インタビュー
シェンムーの生みの親,YS NET代表取締役 鈴木 裕氏のインタビューを掲載。「シェンムー街」開発の経緯や今後にかける意気込みを聞いてきた
発表会終了後に,本作の開発を担当する,YS NET代表取締役の鈴木 裕氏に,短い時間ではあるが合同インタビューを行う機会を得た。ここでは,「シェンムー」がソーシャルゲームとしてリリースされることになった経緯をはじめ,いろいろと気になる点を聞いてきたので,本作に興味を持っている人は,ぜひ最後まで読んでほしい。
「シェンムー街」公式サイト
――よろしくお願いします。まずは「シェンムー街」開発のきっかけを教えてもらえますか?
直接の答えになるかは分からないんですけど,「シェンムー」って重厚長大なイメージがあるじゃないですか。やはり,前のボリュームのまま「III」をやりたいという気持ちもありますが,重厚長大なものとしてまたスタートするには,それなりの準備が必要です。
またもちろん,海外を含めてユーザーの皆さんからの「やってほしい」という要望もあります。以前から,できることならシリーズとしての責任を取るというか,何らかの形にしたいなとは思っていたんです。
――なるほど。
鈴木氏:
かねてから,私は「ゲームはルールである」と申し上げています。たとえば,サッカーなら「手を使ってはいけない」ルールの中で競うことでの楽しさがありますが,ルールが違えば,また別の楽しさがあります。
ゲームというと,どうしても最高のグラフィックス,最高の音といったところを求めがちですが,ルールが違ったら,また面白い軸,切り口で「シェンムー」の世界観が表現できるぞということで,少し敷居を下げたといいますか。
――それがソーシャルゲームだったというわけなんですね。
鈴木氏:
以前,「Mafia Wars」という典型的なソーシャルゲームをプレイしたとき,最初は一向に分からなかったんですが,やってみるとけっこう楽しかったんです。
モバイル・PC・ソーシャルネットワークゲームという可能性について,すごく将来性を感じたんです。これでうまくシリーズ化できれば,この先をまたやるチャンスもできるでしょう。
――「シェンムー」のシナリオは全16章構成だと思い込んでいたのですが,鈴木さんが発表会で11章と発言されたことに,今さらですがかなり驚きました。
鈴木氏:
今まで「16章作った」って言った記憶はないんです。なんで16になっちゃったんでしょうね。11しか作ってないですよ,多分(笑)。
ただ,僕には“できる機会”に積極的にチャレンジして,可能性をちょっとでも上げていくことしかできないので,あまりそういったことばかり言って,ユーザーさんの期待を上げるのは,もったいぶっているみたいで良くないなとは思っています。
――確かに,11作目まで作れることが保障されることなんてまずないですよね。
鈴木氏:
たとえば,もしやるチャンスがあったとしてですね,5年に1回のペースだとしたら,全部やる前に私が死んでしまいます(笑)。ある程度シナリオを端折ってハイライトだけ使えば,次の1作で完結にすることもおそらくできるでしょう。シェンムーのエッセンスを入れて,規模,予算,期間,プラットフォームなどを含めて,そこからどういう形にしていくのか,ということになると思うんです。
――そのシナリオというのは,11の章で均等なボリュームのものなんですか?
鈴木氏:
ノベライズのような形で書く小説みたいな形のほうが,物語や感動が分かりやすいので,そういうものをベースに,ゲーム用の脚本を起こしていくんです。なので,ゲームにそのままマッチした脚本とか設計図という形式ではないんですね。
ただ,もちろんゲームを想定して書いているので,ここはQTE※でやるとか,活劇のところはこういうシステムを使うとか,ここは心理テストのようなアルゴリズムを使うとか,ゲーム的に「こういうのを使ってこうしよう」という想定をしてはいます。“遊び”にならないとしょうがないですから。
※クイック・タイマー・イベント。突発的にボタン入力を求められるイベントシーン
――今回サービスされる「シェンムー街」では,一章にあたる横須賀の部分が描かれるんですよね?
鈴木氏:
そうです。
――プレイヤーは,芭月武館の門下生という設定とのことですが,「シェンムー」で主人公だった芭月 涼と一緒に行動することになるんですか?
鈴木氏:
涼と一緒にいるとゲームが成立しないので,ときどき会って何かをしたり,何かを言われたりといった,節目節目で出てくる感じですね。
――基本的には,探索のボタンを押して横須賀の街を徘徊していくことになるんですか?
鈴木氏:
そうですね。
全域徘徊だとちょっととめどないので,シェンムーではある程度フラグをもって新しいエリアが開放されていったんですが,それと同じように,ちょっと小刻みに分かれていて,クリアしたら次に行けます。
――シェンムーでは自由の中にも時間という制約があったと思うんですが,シェンムー街にも時間の概念は採り入れられているのでしょうか?
鈴木氏:
時間の概念はありますが,シェンムー的な時間というよりは,あくまでもSNS的なものですね。たとえば,アルバイト料のようなものを12時間後に取りに行かないともらえなくなるとか,何時間以内にある場所に行かないとお小遣いをもらいそびれるとか。先々,「2時間経ったら取りに行く」とか,そういったタイプのものは出てきます。
鈴木氏:
仲間を呼んで,鍛えて強くして,やっつけるというものです。ザコ戦とボス戦は似たような感じですが。とくにボスは,やっつけられなかったらステージをクリアできないので先に行けません。
――ソーシャルゲームやオンラインゲームには,“ずっと遊び続けられる”要素が求められる部分があると思いますが,「シェンムー街」ではどうなるのでしょう?
鈴木氏:
そうですね……。「シェンムー街」のスタイルのソーシャルネットワークゲームだと,たとえば新しいステージを供給する,新しいシステムが入る,イベントを新しく用意するといった,バージョンアップのようなことをもしやらないのであれば,やはり終焉は来ちゃいますね。
シェンムーというゲーム自体は,ストーリーはあるものの,ぶらぶらして気持ちよければ進めずに滞留していいという考え方ですが,「シェンムー街」はそのままのケアでいつまでも遊んでいられるタイプのゲームじゃないので,やはり,運営をしながら飽きさせないような努力をしていかないといけません。
――なるほど。
鈴木氏:
パラメータがあるゲームなので,やればやるほど強くなっていきますよね。
たとえば重要な要素が三つあるとしたら,最初は小さな三角ですけど,強さだけ上げてバトルに特化した人を作るというようにやっていくと,特徴を出せるんですよ。そのうちパラメータが頭打ちになってそれ以上は上がらなくなったら,三角形を大きくするために,別のパラメータを上げていくことになります。
一つの遊びをやってみたら面白くて,頭打ちになるまで遊んだら違うことをやって,別のことを遊んだらまた異なる楽しさがあるといったように,ゆっくり遊びながらうまい具合に「ここが面白い」「やってみたらここも面白い」と循環していくと,ソーシャルネットワークゲームとしてはすごくいいと,僕は思いますね。
――ただ,それでもやはり限界が来ますよね。
この手のタイプのものの宿命というか,やっただけの成果が上がらないとユーザーさんは納得しませんから,どうしても難しいですね。
最終的には大きな三角形になっていきますが,三角形が大きくなりすぎると,この種類のほとんどのゲームは,新しいフィールドを入れてリセットするしかないです。ただそれは,リセットしてもまだやりたいという人気があるということでしょうから,そうなるようであれば,シェンムー街も大成功ということですね。
――現在開発中のYahoo!モバゲーで提供される「シェンムー街」についてですが,基本的には携帯版と同じものなのでしょうか?
鈴木氏:
モバイル版と並行で開発していますが,今は,モバイルのほうに全精力を上げて対処したいと思っています。以前は同時リリースということも考えていたのですが,モバイルの傾向を見ていろいろな加減を考えたりしながらPC寄りの形に,という風にしていきたいと思います。
――最後に,これから「シェンムー街」を始めてみようと思っている人に,意気込みを聞かせてください。
「シェンムー街」は,ソーシャルネットワークゲームというジャンルの中ではちょっと複雑なのでそこだけ心配ですが,気軽に遊べる要素が多く,少なくともほかのゲームと違う切り口を持っています。
たとえば,ボタンを押すだけで絵がぽんぽん変わって人が出てきて何かしゃべる,少なくともそれだけで面白いと思うんですが,「シェンムー街」のそれは,同ジャンルの中では類を見ないボリュームです。今のソーシャルゲームでいろいろなことを実現するというのは,コスト面などの関係でなかなか難しいですが,「シェンムー街」の場合は過去の財産があって,全部ゼロから作らなくてもいいからそういったことが実現できるんです。
シェンムーであるということも重要なことの一つではあるんですが,たとえば,プレイヤーの方の9割以上がシェンムーを知らないかもしれませんし,まったく先入観のない人でも遊べないとダメだと思うんですね。
プレイヤーの方にも好みがありますから,ストーリーはお呼びじゃないという方もいるでしょうし,もっとアクションがあったほうがいいという方もいるでしょう。それは料理で言えば,和食と中華料理を比べるようなもので,それぞれに良さがあると思います。どう受け入れていただけるのかという話もありますが,少なくとも,今までにない料理を出していますから,好んでいただけるかもしれませんし一度食べてみてください,というのが僕の希望ですね。
興味のあるソーシャルネットワークゲームのうちの一つに入れていただいて,遊んでいただけばと思います。
――ありがとうございました。
「シェンムー街」公式サイト
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