XBIG「まもって騎士」インタビュー:ゲームミュージック界のカリスマ 古代祐三氏とチーフデザイナー 和田 誠氏が語る“古くて新しい”ゲームの形とは
開発は,「イース」や「ドラゴンスレイヤーIV」といったPCゲームや,「アクトレイザー」「世界樹の迷宮III」といったコンシューマゲームまで,さまざまな作品のサウンドを手がけてきたサウンドクリエイター,古代祐三氏(以下,古代氏)が率いるエインシャント。今回はそのエインシャントにお邪魔して,古代氏と,ゲームの事実上9割近くをひとりで担当していたという,チーフデザイナーの和田 誠氏(以下,和田氏)に,本作に関する話をアレコレうかがってきた。
「まもって騎士」の開発に関する裏話や,レトロゲームに対するこだわり,現在のゲーム業界について思うところなど,さまざまな話が聞けたので,興味のある人はぜひ目をとおしてほしい。ゲームの概要を知りたいという人は,以下のレビュー&プレイムービーをチェックしよう。
本当の“8ビットテイスト”を知りたいならこれを遊べ。XBIG「まもって騎士」の魅力をプレイムービーとともに紹介
「まもって騎士」公式サイト
8ビットテイストは,“作りたいゲーム”を
早く,安く完成させるための最適解だった
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。最初に,「まもって騎士」というレトロ風ゲームが,ダウンロード専用タイトルとして生まれた経緯を教えてください。
現在,ゲーム業界を見渡してみても,ダウンロード販売が非常に伸びてきているので,弊社も何か挑戦してみたいな,と思ったのがきっかけです。とはいえ,それほどの売り上げは出ないだろうと考えていたので,コストをどれだけ押さえるかということに注力しつつ,開発しました。
4Gamer:
なるほど,それでレトロ風のシンプルなアクションゲームを目指したわけですね。
和田氏:
はい。8ビット風にすれば,グラフィックスのコストは相当下げられますし,ゲーム作りに必要な人数も抑えられます。結果的にそれがコストダウンに繋がるのではないと考えました。あと,私が8ビットゲーム機世代の人間なので,「まもって騎士」のようなゲームであれば,本気で作れるなという思惑もありました。
ちなみに最初は,いわゆるゾンビゲームのつもりで作っていたんです。無数の敵を倒しつつ,主人公を死なせないようにするゲームですね。でも,実際に遊んだプレイヤーからは「タワーディフェンスだ」と言われることが多かったです。
4Gamer:
確かに,アクション性には差がありますけど,戦略性の高さやゲームの基本ルールに関しては,共通点が見受けられますね。
ちなみに,現在PlayStation 3やPSP,Wii,DSiなど,ダウンロード配信が可能なハードはほかにもありますが,今回Xbox 360を選んだ理由はどのあたりにあるのでしょうか。
和田氏:
候補としては,iPhoneやソーシャルアプリといったものも考えていました。ですがゲーマーが,コミュニケーションツールではなく“ゲーム”を望んでいるハードは何かとあれこれ検討した結果,やはりXbox 360だろうという結論に落ち着きました。あと個人的には,パッドで遊ぶゲームを作りたかったというものもありました。
ただ,日本に限って言えば,Xbox 360の普及台数が十分ではないので,「興味はあるけど遊べない」という声を結構聞くんです。そこだけがちょっと残念ですね。
まあ,プロモーションの効果を発揮させるためには色々な機種で出したほうがいいのかもしれないですけど,我々としては海外の方にも注目してもらいたいという思惑があったので,今回は海外で圧倒的に強いXbox 360にしました。
4Gamer:
ところで「まもって騎士」は,古代さんがサウンド全般を担当し,和田さんがチーフデザイナーを務めて制作したということですが,和田さんは具体的に,どれくらいの作業を担当したんですか?
和田氏:
企画,コンセプト,プログラム,効果音など,“曲”以外の部分のほとんどを私が担当しています。割合的には,90%くらいは私が作ったのではないでしょうか。開発期間は,だいたい半年といったところです。
4Gamer:
え,ほぼ一人で作られたんですか?
和田氏:
ええ。少し手伝ってもらった部分もありましたけど,だいたい一人です。
4Gamer:
まさに,インディーズ ゲームのノリですね……サウンド周りが激しく豪華ではありますけれど。
和田氏:
そうですね。相当自由にやらせてもらいました。
4Gamer:
ちなみに,キャラクターイラストなどはどなたが担当しているのでしょうか。かなり当時のゲームの雰囲気が出ていますが。
参考資料の提示など,コンセプトに関わる部分については私が担当しましたが,実作業は別のスタッフに任せています。スタッフには,あえて「まもって騎士」の資料を渡さずに,“アテナ”とか“ワルキューレ”などの,当時のイラストだけを渡しました。そのほうが逆に想像力が刺激されるだろうし,多少ズレたデザインのほうが,当時の雰囲気が出せるのではないかと。
古代氏:
あえて,狙った感じを出したかったんですよね。
4Gamer:
こういうレトロな雰囲気のイラストって,逆に狙うのが難しそうな印象もありますよね。
和田氏:
でも,描いたのは私より10歳くらい年下のスタッフなので,リアルな80年代を過ごしたわけではないんですよ。なのに,なかなかうまいところを突いてきたので,こいつやるな……と感心しました(笑)。
古代氏:
微妙に直球からずれているところがいい感じですよね。80年代を狙ってはいるんですけど,描いてるのが比較的若いスタッフなので,それが逆にいい結果に結びついたところはあります。
和田氏:
あまり直球すぎると,レトロゲーマーとしてもテレちゃいますしね(笑)。
古代氏:
本当に狙い澄ますと,もっとコテコテになっちゃいますからね。微妙にさわやかな感じが出ていて,いいと思います。
海外版のパッケージも見させていただいたんですけど,これまたすごいデザインですね。昔のゲームの海外版パッケージって,こんな感じだった記憶があります(笑)。
古代氏:
これは,80年代からデザイナーをやっている私の妹(編注:古代彩乃さん)が描いたものです。彼女は昔からこういう絵が得意なんですよ。
和田氏:
古代彩乃には,とくにこういう風に描いてほしいと注文したわけではなく,好き勝手に描いてほしいと頼んだんです。そのときは,密に打ち合わせをせずにササーっと帰ってしまったので,コンセプトが伝わっているかなぁと心配だったのですが……結果,すばらしいイラストを仕上げてくれました。
4Gamer:
やはり,80年代のゲーム文化に関わった人には,何かしら共通のイメージがあるのかもしれませんね。
古代氏:
はい,説明などしなくても,皆の心の中にコンセプトが共有されているんです(笑)。
公式サイトやプロモーションに仕掛けられた
あまりにも高性能な“おっさんホイホイ”
4Gamer:
公式サイトもすごく凝っていて,強いこだわりを感じました。
実は当初,あまり作り込むつもりではなかったんです。凝りすぎてしまうとコストがかさみますし,一日や二日でできるものでいいんじゃないか,と思ってました。
で,体験版を出すタイミングで手が空いたので,その時にWeb担当のスタッフと打ち合わせをして,ネタとして「昔のゲーム雑誌や攻略本みたいにしよう」という具合に詰めていきました。
フォトショップのフィルタでも出来ると思うんですけど,それだとオシャレな感じになっちゃって,小汚い感じが出ない。それで,「どうしようかな~」と思っていたときに偶然,会社の倉庫でブラウン管モニターを見つけたので,それで撮ってみたらすごくいい味がでたんですよ(笑)。
4Gamer:
アイドルの写真もいい感じに古くさいですよね。
和田氏:
これは別のスタッフが描いたものです。本人はすごく真面目に描いてたんですけど,仕上がったものがひどく古くさいアイドル風で(笑)。面白かったんで「これでいいよ」とOKを出しました。
ちなみに,海外版公式サイトには,昔「スキーム」のサントラで使用したものを加工した画像を掲載しています。
4Gamer:
拝見し,胸が熱くなりました(笑)。ともあれ,最近は他社さんでも8ビット系のゲームが増えてきた印象があるのですが,本作はプロモーション込みで,一番“雰囲気”が出ているのではないかと思います。
古代氏:
ありがとうございます。プロモーション部分も自分達でやっているので,好き勝手に動けるところが大きいのではないでしょうか。大手パブリッシャですと,そこは別のチームが担当することになるでしょうし,どうしても綺麗になりすぎたり,豪華になりすぎたりするんでしょうね。
4Gamer:
そうなってしまうと,レトロゲーム風タイトル……「まもって騎士」のコンセプトとは若干ズレてしまうと。
古代氏:
そうなんですよね。宣伝でズレてしまうと,中身もズレてるんじゃないかと思われかねない。8ビットテイストのゲームに興味がある人は,何を求めているのか。そこを突き詰めていかないと,この手のタイトルはうまくいかないと思います。
ニコニコ動画のプロモーションビデオも,閲覧数が3万を超え,多くのコメントがついていました。発売前からかなりの話題を集めていましたが,発売後のユーザーの評価はいかがでしたか?
和田氏:
賛否両論だろうなぁと予想していましたが,意外なことに好意的な評価ばかりで,非常に嬉しく思っています。ネタゲーのように思われる部分もあるかと思うんですけど,「やってみたらすごく面白かった!」という,ゲーム内容を評価する意見が目立っていましたね。
4Gamer:
やはり年代的には,8ビットゲーム機直撃世代が多かったですか?
和田氏:
「8ビット世代ではないですが,やってみたらすごく面白かったです」というような意見もあったのですが,そこまで多くないところを見ると,やはり30代~40代くらいのゲーマーが,割合としては多いのかなと感じました。
4Gamer:
最初に公式サイトを拝見したときは,PC-8801用ゲームを想定したタイトルなのかとも思ったのですが,実際にゲームを遊んでみると,どちらかというとファミコン用ゲームがイメージされていますね。ROMをフーフーする演出や,効果音の“らしさ”などを見るかぎり。
和田氏:
そうですね。実際に「PCゲームっぽい」という感想も少なくないのですが,イメージとしてはファミコンです。“らしさ”に関しては,絵面からして分かりやすいゲームにしたかったという思いの現れでもあります。ファミコン時代,ドットは荒くても,姫は姫らしく描かれていたし,バリケードはバリケードらしく見えましたよね。それを意識して,“分かりやすいデザイン”を心がけました。
古代氏:
あと,ボタンを五つ使うということで,思いの外操作が複雑なんですけど,プレイヤーからは「操作がシンプルでやりやすかった」という意見が多かったのが意外でしたね。
4Gamer:
そう言われてみると確かに。ファミコンゲームと比べると確実に操作が複雑ですが,説明書など見なくてもすんなりとプレイできました。
古代氏:
モバイルならシンプルなゲームもたくさんあるんですけど,新作で,しかも据え置き機では,あまりないでしょうね。
和田氏:
セーブ機能をあえていれなかったのも,“遊びやすさ”に対するこだわりですね。あまり蓄積されたものがあると,あとで思い出さなくてはいけないので,逆に遊びにくくなるんじゃないかなという気がしていました。だったら,遊ぶときに必ずゼロからのスタートにしたほうが,繰り返し遊ぶモチベーションにつながるのではないかと。
- 関連タイトル:
まもって騎士
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ドラゴンボールオンライン
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