プレイレポート
ついに発売となった「絶体絶命都市4 Plus」プレイレポート。災害の恐ろしさはもちろん,生々しい人間模様まで包み隠さず描く意欲作
本作はもともと2011年にアイレムソフトウェアエンジニアリングよりPlayStation 3向けソフト「絶体絶命都市4」として発売が予定されていたが,2011年3月に,公式サイト上で発売中止が告知される(関連記事)。
しかしその3年後の2014年に,グランゼーラが「絶体絶命都市4」の権利を取得(関連記事)。2015年11月27日に「絶体絶命都市4 Plus -Summer Memories-」と改題し,あらためてPlayStation 4用の新作タイトルとして発表された。そこから約3年の開発期間を経て,ついに発売の日を迎えたのだ。
本稿では,そんな「絶体絶命都市4 Plus」を発売前にプレイできたので,筆者の感想を交えながら紹介していこう。
日常は,ある日突然崩壊する
ストーリーは,主人公が就職活動(最初の選択によって変わる)のために訪れた街で,突如大地震に遭遇する「絶体絶命都市」の定番とも言えるシーンから始まる。
なにげない日常の風景から一転して,災害と向き合うことになる主人公と街の人々。余震が続き,一切の予断を許さない状況の中,土地勘のない主人公は,街の人々と協力しながら崩壊した都市からの脱出を試みるのだ。
ゲームシステムはオーソドックスな3Dアクション・アドベンチャーをベースにしており,この手のゲームに親しんでいる人ならば,操作等で戸惑うことはないと思われる。本作ならではのアクションとしては,屈んで余震による転倒を防ぐというものがある。転倒してしまうとダメージを受けるため,生き残るためには必須のアクションなのだ。
主人公はごくごく普通の一般人であり,並外れた力を持っているわけではない。災害に直面すれば不安からストレスを感じるし,喉がかわくこともあれば,当然排泄欲求もある。そのため,ストレスを解消するためには休憩スペースで休み,排泄したければトイレに行かなければならない。
こういった人間の生理現象まで忠実に再現してシステムに組み込んでいるのも,本作およびシリーズの特徴だ。実際,災害が起こってしまうと水道やトイレが使えなくなってしまうこともある。グランゼーラが本作を「世界一の都市災害体験シミュレーター」と銘打っているだけあり,実際の災害を想定したあらゆる部分が生々しく作られている。
「絶体絶命都市」で得た知識が思わぬアクシデントで役に立つかもしれない,という話も決して大げさではないのだ。
主人公達に生命の危険をもたらすのは,余震や倒壊する建物など,現実世界でも起こり得る現象だ。余震はいつ発生するか分からないため,プレイヤーはつねに揺れに警戒する必要がある。終始付きまとう余震の影も「絶体絶命都市」ならではの恐怖であり,特徴と言えるだろう。
グランゼーラのお家芸?バリエーションが豊富すぎる選択肢
もう一つ,シリーズ共通の見どころとして注目したいのは選択肢だ。普通,選択肢と言えば2〜3個が一般的だが,本作の選択肢は多いもので6〜7個はある。さらにその内容も,同じ人物が発現する内容とは思えないほどバラエティに富んでいる。
下のスクリーンショットを見てもらえれば分かると思うが,選択肢の一番上と一番下を比べてみると,もはや別人としか思えない。中には「どんだけゲスなんだ!」と思ってしまうようなとんでもない選択肢もある。シリアスな場面でふざけた返答をしてみるのも一興かもしれない。
選択に対するキャラクターのリアクションも一つ一つ用意されていて,思わず全ての選択肢を試してみたくなってしまう。ちなみに選択肢の会話には全てボイスが実装されている。
バリエーションに富んだ選択肢は,同じくグランゼーラが開発を努めた「巨影都市」でも大きな個性になっていた。
選択はキャラクターとの会話中,それなりの頻度で発生するため,会話を自分で作り上げているような感覚が持てる。また,選択肢によっては「善行ポイント」「悪行ポイント」が付与される。
例えば,主人公が面接を受けるはずだった会社に行くと,当然ながら面接は中止になっていて,交通費を支給されるのだが,なんとここでは,交通費の請求額を“盛る”こともできる。ただし,それをやってしまうと「悪行ポイント」が溜まってしまうため,行動には注意しなければならない。
シリーズファンには文句なしにオススメ
極限の状況下における人間模様も本作のポイントだ。数百円のミネラルウォーターを3万円で売りつけようとする悪どいコンビニのスタッフもいるし,宝石店に侵入する火事場泥棒や女性を襲おうとする暴漢も登場。自社の株価急落によって転職を考える社員などもいる。
もちろん,善人と悪人だけではなく,そのどちらにも属さない傍観者の存在も人間のリアルな部分を描いていて,ハッとしてしまう。人間は単純に「善」と「悪」で割り切ることができない。本作を通して,そんなことが感じられた。
リアルと言えば,本作は「ディザスターマニュアル」として,消火器の使い方や刺さったナイフの抜き方といった緊急時の対処法が入手できる。また実際の災害時の消防員の手記も見ることができ,ある種の啓蒙手段としても機能している。
ゲームとしての難度はそれほど高くなく,冒頭にも書いたように,普段からアクションゲームをプレイしている方ならば操作に迷うことはないし,サクサクと進められるはずだ。
2009年にPSPでリリースされた「絶体絶命都市3-壊れゆく街と彼女の歌-」から数えると約10年ぶりの新作となる「絶体絶命都市4」。根本の部分は変わっていないので,シリーズのファンには掛け値なしにおすすめしたい。作品を通して,プレイヤーの心に残るものがきっとあるはずだ。
「絶体絶命都市4 Plus -Summer Memories-」公式サイト
- 関連タイトル:
絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-
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