連載
【ミートたけし】トップミュージシャンとトッププロゲーマー
ミートたけし / 川村 竜 / ベーシスト,作編曲家 ,ストリーマー
ミートたけしの「世界の平和が俺を守る!」ミートたけしYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@meatalk |
第3回:トップミュージシャンとトッププロゲーマー
わけではない。
とか言っちゃうとさすがに格好付けすぎかな,と自分でも思うので,もう少し正確に言うと,努力を努力として自覚していなかったんだろうと思う。ただただ夢中になって好きなことを好きなようにやっていただけ。だけど常に「どうすれば最短でうまくなるのか」ということだけは,四六時中考えていたのを今でも覚えている。この“考える”ということが最も重要で,“思考”を伴わない努力には何の価値も無い,と僕は思っている。価値がないどころか人生において弊害にすらなりかねない。
「どうしてこんなに努力しているのにうまくいかないんだ!?」
もしかしするとそんな悩みを抱えている方が,このコラムを読んでくれている皆さんの中にもいるかもしれないが,今日からあなたはその悩みから解放されるだろう! おめでとう! なぜならそれはいわゆる,“無駄な努力”だからだ! ドーーーン!!!!
あ,もし今ムカついちゃってブラウザを閉じようとしているのだとしたら,もうちょっとだけ我慢して付き合ってほしい。この“無駄な努力”の話をすると“努力は無駄”と脳内変換をしてしまう人達が何割かいる。でも,そんなことは一言も言っていない。“無駄にならない努力”をしましょうね,と言う話をしたいのだ。
無駄にならない努力を路線図に例える
ではどうすれば“無駄にならない努力”を積み重ねることができるのか? それは“目的”から必要な努力を逆算すればいいのだ!
もっと簡単に説明するために,僕はよく路線図の話をしている。例えばみんなが電車に乗るとき,降りる駅を決めないで乗ることはないよね? まぁ探せばそういう粋な乗り方をする鉄道ファンもいらっしゃるとは思うけど。とはいえ移動の手段として考えた場合は,必ず,降りる駅から今いる場所を逆算して路線を決めるはず。
例えば今いる場所が品川で,行きたい場所が新宿ということさえ決まっていれば,山手線を使ってもいいし,さらに言うと外回りで行っても内回りで行ってもいい。東京駅経由で中央線に乗るのもいいだろう。もちろん焦らずゆっくりと総武線に乗るのだっていい。気分次第では都営浅草線で三田まで出て,三田線で神保町へ,神保町から都営新宿線で新宿へ,なんてのもアリだ。というかなんだったら,タクシーでもバスでも自転車でも,歩きで行ったって構わない。
つまり“新宿に行きたい”ということさえ決まっていれば,そこまでのルートは無限なんだってことが言いたいわけ。先ほどの“無駄な努力”っていうのは,この話で言うところの“目的地”を決めずに,いや,“目的地”が分からないまま闇雲に電車に駆け込み,意味もなく乗り換えを繰り返すのと同じだ。
この“目的地”さえ定まっていれば“経由地”も設定できる。品川から新宿に行く最短ルートは山手線の外回りだと思うが,ここで東京駅でお土産を買いたいなれば,東京駅から中央線で向かうという選択肢が現れる。
つまり目的地が不変でも,現在地は常に変動する。そしてその都度その都度で最短のルートを考え直したり,経由地を追加してほかの用事を済ます,という計画を練ったりもできる。これこそが人生における“無駄にならない努力”のベースとなる考え方だと思う。
今,自分が何を目指し,そのためには何が必要なのか。そしてそこにたどり着く過程において,何か同時に身に付けられるものはないか。これを突き詰めると何が起きるか分かる?
なんとですね,時間の概念が変わるんですよ……。
急にSF? 急にオカルト? 違います。マジです。
路線図の説明で例えに出した“目的地を決めずに電車に乗ってしまう人”が,今自分が積み重ねている努力が何のためなのか,まったく考えることなく,言われたとおりにこなして10時間の練習を,10時間の努力をしたとする。でも“目的地”を決めておけば,その10時間を1時間で終えられる可能性が出てくる,という話なんだ。さすがに10時間は言い過ぎかもしれないけど,僕はそのぐらいの気持ちで常に物事に取り組んできた。
10時間はさすがに大げさかもしれないけれど,例えば“目的地を決めずに電車に乗る人”代表のAさんは1日3時間の練習,“目的地を決めずに電車に乗る人”代表のBさんは1日1時間の練習を行い,お互いに得られるものは同じだとする(むしろ先ほどの考え方でいくと,得られるものも同じではない可能性もあるのだが,ややこしくなるのでここでは割愛)。
すると1日で2時間,使える時間に差が生じるわけだ。1年後,使える時間の差は730時間に膨れ上がる。3年後は? 5年後は? 10年後は? ……ゾッとしませんか?
“無駄な努力”の本当の恐ろしさはここなんです。“使えたはずの時間を失ってしまう”ということなんです。ちょっと路線図の話に文字数を割きすぎたので,ここでみなさんお待ちかね,あの男の話にしよう。
プロゲーマー梅原大吾の場合
奇しくもこのコラムがアップされる前日(2023年12月30日),ウメハラこと梅原大吾さんとの対談が掲載されているので,良かったら,というか絶対にそっちも読んでほしい。
[インタビュー]あの“ウメハラ”はなぜ135万円のベースを買ったのか。仕掛け人のミートたけしこと川村 竜さんと,そのあたりのいきさつや仕事論などを語り合ってもらった
今夏,ミートたけしこと川村 竜さんのナビゲートで,梅原大吾氏が135万円のベースを購入するという動画が話題を呼んだ。“格ゲー”という共通項はあるにせよ,フィールドの違う舞台で世界を相手に活躍してきたこの二人が,なぜこんな大きな買い物を一緒にするまで親交を深めるに至ったのか。今回,そのいきさつなどを語り合ってもらった。
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- 編集部:TeT
- カメラマン:増田雄介
最近,僕はウメさんにベースを教えることになった。これが最高に刺激的で最高に楽しいのだ。なぜなら彼は自らで言うところの“猜疑心の塊”だからだ(笑)。さらにひもといていくと,ウメさんは“考える”ということにおいて,やはりエキスパート中のエキスパートなのだ。
例えばベースを演奏するフォーム,姿勢,手の形という話になったときに,彼はすぐこう聞いてくる。「何でですか?」と。正直,感動を覚えた。僕が初めてベースを持ち,人からアドバイスをもらったときに頭をよぎった疑問とまったく同じだったからだ。実際にウメさんのその質問に対して僕は明確な答えを持っているし,言語化もできるのでそれを彼にていねいに伝えると,ウメさんは「なるほど」と言って次に進んでくれる。
体系化された楽器の構え方というのは,やはりそれなりの利点,理屈のうえに成り立っているが,それは統計的なものにもなってくる。みんながみんな同じ体格,筋力,手の大きさであれば,それはきわめて不変のものになるが,実際,そんなことはありえない。自分自身に合った弾き方というものを時間をかけて作り上げていく必要がある。
しかしたいていの人間は,一歩目に対して何の疑問も持たない。すると,自分自身に合った弾き方という“目的地”を定めることが難しくなるように思う。それが必ずしも悪いとは言わないが,その道のトップとして最前線を歩むような人間は,やはり一歩目から疑問を持って“考える”習性を持っているような気がするのだ。
いけ好かないことを書いている自覚はあるが,これは真実である。そして突き詰めて言うと,川村 竜と梅原大吾,トッププロミュージシャンとトッププロゲーマーの共通点は,「無駄な努力はしたくない」。ひいては「無駄な時間を過ごしたくない」という思考そのものだった。
他業種でも共通する思考が成功の鍵
上記のトピックで今回のコラムを締めようと……と思った。が。やめた。
なんかうさん臭い自己啓発系の文章になりそうだから。まぁ別に言いたいこととそんな離れてるわけでもないんだけど,もっと素直な言い方ができるんじゃないかなと思って。
結局のところ僕は僕で,楽しいことを楽しい人と楽しくやりたいんだと思う。だけど僕らは生きていかなきゃいけないから。いろんなことに時間を割かれてしまう。お金も稼がなきゃいけない。人付き合いも大事だと思う。
でもだからこそ!
この世界で一番価値があるのは“時間”なんだ! ということに気付いてもらいたい。より多くの人達が“考える”ことによって,“時間”を有意義に使ってくれれば,それだけ世の中には楽しいことが増えると僕は信じている。
そして楽しいことが増えれば僕ももっと楽しくなれる。
つまり。「世界の平和が俺を守る」ってわけ。
皆さん,良いお年をお迎えください。
来年もみんなで僕を守ってね!
■■ミートたけし / 川村 竜(ベーシスト,作編曲家 ,ストリーマー)■■ ベーシストとして国内外各所でライブやコンサートで演奏活動をしつつ,配信活動も活発に行っているミートたけしこと川村 竜さん。現在は主にYouTubeチャンネル「ミートたけし-MEAT TAKESHI-」とTwitchチャンネル「ミートたけしの『太くてニューゲーム』」で,雑談配信をしたりゲーム配信をしたりと大忙しの様子です。 |
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