プレイレポート
「A列車で行こう9」の風景や街並みに想像以上の奥行きが! 臨場感あふれる“3Dプログラム”とは
今回,この3Dプログラムの実力をアートディンク本社にて確認してきたので,立体視が気になっているというプレイヤーに向けて紹介していきたい。……紹介していきたいのだが,ご存じのように,「3D立体視」をスクリーンショットやムービーで読者に直接お届けすることは,技術的に難しい。
よって,筆者がこの目で見てきた3D立体視の体験について,文章でなんとかお伝えしていきたいと思う。文字だけでは説得力が少々不安だが,まぁ立体視そのものはメジャーになってきているので,どういった雰囲気なのか,それなりに理解してもらえると思う。
本記事に掲載しているスクリーンショットが,すべて通常版のA9の画面である点はご了承を。
「A列車で行こう9 3Dプログラム」公式サイト
3Dグラフィックスで描画された「A列車で行こう9」と
“立体視”の相性は抜群だった
今回の3Dプログラムは,ニンテンドー3DSや大ヒット映画「アバター」などで話題になったような,“3D立体視”をA9で楽しむためのものだ。
プログラムを適用させて,NVIDIA推奨の3D環境を通して画面を見てみると,ゲーム内のはるか遠方まで描かれた街並みや景色が,従来のA9とはハッキリ異なる「立体的」な映像として目に映るようになる。
この手の立体視には「飛び出し感」と「奥行き感」とがあるが,A9の3Dは「奥行き感」に特化した作りとなっている。たしかにA9に求められる3Dは,ビルや列車が画面から飛び出してハラハラドキドキ! ……というものではないだろう。モニターの奥に解像度をはるかに超えた無限の世界が広がっているような,むしろモニターの中に入れるんじゃないかと錯覚するような,奥行きの立体感を味わえるのだ。
しばらく実際にプレイしてみたが,立体視効果が最も分かりやすく反映されるのは“建物”である。カメラが静止した状態でも立体的に見えるが,例えば俯瞰視点からカメラワークを接近させるなど,遠近差のある光景を映し出すと,その迫力をまざまざと実感できる。
“車載モード”の最中にカメラを外に向けると,まるで本当に「列車に乗っている」のかと錯覚してしまう。モニターと同じ大きさの“車窓”がそこにあり,その奥にリアルな風景が広がっているような印象を受けるのだ。これまでも,さまざまなコンテンツで立体視を体験してきたが,それらと比較しても,A9における“列車”と立体視の相性は抜群に思えた。
建物や地形などの立体感は真っ先に実感できるが,それ以外にもゲーム内のかなり細かいところまで立体視に対応しているようだ。例えばゲーム内で“雪”が降ると,近くの雪は近くに,遠くの雪は遠くに見え,まんべんなく雪が降っている様が伝わってくる。さらには蒸気機関車などの“煙”や,オブジェクトの“影”,そして“ブルーム”(光のボケ)も,きちんと立体的に表示されているのだ。
単なる3D化ではなくA9のシステムに最適化させた3Dとは
A9は“経営シミュレーションゲーム”であり,単純になんでもかんでも3D化しても,逆にプレイしづらくなってしまうそうだ。そのため,3D化すべきところと,そうでないところをどのように切り分けるべきか,開発時は試行錯誤を繰り返したという。
その一例として,鉄道や街並みのグラフィックスは立体だが,メニューやウィンドウ類に関しては一切,3Dの影響を受けない仕様となっている。数値がびっしりと並んだバランスシートや,各種メニュー画面,そしてレーダーなどの情報類は,手前でも奥でもないゼロ位置に表示させることで,プレイ中に支障が出ないようになっているのだ。
感覚的にいうと,各種メニューは「モニターの表面上」にピッタリ映し出され,立体描画による街並みや列車などは,「モニターの奥」にどこまでも広がっている感じだ。この光景は経営シムとしてのプレイを妨げないだけでなく,なんというか未来的で実にカッコいい。
ユーザビリティを妨げないためのもう一つの工夫は,「カーソル」の表示方法である。実際のプレイ時は,各種メニューと,街並みなどのオブジェクトをカーソルが行き交うことになる。従来のカーソルで,2Dと3Dを行き交わせると,どうしても違和感が出てきてしまうという。
この問題の解決法として,カーソルの矢印に加え,3Dオブジェクトに張り付く“四角いポインタ”が別途用意された。これのおかげで,2Dと3Dを違和感なくターゲットさせることに成功しているのだ。
開発の経緯などについて
アートディンク代表取締役 永浜達郎氏に聞いた
今回の取材では,アートディンクの代表取締役である永浜達郎氏に,開発の経緯などについても聞いてみた。永浜氏によると,3Dプログラムの仕様を決める際はかなり難航したものの,いざ仕様が決まると,その後は意外とスムースに作業が進められたという。それは,A9のグラフィックス仕様に大きく助けられたのだそうだ。
例えば“影”の描画など,タイトルによってはプログラムを簡素化するために,一枚絵などで表示することがある。この手法は,必要スペックを下げるという意味においては効果的ではあるが,今回のような立体視描画とは相性が悪く,一から作り直さねばならなくなってしまうという。結果,相当なコストがかかってしまうことになるのだ。
しかし,A9ではそういった手法を採らず,実直に影を生成して描画している。この場合は立体視対応が楽で,作業がスムースに行えたため,開発コストを抑えることができたという。
永浜氏が唯一心残りだと語っていたのは,水面の映り込み処理である。こればかりは立体視に対応させるのが困難だったそうで,3D表示モードでは“映りこみ”処理が行われなくなるのだ。という説明は受けたが,実際にゲーム画面で確かめてみても,正直「そんなの言わなきゃ誰も分からない」レベルに思えた。
立体視を楽しむには「NVIDIA 3D Vision」対応機器が必要
このプログラムはNVIDIAの「3D Vision」プラットフォーム上で実行している。したがって実際に楽しむためには,「A列車で行こう9」本体と「3Dプログラム」のほか,「3D Vision」用の環境があらかじめ必要だ。具体的には3D Visionに対応した「3Dメガネ」と「対応グラフィックスカード」,そして「3D対応のモニタ」(またはテレビ)である。また,3D表示モードの解像度は1280×720ドット(フルスクリーンモード)固定となる。
グラフィックスカードに関しては,これまでA9がプレイできていたNVIDIA製のものであれば大体サポートされているかとは思うが,念のためNVIDIAのWebサイトで確認しておこう。
注意点として,若干ではあるが,必要スペックが上がる可能性があるとのこと。新たなスペックを提示する程ではないものの,現在ギリギリの環境でA9をプレイしている人は留意しておいたほうがいいかもしれない。その場合でも,描画設定を若干調整すれば対応できるはずだ。
3D描画の目に対する負担が気になる人もいるかもしれないが,その点は心配御無用。3D Visionでは立体視の強さをパーセンテージで細かく調整できるので,自分に合った無理のない強度でプレイできる。参考までにアートディンク社内の幅広い年齢層でテストプレイを行ってみた結果,ほとんどの人にとって大体“10〜15%”がちょうど良かったそうだ。確かにこれくらいの度合いでも,立体感は十分に得られるし,それでいて3D酔いも感じなかった。
その気になれば立体視の強度を上げて,現在出回っている多くの3Dコンテンツよりワンランク上の3D体験を味わうことも不可能ではないかもしれない。
ちなみに3D Visionで度合いを調整する際に,A9本編の再起動は必要ない。例えば普段は3D表示をオフにして(ショートカットキーで簡単に切り替え可能)経営を進め,休憩中だけ手塩にかけた街並みを立体視で心行くままに楽しむ……,といった遊び方も可能だ。
「A列車で行こう9 3Dプログラム」は,3月23日より配信開始である。全部揃えるとちょっぴり値が張るが,3D Visionの環境も含め,購入を検討してみてはいかがだろうか。
「A列車で行こう9 3Dプログラム」公式サイト
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