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Unityエンジンの可能性を世に知らしめる一作となるか。「三国志を抱く。」の開発者キム・テゴン氏にインタビュー
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印刷2011/11/21 00:00

インタビュー

Unityエンジンの可能性を世に知らしめる一作となるか。「三国志を抱く。」の開発者キム・テゴン氏にインタビュー

画像集#001のサムネイル/Unityエンジンの可能性を世に知らしめる一作となるか。「三国志を抱く。」の開発者キム・テゴン氏にインタビュー
 11月10日から13日にかけて韓国・釜山で行われたゲームショウ「G-Star 2011」にて,Nexonの新作タイトル「三国志を抱く。」がプレイアブル出展されていた。

 本作は,プラットフォームがWebブラウザおよびiPad/iPhoneでありながら,PCクライアント型ゲームに迫るグラフィックスクオリティを持つとして,大きな注目を集めているMMORPG。Unity Technologiesの全面協力のもと,Unityエンジンのポテンシャルをフルに引き出すことが目標の一つに掲げられており,近年成長が著しいWeb/モバイルゲームの中でも,抜きん出た存在になりそうなタイトルだ。

NDOORS CEO キム・テゴン氏
画像集#002のサムネイル/Unityエンジンの可能性を世に知らしめる一作となるか。「三国志を抱く。」の開発者キム・テゴン氏にインタビュー
 開発元のNDOORSを率いるのは,これまで「アトランティカ」や「君主 online」などを手がけ,歴史や政治,経済の要素をMMORPGに取り込むことに長けたクリエイターの,キム・テゴン氏である。4Gamerでは昨年のG-Star 2010でキム氏に本作の開発の経緯を聞いているが,あれから1年が経ち,どのように開発が進んできたのか。Facebook向けに新たに発表されたタイトル「アトランティカ S」についてや,モバイルゲームの未来なども含め,あれこれと話を聞いてみた。


Unityエンジンのポテンシャルを最大限まで引き上げる「三国志を抱く。」


画像集#003のサムネイル/Unityエンジンの可能性を世に知らしめる一作となるか。「三国志を抱く。」の開発者キム・テゴン氏にインタビュー
 筆者は昨年のG-Starで本作を一度見ているのだが,今回G-Star2011の会場で再び目にしてまず驚いたのは,グラフィックスやUI周りがほぼ全面的に作り直されていることだ。その具体的な内容については最新バージョンのプロモーションムービーを見てもらいたいが,まずはこの1年の開発作業を,キム氏に振り返ってもらった。

 キム氏によれば,「この1年間で数多くのゲームメーカーがブラウザ/モバイルゲームに参入し,クオリティが全体的に上昇してきている」とのこと。以前からブラウザゲームに注力しているNDOORSとしては,現在の市場でも競争力を維持するべく,本作のクオリティアップのために,リソースを惜しみなく注ぎ込んできたそうである。
 具体的には,ゲームエンジンをはじめ,グラフィックス,サウンド,カットシーン,コンテンツの量,プログラムやストリーミングデータの最適化など,ゲームコンセプトを除いたあらゆるところが,この1年で作り直されているようだ。

 その結果,現在は基本的なゲームシステムはほぼ固まっており,「これからは主にバトルコンテンツのバリエーションと,『蜀』以外のキャンペーンのボリュームを増やしていく予定」だという。バトルコンテンツは,すでに1対1や3対3でのリアルタイム対戦が行えるほか,2011年末にはさらに大人数でのバトルも実装される予定だ。

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 ちなみに,昨年のG-Star 2010で三国志を抱く。を公開した時,世界中のゲームメーカーから大きな反響があったそうである。とくに,ゲームエンジンの開発元であるUnity Technologiesとは,現在会社ぐるみでの協力体制を敷いており,Unityエンジンの開発担当がNDOORSに常駐し,今後のアップデートに関するアドバイスを受けているとのこと。キム氏は,「以前のUnityエンジンは誰でも手軽に開発環境が構築できる一方,重量級のゲーム開発に最適化されていないのが不満だった」そうだが,その辺りもこの1年でかなり改善されてきていると述べていた。

画像集#006のサムネイル/Unityエンジンの可能性を世に知らしめる一作となるか。「三国志を抱く。」の開発者キム・テゴン氏にインタビュー
 ただ,いくらクオリティが上がっているにしても,すでに3年の開発期間が経過しており,加えて本作の開発には約100名ものスタッフが動員されているとのことで,ビジネス的に問題はないのかが気になるところ。その問いに対してキム氏は,確かに当初の予定よりはスケジュールが遅れているものの,早くリリースすることより,クオリティの向上を最重視していると答えてくれた。
 キム氏は,ゲームの開発作業は大きく2つの段階に分かれていると見ているそうだ。1つ目は,「戦闘やクエストなど,普通にゲームを遊ぶための基本システムを構築する」段階。そしてもう1つは,「その後に,ゲームの面白さを熟成するための段階」である。
 クオリティよりもスケジュールが優先されたタイトルの場合,この2段階目がカットされやすい。しかしキム氏は,ここで焦ってしまっては,これまでの努力が台無しになると考えており,現在はクオリティアップに専念しているとのことだ。
 長期の開発はビジネス的なリスクになるが,Nexonの経営陣もクオリティアップの重要さを理解してくれているという。また「理解するだけでなく,それを実行できるだけの体力のある会社だからこそ,安心して開発に専念できる」のだと,キム氏は満足げに語ってくれた。

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 さらにキム氏は,「売上だけが全てではない」と続ける。
 本作には,ブラウザ/モバイルゲームとしての新しいチャレンジがぎっしり詰め込まれており,それを全世界のゲーム市場に向けて示すこと自体に意義がある。ブラウザ/モバイルゲームの可能性を世間に周知できれば,現在クライアント型が中心のオンラインゲームの流れを変えることすら不可能ではない。もしそうなった場合,Nexonが持っているゲーム作りのノウハウが大きく役に立つ時代が到来する,という長期的な見方を示していた。

 確固たる信念を持って開発に取り組んでいるキム氏だが,本作のようなタイトルは前例がないため,不安を覚えることもあるという。たとえば欧米で行われるUnityのカンファレンスに出席しても,カジュアルゲームばかりが中心で,本作の開発の参考にはならないそうだ。それだけに,NDOORSからアドバイスを受けるUnity Technologiesにとっても,三国志を抱く。はエンジンの強化を計るための大きなチャンスとなっているようである。

 なお,本作のサービススケジュールは当初の予定より若干遅れるものの,2012年の上半期に,韓国での正式サービス開始が予定されている。また,ワールドワイド展開のための翻訳作業などにはまだ取り掛かっていないが,韓国の次にサービスされるのは,日本になる可能性が非常に高いとのことだ。本作は,現在の日本のブラウザ/モバイルゲーム市場にも,大きなインパクトを与えられそうなタイトルなので,続報に期待したいところである。

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ライトゲーマーに対する次の受け皿として開発中の「アトランティカS」


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 今回の機会を利用し,せっかくなのでG-Star 2011で新たに発表されたFacebook用ゲームであるアトランティカSについても話を聞いてみた。同作は,キム氏が手掛けたMMORPG「アトランティカ」のソーシャルゲーム版として開発中のタイトルで,選択するだけのダンジョン探索や,自動化された戦闘などにより,かなり手軽に遊べそうなタイトルになっているというのは,すでにお伝えしているとおり

 ただ,よくよく考えてみると,そもそもアトランティカ自体が親切に分かりやすく作られており,遊びやすいタイトルである。そこからさらにハードルを下げて,Facebook用タイトルの開発を進めているのは,どういった意図によるものなのだろうか。
 その問いをキム氏は,「アトランティカでは,Facebookの大多数のユーザーにとっては,とっつきにくいからダメなんです」と断じた。キム氏は,Facebookのユーザー層は基本的に“ゲームユーザー”ではないので,いくらアトランティカが分かりやすいゲームといっても,触ってもらうのは難しいと分析しているのだという。
 彼らは,ゲームを遊ぶためにFacebookを使っているわけではなく,友達と付き合うツールとしてゲームを利用しているのであって,極端な話をしてしまえば,ジャンケンのようなシンプルな遊びであっても楽しめるというわけだ。

 では,その市場にあえてアトランティカというIPで挑むのはなぜか。
 その理由は,「今はまだ簡単なゲームで遊んでいるライトユーザーが大多数を占めているが,そこからもっとゲームを深く遊びたいと思う人が出てくるはずであり,単純な操作でも本格的に遊べるゲームというもののニーズが今後急激に増えていく,と予測している」からだそうだ。

画像集#012のサムネイル/Unityエンジンの可能性を世に知らしめる一作となるか。「三国志を抱く。」の開発者キム・テゴン氏にインタビュー
 アトランティカSは,ゲーマーから見れば簡単すぎるゲームに見えるかもしれないが,その簡単な部分でライトユーザーを引き込み,アトランティカ譲りの多数の傭兵からパーティを編成する面白さや,強力な敵に友達と一緒に挑戦できるパーティプレイを体験させよう,という試みなのだろう。いってみれば本作は,現在のクライアント型MMORPGで遊んでいるようなゲーマー層と,ゲーム自体にあまり興味のないライトユーザー層の“中間”を狙ったタイトルなのである。
 さらにキム氏は,今のところその中間層を狙うようなゲームは数が少ないので,実験的な意味合いも含めて開発を進めているとも述べていた。

 なお,開発の進捗状況は80〜90%程度とのことで,今年の12月頃に第一次クローズドβテストを予定しているという。また,実験的なだけあって周囲に参考となるタイトルが無いため,ビジネスモデルは慎重に決めたいそうだ。
 加えて,アトランティカSはどちらかというと,売上よりも多くのユーザーに「本格的に遊べるFacebook用ゲーム」というものを広めることを第一義として,そこで得られるノウハウが,今後Facebookアプリを新たに開発するための良き判断材料になる,とキム氏は考えている様子。三国志を抱く。と同様に,これから訪れるであろう次ぎのモバイルゲームの波に向けて,NexonならびにNDOORSはすでに長期的な視点で対策を講じているようである。

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    三国志を抱く

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    アトランティカ S

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