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Analyst Day 2010で明らかになったAMDのAPU&CPU投入計画を整理してみる
Dirk Meyer氏(President and Chief Executive Officer, AMD) |
APU戦略などを説明するChris Cloran氏(Corporate Vice President and General Manager, Product Group, Client Division, AMD) |
AMD Financial Analyst Day 2010のプレゼンテーションはすべて,Zacateベースのシステムで行われた。このシステムは,9月にあった「Intel Developer Forum 2010 San Francisco」のタイミングで,AMDから報道関係者に公開されたものと同じだ |
また,同社でクライアント向けCPUビジネスを統括するChris Cloran(クリス・クローラン)副社長は,「私がAMDに入社した当時(※2003年)は,幅広く海外展開しているPCベンダーのうち,ノートPCにAMD製CPUを採用しているのは,わずか2社だけだった」と振り返り,ZacateとOntarioが,主要PCベンダーのほとんどに採用がきまったことを「CPU開発においてFusionを進めていくうえで,我々のアプローチが正しかったことを証明するものだ」と自信を見せた。
Cloran氏は,今後登場するクライアント市場向けCPU戦略を紹介するセッションで,2011年1月に発表予定の複数の製品を披露し,「液晶パネルのサイズでいえば11〜16インチの範囲に,数多くの製品が市場に投入されることになる」と説明。「(主要PCベンダーは)APUを採用し,500ドル前後のノートPCを展開していくことになるだろう」と予告する。
※TFE 2010で披露されたZacateのデモにおいて,N-bodyの演算性能は21GFLOPS前後だったことを,記憶している読者も多いだろう。それに対し,今回披露された「TFE 2010におけるLlanoのデモと同じ3タスクの同時実行デモ」では15〜16GFLOPSまで3割ほど落ちているが,これについてデモの担当者は,「3タスクのデモでは,円周率計算におけるCPU側のオーバーヘッドによって,本来のパフォーマンスよりも20〜25%ほど演算性能が落ちる」と説明していた。
ここで思い出してほしいのは,TFE 2010において3タスクの同時実行を行っていたLlanoが,30GFLOPS程度を示していたことだ。LlanoがN-body演算を行ったときのGFLOPS値は,それより当然高くなる。
また,同システムで行った,「Internet Explorer 9」の「FishIE Tank」デモでは,「Zacateのグラフィックス機能を活かせば,水槽内を泳ぎ回る魚を250匹にしても滑らかに描画ができる一方,GPUアクセラレーションがないブラウザ環境では『250匹の死んだ魚が表示されるだけ』だ」と,今後はインターネット環境においても,グラフィックス性能が重要になってくると主張する。
■Zacate&Ontarioにはシングルコア版も
なお,今回のAnalyst Dayで,AMDはZacate&Ontarioの製品名や動作クロックなどは一切公開しておらず,Cloran氏も「1月の正式発表まで待ってほしい」というスタンスを崩さなかった。ただ,
- 両APUとも,シングルコア版も用意される
- グラフィックス機能は両APUとも同じ(※クロックなどの違いはあると思われる)
と,TFE 2010の時点から一歩踏み込んだ情報が開示された点は,押さえておきたいところだ。
会場でデモ展示に対応していたAMDの関係者によれば,この「最大10時間」というのは標準的なバッテリー構成時における数字であるとのこと。ZacateやOntarioでは,CPUコアよりもグラフィックスコアの消費電力が大きいため,「3Dゲームなど,グラフィックスにより大きな負荷がかかる処理をし続ける場合,バッテリー駆動時間は大幅に短くなるだろう」(同関係者)。
AMD Financial Analyst Day 2010のプレゼンテーションだと,BrazosベースのノートPCは最大10時間のバッテリー駆動が可能とされる |
こちらがTFE 2010におけるBrazosのプレゼンテーションスライド。丸1日のバッテリー駆動時間がターゲットとされていた |
Llanoは予定どおり2011年前半の量産出荷
Zambeziは同年半ば出荷に前倒し
当初,Zambeziは「2011年内の発売が目標」とされていた。「クリスマス商戦に間に合えばいいくらい」とまで言われていたので,それが,「北米市場におけるBack-to-School商戦である8〜9月に間に合うかも」という話になったのだから,これは相当に大きな話だ。
ちなみに下の写真は,Cloran氏のセッションで公開されたZacate搭載ノートPCをヒキで撮影したときに,本来は撮影が許可されていなかったLlanoが,偶然写り込んでいたもの。これを見るとLlanoは,32nmプロセスへ微細化しながらも,現行のモバイル向けPhenom IIと比べると,格段に大きなダイサイズになっていることを確認できるだろう。
そのためAMDは,Llanoでも,シングルCPUコア版などの派生品を投入することで,全体としての歩留まり向上を狙っているようである。
さて,AMDは今回のAnalyst Dayで,2012年のAPU計画についても,一部を明らかにしている。
速報的に10日の記事でお伝えしているが,Llanoの後継として用意されるのは,Bulldozerコアを採用した「Trinity」(トリニティ,開発コードネーム)。Trinityでは,Llanoと同じGLOBALFOUNDRIESの32nmプロセスが採用されるが,同プロセスへの最適化やアーキテクチャの改良などによって,省電力化が図られる見通しという。
なお,Zambezi後継となるハイエンドデスクトップPC向け製品としては,「Komodo」(コモド,同)も計画されている。
- 関連タイトル:
AMD E-Series,AMD C-Series
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AMD FX(Zambezi)
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AMD A-Series(Llano)
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