これらの使い分けが重要になりそうだ。
なお,シリーズでおなじみとなっている「Rope Arrow」は今作でも健在。今回のデモにおいても,高い場所へ矢を放った後,ロープを登っていくシーンが披露された。
ギャレットはかなり手練れの盗賊なので,衛兵のポケットからアイテムを盗んだり,扉や宝箱の錠をピッキングで開けたりといったことも(プレイヤーが正しく操作すれば)朝飯前なのだが,本作にはこれらのアクションの精度をさらに高める「Focus」という新要素が用意されている。
Focusはギャレットの集中力を一時的に高めるもので,これを使うと,ピッキングにかかる時間が短くなったり,一回のアクションで衛兵から複数のアイテムを盗むといったことが可能になる。
ほかにも,射撃の精度があがったり,果ては障害物を透視して反対側の様子をうかがうといった超人的なことも可能になったりするようだ。Focusの利用にはゲージを消費するので,ここぞというときに使うといいだろう。
今回のデモでは,戦闘時にFocusを使い,敵の弱点を表示させる方法も披露されたのだが,ギャレットはあくまで盗賊であり,それほど戦闘に長けているわけではないので,バッサバッサと敵を倒しながら進む,というわけにはいかないようだ。
なお,ゲーム内の設定で,このFocusをオフにすることも可能になっているとのこと。上級者はあえてオフにして挑んでみるのもいいだろう。
さて,ギャレットはそんな感じで屋敷内を進み,見事に「The Heart of the Lion」を手に入れた。これでステージクリアかと思ったのだが,解説によると,街に戻るまでが盗賊の仕事だという。だが,革命を叫ぶ民衆が興奮して火を付けたのか,屋敷と街を結ぶ橋が燃えている……。
火を避けるため,ギャレットは下水道のようなところを通ったり,建物の壁面にしがみついたりしながら移動していくのだが,このシーンで印象的だったのは,ギャレットが壁に取り付いた瞬間,視点が一人称から三人称へ変化したこと。一気に周りの状況がわかるようになり,アクション性が増したように感じられた。
逃走ルートの途中にもさまざまなお宝が落ちているのだが,ぼやぼやしているとあっというまに火が回ってくるので,取りに行くのは危険を伴う。しかし,ここで命を優先して,お宝をまったく取りに行かないのも,盗賊としていかがなものか……。
そんな思いに応えてくれたかのように,プレイデモはギリギリまでお宝を狙うという展開に,しかし,最後は火に巻き込まれてミスとなってしまった。
幸いなことにステージの最初からやりなおし,とはならず,その後は慎重なプレイでステージをクリア。殺した敵の人数や見つかった回数などのリザルトが表示されて,プレイデモは終了となった。
シリーズ作品をプレイしていない筆者の印象に残ったのは,やはり一人称視点でのステルスアクションというシステムだった。「Light/Shadow Sphere」があるとはいえ,視界が限られる中で敵の気配に注意を払うというプレイは,なかなかの緊張感と難度になりそうだ。
だが,ハードルが高すぎると感じたわけでもない。さまざまな種類の矢やFocusはプレイヤーのテクニック不足を補ってくれそうだし,プレイデモでは詳しく紹介されなかったが,選ぶルートによって難度が変わりそうな期待も持ったからだ。
日本発売は未定とのことだが,10年間最新作を待ちわびてきた人はもちろん,シリーズを体験したことがない人のためにも,ぜひいい知らせを聞きたいところだ。
プロデューサーのStephane Roy氏インタビュー
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まず,10年間新作がなかったシリーズが復活することになった経緯と,本作が続編などではなく,「reinvention」となった理由を教えてください。
10年前と今とでは,ユーザーの遊び方や求めるものが大きく変わっています。そこで今一度このタイトルを世に出したいと思ったのですが,ただ見栄えを良くしたコピーではなく,新しい作品を作りたいということで,「reinvention」という発想が生まれました。
4Gamer:
本作のタイトル名は,副題などがつかない,ズバリそのまま「Thief」ですね。Eidos作品では,最近「TOMB RAIDER」の最新作も同じようにナンバリングや副題をつけませんでしたが,今作の名前にはどのような狙いがあるのでしょうか。
Roy氏:
副題やナンバリングをつけなかったのは,これが始まりで,過去作をプレイする必要はないと新規プレイヤーのみなさんにアピールしたかったからです。シンプルに「Thief」なら,シリーズ作品を未体験でもプレイしやすいですよね。
4Gamer:
ちなみに,以前のシリーズ作品から引き続いて今作にも関わっているスタッフはいらっしゃるのでしょうか。
Roy氏:
過去の作品の開発に関わった人は1人もいませんが,もちろん開発チームの中には,シリーズのファンだった人が大勢います。
以前の開発スタッフともまったく交流がないわけではなくて,このE3にも何人か過去作の開発スタッフが来て,いろいろとフィードバックを返してくれました。
4Gamer:
10年前からグラフィックスが進歩していることは容易に想像できますが,ゲーム性という部分では,どのように変わっているのでしょうか。
Roy氏:
いろいろな要素が絡んでいて,簡単には答えられないのですが(笑),まずは「Focus」システムが挙げられるでしょう。これはチェスをしているときにすごくいい一手が見つかるときの感覚を再現したようなものです。詳しくは言えませんが,ストーリーにも関わってきます。
また,グラフィックスの進化が,見た目だけでなくゲーム性にも影響する場合もあります。例えば,10年前は技術的な問題から,光が当たっている部分と影の部分の明暗がはっきり分かれてしまっていましたが,今作ではよりリアルな表現が可能になり,プレイ感も現実に近いものになると思います。
4Gamer:
プレイデモの中に,一人称視点が三人称視点へ切り替わるシーンがありました。あのシステムはどのようにして生まれたのでしょうか。
Roy氏:
あのシステムは「Vertical Navigation」と呼んでいます。一人称視点だと,壁に張り付いたときにどうしても周りの状況が見えなくなってしまうので,プレイヤーにとっても,デザイナーにとっても,見やすい視点にしようという意図で導入しています。
「Vertical Navigation」が使われているのは主にステージのつなぎの部分で,数はそれほど多くありません。戦闘が発生することもないです。
4Gamer:
新要素である「Focus」ですが,設定でオフにできるようですね。今作の中心に位置しているようなシステムだと思うのですが,そうしたのは何故でしょう。
Roy氏:
Focusは決してチートではありませんし,さきほど話したようにストーリーにも関わってくるものですから,開発者としては遠慮なく使ってプレイしていただきたいです。
ただ,昔からのファンや,「マスター」とまで呼ばれるギャレットの腕を自分のテクニックで再現したい人のために,オフにもできるようにしています。
4Gamer:
そのように,新しいファンと昔からのファンの両方を満足させるようにゲームを作るのにはかなりの困難がありそうですが。
とても苦労しています。開発陣にとっては大きなチャレンジですし,何度となくユーザーテストを繰り返すなどして,バランス調整に数年間かけてきました。
先ほども少し話しましたが,10年前と今ではプレイヤーが求めるものが大きく変わりました。例えば,昔は敵に囲まれてしまったらほぼゲームオーバー,という流れでとくに問題はなかったのですが,今はプレイヤーから「武器や防具が欲しい」という意見が出てきます。
でも,ギャレットはあくまで盗賊で,戦士ではありませんから,そう簡単に強い武器を出すわけにもいきません。シリーズのDNAを受け継ぎつつ,現代のプレイヤーが求めるものにも応えるというのは本当に難しいですね。
4Gamer:
主人公のギャレットは,盗賊の組織に入って技を極めながらも,脱退して自由に盗みを働いているようですね。ちょっとつかみどころがなさそうな感じなのですが,どんなキャラクターなのか,もう少し詳しく教えてください。
Roy氏:
複雑な性格ですが,ひと言で表現するなら「アンチヒーロー」,ダークユーモアを持ったひと癖あるヒーローということになると思います。彼にとって,宝の価値そのものにそれほどの意味はありません。「あれは絶対に盗めない」とされているものをひっくり返すのが盗みのモチベーションになっているのです。
4Gamer:
では,時間的に最後の質問となりそうなので,シリーズのファンはもちろん,新規のプレイヤーまで含めて,日本での発売を待っている人にメッセージをお願いします。
Roy氏:
日本の方たちに,ぜひ本作の豊かな世界観を体験してもらいたいと思っています。奥が深く,遊び方によってゲームが大きく変わるというところがウリになっているので,その多様性を楽しんでほしいですね。
4Gamer:
ありがとうございました。
「Thief」公式サイト
キーワード
Thief (C) 2014 Square Enix Ltd. All rights reserved. Developed by Eidos-Montréal. THIEF, the THIEF logo, EIDOS-MONTRÉAL and the EIDOS logo are trademarks of Square Enix Ltd. SQUARE ENIX and the SQUARE ENIX logo are trademarks or registered trademarks of Square Enix Holdings Co., Ltd. All other trademarks are the property of their respective owners.
Thief (C) 2014 Square Enix Ltd. All rights reserved. Developed by Eidos-Montréal. THIEF, the THIEF logo, EIDOS-MONTRÉAL and the EIDOS logo are trademarks of Square Enix Ltd. SQUARE ENIX and the SQUARE ENIX logo are trademarks or registered trademarks of Square Enix Holdings Co., Ltd. All other trademarks are the property of their respective owners.
Thief (C) 2014 Square Enix Ltd. All rights reserved. Developed by Eidos-Montréal. THIEF, the THIEF logo, EIDOS-MONTRÉAL and the EIDOS logo are trademarks of Square Enix Ltd. SQUARE ENIX and the SQUARE ENIX logo are trademarks or registered trademarks of Square Enix Holdings Co., Ltd. All other trademarks are the property of their respective owners.