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[GDC 2012]「Uncharted 3」のNaughty DogがGDC 2012でレクチャーを実施。ゲーム開発では,最後の10%の努力がそのタイトルを「良い」から「素晴らしい」に変える
講演のタイトルがちょっと分かりにくいが,これは,ゲーム開発の最後の10%が,ゲームを「良い」から「素晴らしい」に変えるのだという話で,その作業,つまり「Polish」(磨き上げること。以下,ポリッシュ)の重要性を説いたものだ。
ポリッシュとは,ゲームのプレイ部分やグラフィックスを制作する作業ではなく,製品としてのゲームの最終仕上げを行うことであり,欠点や,完璧でない部分を修正する作業を指す。ゲーム開発者でも,これを知らない人が多いとRussell氏は言う。デバッグとは微妙に違うことのようだ。
そこでRussell氏は,「Uncharted 3: Drake's Deception」(アンチャーテッド -砂漠に眠るアトランティス-)の制作にあたって,α,β版の期間を長く取ることで,ポリッシュに当てることにしたという。ここで重要なのは,α版以降が“ソリッドな”状態であることだ。つまり,バグはあっても構わないが,ゲームシステムの変更を行ったりしてはいけない。
Uncharted 3では難しかったようだが,さらにβ版終了後にハンズオフ期間があるのが望ましい。これは文字どおり,「手を離れた」状態で,デバッグのためにゲームに触れるのはプログラマーだけになる。
通常のゲーム開発スケジュール |
Uncharted 3の開発スケジュール |
ポリッシュの実例も紹介された。セリフのタイミングが合っていなかったり,カメラが自動でパンするとき一瞬だけガタついたり,NPCが棒立ちになっていたりなど,分かりやすいものもあったが,例えば,主人公のネイサン・ドレイクが高いところから下へジャンプした際,一瞬だけライティングが変わってしまう場面や,廊下の向こう側からあふれ出した水のタイミングがずれているシーンなど,ものすごく細かい部分のポリッシュもあった。Russell氏は「今の分かります?」とムービーを何度もムービーを見せてくれるのだが,正直な話,どこに修正が加わっているのか分からないものもあったほどだ。
ポリッシュの最終段階では,プロデューサーなど,ハイレベルな権限を持ったスタッフが毎日チェックを繰り返し,ポリッシュすべき点を探していたとRussell氏は語る。ポリッシュには時間もコストもかかるので,これは目をつぶるべきかどうか,上級スタッフが話し合って決める必要があるからだ。とはいえ,あからさまな問題点があれば,それは上に聞くまでもなく,各部門の責任者が判断するとのことだった。
みんなまとめてではなく,パートに分けてポリッシュしよう | |
難しいポリッシュをするかしないかは,会社のキーパーソンが決める。キーパーソン全員の目を通すことが重要 |
今回のGDC 2012では,このレクチャーを含めて,グラフィックスやプログラムに特化した多数の講演を担当したNaughty Dog。Uncharted 3が大ヒットし,メディアやプレイヤーの評価もきわめて高いことからくる自信が感じられたが,それも,クオリティの高い作品を作るために最後の10%まで力を注いだ結果でもあるのだろう。
- 関連タイトル:
アンチャーテッド -砂漠に眠るアトランティス-
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(C)2011 Sony Computer Entertainment America LLC. Created and developed by Naughty Dog, Inc.
- アンチャーテッド - 砂漠に眠るアトランティス - (初回封入特典:プロダクトコード同梱)
- ビデオゲーム
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