レビュー
文字どおり,「ぶっ飛んだ」レースが楽しめるオフロードレースゲーム
nail'd
2011年4月14日にサイバーフロントから発売された「nail'd」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)は,ATV(四輪バギー)やモトクロスバイクを駆り,森林や雪山などバラエティに富んだコースを走破していくオフロードレースゲームだ。
開発は,西部劇FPS「Call of Juarez」シリーズなどで知られるポーランドのデベロッパ,Techlandが担当しており,ゲームエンジンは同社が開発し,すでに多くのタイトルで採用された実績を持つ「Chrome Engine 4」が使われている。FPSからレースゲームまで,さまざまなジャンルのゲームに使用できるエンジンで,本作でも遠方まで細かく描写されたコースや,数々のエフェクトが非常に美しい。負荷も少なく,快適なゲームプレイが可能だ。
nail'dはマルチプラットフォーム展開のタイトルだが,ここではPC版のレビューをお届けしたい。PC版の操作は,デフォルトではキーボードにアサインされているが,非常にスピード感のあるゲームなので,やはりゲームコントローラを使ったほうが圧倒的に操作しやすい。セッティング画面はXbox 360用コントローラのボタンレイアウトになっているので,もしXbox 360用コントローラを持っているなら,セットアップは簡単だ。これで快適な操作が可能になるうえ,振動によって臨場感も増すので,ぜひお試しあれ。
ここで,本作の音楽についてもちょっと触れておこう。
nail'dには,Fear Factory,Hatebreed,Deftones,Static-Xといったへヴィメタルバンドのメンバーが集結し,オリジナル楽曲を提供している。また,ライセンス曲としてSlipknot,Queens of the Stone Age,Rise Againstなど,これまたその筋のファンにはたまらないバンドも楽曲を提供しており,彼らのノリノリの激しい曲がゲームを盛り上げるために一役買っている。
レースといえばクラッシュがつきものだが,nail'dではATVやバイクがめちゃくちゃに壊れ,ライダーが投げ出される。非常に痛そうだ |
水に濡れたときの演出は,かなりリアルだ。水しぶきや泥ハネで画面が汚れることもあり,そうなると視認性が落ちる |
「nail’d」公式サイト
ATVかモトクロスバイクの選手となり
全選手のトップを目指す
nail'dのゲームモードには,「トーナメント」「オフロードへGo」,そして「マルチプレイ」がある。このうち,メインとなるのはトーナメントで,プレイヤーは無名のライダーとしてゲームを開始。レースに勝利を収めて知名度を上げ,チャンピオンを目指すというわけだ。
レースの舞台となるのは,アリゾナ,ヨセミテ,ギリシャ,そしてアンデスの4か所だが,名前を冠しているだけで,コースは架空のものだ。簡単に紹介すると,アリゾナは砂とむき出しの岩が広がる荒野,ヨセミテは坂や急斜面が続く山岳コース,ギリシャには太古の神殿の円柱やコロッセウムのような建物があり,アンデスは雪に覆われた高地といった感じになっている。
プレイヤーが出場するのは,以上4か所にある「アマチュアリーグ」のレースで,1つのリーグは5〜6のレースで構成されている。実際にプレイしてみると,最初にエントリーできるのはアリゾナで開催されるアマチュアリーグで,ここで3勝することで,次にヨセミテのアマチュアリーグがアンロックされる。ヨセミテで3勝すると,次にギリシャ,そしてアンデスの順でアマチュアリーグがアンロックされ,すべてのアマチュアリーグで勝利を収めると,上位のリーグに挑戦できるというダンドリだ。お分かりですか。
また,上位リーグへの挑戦権を得ると同時に,バイクのカスタマイズ用パーツ(エンジン,ハンドルバー,タイヤなど)や,デカールが利用できる。
レースはATVとモトクロスバイクの混合レースで,12人の選手で競われる。レースの種類としては,3位以上に入賞すれば勝ちとなる「シンプルレース」,詳しくは後述するが,トリックを決めてそのスコアで順位が決まる「スタントレース」,制限時間以内にチェックポイントを通過して,クリアタイムを競う「タイムチャレンジ」,シンプルレースかスタントレースを3回連続して行い,そのスコアを競う「カップ」の4種類が用意されている。
また,場合によってはブースター(加速装置)が無限に使えたり,ライバルとの衝突判定がオフになっていたりなどの特殊な条件でレースが行われることもあったりする。
バイクの挙動はアーケード寄りで,ブレーキを気にせず,思いっきりアクセルを吹かしてスピードを楽しむ豪快な作りだ。
当然ながら,上位のリーグに行けば行くほど,ライバルも手強くなっていく。ゲームの難度は「簡単」「普通」「難しい」の3段階から選べるが,“簡単”の場合は,周回遅れのライバルを追い抜いたり,後続車と20秒以上の差をつけて独走できたりするものの,“難しい”を選ぶと「これってチートじゃないの?」と言いたくなるほど異常な速さでライバルが抜き去るので,勝つのはなかなか難しい。
オフロードへGoには,「タイムアタック」「クイックイベント」,そして「カスタムトーナメント」という3つのモードが用意されており,ここでの成績はトーナメントに影響しないため,手軽にレースを楽しめる。それぞれ順に紹介していこう。
まず,タイムアタックはその名のとおり,コースレコードを更新するため,己に挑戦するモード。開発者のゴーストを使って擬似的に対戦することも可能だが,慣れないうちは正直,速すぎて勝負にならない。ただし,ゴーストがどういったルートを走るかなど,見習うべきところも少なくないので,遊んで損はないはずだ。
クイックイベントは一戦で終了するイベントで,上記のシンプルレース,スタントレース,そしてタイムチャレンジで走ることができる。ちなみにタイムチャレンジは,トーナメントと同様,制限時間内にチェックポイントを通過できなければ,その場でゲームオーバーだ。
最後のカスタムトーナメントは,最大で9つのコースを設定し,レース終了時の総合スコアで勝敗を決めるものだ。上位でゴールするほど,獲得スコアは大きくなる。めいっぱい9つのコースを設定してしまうと,プレイ時間が長くなってダレてしまうので,3戦あたりに留めておくのが無難だろう。
nail'dはインターネットやLANを介してのマルチプレイにも対応しているのだが,残念ながら,筆者が試した限りではプレイヤー数が少なく,今のところプレイできていない。
シングルプレイと同様に最大12人のレーサーがエントリーできるほか,マルチプレイ独自のモードとして,「フリーレース」がある。詳しくは分からないが,これはラップタイムが1番良かったプレイヤーが勝ちとなるもののようだ。
ほかに「ガレージ」というモードからは,ライダーや乗り物のカスタマイズが可能になっており,さらに解除した実績,プレイヤーの戦績などを確認できる。
あり得ないくらいの大ジャンプを決める爽快感はあるが
トリックには物足りなさも
nail'dをプレイしていて最も印象的なのは,もちろんそのスピード感だ。道なき道を爆走し,崖から大ジャンプを決めて谷間を飛び越えるなんて当たり前で,「そんな高さから落ちたら,どう考えても終わり」という状況にもしばしば遭遇するが,ライダーもバイクも非常に頑丈なので安心だ(ものには限度があるが)。あまりにも高低差がありすぎて,着地まで数秒かかるような状況でも大丈夫だが,落下中はブラーがかかって周囲がぼやけるなど,「落ちている感」はかなり上手く演出されているため,高所恐怖症の筆者が思わずイヤな汗をかいたのは,一度や二度ではない。
落下にせよジャンプにせよ,宙に浮かんでいるときにトリックをきめるのが本作の売りの1つなのだが,やや物足りない部分もある。なぜなら,フロントフリップ(前方宙返り)や,360(横方向にバイクを1回転させる)など,フリースタイルモトクロス競技でメジャーなエアトリックが用意されていないのだ。本作でいうトリックは,「きれいに着地する」「コース内に設置された火の門,火の輪をくぐる」などで,それなりに種類は用意されており,それぞれ面白いものの,バイクらしいトリックが少ないのが残念だ。せっかくあり得ないほどの大ジャンプができるのに,そこを活かした要素が少ないのはもったいないと思う。
トリックを成功させると,ブースターゲージが回復する。これを使い,急加速でライバルを一気に突き放したり追い上げたりできるので,状況を見て効果的に使おう。ちなみに,上記のスタントレースでは,ブースターをいかに有効に使うかが勝負の分かれ目になる。
コースにはいくつものギミックがあり,火の門や火の輪のほか,巨大な岩が転がる急斜面を猛スピードで駆け抜けたり,回転する風車群の中に飛び込んだりなど,アグレッシブなコース攻めを要求される。クラッシュしたら復活するまでの時間がタイムロスになるので,上位入賞を狙ったり,ラップタイムを更新したりしたいなら,どういうルートで走るのがいいか,何度も走って研究する必要もある。
また,Xbox 360用のコントローラを使ってプレイしている場合,ジャンプして空中にいるときに左スティックを上に倒すと素早く降下し,下に倒すと逆に滞空時間がのびて,より遠くに着地することができる。さらに,左スティックを左右に倒せば,バイクの向きをコントロールでき,気球や高架線などの障害物を避けられる。もちろん,キーボードでも同じ操作は可能だ。ゲームを遊んでいくうえで必須テクニックになるので,ぜひマスターしたい。
すでに書いたように,本作にはATVとモトクロスバイクの2種類が登場するが,エンジンやショックアブソーバーを取り替えることで,性能や見た目を変化させられる。パーツの交換以外に,あらかじめ用意されたデカールを貼ったり,エキゾーストやホイールに色を塗ったりなど,好きなようにマシンをカスタムできるのが面白い。
性能そのものについては,スペックシートを見る限り両者に違いはない。しかし,実際に乗ってみると,ATVは四輪ということもあって走りが安定しているが,そのぶん加速が少々犠牲になっている印象だ。モトクロスバイクはその逆で,体当たりされたときなどバランスを崩しやすいが,加速に優れているように感じた。
レーサーも多少カスタマイズ可能で,男女を選べるほか,ユニフォームの種類やカラーの選択が可能だ。ゲーム開始時にはいくつかのカスタマイズ要素がアンロックされているが,これらはリーグを制覇した報酬などとして手に入れられる。
悪くはないが,やや物足りない部分も
nail'dを遊んで誰もが驚くのは,バイクのスピード感と,ぶっ飛びすぎな大ジャンプだ。ジャンプというより空を飛んでいると表現したほうが良さそうなビッグエアは,見た目のインパクトもあるし,爽快感も抜群。スピード感を強調する効果的な演出も随所に施されているので,一度は体験してほしいところだ。
ただ,コースのバリエーションがあまり多くなく,トーナメントを勝ち進めても,同じようなコースが続いてしまう。さまざまに用意されたコースのギミックが面白いだけに,このへんは,もう少しがんばってほしかったところだ。
現実にはあり得ない,いかにもゲーム的な,ぶっ飛んだレースが誰でも楽しめるところが魅力的だが,上にも書いたように,実際のレースなどで使われている派手なエアトリックが用意されていないところが惜しい。これがあれば,さらに印象が良くなっただろう。
ともあれ,ストイックなレースものとはまったく違う,大味でハチャメチャなレースが楽しめるので,我を忘れてぶっ飛ばしてみたいという人にはもってこいだろう。
「nail’d」公式サイト
キーワード
(C)Copyright 2010 and Published by Deep Silver, a division of Koch Media GmbH, Gewerbegebiet 1, 6604 Hofen, Austria.
Developed 2010, Techland Sp. z.o.o., Poland.(C)Chrome Engine, Techland Sp. z.o.o..
(C)Copyright 2010 and Published by Deep Silver, a division of Koch Media GmbH, Gewerbegebiet 1, 6604 Hofen, Austria.
Developed 2010, Techland Sp. z.o.o., Poland.(C)Chrome Engine, Techland Sp. z.o.o..
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