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[SIGGRAPH]CG映像の祭典「エレクトロニックシアター」公開〜見応えある入選作をムービー中心で紹介(前編)
CAFには,ショートショート作品やリアルタイムレンダリング作品,商業映画作品のメイキング映像,学生制作のアマチュア作品など,さまざまな作品が出展されている。そしてそれらをSIGGRAPHのCAF審査委員会が選定し,ジャンルごとの入選作をシアターで公開するのが慣わしだ。
数ある入選作品のうち,さらに選りすぐりの作品については,SIGGRAPH看板イベントの1つである「Electronic Theater」(エレクトロニックシアター,以下 ET)で上映されるのも通例である。
ただ,2年前にロサンゼルスで開催されたSIGGRAPH 2008のときは,当時オープンしたばかりの「NOKIA Theatre L.A.LIVE」を利用した豪華な開催だったのだが,世界規模で生じた経済危機の影響で来場者が減ったためかどうか,SIGGRAPH 2010では,本会場である「Los Angeles Convention Center」内カンファレンスルームの開催となってしまった。
さて,今年のETだが,入選作の多くは映画のメイキング作品だった。これは昨今の立体視映画ブームの影響と無関係ではないだろう。
日本の作家やスタジオの作品からは,「HANABEAM」「The Light of Life」「Suiren」の3作品が入選。いずれも,独特の世界観を見せつける力強い作品だった。
以下,入選作の中から,なかでもとくにユニークな作品をピックアップして紹介しみたい。
Upgrades
〜Anya Belkina/Emerson College
最初はまじめに進化の様子が語られるが,最後のほうはもう嘘だらけ。とはいえ,ソフトウェアの“アップグレード”の真意,あり方を考えさせられると同時に,痛快な笑いも誘われる良作だ。上映時,最も拍手が起こった作品の1つである。
Upgrades from Anya Belkina on Vimeo.
2012-Escape from L.A.
〜Timothy Enstice/Digital Domain
版権の都合で,ムービーが公開されていないのは残念だ。
2012-Escape from L.A.
〜Stephan Trojansky/Scanline VFX
大洪水がヒマラヤ山脈に流れ込むシーン,米海軍空母JFケネディがひっくり返りながらホワイトハウスに激突するシーンでは,ScanlineVFXが開発した流体物理シミュレーションが応用されている。
AMF“The Caterpillar”
〜Melissa Knight/The Mill
Motionographer.comで全編を鑑賞可能だ。
→Motionographer.com
Assassin's Creed II
〜Szilvia Aszmann/Digic Pictures
映像はインゲームエンジンによるものではなく,ハンガリーのCGプロダクションであるDigic Picturesによって,オフラインレンダリングされたものになる。
Audi Intelligently Combined
〜Timothy Enstice/Digital Domain
Barclaycard Rollercoaster
〜Shelly Jeske/The Mill
「支払いがスムーズでまるでジェットコースターのよう」というのを,実写とCGの組み合わせで構成したコメディだ。
Day And Night
〜Chris Wiggum/Pixar
ビデオはGamaniak.comで閲覧可能。
→Gamaniak.com
Dog Fish
〜Julia Tagger/BITT
魚と犬が合体した合成動物「Dog Dish」が,飼い主と仲良く戯れる様子を描いた,不思議な作品。飼い主の青年は人間で,一方の“魚犬”はCGで描かれているわけだが,実写映像と巧妙に合成され,飼い主とのインタラクションも自然なため,思わず普通に見入ってしまう。赤塚不二夫の「ウナギイヌ」を実写化したらこんな感じか。
ちなみに,この作品はとある製品のTVCFだ。一体何のTVCFかは見てのお楽しみ。
Fenrir
〜Annabel Sebag/Premium Films Distribution
Ford Pop-up
〜Shelly Jeske/The Mill
Ford FocusのTVCF作品。CGで精巧に再現された飛び出す絵本の中をFocusが走り回るというものだ。
最初は“いかにも飛び出す絵本”といった風情のページ内を走るFocusだが,いつしか絵本を飛び出し,“飛び出す絵本調”で再現された外の世界を走り出す。
Harmonix The Beatles: Rock Band Intro Cinematic
〜Yolande Clerke/Passion Pictures
The Beatles Rockband Intro from Stephane coedel on Vimeo.
Iron Man 2
〜Greg Grusby/Industrial Light & Magic
主役級ロボットの2体の激闘は,合成用スーツを着込んだ実際の俳優がライブアクションで行い,これに対してCGのロボットや背景の破壊描写を合成していくという様子が上映された。残念ながらこれも公開されていないが,バーチャルセットと現実セットとをシームレスに合成させていく技術の確かさは,さすがILMといったところだ。
HANABEAM
〜W+K東京LAB&Polygon Pictures
日本のブレイクビーツユニット「HIFANA」(ハイファナ)のニューアルバム「24H」。そのプロモーション映像だ。冒頭で紹介したとおり,日本のスタジオの作品である。
CGとしてポップなタッチで描かれた日本の妖怪達が,花火の打ち上げ音に合わせて陽気に踊りまくる。サイケでどことなく和風テイストが入り交じった独特なイマジネーションはまさに唯一無二といった感じ。
Loom
〜Ilija Brunck/Polynoid
「蜘蛛の巣に引っかかってしまった蛾は,蜘蛛の糸が体に絡みついた状態で懸命にもがく。一方,蛾を捕食するために蜘蛛は動き出す」という,自然界では日常茶飯事に繰り広げられる,捕食者とその犠牲者との戦いを,ハイスピードカメラで捕らえたようなスローモーションタッチで描いている。
蜘蛛の毒々しい表情,蛾の鱗粉の質感,そして両者のリアルすぎるほどリアルな動きがCGであることを忘れさせてしまうが,本作は紛れもないデジタル作品。時折介入するデジタル的な特殊効果と,ノイズともBGMともおぼつかない独特なサウンドトラックとのマッチングも見事だ。
Polynoid Loom Teaser from Polynoid on Vimeo.
後編では学生最優秀作品や審査員特別賞を含む残りのET注目作品を紹介していく。
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