レビュー
「デッドライジング2」の3年前を描く,非常に良くできたプロローグ編
デッドライジング2: CASE 0
Xbox 360用ダウンロード専用ゲーム「デッドライジング2: CASE 0」(以下,CASE 0)は,9月30日に発売された「デッドライジング2」(PS3 / Xbox 360)の,3年前の物語が描かれた,CEROレーティング「Z」(18歳以上対象)の“ゾンビパラダイスアクション”。本編であるデッドライジング2のプロローグ編という位置づけの作品で,価格は600円(税込)とお手頃なのだが,価格以上の価値のあるゲームであるのは間違いないだろう。本稿ではそのことをたっぷりと紹介していきたい。
「デッドライジング2: CASE 0」公式サイト
加えて特徴的なのは,ややシビアなイベントのタイムスケジュールとは対照的な自由度の高さだ。ショッピングモールというゲームの舞台には,さまざまな店舗や施設が存在しており,そこで洋服を着替えたり,スケボーを入手して移動を効率化したり,CDを入手してそれを手裏剣のように飛ばし,ゾンビを攻撃したりと,やりたい放題。ありとあらゆるものを,生き残るための武器として利用できるわけだ。
娘のケイティーは,スタート時点でゾンビに噛まれており,ゾンビ感染している。ゾンビ感染を完治させる手段は存在せず,ゾンビ化を抑えるためにはゾンビ抑制剤「Zombrex」を,12時間おきに投与し続ければならない(本編「デッドライジング2」では24時間おきとなっている。3年の間に薬が進化したようだ)。
ゾンビ感染は爆発的に広がっているため,Zombrexは極めて高価な薬である。チャックは賞金の高いレースを求めて移動を続けていたが,Still Creekという田舎町に立ち寄った際,父娘は無数のゾンビに行く手を阻まれてしまう。
目的はシンプルだが,その過程は極めて複雑
ストーリーのみをサクッとクリアするだけなら,(予備知識やそれなりの腕があれば)数時間程度で終わるのだが,Still Creekにいる生存者を助けたり,いろいろな施設を探索したり,後述するコンボ武器を研究したりと遊びの幅が広く,思いのほか長く楽しめる。
ゲームの大きな目的は,五つのバイクパーツを探し出し,それを組み立てて,制限時間内にStill Creekを脱出すること。その過程では,ケイティーへのZombrexの投与や,生存者の救出,ゾンビとの戦闘など,やるべきことはいくつもあるのだが……生存者を助けるかどうかはあくまでプレイヤーの自由。全員助ける必要はまったくない。
信用を得るためにミッションをクリアし,安全を確保しつつ安全地帯へ連れて行くというのが,生存者を救うための基本パターンなのだが,これが一筋縄ではいかない。生存者と出会うため(助けるため)のタイムスケジュールはきっちりと決まっているし,生存者が怪我をしている場合,護衛の難度はかなり上昇する。娘の心配をしながら生存者の救出にも挑戦するというのは,想像しただけでも大変そうだろう。
ともあれ,CASE 0のゲーム内世界は狭いが,その中には主人公とその娘だけでなく,生存者達も存在しており,それぞれが死にものぐるいで運命に抗っている。絶望的な運命を変えることができるのは,言うまでもなく主人公=プレイヤーだけなのだ。この,普通であればバッドエンドになる物語に介入し,それを好転させていく醍醐味は,映画とは異なるゲームならではの楽しさと言えるだろう。
拾えるものはなんでも活用し,生き残れ!
木製バットや角材などは,誰もが武器として認識できるし事実役にも立つのだが,ベンチやゴミ箱,段ボール箱,懐中電灯といったアイテムなども,一応武器として利用できる。武器として微妙なアイテムは,基本的に攻撃力が低く,ゾンビをひるませるくらいの目的で使うことになりがちだが,すべてのアイテムには耐久度が設定されているため,武器はいくらあっても足りない。筆者はプレイ中,ゾンビの一群に追い詰められて,手持ちの宝石を投げつけて突破口を開いたことがある。とりあえず,だまってゾンビにやられるのを待つよりは,何でも拾ってみて,投げるなり殴るなりしてみるのがいい。
CASE 0およびデッドライジング2では,複数のアイテムを組み合わせて新しいアイテムを作り出す“コンボ武器”という新要素が楽しめる。町に点在するメンテナンスルーム(工作室)の台に二つのアイテムを乗せることで,それを組み合わせて新兵器を生み出せるのだ。
何でもかんでも組み合わせられるわけではないが,町の中のポスターなどにヒントが隠されていたり,主人公がレベルアップしたときにコンボカード(組み合わせのレシピが書いてある)が貰えることがあったりする。また,思いつきで組み合わせてみたら,偶然コンボ武器が完成したこともあった。
ネタバレにならないよう,もっとも基本的な例だけ挙げるが,「木製バットに釘を打ち付けたら,世紀末っぽくて強そう」と思ったら,木製バットと釘を組み合わせてみよう。すると釘バットが完成するわけだ。一度試してみれば分かると思うが,こういう組み合わせを探す作業は,CASE 0の大きな魅力の一つである。
ただし,コンボカードを入手していない武器を(意図的,偶然問わず)作った場合は,敵を倒した際に得られるボーナスPPが半分になるほか,強力なヘビーアタックが使えないというデメリットもある。その点には注意してほしい。
デッドライジング2を遊ぶ予定なら
まずCASE 0を遊ぶべき
本作では,主人公のレベルが上がると,各種パラメータや,持てるアイテムの数,使用できるアクションなどが増えていく。すべての攻略情報を知っている状態でゲームを1から初めても,ゲームオーバーを体験せずにクリアするのが極めて難しいデッドライジングシリーズだけに,この引き継ぎ要素は魅力的だ。もちろん,CASE 0で3年前の物語を知ることで,本編への没入度も高まることは言うまでもない。
グラフィックスの進化や新要素であるコンボ武器など,前作からの強化点が一通り確認できるCASE 0。これが600円程度で遊べるのだから,ゾンビ好きなら買わない手はないだろう。前作ではやや特殊だった,投擲/射撃のエイム操作も,今作では一般的なTPSのそれに近づき,非常に遊びやすくなっている。
ともあれ,野外マップを埋め尽くす無数のゾンビ達を相手に,釘バットやチェーンソー,馬鹿らしい(誉め言葉)コンボ武器を振り回す気持ちよさだけでも,体験する価値は大いにある。ゾンビ好きならばぜひ,デッドライジング2の「非常に良くできた体験版」として,まずはCASE 0をプレイしてもらいたいものだ。
「デッドライジング2: CASE 0」公式サイト
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