インタビュー
【PR】「二ノ国 白き聖灰の女王」に込められた思い,そしてスタジオジブリから学んだこと。レベルファイブの日野晃博社長と本村 健チーフディレクターに聞く
レベルファイブが11月17日に発売した,PlayStation 3用ソフト「二ノ国 白き聖灰の女王」。
アニメーションをスタジオジブリが,音楽を久石 譲氏が手がけるなど,制作陣の豪華さで話題を呼んできた作品だが,実際にプレイしてみると,細かい部分まで作り込まれた,非常に遊びやすいRPGであることに気付く。
3Dでもジブリっぽい。町やフィールドの雰囲気が素晴らしい
「二ノ国 白き聖灰の女王」をプレイムービーで紹介してみる
では,シナリオと総監督を担当したレベルファイブの日野晃博社長は,この二ノ国という作品に,どんな思いを込めているのだろうか。そして開発現場では,スタジオジブリや久石氏と,どんなやりとりが重ねられてきたのだろうか?
4Gamerではこういった話にについて,日野社長と本作でチーフディレクターを務めた本村 健氏に直接取材する機会を得た。本稿では,その模様をまとめてお届けする。
「二ノ国」公式サイト
「人々の心に残る作品を作ろう」
日野社長が「二ノ国」に込めた思い
4Gamer:
本日はよろしくお願いいたします。
早速ですが,日野社長が「二ノ国」という作品を生み出すことになったきっかけや,作品に込めた思いなどを教えてください。
ニンテンドーDS用に昨年発売した「二ノ国 漆黒の魔導士」(以下,DS版)は,レベルファイブの10周年記念という位置付けで,セールスを含めた会社的な事情を抜きにして,クリエイターとして作りたいものを作ろうというプロジェクトでした。
「レイトン教授」シリーズや「イナズマイレブン」シリーズがすでに人気作になっていましたから,あえて自由に,子供達に向けた良い作品,意義のある作品,人々の心に残る作品を作ろう,というイメージで企画したんです。
そういったこともあって,弊社のほかの作品と比べて,主人公オリバーの設定にしても,“こういうキャラクター設定にしないと受けない”みたいなことは度外視して,素直に考えました。
4Gamer:
ストーリーの中心に据えられているのは,オリバーのお母さんに対する思いや,仲間達との触れ合い,そして冒険を通じての成長など,非常に共感しやすいものになっていると思いました。
これもやはり,より多くの人達に親しんでもらおうということから生まれたものなんでしょうか。
日野氏:
子供達に遊んでもらいたいと考えたとき,彼らにとって最も大きな存在はお母さんだと思ったんです。そんなお母さんを失ってしまうのは,子供達にとって一番大きな事件ですよね。
このように,お母さんを取り戻すというのが旅の目的であれば,子供達や,かつて子供だった大人にとっても共感しやすいだろうということは考えました。
そして成長という意味では,オリバーが“そのとき”にどういう態度を取るのか,といった部分をしっかり描いています。オリバーがどんな風に成長するのかを含めて,楽しんでいただきたいですね。
4Gamer:
では,そういう作品を作るにあたって,RPGというジャンルを選択したのは何故ですか?
日野氏:
個人的にRPGが好きなジャンルだからというのもあるんですが,多くの人に遊んでもらうために,受け入れられやすいジャンルは何かな? ということを考えた結果です。自然とRPGに行き着きましたね。
4Gamer:
DS版と,PlayStation 3用の「二ノ国 白き聖灰の女王」(以下,PS3版)は,発売時期こそ約1年違いますが,開発自体は同時期に進められていたそうですね。携帯機向けと据え置き機向けに,二ノ国という作品を作るにあたって,どういった差別化を心がけていたんでしょうか?
日野氏:
基本的な考え方としては,より多くの人に遊んでもらうためにニンテンドーDS用を,そしてスタジオジブリさんのアニメや久石 譲さんの音楽を,よりクオリティの高い状態――それこそ映画になったときと同じぐらいの品質でお客さんに届けるために,PlayStation 3用を作ろうとしましたね。
4Gamer:
そもそもの立脚点からして,異なるものではあったわけですね。
日野氏:
ええ。その上で,それぞれを商品としてきちんと成り立たせるために,異なる要素をたくさん詰め込むことに力を入れました。
4Gamer:
つまり,単に同じものを複数のプラットフォーム向けに展開するということではなく,別物としての商品性をきっちり立てているんですね。
日野氏:
はい。両方を遊ばないと楽しめないということではなく,片方でも楽しめるし,両方遊べばより楽しめるような,そういうものを目指しました。
4Gamer:
なるほど。
ところで今回,スタジオジブリや久石さんと一緒に作品を作るというのは,日野社長にとって初めてのことだったと思うのですが,この座組が決まったときには,どんなことを考えましたか?
元々はセールスを目的としない作品だったんですが,ジブリさんや久石さんと運良く組ませていただくことができて,“ちゃんと売らなきゃいけない”作品になったという責任は感じました(笑)。
やっぱり,ジブリさんや久石さんの存在は,ゲームの魅力を伝えていくうえでの,大きなインパクトになりますからね。それに負けないゲームを作らなければいけないわけですし。
4Gamer:
では,実際にジブリさんとのお仕事の中で,何か得たこと,吸収したことなどがあれば教えてください。
日野氏:
とくに,白き聖灰の女王のアニメーション演出に関しては,会議を繰り返したことによって,うちの映像チームの演出スキルが相当向上した気がします。
絵コンテから映像演出に至るまでのところを,学びながら一緒にやらせてもらうことができましたから,かなり大きな会社の資産になりましたね。
4Gamer:
今後の作品では,そこで得たものが,そのままの形ではないにしろ,注ぎ込まれることになりそうですね。
では,それ以外にジブリさんから受けた影響や刺激などはありましたか?
日野氏:
スタジオジブリさんは,歴史ある生粋のアニメ会社ということもあって,作り方の一つ一つに,アナログの魅力をかなり重視しているということは感じましたね。
制作工程は,絵コンテから作画に至るまで,何もかもが美しく描かれていて,手間のかからない方法や,手っ取り早くできる方法を選ばず,いっさい手が抜かれていないというか……。本当に,一つ一つのシーンに,こちらが想像していた以上に心を込めている様子が伝わってきました。これには驚かされましたね。
「二ノ国」はまだ終わらない
これから先にさまざまな展開が……?
4Gamer:
ちょっと違う質問をさせてください。
日野さんは,ゲームとアニメそれぞれのメディアとしての差をどのように考えていますか?
PlayStation 3クラスの性能を持つプラットフォームだと,ゲームがアニメを内包することも可能になっているので,そんなに大きな差は感じていません。ただ,ゲームは映像を流すことだけでなく,それをプレイヤーが動かせるという有利なインタフェースを持っていますから,表現力の技術的な可能性という意味では,ゲームのほうが高いのではないかと考えています。
4Gamer:
インタラクティビティの有無ということですよね。
日野氏:
ええ。ただ,技術を抜きにすると,それぞれの特性を生かした作品作りが必要です。
例えば,僕は映画などにも関わっていますが,映画やテレビアニメは画面の前にさえ行けば,そこで描かれている表現を自然に受け取れます。一方,ゲームはそこからさらに能動的に操作しなければいけません。そうなると,映像の表現方法であったり,一つのお話を描くためにかけられる時間であったり,そういったものは根本的に変えなければいけないでしょう。
4Gamer:
物語を描くにあたっても,ゲームの場合は映画やテレビアニメなどと比べ,体験時間は長くなりますよね。
ゲームの中で,プレイヤーに飽きさせることなく物語を楽しませるうえで,何か秘訣はありますか?
日野氏:
ゲームを作るうえでのノウハウはたくさんあるので,細かく説明し始めるとキリがないんですが(笑)。
大枠だけを簡単に説明しますと,ゲームというのは能動的にそれを遊ぼうという人達がプレイするものですから,さまざまな楽しみを入れなければいけません。何かを探したり,何かを集めたり……というようなものですね。そこで気を使うのは,プレイヤーの想像を先回りするということに尽きます。
4Gamer:
先回り,ですか。
日野氏:
はい。プレイヤーがこのシーンでどういうことをしたくなるのか,どんなお話だったらワクワクするのか,どんなフィールドマップの構造だともっと楽しめるのか……といったところですね。それらを予測して,気持ち良く,なおかつ楽しくプレイできるような構造を作ることを心がけているんです。
そのうえで細かい部分として,コマンド操作の気持ち良さなどを考えていくという感じです。
4Gamer:
そういうものがしっかりしていれば,飽きることなくプレイを続けられるゲームになるということですね。
最後に,二ノ国の今後の展開についても聞かせてください。
日野氏:
まだ決まっていないことも多いんですが,二ノ国のシリーズとして展開する可能性はいろいろとあります。
4Gamer:
それは,パッケージのタイトルを含めて,でしょうか?
日野氏:
はい,そうですね。それももちろん。
4Gamer:
これまで作り上げてきた世界観を維持して拡大していく方向でしょうか? それとも,まったく別のものでしょうか?
日野氏:
世界観を維持して拡大していく方向だと思いますよ。まだ言えないですけど(笑)。
4Gamer:
続報を楽しみにしています!
ありがとうございました。
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