イベント
東京で開催された「MGR」ワールドツアーのローンチイベントをレポート。小島監督を始めとした開発陣,そして豪華声優陣による開発秘話が満載
小島監督:「見てみぃこの完成度!」
稲葉敦志氏:「まさか完成する日がやってくるとは」
イベントの冒頭でステージに登場したのは,小島プロダクションから小島秀夫監督,是角有二プロデューサー,新川洋司アートディレクターの3人,そしてプラチナゲームズから稲葉敦志プロデューサーだ。
小島氏によれば本作は,小島プロダクションによって「メタルギア ソリッド ライジング」というタイトルで約4年前から開発が進められていたが,制作がうまく軌道に乗らず,今から2年ほど前にプラチナゲームズに助けを求めたのだという。その当時は,本作の行く末を心配する声も社内外から聞かれたそうだ。
しかし,それは杞憂に終わる。完成した本作を前にして小島監督は「見てみぃこの完成度! そして初めて予定を守ったタイトル!(笑)」と,おどけつつもプラチナゲームズの技術力を絶賛した。
一方,プラチナゲームズの稲葉氏は,「まさか完成する日がやってくるとは思わなかった(笑)」とコメント。とにかく開発中は大変なことばかりで,メタルギアという看板を背負う重圧も相当なものだったようだ。
しかし,稲葉氏自身は意外にも楽しみながら作り続けられたそうで,結果としてスタジオ全体が「作って良かった」と思う内容に仕上がったと自負していた。
「METAL GEAR RISING REVENGEANCE WORLD TOUR 2013」とは
続いて,イベント当日が開始日にもなった本ツアー,「METAL GEAR RISING REVENGEANCE WORLD TOUR 2013」の内容を,小島監督が解説した。
MGRは2月17日から始まる週に日本/欧米/アジアで発売されるわけだが,ツアーは,それに合わせて開発陣が世界の9都市を回りサイン会などを開催するというものだ。9都市すべてのイベントが近い日程で開催されるため,小島監督と新川氏がヨーロッパ方面へ,是角氏と稲葉氏が南北アメリカ大陸へ,二手に分かれてそれぞれ旅立つことが決まっている。
なお本作は北米で2月19日に発売を迎える予定で,前日の18日にイベント会場となるロサンゼルスでは,前夜祭のカウントダウンパーティが開催されるという。本作の楽曲制作に参加したアーティストによるバンド演奏も行われたりと,かなり盛大なものになるようである。これら海外のイベントの模様は,MGR公式サイトのほか,小島監督や稲葉氏のTwitterでも伝えられるとのことだ。
ちなみに日本では発売当日,発売記念抽選会が札幌・東京・名古屋・大阪・福岡の5都市にて行われることが決定している(関連記事)。非売品のiPhoneケースなど,かなり豪華な賞品が用意されているので,ソフトを購入した人はぜひ参加しよう。
日米のTVCM,新PVが公開。日米共にCMのコンセプトは「ストレス解消」
次のコーナーでは,本作のCMが会場のスクリーンにて初公開となった。4Gamerでもすでにお伝えしている日本版のCM(関連記事)のほか,北米版のCMも上映。小島監督によれば,日本版CMは「腹の立つことは日常でいろいろあるけど,そこはゲームでスカッとしてほしい」というコンセプトで制作されたという。
一方,“日常のストレスが鬱積するという基本部分は同じものの,本人が雷電になってしまう”という作りの北米版については,「国民性の違い(笑)」と解説。いずれにせよ,日本版/北米版どちらも本作のセールスポイントを伝えつつコミカルな内容となっており,CMをみた来場者からは大きな笑いも起きていた。
なお,日本版のCMは,2月15日から放映される予定だ。
CMに続いて上映されたのは,本作の新しいPVである。
“新シリーズ”ということもあり,ゲームの内容を伝えるためにこれまでもテーマを絞ってさまざまなPVが公開されてきた(関連記事)本作だが,開発に携わった各社によってコンペ形式で映像が制作されてもいるという。
実はそのうちの1本には小島監督も関わっており,なんと監督自身も出演している……ようなのだが「ここへ来る前にようやく完成したんだけど,今日は持ってきてません(笑)」(小島監督)というわけで,残念ながら公開は見送りとなった。
こちらも発売日までには公開されるとのことなので,楽しみにしておきたい。
新川アートディレクターによるデザイン解説。“雷電の色”の理由やサポートキャラ制作秘話などが披露
続くコーナーでは,新川氏によってMGRのデザイン面についての解説が行われた。
最初に会場のスクリーンに映し出されたのは,主人公の雷電である。「メタルギアソリッド2」での雷電は,“プレイヤーが雷電を自分の色に染めていく”という意味を込めた白っぽいカラーだったのに対し,本作では黒がベースとなっている。本作における雷電は,“しっかりと自らの意志を持つ強いダークヒーロー”というイメージから,黒ベースのデザインになったそうだ。
雷電の相棒となるブレードウルフこと「LQ-84i」は,プラチナゲームズの「犬を出したい」というオファーがキッカケとなったキャラクターで,新川氏がラフを描き,メカニックデザイナーの柳瀬敬之氏がクリンナップ(仕上げ)を行うという形で制作されたとのこと。新川氏は頭にパッと浮かんだアイデア(デザイン)をその場で描き上げ,完成まで半日もかからなかったという。そんな制作スピードにもかかわらず,雷電の相棒としてマッチしているのがすごいところだ。
このウルフについて小島監督は「『メタルギアソリッド4』に出てきたでかいウルフに乗って戦うというアイデアもあった」と,“ボツ案”についても暴露している。
次にスクリーンに映し出されたのは,雷電が所属するマヴェリック・セキュリティ・コンサルティングのサポートキャラクター達だ。彼らのうち小島プロダクションがデザインしたのはボリスのみで,それ以外はすべてプラチナゲームズ側でデザインされたという。キャラクターデザインは,かつてプラチナゲームズに所属していたフリーイラストレーター 吉村健一郎氏が手がけたが,吉村氏は最初のオファーに対して「新川氏のメタルギアのイメージを壊したくない」と断ったそうだ(ファンの反応が怖いため「スタッフロールに名前を出してほしくない」との発言もあったらしい)。
しかし発表後の評判は上々で「僕がデザインしたって言ってもいいですか?」と,吉村氏の考えは180度変わり,関係者共々安心したという。デザインのクオリティについては,新川氏のお墨付きで,打ち合わせで出された数枚のアイデアスケッチを見て,吉村氏に任せることを即決したそうである。
そんなキャラクター達のなかで,とくに前評判が高いのが,前作「メタルギアソリッド4」に引き続いて登場するサニーだ。同作で幼い少女だったサニーは,MGRで大きく成長した姿を披露する(関連記事)。小島監督が本作のサニーをTwitterで紹介したところ,相当数のリツイートがあり,開発陣全員が大きな手応えを感じたという。
会場では,本作でサニーを演じている井上喜久子さんからのビデオメッセージも上映された。
前作では人とコミュニケーションがとれない内気な少女として描かれていた彼女だが,今回は明るく可愛い女の子として活躍するので,その成長をゲームの中で感じ取ってほしいと,サニーについて語ってくれた井上さん。井上さんはこれまで小島監督のさまざまな作品に出演しているが,監督自身は「スナッチャー」(1988年発売)制作時のエピソードが強く印象に残っているという。初めて多くの有名声優を起用し,慣れないことから多方面に迷惑をかけてしまった時に,優しく接してくれたのが井上さんだったそうだ。
開発陣がユニーク武器/ボスを解説
ボスの一人を演じた朴 璐美さんからのビデオメッセージも
続いては,PV 「ユニークウェポン編」(関連記事)を見ながら,開発陣が本作に登場するさまざまな武器/ボスについての解説を行った。使用シーンなどはPVで見ていただくとして,ここではそれぞれの武器の特性などについて,開発陣のコメントを掲載しておこう。
ボスを倒すことで入手できるユニークな武器の数々は,装備すると普段の雷電とは大きく異なる攻撃が繰り出せるようになる。これらの武器を持つボス達のデザインについて,稲葉氏は「苦い思い出がたくさんある」と語る。
ボスのデザインは,メタルギアの世界に合致し,なおかつアクションゲームとして面白く,そのうえキャラクターとして立っている,という厳しい条件を満たさなければならない。そのため,完成するまでにかなりの時間を要し,一時期はプラチナゲームズのほかのプロジェクトをすべて止めて,全デザイナーを動員してデザインしていたという。苦労の度合いは相当なものだったようだ。
今回は,苦労の末に生まれたボスの1人「ミストラル」を演じた朴 璐美さんからのビデオメッセージが上映された。背中に多くの手を持つという外見のインパクトもさることながら,使命のために自分に殺されていく敵をうらやむという,常軌を逸したミストラル。そんな彼女を演じる朴さんは,演じるほどに,彼女(ミストラル)の悲しみが分かってきたという。ビデオメッセージの最後には「おいで,坊や」と,ミストラルの決めゼリフを来場者にプレゼントしてくれた。
堀内賢雄さんと大塚明夫さんがスペシャル/サプライズゲストとして登場
MGRではスネークの声を「雷電の武器」で聞ける!
イベントのスペシャルゲストとして登場したのは,雷電役の堀内賢雄さんだ。
「今度,雷電が主人公になるよ。(大塚)明夫には内緒で(笑)」と小島監督に耳元で囁かれてから4年,ようやく演じることができて感無量だったという堀内さん。メタルギアソリッド4から4年後の雷電ということで,余計なことは一切考えず,得意なダジャレも封印して,とにかくカッコ良く演じることに集中したそうだが,収録時はすべてにおいてなかなかOKが出ず,“斬る”時のかけ声一つにも,何度もダメ出しされたという。「これまでの長い声優人生で備えた引き出しを使うよりも,自分自身のハートごと雷電になりきらないと演じることはできなかった」と,生まれ変わった新たな主人公を演じる苦労を語った。
主人公である雷電には無線のシーンなど全体的に会話が多く,収録には3か月近くかかってしまったという。スタジオに通い詰めの堀内さんにとっては,移動のための定期券を買おうかというほど果てしない収録となったわけだが,長期間ながらも,演じることそれ自体は楽しかったそうである。
ちなみに,新PVの「ドラマ編」で(一瞬だけ)見られた“赤く輝く雷電”を演じる堀内さんの演技は「これまで聞いたことがなかった」と小島監督もべた褒め。ぜひ本編でそれを確認してほしいと,来場者に念を押していた。
堀内さんに続いて,本イベントのサプライズゲストとして登場したのは,「メタルギア」シリーズでスネークを演じてきた大塚明夫さんだ。MGRで大塚さんは,DLC第1弾によって日本限定でのみで配信される,「木刀 蛇魂(へびだましい)」の声を演じている(関連記事)。
元々,雷電を主人公に据えた本作に大塚さんは出演しないはずだったのだが,「ゲームが完成して遊んでみると,明夫さんの声も聞きたくなった」という小島監督の希望により,この“武器に声を実装する”という企画が生まれたそうだ。最初は「雷電が着るとスネークの声がする着ぐるみ」というアイデアだったらしいが,最終的には雷電の武器という形で完成している。
そんなわけで生まれた「木刀 蛇魂」は,雷電が装備すると,その動きに合わせてどこからともなくスネークの声が聞こえてくるというもの。スネークのセリフはシリーズ歴代作品の名言を始め,MGRのためにすべて録り下ろされたものだ。
とにかく懐かしいセリフが詰まっており,参考のために聴いた昔の自分の演技を「甘ぇな」と思った。“今”の演技であらためて収録できたのが嬉しかったと大塚さんは語る。今回は映像面でも“声のみ”による出演のため,若い頃のスネークのセリフを単純になぞるのではなく「雷電からみたスネーク像」になるようなセリフ回しをするのがいいのではないかなどと,小島監督と熱心に相談しながら演技したそうだ。
本作によって「メタルギア」シリーズが新たな広がりを見せていくことについて大塚さんは,「小島秀夫の精神的遺伝子」が次なる世界を生み出していくことへのワクワク感があって本当に楽しみで幸せだと語った。それに対して小島監督は,血のつながった直系のスタッフで完成できなかった本作が,遺伝子をプラチナゲームズにゆだねて完成したことで,メタルギアシリーズの「次の世代に何を伝えるか」というテーマにも近いものとなり,これまでとはまた違う“感無量”であったと,本作に対する思いを伝えてくれた。
約1時間と時間にしてみれば決して長くないものの,非常に密度の濃い内容のトークがきけた本イベント。来場した多くのファンも寒空のもと集まった甲斐があったのではないだろうか。
小島監督いわく「ゲームの歴史上において初となる,自由に斬れる気持ち良さを持ったゲーム」という本作の発売は,もう来週に迫っている。ファンは,続々と発表されているDLC情報などなどをチェックしつつ,大いにワクワクしながらもう少しだけ待っていよう。
「メタルギア ライジング リベンジェンス」公式サイト
- 関連タイトル:
メタルギア ライジング リベンジェンス
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