テストレポート
EIZO,内部240Hz駆動のFPSゲーマー向けVAディスプレイ「FORIS FG2421」を発売。まずは気になる残像感と遅延をチェックしてみた
日本では当面の間,EIZOの直販サイトおよび直営店限定販売となる予定で,価格は6万4800円(税込)となっている。
対してVA方式が持つ最大の特徴は,「黒」を表現しやすいことにある。そのため,コントラスト比を高くしやすい。かつては応答速度や視野角に問題を抱えていたが,それらは近年の技術革新によって,相当の改善が実現されており,それもメリットといえるだろう。TN方式と比べると開発コストが高くついてしまう弱点はあるものの,見栄えという観点でいえば,TNを圧倒的に上回る。
つまり,FG2421というのは,史上初めて,見栄えの要求にかなりの部分で応えられるスペックのゲーマー向け120Hz液晶ディスプレイになっているということなのだ。120Hz駆動の製品を避ける理由に「画質」を挙げていた人達からすると,ハードルは大きく下がることになるだろう。
また,冒頭でも述べたように,FG2421では,内部のLEDバックライト走査系を240Hz駆動させる機能を搭載している。EIZOはこれに「Turbo 240」(ターボ トゥーフォーティー)というマーケティングネームを与えているが,Turbo 240では内部240Hz駆動に合わせて,バックライトブリンキング(backlight blinking)と呼ばれるバックライト処理と,それに合わせた特殊なオーバードライブによって,通常のオーバードライブ回路を利用するよりも残像感を低減できるとのことだ。
詳細は未公開ながら,液晶テレビなどでよく見られる黒挿入に近いが異なる技術だそうで,その仕様上,どうしてもTurbo 240を有効化すると画面が若干暗めになる。そのため,最大輝度はやや高めの400cd/m2が確保されているのも押さえておきたい。
ScreenManager Pro for Gamingのカラー調整メニュー。以前からEIZOは「ScreenManager Pro for LCD」を提供していたが,ScreenManager Pro for Gamingはそれをベースに,ゲーム用途で有用な機能を追加したものという理解でいい |
カラーモードの選択肢 |
FG2421には専用の設定用アプリケーション「ScreenManager Pro for Gaming」が無償提供され,これを使うと,「カラーモード」の調整をマウス操作で行えるようになる。カラーモードは,色温度や輝度,コントラスト,ガンマ値などを含んだ包括的な設定項目で,プロゲームチーム「Fnatic」の監修による2つのFPS用モードと1つのRTS/MOBA用モードのほかに,一般的なデスクトップ作業用を含むWebモード,またフルカスタマイズが可能な3つのユーザーモードが用意されており,いずれも分かりやすいメニューから調整できる。
さらに,カラーモードはアプリケーションの起動に応じて自動的に切り替わるように設定することも,ホットキーを登録して手動で切り替えるよう設定することもできるようになっている。とくにホットキーはかなり便利で,一度設定したあとは,カラーモードの変更や,画面表示サイズの調整などを,キーボードショートカットで行えるようになる。発表会場で試してみたが,これは相当に便利だ。
なお,FG2421は60Hz表示モードを持たず,60Hzで入力された映像信号は120Hz表示にアップスケールされるとのこと。つまり,据え置き型ゲーム機の映像も120Hz表示されるわけだ。Turbo 240の適用も,もちろん可能という。
なお,スタンドは高さ調整と左右回転(スイーベル),上下回転(チルト)に対応していた。
これまでEIZOは,FSシリーズの液晶ディスプレイで,低遅延のIPSパネルと超解像技術がゲームに向くという,ある意味でぼんやりとした訴求を行っていたのだが,FG2421では,先行する競合製品を徹底的に研究し,その上を行くという気合いが強く感じられる。面白い製品が登場してきたといえそうだ。
取り急ぎTurbo 240の効果と遅延をチェック
残像感の少なさと黒の締まりは誰が見てもはっきり分かる
発表会後,4Gamerでは短時間ながらFG2421を試す機会が得られたので,読者が最も気になるであろう「Turbo 240の効果」と「表示遅延」を取り急ぎチェックしてみた。詳細なレビューは後日掲載するとして,まずは速報的にお伝えしてみたい。
というわけでまずは最大の特徴であるTurbo 240だが,結論から先に言うと,これは誰の目から見ても明らかなほどに効果がある。4Gamerではかねてよりディスプレイレビュー用のリファレンス機として120Hz駆動に対応したBenQ製の「XL2410T」を用いていて,「リフレッシュレート120Hz対応のディスプレイで120Hz表示させれば,映像はヌルヌル表示される」という理解をしていたのだが,その隣にFG2421を並べて同じサンプル映像を表示させると,見た目はびっくりするほど異なるのだ。
実際の違いは下に示した写真を見てほしい。上下段ともに左がFG2421,右がXL2410Tで,上段ではFG2421のTurbo 240を無効化,下段では有効化したときのテスト結果となる。
画面表示に用いているの画像はEIZO製のテストパターンで,それを,EIZOから提供を受けた「1920×1080ドットの静止画像をスクロールさせるツール」こと「EIZOMotionBlurChecker」(Beta2)使って右から左へと動かしている。そしてその模様を,ニコンのデジタル一眼レフカメラ「D80」(シャッタースピード250分の1)で撮影するという形だ。
なお,ディスプレイ出力には,2基のDual-Link DVI出力に出力タイミングのズレがないことを確認済みの「GeForce GTX 480」リファレンスカードを利用した。もちろんディスプレイの表示設定は120Hzである。XL2410Tでは残像感低減用の高速応答技術「AMA」を有効化していることもお断りしておきたいが,写真で比べても,とくに文字のあたりを見ると違いは明らかだろう。
ゲームでもこのシャープさを体感できるとすれば,FS2421の持つ大きなアドバンテージとなるだろう。このあたりはレビューを待ってもらえれば幸いだ。
ちなみに,前段で紹介しているとおり,Turbo 240では,内部的なリフレッシュレートを240Hzへと引き上げ,120Hz映像のフレームとフレームの間でバックライトの明滅処理を加えることで,残像感の低減を図る技術とされている。そのため,Turbo 240を有効化した状態のFG2421を,カシオ製のハイスピードカメラ「HIGH SPEED EXILIM EX-FH100」(以下,EX-FH100)の240fpsモードで映像撮影すると,下に示したムービーのとおり,フリッカーの存在を確認できる。
もっとも,このフリッカーは240fps撮影したものを低速再生しているから見えているだけであって,実際の使用時には,明滅分だけ画面がやや暗く感じる程度である。
続いてはゲーム用途で極めて重要になる表示遅延である。リフレッシュレート120Hzに対応したDVIスプリッタは筆者の知る限り存在しないないため,スプリッタを用いたテストは行えないが,前出のGeForce GTX 480リファレンスカードでクローンモード表示させれば,両者の遅延状況は確認できるはずだ。
というわけで今回は,「RefreshRateMultitool」(Version 0.11)を実行し動画を撮影してみた。
RefreshRateMultitoolは垂直リフレッシュレート120Hzにまで対応できるテストツールで,画面に12×10の黒いマスを表示し,左上から右下まで1秒に1回の間隔でマスを白黒反転させるようになっている。つまり,1マスの反転が1フレーム相当なので,反転しているマスの位置を比べれば,2台あるディスプレイの遅延が分かるというわけである。
比較対象となるXL2410Tでは,内部の映像をバイパスする「Instant Mode」を有効化し,かつ「FPS」モードを選択している。つまりXL2410Tとして最も遅延が少ない状態だ。一方のFG2421にスルーモードのような設定はないため,「User1」モードで,Turbo 240の無効と有効を切り替えている。その結果が下だ。
このスコアは120Hz時のものなので,“60Hz換算”では0.5フレーム以上1フレーム未満,ということになる。わずかに遅延があるのを残念と見るか,高度な残像低減機能が有効にもかかわらず,60Hz換算で1フレーム未満の遅れに留まっていると見るかで評価は分かれそうだが,これが実際のゲームでどの程度体感できるかは,追って検証する必要がありそうだ。
Screen Manager Pro for Gamingの使い勝手など,細かい部分の検証は追ってお伝えするが,残像感の少ない映像や,VA方式で120Hzとったところが気になるのであれば,とりあえず“特攻”してみるのも悪くないのではなかろうか。
FORIS FG2421 製品情報ページ
EIZO直販ページ「EIZOダイレクト」
●FORIS FG2421の主なスペック
【液晶パネル】
- サイズ(表示サイズ):23.5インチワイド(可視域対角59.8cm)
- 液晶方式:VA,ノングレア
- 解像度(画素ピッチ):1920×1080ドット(画素ピッチ 0.272×0272mm)
- 表示色:約1677万色(10億6433万色中)
- 視野角:左右176°上下176°
- 輝度(標準値):400cd/m2
- コントラスト比:5000:1(コントラスト拡張機能有効時15000:1)
- 応答速度:1ms未満(GtG)
- バックライト:白色LED
【入力系】
- 水平周波数/垂直周波数:31〜138kHz/59〜122Hz(DVI),31〜138kHz/49〜122Hz(DisplayPort),15〜100kHz/23〜122Hz(HDMI)
- ビデオ入力端子:HDMI×1,DVI-D×1(HDCP対応),DisplayPort×1
- ビデオ入力解像度:未公開
- サウンド入力端子:HDMI×1,DisplayPort×1,3.5mmステレオミニ×1
- スピーカーシステム:なし
- サウンド出力端子:3.5mmステレオミニ×1
【そのほか】
- 消費電力:標準20W(最大53W,節電設定時0.5W以下,待機時0.5W以下)
- 本体サイズ:563.5(W)×200(D)×391〜451(H)mm(※スタンド含む)
- 重量:約6.2kg(※スタンド含む)
- チルト角度:上25°,下0°
- スウィーベル角度:344°(台座部)
- 高さ調節:なし
- 主な付属品:電源ケーブル,DisplayPort−DisplayPortケーブル(2m),ステレオミニ−ステレオミニケーブル,USBケーブル,ユーティリティディスク,ケーブルホルダー,保証書付きセットアップガイド
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FORIS
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