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任天堂の今後の展開と,ニンテンドー3DSの各種機能・タイトルが紹介された「任天堂カンファレンス2010」レポート(前編)
本カンファレンスについては,速報を「こちら」ですでに掲載しているので,本記事では,任天堂 代表取締役社長 岩田 聡氏によるプレゼンテーションの内容を,より詳しくお伝えしよう。
ニンテンドー3DS 特設サイト
任天堂 公式サイト
【速報】任天堂カンファレンス2010開幕。ニンテンドー3DSは2011年2月26日発売。価格は2万5000円
登壇した岩田氏は,まず9月18日に発売されたニンテンドーDS用ソフト「ポケットモンスター ブラック・ホワイト」について言及。事前に予約状況が好調と伝えられていたが,メディアクリエイトの調査によると,その総数は188万本に達したとのこと。
岩田氏は,2タイトルの合計初週販売数は255万本を記録し,DS用ソフトのみならず日本のゲームソフト史上最大となったと述べた。
その理由は,ニンテンドーDSが発売開始以来3000万台を販売し,日本のゲーム史上では圧倒的なプラットフォームになっていること,そしてその普及台数が最大化したタイミングで,ポケットモンスターの最新作をリリースできたことだと,岩田氏は分析する。
そして岩田氏は,ポケモンシリーズのユーザーの年齢層に言及。2006年に発売された「ポケットモンスター ダイヤモンド・パール」ユーザーのレーダーチャートを示し,男女とも小学生が圧倒的に多く,それ以外の年齢層と大きな差がついていることに触れ,「そのため,ポケモンは小中学生を中心に遊ばれているという固定観念を持つ方も多い」と述べた。
そうした状況を踏まえ,岩田氏は「しかし,その年齢層は拡がりを見せている」と続ける。今度は2009年に発売された「ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー」のレーダーチャートを示し,小学生世代に加え,一度ポケモンを“卒業”した高校生や19〜24歳の世代が,男女とも遊んでいることを指摘。さらに今回のブラック/ホワイトのレーダーチャートを示し,「ポケモン回帰現象が拡大している」と表現し,「今回の大きなヒットは,これらの流れにより生み出されたもの」と述べ,これから年末に向けて大きく販売数を伸ばすであろうと展望を述べた。
岩田氏の話題は,25年前の1985年9月13日に発売されたファミコン用ソフト「スーパーマリオブラザーズ」へと移行する。岩田氏は,マリオが四半世紀を越えて世界中で愛されていることに感謝を述べ,「娯楽の世界で,特定の商品が一時的なブームとなるのは珍しくないが,これだけ長くご愛顧いただけているのは,かなり特殊なこと」と続けた。
岩田氏は,そうした背景をもとにスーパーマリオ25周年記念キャンペーンを企画したと述べ,10月21日に発売されるWii用ソフト「スーパーマリオコレクション スペシャルパック」を紹介。
付属するサントラCDには,シリーズに使用された中から全10曲と,各種の効果音が収録されていることや,ブックレットには25年の歴史と宮本 茂氏の手書きによる実験仕様書をはじめとする未公開の開発資料などが掲載されていることを明らかにした。
また,このスペシャルパックは2011年1月10日までの期間限定販売となるが,期間中は随時生産出荷が行われるとのこと。
また10月28日に,ニンテンドーDSiLL「スーパーマリオ25周年記念バージョン」が発売されることや,12月にWii用ソフト「マリオ スポーツ ミックス」と,ニンテンドーDS用ソフト「マリオvsドンキーコング 突撃!ミニランド」が,それぞれ発売されることが紹介された。
そのほかWii用ソフトとして,「毛糸のカービィ」(10月14日発売),「ドンキーコング リターンズ」(今冬発売予定),「ラストストーリー」(2011年1月27日),「ゼルダの伝説 Skyward Sword」(2011年発売予定)が紹介された。
さらに岩田氏は,Wiiモーションプラスの機能をWiiリモコンと一体化したコントローラー「Wiiリモコンプラス」を開発中であることを明らかにした。詳細は,後日公開される模様。
そして岩田氏は「本日の本題」と述べて,「ニンテンドー3DS」の概観をスライドに表示した。岩田氏は,3DSは従来のDS同様に上下2画面だが,上部はワイド画面になっており,メガネなどを使わずとも立体視が可能になっていると説明。画面を立体視できることで,ゲームの迫力が増すのはもちろん,臨場感がより高まったり,空間の奥行きや距離感を認識できるので,より自由自在に動き回れたりするようになると,メリットを挙げた。
実のところ,これらのメリットのために,任天堂はゲームに3D表示を取り入れる可能性を追求してきたと述べた。その過程では,バーチャルボーイのように商業的にうまくいかなかったものや,試作をしても商品化に至らなかったものがあったという。
さらに岩田氏は「ちょうど今年は3D元年」と続ける。しかし,3D立体視が普及するためにはソフトとハードにおける“ニワトリとタマゴの関係”を解かなければならない。すなわち,3Dを生かすソフトがなければハードに魅力は生まれないし,逆にハードが普及する見込みがなければ,ソフトを開発する企業は登場しないというわけである。
岩田氏は,「3D対応ゲーム機の開発は,技術的にそれほど難しくない」と述べる。しかし据置き機の場合は,現実に3Dテレビを接続して遊ぶ人は一部に留まるだろうと岩田氏は予想している。すなわち,そこには“ニワトリとタマゴの関係”が存在しているのだ。
その点で,「ゲームデバイスと表示画面が一体化している携帯機なら,すべての顧客に同じ環境を提供できる」「3D表示なら,携帯機が圧倒的に有利と任天堂は考える」と続けた。
さらに3D表示の見え方に個人差があることを指摘し,3D効果の度合いを調整するニンテンドー3DSの「3Dボリューム機能」を紹介した。
また岩田氏は,ニンテンドーDS発売以降,携帯機の技術が大きく進歩したことに言及。「画面解像度こそ据置き機には及ばないが,グラフィックス性能が大きく向上している」と述べ,カプコンの「バイオハザード REVELATIONS」とKONAMIの「METAL GEAR SOLID SNAKE EATER 3D」のスクリーンショットを紹介し,3DSの表現力の可能性をアピールした。
ここで岩田氏は,E3においてニンテンドー3DSが高く評価されたことを振り返るが,「私達はニンテンドー3DSの普及を楽観視していない」と述べ,「3DSが普及するためには,これまでになかった新たなハードルを越えなければならない」と続けた。
岩田氏は,そのハードルを「裸眼立体視は,体験しなければその価値を実感できない」ことと説明し,「紙媒体やテレビ,あるいはインターネットといった従来のメディアでは,その価値を伝えることができない」と述べた。無論,ゲームショップなどに試遊台を設置することは可能だが,そもそもニンテンドー3DSに興味がない人を店頭に向かわせるのは難しく,価値を伝える手段にはなり得ないのである。
ここで岩田氏は,携帯機の“持ち運びできる”というメリットを挙げ,スライドにプロモーションビデオを上映し,「持ち歩くことにより,従来メディアでは伝えることができない3DSの魅力を周囲に伝える」と説明した。
また岩田氏は,ニンテンドー3DSのキャッチフレーズを「持ち歩く,響き合う,毎日が新しい」と紹介し,プロモーションビデオでフィーチャーされた特徴を説明した。
まず「すれちがい通信」は,スリープモード中のニンテンドー3DSが,ほかの3DSを自動的に探して通信する機能で,見知らぬ人ともゲームを通じて交流できる。従来のDSでは,ゲームごとに専用のすれちがいモードを設定する必要があり,別のゲームを遊んでいる間は,すれちがい通信を利用できないという短所もあった。そのため,社会現象といわれるほど普及したタイトルでなければ,十分な頻度で楽しめなかったわけである。
その点,ニンテンドー3DSではすれちがい通信機能が本体のシステムに組み込まれているので,どのタイトルを遊んでいても,その3DSで起動したことのあるゲームのすれ違い通信を行えるのである。会場では,すれ違い通信が発生すると点灯する「お知らせランプ」や,その内容を表示する「お知らせリスト」が紹介された。
また,日本の各ゲームメーカーのスタッフが,ニンテンドー3DSのすれちがい通信の持つ可能性に言及するビデオメッセージも上映された。まずバンダイナムコゲームスの坂上陽三氏は「リッジレーサー」に関して,立体視による臨場感の表現に加え,互いにランク情報を交換する「マイランキング」や,互いの走り方を示しあう「ゴースト」の交換の可能性を示唆。
カプコンの小野義徳氏は,「ストリートファイター IV 3Dエディション」では「すれちがい通信による“どこでも対戦”」を開発コンセプトに掲げていたと述べる。小野氏は,Wi-Fi通信の利用によって世界中のプレイヤーと対戦できるシステムや,みんなで対戦を観戦できるようなシステムが実現できそうだと付け加えた。
またKONAMIの内田明理氏は,「ラブプラス」のすれちがい通信によって,彼女同士が噂を伝え合ったり,あるいは街が進化したりといったことに挑戦したいと述べた。
ニンテンドー3DSには,Wiiと同様に,自分や家族などの似顔絵アバターを作成する「Miiスタジオ」機能が設けられている。任天堂の調査によると,「トモダチコレクション」のヒットなどにより,日本で自分のMiiを持っている人は2600万人,世界全体では1億8000万人にも上っているという。この事実をもって,岩田氏は「Miiは社会に根付いている」と表現した。
それを踏まえて,ニンテンドー3DSのMii機能は,もっと身近に楽しんでもらえるよう強化したと岩田氏は述べる。作成に使うパーツの種類を増やしたことをはじめ,写真からMiiを自動作成したり,あるいはMiiからQRコードを作成したりする機能が紹介された。このQRコードは一般的な形式でSDカードに保存できるので,PCから自分のホームページに貼り付けたりするなど,さまざまな用途に応用できるとのこと。
また,すれちがい通信によって,Miiの情報を交換することも可能。交換する情報は,いつすれ違ったのか,何回すれ違ったのか,直近で遊んだタイトルは何かなどで,本体の「すれちがいMii機能」で確認できる。
同じく本体に標準搭載されているシステムには,「ARゲームズ」もある。これは拡張現実(AR)の技術を使ったゲームで,岩田氏によれば,ニンテンドー3DSの立体視とARは非常に相性がいいとのこと。「この不思議な感覚を,多くの方に味わっていただきたいと考え,いくつかのゲームをまとめて標準搭載することにした」と岩田氏は述べた。
またニンテンドー3D本体の下画面下部には,「HOMEボタン」が設置されている。このボタンを押すと「HOMEメニュー」が表示され,ゲームプレイ中であっても,それを一時中断できるのだ。会場のスライドでは,ゲームを中断してインターネットブラウザを起動し,検索している様子が表示された。
そのほか,その日のニンテンドー3DSを持ち歩いた歩数や,ゲームを遊んだ時間を確認できる「おもいで記録帳」も紹介された。
またニンテンドー3DSには,本体内側に一つ,外側に二つ,計3つのカメラが搭載されている。外側のカメラ二つを使えば,手軽に3D立体視可能な写真を撮影できることが紹介されたほか,外側と内側のカメラを同時に使う「合体カメラ」も紹介された。これは二人の被写体を同時に撮り,それを合成するというもので,会場では岩田氏と宮本氏を合体させた「岩本氏」の写真が例として示された。
(※以下,後編に続きます)
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