インタビュー
新作TPS「バイナリー ドメイン」で,龍が如くスタジオが目指したものとは? 佐藤大輔ディレクターに聞く
4Gamerでも何度となくお伝えしてきたとおり,本作の開発は「龍が如く」シリーズを手がけてきた,龍が如くスタジオだ。今回,4Gamerでは本作のディレクターを務めた佐藤大輔氏に,バイナリー ドメインで目指したことや,作品に込められたテーマ,やり込み要素の有無などを,「男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ」でおなじみ,男色ディーノ選手がまとめて聞いた。
「バイナリー ドメイン」公式サイト
「バイナリー ドメイン」のテーマは“命”
佐藤ディレクターは何を“命”と考えているか
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
「バイナリー ドメイン」,いよいよ発売ですね。すでに体験版は配信中ですが,そちらの手応えはいかがですか?
実は……ネットの評判がすごく気になって,緊張しています(笑)。東京ゲームショウなどですでに出展してはいますが,たくさんの方に遊んでいただく機会は,体験版が初めてですから。でも,おかげさまで好評なようで,少し安心しています。
4Gamer:
体験版を出すということは,作品に自信があるからこそだと思うんですが,それでも緊張してしまうものなんでしょうか。
佐藤氏:
ええ。やはり今回は新規タイトルでもありますし。僕らにとってはTPSというジャンルに本腰を入れて挑戦するのも,今回が初めてですからね。TPSというジャンルには,海外産の人気シリーズも数多いですから,“追う立場”である僕らがどこまで迫れたか……というのが,体験版をプレイした方達にある程度判断されてしまうでしょうし。
4Gamer:
では,海外のTPSを追う立場として,バイナリー ドメインならではの良さは,どこにありますか?
佐藤氏:
純粋にTPSとして“撃って,爽快感があって,面白い”というのはもちろん目指しましたし,そこは実現できていると思います。 ベースが“撃って,進んでいく”というゲームなので,爽快感なり手応えなりを感じてもらえないと,プレイが続かないでしょうし。
あとは音声認識の部分ですね。これまで音声認識のゲームが無かったわけじゃないですが,ゲームへの没入感をより味わえるような使い方を目指しましたので,そこを楽しんでいただけると嬉しいです。
4Gamer:
体験版が好評であるというのも,そのあたりが大きいのかもしれませんね。
佐藤氏:
そうだと嬉しいですね。それに……和製のTPSということで,前評判として“ナメられていた”部分があったと思うんですよ(笑)。
なので,「思っていたよりいいじゃん」みたいな感想を見かけると,一番嬉しいですね。
4Gamer:
体験版はあくまでさわりの部分であって,本編はもっと濃密に楽しめるわけですよね?
佐藤氏:
もちろんです。それを目指して作ってきましたから。
4Gamer:
それは発売が楽しみですね!
ところで,この作品には,“龍が如くスタジオが手がけたからこそ”の部分もあると思うんですが,それは端的に言ってどのあたりですか?
佐藤氏:
龍が如くスタジオとして作っているタイトルですので,しっかりとしたドラマ,熱いストーリーはもちろんあります。「龍が如く」シリーズのファンには,そういったヒューマンドラマが好きな方が多いと思うので,我々としてもそこは外していません。
4Gamer:
なるほど。龍が如くシリーズの場合,ストレートに“熱さ”や“信念”など,一言で表せるテーマが込められていますが,バイナリー ドメインには,それに相当するようなキーワードはありますか?
佐藤氏:
バイナリー ドメインの物語のテーマとして,“命”というキーワードがあります。“ロボットと共存している未来”という舞台設定において,命を定義づけるものは何か? 物語がラストへ向かっていく間に,命というのは何だろう? と考えさせられるところや,その中でお互い思想がぶつかり合うような熱いシーンがあったりします。
4Gamer:
命ですか……。佐藤さんご自身は,命をどういったものとしてとらえているんですか?
というのも,テーマをゲームに落とし込む上では,いろいろな形でアプローチをしていくわけですよね。ゲームを作るにあたっての落とし込み方と言いますか。
佐藤氏:
ディーノさんは時々ドキッとする質問をしますね……(笑)。
4Gamer:
いえいえ(笑)。何かしらのテーマをゲームに込めようと思っても,大勢が関わるものですから,誰か一人の思いだけを100%込められるものじゃないとは思うんです。ただ,その中で佐藤さんは何を考えてこの作品に関わってきたのかな? というのが気になりまして。
佐藤氏:
そうですねぇ……。
“自律”して動いているものに対しては,命があるんじゃないか? という感覚があります。ロボットがどんどん高度になっていって,それが単純に人間の指示でしか動かないものではなくて,自分で考えて行動するようになってくると,それはもう,一つの命なんじゃないかなと。そういう考えは,バイナリー ドメインに込めています。
純粋に“撃ち合い”を楽しめる体験版と
カットシーンやミニゲームも豊富な製品版
4Gamer:
ちょっと話は戻りますが,体験版と本編の違いとして最も大きなポイントを教えてください。
体験版には,カットシーンやミニゲームなどはほとんど入っていません。というのも,体験版は本作のベース部分である,“撃ち合い”を純粋に楽しんでもらおうというコンセプトで作られていますので。
4Gamer:
それは凄く伝わってきました。さっきのお話じゃないですけど,TPSに慣れたゲーマー達に対して挑戦状を叩きつけているというか。
佐藤氏:
ええ,まさにそういうことですね。
本編になると,カットシーンも多いですし,撃ち合いとはちょっと違うミニゲームも入ってきます。この手のゲームとしては,ごく当たり前の作り方ではあるんですが,それらをシームレスに繋ぐことで,プレイヤーの意識が途切れないように気を配りました。
4Gamer:
ミニゲームも,この世界観に沿ったものばかりなんでしょうか。
佐藤氏:
基本的にゲームのシナリオ進行に沿う形で,各ステージに合ったミニゲームを用意しています。なので,龍が如くシリーズに登場するミニゲーム,例えばボウリングやバッティングセンターのようなものではありません。
4Gamer:
体験版の中には,「渋谷にゲイシャの店がある」という会話がありましたが,龍が如くシリーズでいうところの,キャバクラ的なものは……?
佐藤氏:
本当は入れたかった気もするんですけど,本作にはありません(笑)。
……ただ,ゲイシャはいますね。
4Gamer:
おお! 「ゲイシャの店に連れて行ってもらう」という会話は,その場限りのアメリカンジョークではなかったんですね。
これに限らず,作り手の遊び心みたいな要素はあるんでしょうか?
佐藤氏:
体験版にも入っていますが,ショップで買い物をするときにクジ引きがあります(笑)。
4Gamer:
バイナリー ドメインで描かれている世界の70年前である現代ですら,クジ付きの自販機は減っているというのに(笑)。
そういえば,戦闘中に音声認識で「愛してる」とか「好きだ」みたいな無駄話もできますが,これも遊び心ですよね?
佐藤氏:
ええ。もちろんそういった会話も,キャラクター同士の信頼度に影響を及ぼすという意味は持たせていますが,そう思っていただいて問題ないです。戦闘以外の場面でしか認識しないワードもありますし。
4Gamer:
シーンごとに認識できるワードが異なるということですか?
佐藤氏:
ええ。実は認識ワード自体はいくらでも増やせるんです。でも,多ければ多いほど,誤認識の可能性も高くなってしまいますから,シーンごとにある程度,認識ワードを変えることによって,全体としてボリュームを増やしました。
4Gamer:
確かに音声認識って,どうしたって誤認識は出てしまいますよね。
佐藤氏:
そうなんです。反応しやすい単語やしにくい単語に個人差もありますし。例えば,「フェイ」という名前は意外と認識しづらいんですが,僕が呼ぶと認識しやすいんです。でも逆に,「ボウ」は認識しやすいはずなのに,僕の場合はあまり認識してくれなかったり。
4Gamer:
しゃべり方のクセみたいなものが,人それぞれであるだけに。
佐藤氏:
ギリギリまで調整はしましたが,ゲームとして破綻のないレベルで音声認識を取り入れるにあたって,やはり技術的な限界はありますね。とくに同じような音感のワードが複数あると,誤認識が発生しやすくなります。そういう場合は,同じ意味で違う言い回しのワードを採用するといった形で対処しています。
日本で作るからには,舞台は日本
それによってリアリティを生み出したい
4Gamer:
バイナリー ドメインの世界は,70年後の日本ですが,国際情勢などは現在と変わらないんでしょうか。
ええ。国家間の力関係などは,現代とそう変わっていません。
4Gamer:
ではそもそも,日本を舞台にしたのはなぜですか?
佐藤氏:
昨年の東京ゲームショウでもお話しさせてもらったんですが(関連記事),空想上の物語であっても,やっぱりリアリティを少しでも感じてもらいたいからなんです。やっぱり我々日本人が作る以上,日本を舞台にしたほうがリアリティを出しやすいんです。
4Gamer:
なるほど。そんな中,イギリス人の仲間もいれば,アメリカ人や中国人もいますよね。キャラクターを多国籍にした意図を教えてください。
佐藤氏:
本作はワールドワイドで売ることを目指して作っています。ただ,日本が舞台で,主人公も日本人だけだと,海外のゲーマーに敬遠されてしまうだろう,と。そこで,世界中から集まった精鋭の部隊が,日本に乗り込んでくるという設定にしました。
4Gamer:
日本で作るからには,日本を舞台に。ただし,そこで動くキャラクターは国際色豊かに……ということですね。
佐藤氏:
ええ。なのでタイアップ関連でも,世界でも知られている日本企業を多く選んでいます。
4Gamer:
あのタイアップには,そういう意図があったんですね。
リアリティという部分に関連するかと思うんですが,敵ロボットに人型のデザインが多いのは,なぜでしょうか。極論すると,現代でいうところの工業用ロボットなどは,人型というわけでもありませんよね。
佐藤氏:
バイナリー ドメインの世界には,“人間の代わりに何かをさせる”ためのロボットが溢れているわけです。そういう目的を考えたとき,世の中のインフラすべてに対応しやすいのは,やっぱり普通の人型ではないかと想定した結果です。
4Gamer:
設定の部分から系統立てて想定していった結果なんですね。
では,武器などが現代のものと形状的にはあまり変わっていないのにも,何か理由があるんですか?
佐藤氏:
確かにもっととんでもない武器だってアリだったかもしれません。でも70年後の未来であれば,そう変わらないんじゃないだろうか? という考えがあったんです。それにゲームとして“撃っている手応え”は外したくありませんでしたから。
なので,弾丸と火薬を用いる,今とそう変わらない銃でいこうということになりました。主人公は未来的な「ショックバースト」を撃てるんですけど。
4Gamer:
近接攻撃も,未来っぽい感じではないというか,銃器でぶん殴るという現代的……いやむしろ古来から伝わる戦い方になっています。
佐藤氏:
近接攻撃は,当初想定していたものよりも縮小させました。やはり,TPSであるからには,ある程度距離をとってカバーしながら撃ち合う,ということを大事にしていこうと。
4Gamer:
銃撃戦の楽しさを重視するための判断ですね。
佐藤氏:
ええ。そこを外さないようにしようと心がけました。なので近接攻撃は,敵に詰め寄られてしまったときに,引き離す隙を作るためのアクションといった程度で入れています。
4Gamer:
では逆に,未来を描くにあたり,泣く泣くカットしたものはありますか? 例えば体験版に出てきた列車についても,あれ以上にもっと進化していてもおかしくはないですよね。70年後の世界をリアルに描くにあたって,何を捨てて何を残すかは重要だったと思うのですが。
佐藤氏:
時代設定については初期に話し合いをしたんです。「車はまだ空を飛ばないよね」とか(笑)。「上層都市」という構想にしたため,列車についても普通のレールではなくケーブルの上を走るような形にしました。
一つ一つに理由はあるんですが,ゲームとして組み上げていく上で,必然的にそうなっていった部分もたくさんあります。
TPSとしての歯ごたえを追求しつつ
初心者向けのアシスト機能も用意
4Gamer:
このゲームのターゲットには,龍が如くシリーズのファンはもちろん,TPSが好きなゲーマーも入っていると思うんですが,とくに後者はプレイに歯ごたえも求めますよね。そういう層へのアプローチは,どのように考えていますか?
まず,どの難度でも1度クリアするとタイトル画面から「チャプターセレクト」というものが選べるようになります。さらに「HARD」モードをクリアすると,最上級の「NO MERCY」が出てきますね。
4Gamer:
体験版でもNO MERCYの表示はありましたね。
佐藤氏:
体験版ではプレイ自体できないんですが,「こういう難度もあるよ」という意味で表示しています。
4Gamer:
プレイヤーを威嚇したわけですね(笑)。
使用武器を自分で限定して,あえて難しくして遊ぶようなプレイヤーもいると思います。武器は全部で何種類あるんでしょうか?
佐藤氏:
アサルトライフル,ショットガン,スナイパーライフル,マシンガン,サブマシンガン,ハンドガンがそれぞれ3種類ずつあります。これら以外に,ガトリングガンやロケットランチャーなどの特殊な武器があって――グレネードも含めると,全部で30種類くらいあります。
4Gamer:
どの武器でも,敵を倒せないということはないんですよね? 有利,不利があるにせよ。
佐藤氏:
もちろんです。初期装備だけでも頑張れば最後まで行くことはできます。けっこうつらいでしょうけど。高難度になるほど,武器のカスタマイズをしていかないと厳しくなっていくと思いますよ。
4Gamer:
つまり,武器のカスタマイズありきで難度を調整しているということですね。
佐藤氏:
はい。EASYであればそんなにカスタマイズしなくても大丈夫です。もし,途中で詰まったなと感じたら,銃を強化すれば先へ進めるようになると思います。
4Gamer:
ちなみに難度が上がると,敵が硬くなるんですか? それとも,弾薬が手に入りにくくなるといった制限が付くんでしょうか。
佐藤氏:
基本的には,敵が硬くなるのですが,敵の数も増えていきます。そのうえ,敵の攻撃の命中精度も上がります。
敵が硬くなると,一体を倒すのに必要な弾数は増えますから,そういう意味で言えば,弾薬の数も厳しくなってくるでしょうね。
4Gamer:
よりテクニカルに,効率よくプレイする必要が出てくるということですね。
佐藤氏:
そうですね。最上級の難度だと,うかつに顔を出せないです。EASYだと,隠れずにうろうろしながら撃っていても,そんなにダメージは食らわないんですが。
4Gamer:
逆に,EASYだと敵が弱いだけですか?
佐藤氏:
いえ,体験版にも入っているんですが,EASYモードでは初心者向けの操作アシストを設定できます。この操作アシストには二つの機能があります。一つは,プレイヤーが移動するとカメラが自然に背中側へ戻るという機能です。
4Gamer:
カメラをほとんど操作しなくて良いわけですね。
佐藤氏:
もう一つ,近くの敵に武器を向けたときは自動的に照準の補正がかかるんですが,初心者向けアシストがオンになっていると,その補正が強くなるだけでなく,武器を構えなくても補正が効くようになっています。だから,ただ単に引き金を引くだけでも,画面の中にある程度収まっている相手に銃口が向くんですね。
4Gamer:
エイミングの微調整が不要になると。
佐藤氏:
ええ。極端な話をすれば,移動と引き金,あとはたまに向きたい方向へ向くためのカメラ操作。これだけで,プレイできると思います。
4Gamer:
それだけなら,TPSに慣れていない人でも気軽に遊べそうです。
佐藤氏:
完全に自動でターゲッティングしてしまうようなシステムにしようか,という議論も最初はあったんです。ただ,それだと遊んでいてもつまらなくなりますよね。
やっぱり“狙って撃って当てる”のが楽しいので,ある程度プレイヤーが自分で意識して,ちゃんと自分が撃っている感覚を味わえる程度のアシストに抑えました。
NORMAL以上の難度ならアシスト機能も使えないので,慣れてきたら上の難度に挑戦してどんどんうまくなってほしいですね。
佐藤氏が好きな映画は「ブレードランナー」
あの雰囲気が,渋谷の下層に
4Gamer:
せっかくの機会なので,ちょっとゲームとは違う話もさせてください。
佐藤さんがお好きな映画は何ですか?
若い頃から,SFという題材は好きでしたね。「スター・ウォーズ」なんかも好きでしたけど,とくに好きなのは「ブレードランナー」です。
4Gamer:
バイナリー ドメインもSFテイストに溢れていますが,影響を受けた部分はありますか?
佐藤氏:
あの作品で,リドリー・スコット監督が描いた独特の“塵”感というか“煙”感というか――そういうものは,バイナリー ドメインの渋谷の下層に反映させたいと思っていました。なぜだか知らないけど排水溝から蒸気が立ちこめている,みたいな(笑)。
4Gamer:
凄く納得いきました。
では,ゲームではいかがでしょう?
佐藤氏:
シミュレーションゲームが好きなんですよ。作ったことはないんですけど,やるのは好きで。
シミュレーションのジャンルでいうと,歴史ものや「大戦略」シリーズが好きでしたね。昔セガから出ていた「アドバンスド大戦略」なんかも,相当遊びましたよ。歴史を変えられるんじゃないか? みたいなところが,すごくグッと来るんです(笑)。
4Gamer:
自分もシミュレーションは好きなので,その感じは分かります。
佐藤氏:
「信長の野望」とか遊ぶと,足利を選んで室町幕府をずっと続けよう,とか(笑)。
4Gamer:
オリジナルストーリーですね! マルチエンディングのはしりといえばはしりですからね,ああいうゲームは(笑)。
ご自分でシミュレーションゲームを作ってみようとか,自分だったらこうするのにな,と思ったりすることはないんですか?
佐藤氏:
あ,意外とないですね。
4Gamer:
そうなんですか。そこはもう……。
佐藤氏:
本当に,1プレイヤーで(笑)。
4Gamer:
作り手としてのライバル心が刺激されるジャンルというと,やっぱりアクションやシューティングゲームになるんでしょうか?
佐藤氏:
そうですね。海外の――FPSやTPSではなくても,「アンチャーテッド」には刺激を受けました。“どうやって作っているんだ,これ?”みたいな。
4Gamer:
そういう時って,完全に仕事モードなんですか? それとも,純粋にプレイヤーとして遊べていますか?
佐藤氏:
遊べてはいるはずなんですけど,ちょいちょい仕事モードが出てきますね。よし次に行こうという感じではなくて,“今のところ,こうやってみたらどうなるんだろう?”とか。普通に遊んだらやらないようなことをしたらどう反応するかな,とか(笑)。
4Gamer:
それは完全に職業病ですね(笑)。
自分はプロレスをやっているので,プロレスは仕事目線でしか観られないんですが,映画などを見るときでも,そういう目で観てしまうことがあるんです。そういったことはありませんか?
佐藤氏:
映画なんかだと,ありますね……。
良い作品は楽しめるんですけど,ツッコミたくなる要素がある作品だと,ふっと考えちゃうんです。“こういう風にするか? こうしたほうが良くなるんじゃないか?”みたいに。
4Gamer:
ああ,凄く分かります。でもそういう目で見出すと,気分転換が難しくないですか?
佐藤氏:
気分を変えたいときは,飲みに行きますね,酒好きなので(笑)。
4Gamer:
エンターテイメント作品での気分転換は難しい,と(笑)。
ではちょっと,ゲームを作るときの姿勢についてもお聞きしたいんですが……。もの作りを進めていると,複数の選択肢から一つを選ばなければならない場面があると思うんです。そういうとき,何を信じて選択しますか?
佐藤氏:
ユーザビリティですね。最終的にはそこが基準だと思います。ユーザビリティといっても人によって価値観や判断基準が違ったりするところはあるんですけど,そこはもう,自分の物差しですね。
4Gamer:
例えばそこで開発陣の間で意見が割れたときには,どう判断するんでしょうか。
佐藤氏:
基本,みんなの意見を必ず聞くようにはしているんですけど,聞いたうえで自分が納得できなかったら,自分の意見を通します。逆に,みんなの意見に自分が説得されれば,考え方を変えます。
4Gamer:
みんなの意見に自分が説得されなかった場合,逆に自分からみんなを説得にかかるわけですよね?
佐藤氏:
そうですね。どっちも判断つかないときって,最終的にはどっちもどっちなんですよ。一長一短があるからまとまらないのであってあって。例えば,片方が圧倒的に優れた意見の場合は,間違いなく優れたほうを選ぶと思います。そうじゃないときは……自分が信じたほうを選ぶしかないですね。
エンディングは複数
その分岐を握るのは,仲間の信頼度
4Gamer:
バイナリー ドメインを実際にプレイするにあたって,プレイヤーにはどんな心持ちで臨んでほしいと思いますか?
最初は,「どういった話なんだろう?」というぐらいの探り探りでいいと思います。テーマは“命”なんですが,最終的には仲間との関係や,人と人とのドラマを意識して作っていますから。最後までプレイしてもらえれば,それを感じられるものに仕上がっています。
4Gamer:
仲間というのも大きなテーマなんですね。
佐藤氏:
ええ。“仲間と一緒にチームアクションで進んでいくゲームにしよう”“仲間とのドラマをたくさん演出しよう”というコンセプトもありますから。
なので,仲間のキャラクターもちょっとステレオタイプかもしれないですが,分かりやすく作りました。
4Gamer:
ちなみに,佐藤さんが気に入っているキャラクターは誰でしょう?
佐藤氏:
僕は主人公のダンが格好いいと思っています。若干チャラい感じで,どんな敵が出てきてもクールなんですけど,芯には熱いものがしっかりとあるので。山寺宏一さんの声も,凄くフィットしていると思っています。
あと,チャーリーも好きですね。ちょっと神経質っぽくて嫌味な感じとか(笑)。
4Gamer:
攻略するうえで,オススメの仲間はいますか。ステージによって切り替える必要があるとは思うんですが,わりと万能に活躍してくれるような……。
佐藤氏:
カインは頑丈ですね。ロボットなので,なかなか死にません(笑)。
でも,最後のほうで仲間の信頼度による分岐があって,みんなの信頼度を高めるプレイをしていると,ベストなエンディングが迎えられます。なので,まんべんなく使っていただきたいですね。
4Gamer:
仲間とのコミュニケーション要素が,ストーリー展開にも関わってくるんですね。
佐藤氏:
物語の大筋は変化しないんですが,特定のキャラの信頼度が高くないと出て来ないシーンはあります。
4Gamer:
では,条件を満たさないと急にバッドエンドになってしまう,というわけではないと。
佐藤氏:
そういうわけではないですね。物語の結末は変わらないので,マルチエンディングとまではいかないんです。
ただ,例えば誰かが裏切ったり,誰かが死んでしまったりといった展開はあります。
4Gamer:
そういった展開を全部見ようと思うと,やり込み甲斐もありそうです。
佐藤氏:
そうですね。場面場面で連れて行く仲間を選ぶシチュエーションがあって,同じステージでも連れて行く仲間によってどう変わるのかとか,そういった部分はぜひ繰り返しプレイして楽しんでいただきたいです。
4Gamer:
では,1周あたりのプレイ時間はどれくらいを想定していますか?
佐藤氏:
最初は10時間前後でしょうね。
ただ,何の情報もなく遊んで,最初からいきなりベストのエンディングに到達するのは難しいと思います。
4Gamer:
1回通してプレイして,ベストエンディングにはならなかった場合,2周目に何かを引き継げたりはするんですか?
佐藤氏:
お金や武器,仲間の信頼度に関しては,あえて引き継ぎがありません。ですが,2周目からは「チャプターセレクト」が出現するので,途中からやり直すことはできます。
4Gamer:
では最初からやり直さなくても,ちょっと遡るだけでベストエンディングに到達できるんでしょうか。それとも,だいぶ遡らないといけない……?
佐藤氏:
たぶん,最初のプレイを終えた状態から次にベストエンディングを観ようと思うと,それなりに遡らないとダメだと思います。
4Gamer:
けっこう最初の方からフラグの種蒔きが始まっているんですね。
佐藤氏:
結局は“誰を選んで連れて行くか”“誰の信頼度をどの場面で上げていくか”というのが条件になるんですが,その情報は1回最後までプレイしないと分からないんです。だから最低2回はやらないと,ベストエンディングにはならないんじゃないかと思っています。
ただ,ベストなエンディングではない場合も感動的ではあるので,それはそれで是非観ていただきたいんですけど(笑)。
4Gamer:
ベスト以外のエンディングが良くない――とも限らないわけですね。そこにも,メッセージが込められていると。
佐藤氏:
人によってはそれがベストだと感じるかもしれません。
4Gamer:
となると,全種類のルートを観てほしいというお気持ちも?
佐藤氏:
もちろん,ありますね。
今ならばネット上での情報交換も盛んですし,ゲーム側でも,トロフィーや実績などがヒントになりそうですよね。「まだ隠しトロフィーが残っているということは,観ていないエンディングがあるな」と。
佐藤氏:
そうですね。関連する隠しトロフィーはありますから,それをヒントにしていただければと。
4Gamer:
そのあたりも含めて,遊び甲斐がありそうな作品ですね。発売を楽しみにしています。本日はありがとうございました。
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